意識のリボン

著者 : 綿矢りさ
  • 集英社 (2017年12月5日発売)
2.94
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711288

作品紹介・あらすじ

母親を亡くした二十代の「私」は、「絶対に長生きするからね」と父に誓ったのに、交通事故に遭ってしまう。激痛の嵐の中、目を開けると二メートルほど下に自分の身体を見下ろしていて……(「意識のリボン」)。
表題作ほか、姉妹、妻、母親――様々な女たちの視線から世界を切り取り、 人生を肯定するあたたかさを感じさせる、全八編の短編集。

意識のリボンの感想・レビュー・書評

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  • 建前と欺瞞渦巻く世の中にあって提示されたものをそのまま鵜呑みにするのはあまりに愚か。大人であれば、これまで歩んできた経験を活かして裏道を行くのもあり。他方、見えない分からない出来事まで邪推していると、選択肢を狭めることにもなる。色々と疑いたいのを一旦こらえて細かい文句をつけずに勇気をもって受け入れてみるのも大人だからこそできる素直さ。肩の力をすっと抜いて、世の中の身近な平和を喜びながら、色んな物を見て聞いて、できる限りたくさんの経験をする。すいすいと歩いていく。これが大人の賢明な生き方。

  • 小説の「毒」と女芸人のあるあるネタの「毒」とは違うと思う。この短編集はどれも「あるある」寄りで、私が綿矢さんの「小説」に(勝手に)求めている毒は感じられなかった。そこが残念。例えば眼科の検診で覗かされる一本道の向こうに見える気球。あれがここぞってところで比喩に使われるのだけれども、いかにも「あるある」として共感を呼びそうではあるものの、既視感は否めず、ちょっと安易な印象を(これまた勝手に)受けてしまった。また、あるあるな心象をストレートすぎる表現でこれでもかと重ね、詰め込まれているあまり、文章が硬く詰まって、読んでいてちょっと息苦しかった。エッセイとかなら別だけど、小説としてのあそびがないというのかな。『履歴の無い妹』の海外の短篇とかにありそうな、ちょっとうすら寒い感じは好きだ。表題作の臨死体験を描いた『意識のリボン』もさすが。いや、ほんとに死にかけて生き返ったら、こんな境地になれるのかもしれない。「お前が憎い!もっと苦しみを味わえ!」って憤怒の塊が現世に押し戻そうとするところはすごくリアルで恐ろしかった。死より現世のほうが苦しそうだもんね。というわけで、綿矢さんへの偏愛ゆえにいろいろ物足りなく感じつつも、最後まで読んでみれば、30代になった綿矢さんが切実な思いを試行錯誤しつつストレートに表現しているんだなあということがひしひしと伝わってきたし、自分よりずっと若い綿矢さんのそんな思い、そんな作品が、私自身の閉そく感にそっと手をさしのべて、ふわっと一瞬楽にしてくれたのは紛れもない事実。次か、次の次くらいにまた『私をくいとめて』級の傑作(あくまで私にとっての)が来るって信じてる!!  (そうだ、ネットの読書記録に無責任に☆つけて悦に入ってる読者に毒づくくだりには、ドキッとしてしまった。ごめんなさい…)

  • 最後の2つがとくに心に残った。
    かきたてられる恐怖の意識が引き起こす事件。集団心理の持つ恐ろしさを感じた。震災の時も似たようなことがあったなと思い出した。

  • 不思議な世界感の短編集。

  • 8つの短編集。今回は、膿というか心の底を吐き出しているって感じかな。年齢的に感じるものがあるのかしら。作品の中で、「意識のリボン」が、綺麗にできてる。面白く感じたのは「こたつUFO」。女は一生、自分にとっての本当の幸福なんて分からずに生きていく、なんて! 難しいなあこれは。 

  • 新刊が出ると必ず買う作家の一人、綿矢りさ。女の抱える黒さを明け透けなく書いてくれるところが好きだ。あと、綿矢作品は総じて装丁が美しい。今回の装丁は私が大好きな鈴木久美さん。
    20代半ばまでは女性作家よりも男性作家を好んで読んでいたのだけど、30前後になってからは女性作家の作品を多く読むようになってきた。特に、自分より少し年上の女性作家の作品を好むようになってきた気がする。
    知らない人の話に耳をそばだてては、妄想をめぐらしたり、噂話に振り回されたり、こたつの中で自堕落な生活を送ったり、怒りと言う感情についての短編だったり……リアルな女の、すぐとなりにありそうな世界観がたまらなく好きだ。
    夢見る年頃を過ぎた女には、現実感があって、少し屈折した話がきっと合うのだろう、と感じる。
    ページ数は多くないが、読後感は大変満足。

  • 初出 2014〜17年の「新潮」、「文學界」、「すばる」、「小説トリッパー」

    8作の短編集だが、その半ばは「こたつのUFO」の冒頭の文章がなければエッセイあるいは私小説かと思う作品。

    「怒りの漂白剤」は私自身が怒りをエネルギーにして生きていた時期があったので、怒りの心理を掘り下げている描写に「そうそう」と思わず苦笑いしてしまう。

    作者独特の、外へより自分の内側へ深く鋭く向けられる視線から生まれる物語は、共感する人が多いのだろうが、心を揺さぶられたい私には今ひとつ物足りない。

  • 2018.4.15
    女性の短編

  • 綿矢りさがこんなグチャングチャンでドロドロで私小説風な作品を!
    と驚いてみたものの、よく考えてみれば外見に似合わずそんなもの書く人ではあった。
    しかし特にこの短編集では脳内ダダモレ的な文体が暴走してただならぬ事態になっている。

  • 【こたつのUFO】
    『永遠の若さよ、我が手に! どうしたらいいの、どうしたら手に入るの、京都民らしくお膝元のわかさ生活の作るブルブルブルブルアイアイブルーベリーアイのサプリでも飲んめばいいの。』

    「人間トハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「男と女がいますね。ちなみに私は女です」
    「オンナトハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「女は…他人の噂話が好きですね」
    「ウワサバナシ」

    「というのも、女は同調意識が発達してるんです。不幸も、周りの人たちがほとんど不幸だったら、大体受け入れられます。逆に周りが不幸で自分だけ飛び抜けて幸福なら、きまりが悪くなって幸福の質を落としてしまうくらい、周りをうかがう性質なのです。女は一生、自分にとっての本当の幸福なんか分からずに生きていく生き物です」

    『宇宙人に、人間についての偏見を叩き込むのは、なんて楽しい作業だろう。人間を知らない宇宙人は「一概には言えないでしょ」とか「極端すぎるでしょ」「あなたの偏見でしょ」などと反論してこない。黙って空中に私の言葉を書き連ねている。細長い銀色の三本の指で、見たことのない指揮棒ような筆記用具を操りながら。』

    「オトコトハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「男は…、おっぱいが好きですね」
    「オッパイ」

    『知らないふりを決め込めば、簡単にやり過ごせる他人の心の機微や傷つきに、立ち止まる勇気がなくなってから、もうずいぶん経つけど、走った距離の分だけ心の空白は大きい。』

    『今は炬燵がmy基地だけど、いつかUFOが迎えに来たら、迷いなく乗り込めるほど身軽に生きたい。何十年生きても、老いた証拠は身体にだけ残して、心は颯爽と、つぎの宇宙へ、べつの銀河へ。可能性はいつだって、外ではなく自分の内側に埋まっている。』

    【履歴の無い妹】
    「"本物の" "生の"写真なんて、私はいらない。嘘っぱちでもいいから、笑顔でピースしてる写真さえあればいい。人生で残しておく思い出は、安心で、たいくつな方がいい」

    【怒りの漂白剤】
    『『自虐の詩』という漫画は、生まれた時から苦労続きの主人公、幸江さんが色々あって心の成長を経て、「幸や不幸はもういい どうらにも等しく価値がある 人生は明らかに 意味がある」と感じる場面で終わるのだが、なんだかすごく感動した。』

    【意識のリボン】
    『私はかつて、月の香りをかいだ。ゆこうと思えば、いつでも、彼方へ。私は呼び続ける、愛しい人の名前を。身体が滅びても、時を超えて、いつの時代へも。』

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