大人は泣かないと思っていた

著者 :
  • 集英社
4.00
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本棚登録 : 608
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711448

作品紹介・あらすじ

時田翼32歳。九州の田舎町で、大酒呑みで不機嫌な父と暮らしている。母は11年前に出奔。翼は農協に勤め、休日の菓子作りを一番の楽しみにしてきた。ある朝、隣人の老婆が庭のゆずを盗む現場を押さえろと父から命じられる。小学校からの同級生・鉄腕が協力を買って出て、見事にゆず泥棒を捕まえるが、犯人は予想外の人物で――(「大人は泣かないと思っていた」)。
小柳レモン22歳。バイト先のファミリーレストランで店長を頭突きしてクビになった。理由は言いたくない。偶然居合わせた時田翼に車で送ってもらう途中、義父の小柳さんから母が倒れたと連絡が入って……(「小柳さんと小柳さん」)ほか全7編収録。
恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す姿を描きだす。人生が愛おしくなる、始まりの物語。

感想・レビュー・書評

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  • ひとは、いつから嬉し涙を覚えるのだろう。
    子供の頃はいつもかなしくて泣いていたような気がする。
    そして大人の涙の意味が分からなかった。

    いつからか複雑になっていく涙の理由を、この小説はちゃんと登場人物と一緒に感じさせてくれる。

    一番心を打ったのは『妥当じゃない』かな。

    幸福感を感じた『君のために生まれてきたわけじゃない』もいい。

    一緒に泣いた。

  • 7編の連作短編集

    ・大人は泣かないと思っていた
      時田翼32歳。九州の田舎町で、大酒呑みで不機嫌な父と暮らしている。
      母は11年前に出奔。翼は農協に勤め、休日の菓子作りを一番の楽しみにしてきた。
      ある朝、隣人の老婆が庭のゆずを盗む現場を押さえろと父から命じられる。
      小学校からの同級生・鉄腕が協力を買って出て、見事にゆず泥棒を捕まえるが、
      犯人は予想外の人物で―ー。
    ・小柳さんと小柳さん
      小柳レモン22歳。バイト先のファミリーレストランで店長を頭突きしてクビになった。
      理由は言いたくない。偶然居合わせた時田翼に車で送ってもらう途中、
      義父の小柳さんから母が倒れたと連絡が入って……。
    ・翼がないなら跳ぶまでだ
    ・あの子は花を摘まない
    ・妥当じゃない
    ・おれは外套が脱げない
    ・君のために生まれてきたわけじゃない


    農協職員の時田翼32歳と小柳レモン22歳。
    この二人の周りにいる、翼の父や出て行った母。
    親友・農協の同僚。
    レモンの祖母・母・義父。
    色んな人の家族模様に人間模様…。
    田舎ならではの窮屈さ生き辛さ、男尊女卑・偏見等、
    普通に細やかに暮らしている人々の姿が細やかに描かれていた。

    各章ごとに主人公が変わるから、他人から見えてる姿が
    本人が語り手になる事で違って感じられた。
    物語全体に流れる優しい空気感がとても心地よかった。
    各章ごとにちょこっと涙腺が緩んでしまった(〃ω〃)
    心が優しく温かい気持ちに包まれるのに、何故か切なかった。
    心を魅了する言葉が散りばめられていました。
    どれもしみじみと心に沁みわたりました。
    大切にしたいって思いました。

    皆、目の前の些細なことに悩んだり苦しんだりしながら生きている。
    多分都会に暮らしていても、田舎で暮らしていても
    何処で暮らそうと窮屈なんだろうなぁ。
    私は弱虫で良く泣くし、頼りまくっている甘えん坊の大人だけど、
    大人になって人前で泣くのが恥ずかしいと思って我慢している。
    大人だって泣くよね。泣いても良いんだよね。

    過去があっての今現在の自分がいる。
    だからどうせ頭を使うなら、あの時こうしていればどうなっていたかな、
    なんてことじゃなくて、今いるこの場所をどうやったらもっと楽しくするか。
    そんな事を考えたい。

    一緒にいられてしあわせだなぁって良いなぁ

  • 言葉の宝庫のような一冊。
    すごく良かった。
    どのページにも必ず散りばめられていると言っても過言ではないぐらい、数々の心を魅了する言葉がいっぱいだった。

    温かさや癒しはもちろん、時にはチクンと胸をさしたりハッとさせられたり、心がざわついたり。どの言葉も愛おしくて、大切にしたい気分、そしてこの言葉たちが心から逃げださないように鍵をかけたくなるほどの読書時間だった。

    いくつになっても泣いたって良いよね。
    歳を重ねれば重ねるほど、それは言葉以上にチカラを持った良質な涙に違いないもの。

    • けいたんさん
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで...
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで大変よ〜、私(笑)

      「出口のない海」は読んだ事ないよ。戦争ものだよね?いつかは読んでみたいと思いつつ…
      2019/03/05
    • くるたんさん
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほ...
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほっこりしたくなる寺地さん♪

      出口のない海、評判良いよね(๑ᵔ ᵔ๑)
      私もいつか…いつか…(笑)
      2019/03/05
  • 読み終わったあとに、著者のプロフィールを見る。1977年生まれ。現在43歳か。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年ポプラ社小説新人賞でデビュー、この本が7冊目。1年に1〜2冊の割合だな。書くのが好きなんだなと思う。ライトノベルの流行を受けて描写はやさしい。映画のように場面の切り取りには、かなり神経を使っている。

    「大人は泣かないと思っていた」いい題名だと思う。人生の何処かで、誰もがそのことに気がつく。読む前の予測は15歳ぐらいの少年の話かと思っていたが、21歳とかなり遅い。しかも時系列では物語が始まる11年ほど前になる。よって、青春モノではない。片田舎の住人の、穏やかな日常と、それなりの人生の転機を描く。

    いろんな年齢層の人物の視点から紡がれる約1年間の連作短編集になっていて、主人公の青年視点は1番最初と最後に置かれる。でもやはり、30代の人物像が1番生き生きしている。青年が幸せになればいいなと思う。そうなんだよ、大人は案外泣き虫なんだよ。

    2019年5月28日読了

  • また1人、素敵な作家さんと出会うことができた。これが読み終えたばかりの私の感想だ。
    きっとこの作家さんは、これからも素敵な物語を描いていくに違いない。

    まず、のっけからこのタイトルにやられてしまった。『大人は泣かないと思っていた』秀逸だ。このタイトルから物語を想像してみる。私も、子どもの頃は大人は泣かないものだと思っていた。でも、決してそうではないことを大人になってからわかった。
    当たり前のことだが、大人だって、同じ人間で、悲しいことも辛いことも抱えていて、それでも人前では泣かないように堪えているだけだ。

    もちろん、涙には悲しいことや辛いことだけでなく、時には嬉しかったりして流れる涙もある。これは、そういう涙がたくさん詰まった7編の短編から成る物語。

    主人公の翼は32歳。年老いた父親と2人で暮らしている。父親は、庭の柚子が隣の婆さんに盗まれていると言い、翼に現場を押さえろと命じる。柚子が盗まれる現場を目撃し、犯人を押さえた翼。犯人は思いもよらぬ人物で、その目的も予想外のものだった。

    翼の周りの人物が章ごとに主人公となり、その人物を通して物語は展開していく。また、彼らの目を通した翼は、物静かではあるが、周りに流されることなく、どんな理不尽なことにも立ち向かえる強い人物であるというイメージを固められていく。しかし、翼目線で語られた最後の章では、翼は完璧じゃないし、実は色んな人によって支えられてきたことがわかる。

    この物語に登場する人物は、みんなどこか弱い部分を持っていて、実に人間らしく、そして愛おしい。もちろん自分も1人の弱い人間だ。それでもいいじゃないかと寄り添ってくれるような、優しいながらも切なく愛おしい物語。

  • 唐津市生まれの作家、初めて読んでみたけどいいねぇ♪ オジサンは泣かないと思っていたけど 時々泣いちゃった 笑。ユーモラスパウダーもあちこちまぶされていて好みでした。80歳手前の父と2人暮らしの農協勤めの時田翼の一年間が7つの話で繋がれていくけど一人で荷物を抱えていたつもりが そうではないことに気付いていく過程が7編で心地よくリレーして行く。良かったです♪

  • 大人は泣かない、と私も幼い頃思っていた。
    だから親の泣いている場面をうっかり見てしまうと動揺したものだ。
    幼い子供は悲しい時悔しい時、感情のままストレートに泣く。
    一方大人は泣きたい気持ちをつい我慢しがちで、泣く時は思いがけず不意に涙がこぼれ落ちる感じ。
    自分も含めて「泣かない」のではなく「泣けない」大人が多いように思う。

    この作品に出てくる大人達も思うようにいかず、悔しい気持ち寂しい気持ちをストレートに表現できず涙をこぼす。
    けれど泣いた分だけ、周囲の人の弱い気持ちを理解し寄り添える。
    「悲し涙」もいつか「うれし涙」に変わるはず。
    悲しい気持ちも涙が洗い流してスッキリするように、とても清々しい気持ちになれる物語だった。

  • 寺地はるなさん、初めて読みました。

    凄くじわーっと温かい話でした。主人公をとりまく様々な人間関係の様子を、作者がジーっと優しく見守っているような気がしてしまいました。生きていくのは本当にしんどい。でもみんな不器用ながら、それぞれの思いを抱えて生きている。それぞれの人の視点が丁寧に描かれており、なるほど、こんな風に人間関係ってすれ違っちゃうんだな、なんとも難しいもんだなと改めて痛感させられました。

    人はみな自分が主人公だから、家族でも恋人でも同僚でも、本当の意味でその人の思いを汲み取ってあげるなんて、なかなか出来ないし、だからこそ、勇気を出して色々話してみる事は本当に大事ですね。人はどんなに強がっても一人では苦しい。一人で考えてばかりだと、どうしても自己中心的な考えになってしまいがちだと思います。

    最後が良かったですね!主人公にとって、何だかんだ鉄腕が一番のキーパーソンだったんでしょう。ちなみに私だったら、「そうだ。俺が愛してるのは鉄腕だ!」と言ってしまいそうです。^ ^

    様々な人間模様が非常に繊細に描かれ、それに価値観の押し付けみたいなものは全然なく、そうだよね、なるほどね、、と色々考えさせられて、最後は静かにジーンとなるエンディングでした。素敵な作品で、オススメです。

    • くるたんさん
      こんにちは♪

      初、寺地さんだったんですね♪私もこの作品で寺地さんの良さを噛みしめました(o^^o)
      人間関係はもちろん、人の奥底の気持ちを...
      こんにちは♪

      初、寺地さんだったんですね♪私もこの作品で寺地さんの良さを噛みしめました(o^^o)
      人間関係はもちろん、人の奥底の気持ちを掬い取るのがうまい作家さんだと思います。
      2019/06/13
    • kanegon69 さん
      くるたんさん、コメントありがとうございます。最新作も積読していますので、楽しみにしています。いつもありがとうございます
      くるたんさん、コメントありがとうございます。最新作も積読していますので、楽しみにしています。いつもありがとうございます
      2019/06/13
  • 市町村合併で名称だけは「市」となっても、その外れの限界集落のような場所にある古びた家で、酒ばかり飲んでいる父親とふたりで暮らしている翼。
    地元の農協に就職し、日々をそつなく淡々と過ごしている彼をとりまく人々の物語だ。

    リレー形式で各編ごとに語り手の視点が移り変わって一巡する連作短編集の形になっていて、閉塞した田舎町を倦んだり愛おしんだりして暮らす人々の生活は、大きな波乱はないけれど、丁寧に各々の気持ちの動きが描かれていて、読んでいてしっとりと面白い。

    ちょっとイヤなヤツそうなキャラクターも別の視点から見ると案外いいところもあったり、総じて登場するキャラクターがみんな憎めず、かつ魅力的だった。
    変人のような描かれ方は誰一人していないのに個性が際立っていて、それは各々が持つ矜持というか、芯となる部分がしっかりと語られているからだろうなと思う。

    一年後、一ヵ月後、下手したら明日にだって何が起こるかわからない。世界情勢も人の気持ちも移ろっていく。でもだからこそ、毎日を大切に生きていけたらいいよな、と思える物語だった。

  • 『大人は泣かないと思っていた』寺地はるな|担当編集のテマエミソ新刊案内|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー
    http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/180720_book01.html

    「静かな強さで前を向く「普通」」津村 記久子 | 書評 | 小説すばる - 集英社
    http://syousetsu-subaru.shueisha.co.jp/review/%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%AF%E6%B3%A3%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F/

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    時田翼32歳。九州の田舎町で、大酒呑みで不機嫌な父と暮らしている。母は11年前に出奔。翼は農協に勤め、休日の菓子作りを一番の楽しみにしてきた。ある朝、隣人の老婆が庭のゆずを盗む現場を押さえろと父から命じられる。小学校からの同級生・鉄腕が協力を買って出て、見事にゆず泥棒を捕まえるが、犯人は予想外の人物で――(「大人は泣かないと思っていた」)。
    小柳レモン22歳。バイト先のファミリーレストランで店長を頭突きしてクビになった。理由は言いたくない。偶然居合わせた時田翼に車で送ってもらう途中、義父の小柳さんから母が倒れたと連絡が入って……(「小柳さんと小柳さん」)ほか全7編収録。
    恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す姿を描きだす。人生が愛おしくなる、始まりの物語。
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-771144-8

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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