真ん中の子どもたち

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 137
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711226

作品紹介・あらすじ

“四歳の私は、世界には二つのことばがあると思っていた。
ひとつは、おうちの中だけで喋ることば。
もうひとつが、おうちの外でも通じることば。"

台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼いころから日本で育った琴子は、大学生になって、中国語(普通語)を勉強するため留学を決意する。そして上海の語学学校で、同じく台湾×日本のハーフである嘉玲、両親ともに中国人で日本で生まれ育った舜哉と出会う。
「母語」とはなにか、「国境」とはなにか、三人はそれぞれ悩みながら友情を深めていくが――。
日本、台湾、中国という三つの国の間で、自らのアイデンティティを探し求める若者たちの姿を鮮やかに描き出す青春小説。第157回芥川龍之介賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞の一件で見聞きして気になっていた本。
    台湾人の母と日本人の父を持つ少女が、中国、台湾、日本のことばの狭間でアイデンティティーのゆらぎを感じながら、自分を確立していくお話。おそらく作者自身の生涯のテーマ。少なくとも私は対岸の火事とは思わず興味深く読み進めた。
    先日、シンガポールと日本人のハーフの小さな男の子がぺらぺらの鳥取弁を話していて驚いた。驚くのはこっちの勝手で、彼にしてみればふつうのこと。
    「台湾人の母を持つわりには中国語はへただね」とか、「見かけは日本人ではないのに日本語を喋れるなんてすごい」とか。何気なく私たちが普段口にしかねない「ふつう」を基準にした物言いが、当人達にとっては大きな傷になり得る場合もある。こういう小説を読んででも、自分の知らない環境を知り、思いを馳せることが大切。
    ———————————————
    ナニジンだから何語を喋らなきゃならないとか、縛られる必要はない。両親が日本人じゃなくても日本語を喋っていいし、母親が台湾人だけれど中国語を喋らなきゃいけないってこともない。言語と個人の関係は、もっと自由なはずなんだよ。


  • 母国語とアイデンティティの問題は、日本に生まれて日本語しか話さない人にとっても「対岸の火事」なんかじゃない。
    外国語を学ぶとき、日本国内でも遠い地方に行ったとき、自分の中の日本語が揺らいだりしないのかなぁ。
    (芥川賞の選評読んだ)

    私はむしろこのように、外国にもルーツがある日本語話者が日本語をより豊かにしてくれていることが嬉しいし、誰もが自由に何語を話してもいいなんて、とても気持ちいいことだと思います。こういうお話もっと読みたい。

    • seiiti1968さん
      今は対岸のことでも5年後とかもっと早くに状況は変わる気がします。かつての笑いのネタの保毛田とかも今は炎上の対象ですから。私は現在中国人研修生...
      今は対岸のことでも5年後とかもっと早くに状況は変わる気がします。かつての笑いのネタの保毛田とかも今は炎上の対象ですから。私は現在中国人研修生と仕事している立場からかつて自分の中にあった中国人のイメージが全く無くなりました。知らない人にとっては対岸のことでしょうけど。
      2017/11/08
    • yurinippoさん
      seiiti1968さん、コメントありがとうございます。
      やはり実際に親しく関わって初めてわかることもありますよね。
      あまり日本語以外の...
      seiiti1968さん、コメントありがとうございます。
      やはり実際に親しく関わって初めてわかることもありますよね。
      あまり日本語以外の言語に接点のない人が「対岸の火事」と思うことは仕方がないのでしょうか。
      2017/11/10
    • seiiti1968さん
      所詮は自分の半径何メートルかを越えれば対岸であり他人事なのかと思います。それはそれでその人の生きやすさを担保しているでしょう。
      所詮は自分の半径何メートルかを越えれば対岸であり他人事なのかと思います。それはそれでその人の生きやすさを担保しているでしょう。
      2018/04/05
  • 作者の温さんと重なった。
    本当に繊細で、他者の言葉に振り回されてしまい苦しむ少女が、たくましく成長したラストにはにこにこを通り越してにやにやしてしまった。
    真ん中の子どもたちが今後もっともっと元気に生きられる風通しのよい世界になりますように。
    そんな世界はきっとすべての人々を笑顔にすることになるでしょう。

  • 作者じしんの分身と思われる主人公の天原琴子、ミーミーは、日本人の父と台湾人の母をもつ日本育ち。
    幼いころから親しんできた、しかし日本語に囲まれて育つうちにいつか遠のいてしまった母の言葉を習得したい。そう思って留学した先の中国・上海で、彼女は、ここで教え込まれる「正しい中国語」がじぶんの求める「母の言葉」ではなかったことに気づく。ここちよく自分を受け入れてくれる母語の代わりに彼女が見出したのは、ここでも「訛りのある」言葉を話す中途半端な存在として扱われる自分自身だった。
    小説は、ミーミーが同じ中国語学校に通う日本からの(必ずしも「日本人」ではない)留学生仲間――なかでも、台湾人の父親と日本人の母親を持ち、台湾語の中で育ってきたリンリンと、両親ともに台湾系だが日本国籍をもつ龍舜哉――と交流するなかで、日本人でも中国人でも台湾人でもない、いずれかの「正しさ」にも属することのできない自分たちのありよう、それを表す言葉をみつけていく過程を描き出していく。
    小説としての完成度という面では、やや若書きという感じがするのは否めない。特に悩みを抱えて煩悶するミーミーやリンリンに対し、そうした葛藤を頭一つ抜け出したような舜哉との性愛に主人公が救いを見出すような展開にはやや疑問も感じる。
    しかしおそらくまだ完成されていない若い作家だからこそ、芥川賞選考委員による「日本人にとっては対岸の火事」発言に対してあのように怒ることができたのだろうし、その怒りは、小説を読むこと、自分と違うひとびとの声を聞き理解しようとすることについて、人々の間に議論が生まれるきっかけをつくることができた。そのことも含めてきわめて同時代的文学的な実践であったと思う。作者がこれからさらに優れた作品を生み出すことを期待したい。

  • 日本人の父と台湾人の母を持ち、3歳までは台湾で過ごしていた琴子。日本では日本語を使っていたが、母の母語への興味があり、19歳の時に上海に中国語を学びに行く。上海で、「台湾人なんていない、中国人だ」「君の中国語は訛っている。台湾の訛りだ」「母親が中国人なのに中国語が下手だね」みたいな言葉を耳にし、自分とは何かがわからなくなり、思い悩む。琴子の悩みは、日本人として普通に生まれ育っていたら全く持つことのない悩み。こんな悩みを持つ人がいるんだ、と知ることができたのはよかった。

  • 芥川賞候補作品として、記憶に新しいが、その前からちょっと気になっていた作家さんの温又柔の作品

    この感覚は経験した人でないとわかりずらいかもしれないが、実際にこの状況にある子どもたちが世界中に増えていることを意識しなければならないと思う。

    国籍、言語、母語、居住場所、パートナー、両親、子ども。
    どれ一つとして同じ条件の人はいない、にもかかわらず、ここで使われているような『アイノコ』でくくられてしまうことが多い。

    琴子=ミーミー 父は日本人、母は台湾人
    玲々=リンリン 父は台湾人、母は日本人
    舜哉 両親とも日本人に帰化した台湾人 西日本語を話す

    陳老師 正しい言語を教えるための適切な指導

    根っこばかり凝視して、幹や枝や葉っぱのすばらしさを見逃すなんてもったいないやんか

    わたしは根っこがどうなってるのか、ちゃんと見ておきたい。幹や枝や葉っぱはそれからだな。

    おれは迷子になんかならない。目的地がないんやから。


    根なし草?はは。どこにでも根がおろせるんだよ。

    完璧な発音なんて目指さなくてもいい。ネイティブにだって、そんなひとはいないんだから。日本語も同じ。でも、通じない発音というのはある。わたしが教えたいのは、きちんと通じるための発音なの。

    本)タンタンの冒険〜青い蓮

  • 台湾人の母と日本人の父を持つミーミー.上海留学での学生生活の中で母国語中国語の存在意義を問い直す.青春時代の友情や恋はもちろん,厳格な教師との触れ合いなどが自分を成長させその後の進路を決める,とても中身の濃い1月の留学生活を描いている.そして何よりミーミーの父母の包み込むような愛が素敵だ.

  • うーん。

  • アメトークで光浦靖子さんが紹介しているのを見て読んでみました。
    セリフでストーリー展開していくので、読みやすい。

    ハーフや帰国子女は、自分のアイデンティティーが何か悩むことが多いと聞いたことがあったけど、この本を読んで想像できるようになった。

    グローバル化が進んで、日本人も海外に駐在する人が多くなると、「何人か」という括りではしっくりこなくなるんだろうなぁ。

  • 以前読んだ『台湾生まれ 日本語育ち』の小説版?
    日本人として産まれると母語とか母国語について考える機会は少ない。

    言葉と歴史が絡み合って個人を越えた遠い過去を引きずる、
    世界にはそういう人々がたくさん存在していると気づかされる。

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著者プロフィール

温 又柔(おん ゆうじゅう)
1980年台北市生まれ、台湾籍の小説家。台湾人の両親のもとで生まれ、3歳から親の仕事の関係で日本に住まう。法政大学国際文化学部卒業、同大学院国際文化専攻修士課程修了。
2009年「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作となり、作家デビュー。2016年『台湾生まれ 日本語育ち』で第64回日本エッセイストクラブ賞受賞。2017年『真ん中の子どもたち』で第157回芥川龍之介賞候補。2018年、新刊『空港時光』を発行。

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