大人は泣かないと思っていた

著者 :
  • 集英社
3.94
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本棚登録 : 679
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711448

作品紹介・あらすじ

時田翼32歳。九州の田舎町で、大酒呑みで不機嫌な父と暮らしている。母は11年前に出奔。翼は農協に勤め、休日の菓子作りを一番の楽しみにしてきた。ある朝、隣人の老婆が庭のゆずを盗む現場を押さえろと父から命じられる。小学校からの同級生・鉄腕が協力を買って出て、見事にゆず泥棒を捕まえるが、犯人は予想外の人物で――(「大人は泣かないと思っていた」)。
小柳レモン22歳。バイト先のファミリーレストランで店長を頭突きしてクビになった。理由は言いたくない。偶然居合わせた時田翼に車で送ってもらう途中、義父の小柳さんから母が倒れたと連絡が入って……(「小柳さんと小柳さん」)ほか全7編収録。
恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す姿を描きだす。人生が愛おしくなる、始まりの物語。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログのレビューで知って、タイトルが心にひっかかっていた本。
    僕は子どもの頃泣き虫で、それこそ毎日泣いていて、大人になるまでに泣くのをやめられるのか心配だった。
    大人は泣かないと僕も思っていた。

    大人も泣かないことないけど、子どもほどは簡単に泣けなくなる。それは間違いない。
    でも、泣いてもいいんだな、たまには子どもみたいに泣いてみたいな、とこの本を読んで思った。

    周囲から押しつけられた「あるべき」姿になれない、あるいは留まることができない大人たちの物語。もがき苦しみながら、救われていく様を描く。

    翼がいい人だな、大好きだなこの人。
    鉄腕も最高。「翼が無いなら跳ぶまでだ」なんてかっこよすぎて、不覚にも目が潤む。

    あまり期待しないで読み始めたのだけど、読み進めていくほどに話にのめり込んでいった。めちゃくちゃ面白かった!ほのかな名作だと思う。

    他の人のレビュー読んでて「なるほど!」って気づいたのだが、どんな登場人物に対しても優しいんだよね。だからこそ、様々な思いが心の中に積み重なっていく。心がほかほかあったかくなってくる。
    寺地はるなさんの本、初めて読んだけど、かなり好きです。他の本も読んでみたい。

    そして、「お酌警察は廃止すべき」に僕も賛成。お酌しない飲み会をさっそく明日から実行しよう。酒なんか、飲みたい人が勝手に飲めばいいんだよ。

  • いいことも、わるいことも、すべて無意味ではない。出会いも、別れも、楽しかったことも、悲しかったことも、全部が今の自分を形作っている。だから過去を振り返るより、今の自分を慈しみつつ、変化を恐れず進んでいこうと思う。明日のことは誰もわからない。この先につらいことがあるかもしれないけれど、もがきながら、悩みながら、周りにいる人に時には頼りながら、最後まで全うしたい。

    歳を取るのは嫌だなぁ、と思っていたけれど、なんだか顔を上げてこの先も生きていけそうな気がする。そんな気持ちにさせてくれた一冊でした。

  • 先を見すぎる翼君、いい子だと思うよ。鉄腕もいい子
    頼らず自分で、どうにかしようとか…
    レモンちゃんと出会えて変わったかな…
    変わったと思う
    鉄腕の「迷惑かけろよ」って言ってくれるのって
    いいなあと思いました。

  • とても好かった。

    p137
    千夜子さんの意見は常に明快だ。好きか嫌いか。やりたいか、やりたくないか。千夜子さんの嫌いな言葉は「みんなそうしている」「常識的に考えて」など。

    翼くんも、鉄腕の彼女も、小柳さんも、好かった。
    また読み返したい。手元に置いておきたい。

  • *恋愛や結婚、家族の「あるべき形」に傷つけられてきた大人たちが、もう一度、自分の足で歩き出す姿を描きだす。人生が愛おしくなる、始まりの物語*

    大人だけど、大人だから、なんだか泣きたい時ってあるよなあ…

  • さらさらと読めたけれど、読後はじんわりと心が温かい。小野寺さんの「ひと」を読んだ時と似ている。きっかけは小さな事だけど、それが積み重なると大きな流れになる。困ったご近所さんだったり、後輩だったりするけど、それもまた一つのエッセンスとなって人生に返ってくる。それは本人がきちんと生きているからだろうと思う。そう簡単には変わらない事もあるし、そう簡単に変われない方の領域に入っているけれど、私も投げ出さずその時その時に向き合っていかなきゃな。

  • 寺地はるなさんの物語の登場人物になりたい。
    …けど無理だから、色んなことに疲れたときはまた読みたい。
    皆自分がありたい姿と、あるべきと思う・押し付けられる姿のギャップに悩んで迷ってるんだなあ、そして「あるべき」より「ありたい」に忠実でいるほうが、自分の想像を超えてしあわせになれるんだなあと元気をもらえる!!

    主人公の時田さん(アラサー独身男性)の友達、家族、同僚、隣の家の人などの群像劇なんだけど、どの話も最高にほっこりする。どれがいちばん好きかというと選ぶの難しいけど、「小柳さんと小柳さん」「翼がないなら跳ぶまでだ」かなあ。
    (「あの子は花を摘まない」だけはダメだった。面白くないとかじゃなくて、寺地さんの描く母親はこの基本的にコンプレックス的なものを刺激されるようでかなり凹む。今回も母親だけは受け付けなかった。)
    小柳さんと小柳さんは、レモンちゃんの家族への想いに切なくなった。「小柳さんが本当のお父さんじゃないから」一緒に住めないって、普通は嫌いだからとか居心地わるいからとかだけどむしろ真逆の理由。。
    「翼がないなら~」鉄腕に愛される鉄腕の彼女は幸せものだなあとうらやましくなった。「彼女に彼女らしくない振る舞いをさせてまで結婚するくらいなら、そんな土俵(親の古い男女観や結婚観)からは一緒に飛び降りる」的な想い、それもうプロポーズでいいと思う。そんなこと想ってくれる男性いてほしい。

    あとは時田さんがどタイプ。笑
    中性的で寡黙でお菓子作りが趣味で、でも芯が通ってて言うべきことははっきり言えて…。これからみんなと幸せになってほしい。

    はあ、本当に寺地さん大好きだな。

  • スラスラと一気に読めた。
    主人公だけの視点ではなく、登場する人物の視点から描かれたいくつもの物語。
    人それぞれに人生という名の物語があり、その人の見た目だけでは何もわからない。
    最初達観しているような主人公が、最終話では人間らしく魅力的に書かれていてとても心に響いた。
    大人になるって、年を重ねるって、素晴らしいことだな。

  • 2019.8.11
    タイトルに惹かれて手に取ったけど、また好きな作家さんが増えた予感。
    流れるようにサクサク読めたこの作品、なんだか心地が良くて、好きだなあと思った。

    「大人は泣かないと思っていた」、まさしく私もそう思っていた。
    大人になればいろんなことが分かって、分別もついて、働きながらすっと生きていくものだと。
    でも実際は、大人っていう概念すら曖昧で、歳を重ねたからといって賢くなるわけでも、生きるのが上手になるわけでもないことを知った。
    自分は全然大人じゃないなと思ったときに、それに気が付いたことが大人になったってことなのかもしれないと思った。

    年齢を重ねると、自分の考えに凝り固まってしまったり、ある程度守りに入ってしまうのかもしれない。傷つかないように。
    でもやっぱり、喜びは人との関わりの中で生まれるものだと思う。だから、弱い自分を認めて、選択していきたいなと思う。

    「「来年」や「将来」が、あらかじめ設定されていて、ただそこに向かって駒を進めるようにして生きていけば、楽だろうなと思う。でも違う。予想外のことがかならずおこる。俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。いちいち悩んだり、まごついたりしながら。」

  • 何気なく読めてしまうが、これは案外傑作なのではなかろうか。家族とか友人とか、そういう関連のある人の視点で短編を紡ぎ、それでいて全体が一つのストーリーになっているというスタイルはもはや珍しくないが、それぞれの登場人物によって、生きることの大切さやかけがえのなさ、個の確立や同調圧力への拒否、人間関係の機微などに改めて気付かされる。必ずしも思うとおりにいかない人生だが、それぞれに生きる意味があるという気持ちにさせられる。読後感も爽やか。

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著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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