大人は泣かないと思っていた

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 679
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711448

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わったあとに、著者のプロフィールを見る。1977年生まれ。現在43歳か。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年ポプラ社小説新人賞でデビュー、この本が7冊目。1年に1〜2冊の割合だな。書くのが好きなんだなと思う。ライトノベルの流行を受けて描写はやさしい。映画のように場面の切り取りには、かなり神経を使っている。

    「大人は泣かないと思っていた」いい題名だと思う。人生の何処かで、誰もがそのことに気がつく。読む前の予測は15歳ぐらいの少年の話かと思っていたが、21歳とかなり遅い。しかも時系列では物語が始まる11年ほど前になる。よって、青春モノではない。片田舎の住人の、穏やかな日常と、それなりの人生の転機を描く。

    いろんな年齢層の人物の視点から紡がれる約1年間の連作短編集になっていて、主人公の青年視点は1番最初と最後に置かれる。でもやはり、30代の人物像が1番生き生きしている。青年が幸せになればいいなと思う。そうなんだよ、大人は案外泣き虫なんだよ。

    2019年5月28日読了

  • 言葉の宝庫のような一冊。
    すごく良かった。
    どのページにも必ず散りばめられていると言っても過言ではないぐらい、数々の心を魅了する言葉がいっぱいだった。

    温かさや癒しはもちろん、時にはチクンと胸をさしたりハッとさせられたり、心がざわついたり。どの言葉も愛おしくて、大切にしたい気分、そしてこの言葉たちが心から逃げださないように鍵をかけたくなるほどの読書時間だった。

    いくつになっても泣いたって良いよね。
    歳を重ねれば重ねるほど、それは言葉以上にチカラを持った良質な涙に違いないもの。

    • けいたんさん
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで...
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで大変よ〜、私(笑)

      「出口のない海」は読んだ事ないよ。戦争ものだよね?いつかは読んでみたいと思いつつ…
      2019/03/05
    • くるたんさん
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほ...
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほっこりしたくなる寺地さん♪

      出口のない海、評判良いよね(๑ᵔ ᵔ๑)
      私もいつか…いつか…(笑)
      2019/03/05
  • また1人、素敵な作家さんと出会うことができた。これが読み終えたばかりの私の感想だ。
    きっとこの作家さんは、これからも素敵な物語を描いていくに違いない。

    まず、のっけからこのタイトルにやられてしまった。『大人は泣かないと思っていた』秀逸だ。このタイトルから物語を想像してみる。私も、子どもの頃は大人は泣かないものだと思っていた。でも、決してそうではないことを大人になってからわかった。
    当たり前のことだが、大人だって、同じ人間で、悲しいことも辛いことも抱えていて、それでも人前では泣かないように堪えているだけだ。

    もちろん、涙には悲しいことや辛いことだけでなく、時には嬉しかったりして流れる涙もある。これは、そういう涙がたくさん詰まった7編の短編から成る物語。

    主人公の翼は32歳。年老いた父親と2人で暮らしている。父親は、庭の柚子が隣の婆さんに盗まれていると言い、翼に現場を押さえろと命じる。柚子が盗まれる現場を目撃し、犯人を押さえた翼。犯人は思いもよらぬ人物で、その目的も予想外のものだった。

    翼の周りの人物が章ごとに主人公となり、その人物を通して物語は展開していく。また、彼らの目を通した翼は、物静かではあるが、周りに流されることなく、どんな理不尽なことにも立ち向かえる強い人物であるというイメージを固められていく。しかし、翼目線で語られた最後の章では、翼は完璧じゃないし、実は色んな人によって支えられてきたことがわかる。

    この物語に登場する人物は、みんなどこか弱い部分を持っていて、実に人間らしく、そして愛おしい。もちろん自分も1人の弱い人間だ。それでもいいじゃないかと寄り添ってくれるような、優しいながらも切なく愛おしい物語。

  • 唐津市生まれの作家、初めて読んでみたけどいいねぇ♪ オジサンは泣かないと思っていたけど 時々泣いちゃった 笑。ユーモラスパウダーもあちこちまぶされていて好みでした。80歳手前の父と2人暮らしの農協勤めの時田翼の一年間が7つの話で繋がれていくけど一人で荷物を抱えていたつもりが そうではないことに気付いていく過程が7編で心地よくリレーして行く。良かったです♪

  • 寺地はるなさん、好きだなぁ。
    改めてそう思うです。

    表題作の作中に、
    『子どもの頃、大人は泣かないと思っていた。そんなふうに思えるほど、子どもだった。』とあるのだけど、これってすごいと思うのです。

    子どもであることを、こんな風に表現できるのか、と。
    作家ってすばらしい。
    日本語って美しい。

    そう思わせてくれる日本語を昨今なかなか見かけない。
    だからこそわたしはこの一文にノックアウトされてしまった。

    大人は泣かないと思っていた

    すごく素敵なタイトルです。

    そしてすべての作品を通して、登場人物全員が人間くさくて素晴らしい。
    あぁ、こういう人たち、わたしの周りにもいるわって思える。

    適度なリアルさ相変わらずの小気味いい毒が、いつまでもヒリヒリとわたしのハートを刺激してくれそう。

  • 寺地さんたぶん3冊目。

    一番好きだ、とてもよかった。
    優しい、いい短編集だった。

    限界集落で70代の父親と暮らす、30代の息子。
    閉鎖された世界の古くからの風習。
    男尊女卑。
    げんなりしちゃうなぁと思ったけれど・・・

    弾けない、怒らない、どよーんと冷めた感じがする、
    なんかいまどきの若者だなぁと思う時田翼は意外と骨太で
    弾けたふりの
    なんかいまどきのキャピキャピした子だなぁと思う
    レモンちゃんはもっと骨太。

    若者はみんないろいろ考えている。
    キャンキャン吠えるだけの大人はそろそろ
    彼らの強さとやさしさに気付き
    泣きながら彼らにありがとうとお礼を言ってもいいのだろう。

    大人には大人の若者には若者の事情がある。

    今を大切に今を生きるのは誰にとっても大切。
    そんな当たり前のことを思い出させてくれた。
    寺地さんのランキングがあがったなぁ。

    もう売れてる作家じゃなくて
    こういう寺地さんみたいな人を本屋大賞に選んでほしいなぁ。
    ねぇ、書店員さん!!!!

  • 昔、母が泣いているのを初めて見た時のことを思い出しました。それまで私はきっと、大人は泣かないと思っていた子供でした。見てはいけない気がして、そっと目を逸らし続けた気まずさを覚えています。
    誰にでも過去はあり、人との交流や繋がりがあった、そして歳をとってきたのです。その先が何処へ行き着くのか、それは誰もがわかっていて、誰かを求めたり、懐かしの味を求めたり。
    私が田中さんのようになれば毎日孤独に枕を濡らすでしょう。私がレモンさんでおばあちゃんと居たら色んなことの度に不甲斐なく泣くでしょう。泣きながら黒く塗り潰したものは、自分の甘さと弱さだったのではないでしょうか。
    ふと弱った親を見てしまった時、懐かしいゆずの香りが漂ってきた時、先のことに不安を感じた時...急にそれは訪れるのです。
    大人の涙は、支えるべきものの大きさと、今までこの歳まで色んなことをくぐり抜けてきた証、そしてそれは弱さではなく、ふと優しくなれた瞬間なのだと思いました。
    私は誰かの為に生まれてきた訳では無いけれど、この人に出会う為に生きてきた、そう思えた瞬間があったことを覚えています。

  • 2019.8.11
    タイトルに惹かれて手に取ったけど、また好きな作家さんが増えた予感。
    流れるようにサクサク読めたこの作品、なんだか心地が良くて、好きだなあと思った。

    「大人は泣かないと思っていた」、まさしく私もそう思っていた。
    大人になればいろんなことが分かって、分別もついて、働きながらすっと生きていくものだと。
    でも実際は、大人っていう概念すら曖昧で、歳を重ねたからといって賢くなるわけでも、生きるのが上手になるわけでもないことを知った。
    自分は全然大人じゃないなと思ったときに、それに気が付いたことが大人になったってことなのかもしれないと思った。

    年齢を重ねると、自分の考えに凝り固まってしまったり、ある程度守りに入ってしまうのかもしれない。傷つかないように。
    でもやっぱり、喜びは人との関わりの中で生まれるものだと思う。だから、弱い自分を認めて、選択していきたいなと思う。

    「「来年」や「将来」が、あらかじめ設定されていて、ただそこに向かって駒を進めるようにして生きていけば、楽だろうなと思う。でも違う。予想外のことがかならずおこる。俺たちはたぶん目の前に現れるものにひとつずつ対処しながら、一歩踏み出す方向を決めるしかないのだろう。いちいち悩んだり、まごついたりしながら。」

  • 山に囲まれた田舎で暮らす人たちを、語り手を変えながら描いた話。
    その地域の価値観や他者への干渉、多様性のなさが、生き辛くて好きじゃない。だけどこれは閉塞感漂う嫌な話でもないし、それぞれに思うところや事情がありながら、前向きすぎでも投げやりでもなく、それなりにやっているのを知ると、何も否定しなくていいんだなと穏やかな気持ちでいられるような気がした。

  • どこかモヤっとした人生を、ちょっとひと押ししてくれて、「あ。思ってたより明るいかも」って思わせくれる。寺地さんの世界。
    そうだなー。生きてくって大事業。揉まれて流されて。田舎独特のこの空気も私にはとてもよくわかる。
    現実にはドラマみたいに一発逆転で社会が変わるわけじゃない。だから。今目の前にあるものを蔑ろにしたり諦めたりせずに、大切に、居心地良くなるように生きていきたいと思う。

著者プロフィール

寺地 はるな(てらち はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第四回ポプラ社小説新人賞を受賞。
著書に『ミナトホテルの裏庭には』『月のぶどう』『今日のハチミツ、あしたの私』『みちづれはいても、ひとり』『架空の犬と嘘をつく猫』『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』がある。

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