意識のリボン

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711288

感想・レビュー・書評

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  • 困難を数値化したいと
    いう人なかなかいない
    ですよね。

    ニーズのあるなしじゃ
    なく、

    そんな発想はわかない
    という意味で。

    高校や大学の偏差値が
    示されてるおかげで、

    無謀な挑戦で散ってく
    受験生が最小限に抑え
    られてるのはたしか。

    同様にその夢をその人
    が実現できる可能性が
    数値化できれば、

    無謀な夢で人生を棒に
    振る人はもっと少なく
    なるんじゃないかと。

    或いはその人にとって
    実はお茶の子さいさい
    なことなのに、

    怖気づいて夢をつかむ
    チャンスを逃すことも
    なくなるんじゃないか
    と。

    それが良いか悪いかは
    別として、

    思いつきにしてもこの
    独特な切り口はさすが。

    フィーリングがピタッ
    と合う感じで綿矢さん
    推しです♪

  • - オンナトハ、ドウイウ生キ物デスカ
    女は…他人の噂話が好きですね
    - オトコトハ、ドウイウ生キ物デスカ
    男は…、おっぱいが好きですね 〈こたつのUFO〉

    女とは何か、男とは何か、私たちが偶然にも宇宙人に出会うことがあったなら、こんな風に女と男の特徴を説明したりするのでしょうか?もし、小説に宇宙人が登場すればこれはもう誰が何と言ってもその作品はフィクションです。また、エッセイと銘打った作品を読めば、それは作者のノンフィクションの世界であるとハッキリわかります。でも、小説の場合、果たしてそこに書かれていることはどこまでが現実のことで、どこからが作り話かの境界線は作者以外にはわかりません。では、そんな小説の本文の中に『あくまでフィクションですから、主人公と同一視しないでください。創作上の話で、私は主人公と似通った境遇も思考も一切ありません』、と書かれているとこれはどう捉えればいいのでしょうか。私たち読者は、そこに書かれている小説を単純に楽しめば良いわけで、そこから離れて、そこに書いてあることが作者のことであろうがなかろうが本来は何の関係もありませんし、それによってその作品の評価が変わるようなことも本来はあり得ないはずです。でも、『三十歳になったばかりの私が、三十歳になったばかりの女性の話を書けば、間違いなく経験談だと思われると、これまでの経験から分かっている。』、と、”もしかして”と勝手な想像をする気持ちは誰にだってあるものです。読書は自分の楽しみのためにするものです。そんな”もしかして”と勝手な想像をする読書だろうがそれでその読書に面白みが増すのであればなんだって良いのかもしれません。「意識のリボン」、この作品はそんな読者の”もしかして”の期待に応えてくれる、現実と絵空事の境界線が極めて曖昧に感じられる、そんな物語です。

    『赤ちゃんは取り上げられてから泣くものだと思ってたから、自分の股の間から声が聞こえたときはびっくりしたよ』と嬉しそうに語る母。『当時の私は母の胎内の記憶を語った』という二歳の時の主人公・真彩。『ままのね、おなかのなかでね、だいだいいろ。せまくてね。くちゃくてね。でてくるとき、あたま、すごーくいたかった』、という『出生前記憶を語る幼児の、けっこう貴重な映像』を『真彩には生まれる前の記憶がある』と喜んでいた母は、『誇らしかったからこそ、わざわざ二歳のときの動画を全世界で視聴可能』なようにYouTubeに投稿します。それからも『私の成長記録は随時発信され』続けます。中学一年生まで残るそれらの映像を『いまではかけがえのない動画として消すに消せない』という真彩。『視聴回数のうち、少なくとも千回以上は、私がクリックした分が含まれる』というその映像には『私に話しかける、若いころの優しい母の優しい声。最後の最後に、姿見に映った母が0.1秒ほど』映っていました。『ずっと見つめていると、目から涙がこぼれた』という真彩。『母は亡くなってしまった。心筋梗塞で五十四の若さであっという間に』、『私たちには笑顔の記憶だけを』残していなくなってしまった母親を偲ぶ真彩。そんな真彩にまさかの展開が訪れます。『さて、私はスクーターに乗っていて乗用車に追突し、ぽーんとお空を飛んでいる』、というどこか他人事のような感覚。『私は絶対に長生きするからね、と泣きながら父に誓ってすぐだったので、親不孝者と言えるだろう』、と冷静に語る真彩。そんな真彩は『瞬きをしてまた目を開けたら、二メートルほど下に自分の身体を見下ろしていた』というまさかの状況に置かれてしまっているのに気づきます。そして、そんな真彩のまさかの臨死体験がリアルに語られていきます。

    8つの短編から構成されるこの作品。登場人物に会話らしいものがある、いわゆる小説という感じの体裁をとるのは最後の〈意識のリボン〉だけで、他は主人公視点で自身の内面から見た世界、感情が切々と語られるものが中心です。その中で私が特に印象に残ったのは序文に触れた〈こたつのUFO〉を含めた四編です。では、残りの三編。まずは〈岩盤浴にて〉。『他人の会話を盗み聞きして心を乱すのは、私の悪い癖だ』という主人公が岩盤浴をしながらそこに聞こえてくる他の人々の会話を聞きながら、ああだ、こうだと考えを巡らせます。三十万円以上したコートを売りに出したら五百円だったという愚痴を連れに語る女性。これを『愚痴に見せかけた自慢話』だ。『高かったコートを安く買い叩かれて腹が立った話をしているように見せかけて、高いコートが買えた、かつての自分を自慢している…』、といった感じでただただ他人の会話の内容に思いを巡らす主人公。これはエッセイなのか、小説なのか、読み終わってもはっきりしないほどに綿矢さんを感じた物語でした。次は〈怒りの漂白剤〉。『自分のことしか考えていないのに、人の顔色を気にしすぎて気を揉んで早数十年、あちこち考えすぎて暗い思いを溜め込んできた』という主人公が『“怒りと別れたい”という思い』に向き合う中で『怒りには神的なパワーを感じるときがある』、そして『ほかの感情に比べて鋭く強く熱量も多いし、実体化したら雷のようにピカッと光って地面に落ちそうだ』と考えます。確かに喜怒哀楽の四つの感情の中で、怒りの感情だけは、その対象を特定し、その対象に向かって放出される強い感情とも言えます。だからこそ『なにくそ、見返してやる、と奮起の材料になったりもするので、使い方次第では大きく化ける可能性もある』、とこれまた主人公がただただ内面でああだこうだと思いを巡らせます。そして、その感情と『漂白剤』を結びつけていく発想、これまた、綿矢さん自身のことなのかなぁ、と考えながらの読書、でもそれ以上にとても上手くまとめた作品だと思いました。

    そして、この作品の中でも圧倒的に絶品なのは間違いなく〈意識のリボン〉です。出生前記憶と、まさかの臨死体験が主人公視点で描かれるその内容。特に臨死体験は、あまりのリアルさ…と言っても私に臨死体験はありませんが、その描かれる世界の説得力、そして綿矢さんならではの絶品の言葉が散りばめられていて、これは圧巻でした。あまりに出来上がった世界の描写に読書スピードが思わずスローダウン。そして、一字一句を味わいながらの読書となり、“良いもの”を読んだ感いっぱいの後味が残りました。中でも『人間は浮き沈みがあってこそ、深く学び、深く輝く』という人生を俯瞰したからこそ出てくる言葉はとても印象的です。また、『仕事』というものに対するこんな考え方も登場しました。『いままで一度も仕事を自由と思ったことはなかった』という真彩。しかし『時間は有限だとはっきり自覚して眺め渡して』見た時には、それは全く違うものに見えてきたと言う感覚。『人生において仕事ほど贅沢に自由を使っている”遊び時間”はない』、という仕事が自由という言葉と結びつく瞬間。そして『体力も気力も野望も十分あってこそ挑戦できる、社会へのゲームだ』、と『仕事』というものに対して今まで抱いていた感情・感覚が反転してしまう、そんな考え方に至った真彩の臨死体験。ただ、こう書いても今ひとつ上手く伝えられていない感じがしています。やはり、この臨死体験のシーン全体を読んでこそ、初めて全てが納得できる、そんな風に思いました。

    この作品、そして絶品だと思った短編集「憤死」はもとより、綿矢さんの作品は全体として短い作品、もしくは中編が多いという印象があります。『短編には、自分が主張したいことや何か強く思っていることというより、生きていて、ちらっ、ちらっと感じたことや好奇心をもりこめる喜びがあります。とても贅沢な場所だと思います』、と語る綿矢さん。綿矢さんの作品を読んでいると、もしかして、これは作り話ではなく、綿矢さん自身のことを書かれているのではないか、そんな風に感じてしまうのは、短編に盛り込まれた綿矢さんの主張が色濃く感じられるからなのかもしれません。

    圧巻の内面描写と、ハッとする表現の数々に魅了された逸品。サクッと楽しめる短編の中に、ふっと奥行きを併せて感じた、そんな作品でした。

    • kurumicookiesさん
      さてさてさま、いいねをするときにフォローが外れしまったので、すぐにフォローさせていただきましたが、大変失礼いたしました。
      いつも感想楽しみに...
      さてさてさま、いいねをするときにフォローが外れしまったので、すぐにフォローさせていただきましたが、大変失礼いたしました。
      いつも感想楽しみに拝見しています!
      2020/07/21
    • さてさてさん
      kurumicookiesさん、ありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願いします。
      kurumicookiesさん、ありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願いします。
      2020/07/23
  • 短編集。最後の表題作でいままでの気分が吹っ飛ぶくらいびっくりした。随筆のような一人称の脳内で考えるあれこれの短編集なのかと思ってたら、意識のリボンはもっと壮大な話だった。あ、でも脳内のあれこれの集大成が表題作ってことなのかな。けっこう好きだった。

  • 2020.6 読了。
    30を手前にした自分自身にとって、とても考えさせられ、強く共感するフレーズが沢山散りばめられていた。

    時に自意識過剰と言えるほど人の目を気にしてしまったり、自分の未熟さを思って現実逃避したくなったり、身勝手に振る舞ってみたり。
    簡単に、前からそうだったように変わってしまう自分への疑問。一旦育ってきた家を出ることの心細さのようなもの。
    怒りっぽい自分に疲れきったり、デマに翻弄されたり、固執してきたものも、一旦手放すと楽になることに気付いたり...。

    自分だけが気にしたり考えたりしているわけではないと、ある意味安心させられるというか、そんな印象を与える物語が詰まった短編集。
    また読み返したい。

  • 綿矢りささんの本も、素敵な装丁がとても多い。
    この本もポップで可愛いイラストが描かれているけれど、色鉛筆で描かれているため、どこか優しく温かい雰囲気。

    本作は8つの作品から成る短編集。短編小説と随筆が混ざったような感じ。

    最初の作品『岩盤浴にて』は、『私をくいとめて』のマッサージの描写然り、リラクゼーション好きの私としては「今すぐにで岩盤浴に行きたい!!」となった。近くのおばさん方の会話を盗み聞きしながら、二人の関係性を邪推したり、あれやこれやと思いを巡らせるシンプルな展開。とても好きだった。

    P. 12
    ウォーターサーバーに近寄り、置いてあった紙コップに水素水を注ぐと、かぼそい一筋の流水が紙の底を打つ音が聞こえた。紙コップにプラスしてこの音を聞くと、どうしても検尿を思い浮かべてしまう。一回り小さめのコップのサイズまで同じだ。検尿しているときにウォーターサーバーの水は思い出さないのに、不思議だ。


    二番目に収録されているこたつのUFOは、作家がぶつくさと頭のなかで考えているだけの話。こういうのが結局一番共感できたりする。

    P.38
    人と話すのが嫌いとか、引きこもりになって何年とかではなく、私はごくごく普通に人と接するのは好きだ。バイト先でも同じシフトの子と仲良くなり昼ごはんもいっしょに食べてたし、年末に開かれた忘年会にも出席した。でも辞めたあとも会うほど仲良くなれた人は1人もいなかった。元カレもそう。(略)
    人間たちにコミットしようと扉を叩く、彼らは出迎えてくれる、そのなかで一定の期間を過ごす、そして、んじゃ。と外に出るともう二度と元の場所には帰れない。きっと外に出るから悪いんだよね。居心地が悪くなっても空気が薄くても、彼らに囲まれて過ごしたいのなら、自分の椅子をしっかり守り、我慢強く居続けなければいけない。(略)
    みんな、こんなぷっつり切れちゃうものかな。家はあるけどまるでノラだよ、ノラ女だよ。街で見かける人はみんな他人さ。
    でも悲壮感はない。それは自分でも気に入ってる。


    中盤に連続で収録されている『履歴のない女』と『履歴のない妹』は唯一内容が繋がっている。とりわけ私は妹の方に登場するいわくつきの写真が、文章だけでこうも魅力的な写真であるということを表現できるのか、とちょっと感動した。

    P.95
    それまでの写真とはまったく雰囲気の違う写真にぶち当たり、思わず手が止まった。
    はだか。
    薄暗い部屋のなか、ベッドの上に二人の女が全裸で寝そべっている。よくあるタイプの写真かもしれないが、女のうち一人が妹だった。(略)もう一人のやせ形で、妹より背の高い美人は、前髪と顎までの髪を切りそろえたクレオパトラみたいなボブカットで、ずっとリラックスしている。撮られ慣れた雰囲気がある。右の彼女の方がスタイリッシュでフォトジェニックなのに、被写体のメインは明らかに、落ち着きなく体を動かし続けている妹の方だ。(略)
    隣の女性は終始横向きで寝そべって、きれいな形の乳房を腕を折り曲げた隙間からちょっと見せたり、長い脚をシーツに泳がせたり、挑戦的だがどこか媚を含んだ視線をカメラに投げかけていて、十分に色っぽいはずなのに、妹の隣だと、やせっぽちの木の背景みたいだった。
    P.104
    「(略)この写真に鋏を入れて、私とこの女を切り離そうとしたの。でも試しに切る前に、もう一人の女を手で隠してみたんだ。そしたら、この写真には何の魅力もなくなっちゃったんだよ。ほら」
    妹が手で右側の女性を隠すと、左の妹はたちまち色を失った。なんの魅力もなく、ただベッドにだらしなく横たわる女だ。太っているわけでもないのに、妙にたるんでいる腹ばかりに目が行く。笑顔が野放図すぎて、歯を見せすぎているのが気になる。ただの裸をさらけ出して身をくねっている、エロ本に出てくる黒い目線の入った素人の娘みたい。ただの背景に見えたもう一人の女の裸身が、写真の大切な、繊細な部分を支えていたのだ。


    『怒りの漂白剤』も印象に残った。
    P.119
    半年間怒らない習慣を心がけた結果、たどり着いたのは意外な答えだった。
    好きを好きすぎないようにする。
    一見怒りとはなんの関係もなく思えるこの心の持ちようが、私にとっては重要だった。私の性格の特徴として怒りっぽさが挙げられるが、同じくらい"好きなものはとことん好き"というひいき癖がある。目を輝かせて語るほど好きな対象の数が多く、想いが濃いほど、その他の影が濃くなる。好きなものを神格化しすぎず、距離をおいてよい面も悪い面も見極められるようになると、ものすごく嫌いだと思っていた物事のちょっとした良い面も見つけられ、あんまり嫌いでなくなる。


    強烈に印象的な文章を書けるという点が綿矢りささんの一番好きなところかもしれない。

  • 最後が特に良かった。小説なのかエッセイなのか分からない、不思議な短編集でした(作者もそこは明らかにしていない)。

    「勝手にふるえてろ」に収載されている「仲良くしようか」に少し近い、スピリチュアルな夢を見ているようなふわふわした不思議な感覚になれる本だなと思いました。
    表題作の「意識のリボン」は生から死、天国から地獄までまるっと全て体験した気になってしまうお話で、家族とか生きる意味とか色々考えて、図書館で泣いてしまいそうに……

    そして「怒りの漂白剤」は本当にあればいいのになぁって思う。自分含めて各自洗濯するべきだろう。

    図書館で借りた本だけど、いつか手元に持っておきたい、そんな1冊になりました。

  • 比喩表現が多彩で読んでいてとても楽しく、でもそこで描かれるのは30代前後のちょうど悩みの深い世代の女性たちで、くすっと笑ったり、ちょっと昔の自分を思い出して胸が痛くなったりしながら読んだ。
    家族も含めた他人とどう交わりながら生きるか、はっきりとした正解はない中で、自分なりの答えを探さないといけない。
    それって実はかなり大変なことだよなぁと改めて思った。

  • いろんな鬱憤を撒き散らしたあとの表題作「意識のリボン」とてもよい。臨死体験を経て人生観が一変する、という単純な話......なのだけど、あっちの世界の眺めや意識の流れがつぶさに語られていて、VRのような臨場感で心が洗われる、ようだ。昏睡中には自分の名前が思い出せないから「呼んで」だとか、一線を踏み越えた感のある描写にはなんだかドキドキした。
    全編読めばデトックス効果が期待できる?(岩盤浴もいいけど。)

  • 新刊が出ると必ず買う作家の一人、綿矢りさ。女の抱える黒さを明け透けなく書いてくれるところが好きだ。あと、綿矢作品は総じて装丁が美しい。今回の装丁は私が大好きな鈴木久美さん。
    20代半ばまでは女性作家よりも男性作家を好んで読んでいたのだけど、30前後になってからは女性作家の作品を多く読むようになってきた。特に、自分より少し年上の女性作家の作品を好むようになってきた気がする。
    知らない人の話に耳をそばだてては、妄想をめぐらしたり、噂話に振り回されたり、こたつの中で自堕落な生活を送ったり、怒りと言う感情についての短編だったり……リアルな女の、すぐとなりにありそうな世界観がたまらなく好きだ。
    夢見る年頃を過ぎた女には、現実感があって、少し屈折した話がきっと合うのだろう、と感じる。
    ページ数は多くないが、読後感は大変満足。

  • 前半はエッセイみたいなお話で、
    アラサー女子の日常がかかれて
    笑えるところもありました。
    後半はミステリとかオカルトっぽい
    フワッとしたお話の印象です。

  • エッセイのような小説のような、不思議なお話が8個入っている。

    どのお話も作者の鋭い人間観察力が光っていて、読んでいてドキッとすることが多かった。

    8つのお話の中で特に気に入った3つの感想を書いておく。
    「岩盤浴にて」
    パワーバランスの偏った女性二人組をひたすら観察しているお話。私自身聞き役でいることが多いので読んでいて冷や汗が出てしまいそうだった。

    「こたつのUFO」
    訳がわからないけど何か勢いがあって面白いから好き。

    「履歴のない女」
    姉妹の会話にほっこりした。

  • 芥川賞受賞時からずっと読んでる作家さんだが、表現の仕方とか、すごく変わったし、うまい文章書くな~と思いながら読んだ。

  • 【こたつのUFO】
    『永遠の若さよ、我が手に! どうしたらいいの、どうしたら手に入るの、京都民らしくお膝元のわかさ生活の作るブルブルブルブルアイアイブルーベリーアイのサプリでも飲んめばいいの。』

    「人間トハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「男と女がいますね。ちなみに私は女です」
    「オンナトハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「女は…他人の噂話が好きですね」
    「ウワサバナシ」

    「というのも、女は同調意識が発達してるんです。不幸も、周りの人たちがほとんど不幸だったら、大体受け入れられます。逆に周りが不幸で自分だけ飛び抜けて幸福なら、きまりが悪くなって幸福の質を落としてしまうくらい、周りをうかがう性質なのです。女は一生、自分にとっての本当の幸福なんか分からずに生きていく生き物です」

    『宇宙人に、人間についての偏見を叩き込むのは、なんて楽しい作業だろう。人間を知らない宇宙人は「一概には言えないでしょ」とか「極端すぎるでしょ」「あなたの偏見でしょ」などと反論してこない。黙って空中に私の言葉を書き連ねている。細長い銀色の三本の指で、見たことのない指揮棒ような筆記用具を操りながら。』

    「オトコトハ、ドウイウ生キ物デスカ」
    「男は…、おっぱいが好きですね」
    「オッパイ」

    『知らないふりを決め込めば、簡単にやり過ごせる他人の心の機微や傷つきに、立ち止まる勇気がなくなってから、もうずいぶん経つけど、走った距離の分だけ心の空白は大きい。』

    『今は炬燵がmy基地だけど、いつかUFOが迎えに来たら、迷いなく乗り込めるほど身軽に生きたい。何十年生きても、老いた証拠は身体にだけ残して、心は颯爽と、つぎの宇宙へ、べつの銀河へ。可能性はいつだって、外ではなく自分の内側に埋まっている。』

    【履歴の無い妹】
    「"本物の" "生の"写真なんて、私はいらない。嘘っぱちでもいいから、笑顔でピースしてる写真さえあればいい。人生で残しておく思い出は、安心で、たいくつな方がいい」

    【怒りの漂白剤】
    『『自虐の詩』という漫画は、生まれた時から苦労続きの主人公、幸江さんが色々あって心の成長を経て、「幸や不幸はもういい どうらにも等しく価値がある 人生は明らかに 意味がある」と感じる場面で終わるのだが、なんだかすごく感動した。』

    【意識のリボン】
    『私はかつて、月の香りをかいだ。ゆこうと思えば、いつでも、彼方へ。私は呼び続ける、愛しい人の名前を。身体が滅びても、時を超えて、いつの時代へも。』

  • 2018/02/21読了

  • 最初、エッセイを読んでいると思っていました。よくある日常ネタでなるほど、そういう風に考える人がいるなぁ、と思っていました。が、姉妹の話でグニャリと歪んだ内容に違和感を覚えました。これはエッセイなのだろうか?と。次の短編でやっとこれは小説なんだ、と。この巧妙な短編の組み立て方が凄く素晴らしかったです。

  • うーん… 短編によっては読まされたり、メタに走ってひやっとさせられたりしたが、色んなところに書いたものが集められておりなんとも。

  • 誰しも女だったら考えたことがあるであろうちょっと黒い気持ちをすごくうまく的確に描いてくれてるからスッキリする、そんな短編集。
    好きなのは岩盤浴にて、履歴のない女、履歴のない妹、声のない誰か
    あ、ほとんどが好きだわ。
    エッセイっぽいような話だからとっても読みやすい。綿矢さんと友達になれたらきっと楽しいだろなーと思った。

  • 初の綿矢作品。
    エッセイのようなものや、小説など、八編。
    すべて女たちの思いが描かれているが、共感できる部分が多い。
    一見ダメなヤツでも、色々考えていて実は一生懸命生きている。
    柔らかく優しく肯定してくれる短編集、
    よかった。

著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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