大人は泣かないと思っていた

著者 :
  • 集英社
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感想 : 241
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711448

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物が一人一人が愛しくなるほど魅力的な物語。

    ブクログのKazu さんの感想にも全く同じセリフが取り上げられていて二番煎じになるのですが、
    会社の忘年会で投げ掛けられた言葉
    「隙のない女は、もてないよ?」
    に対して玲子が返したセリフ

    「女の隙につけこむような男を、私は好きになりませんから。そういう人からもてなくても平気なんです」

    痺れた。。。ほんと、かっこいい。暫く読み進めるのを忘れてました。

  • どうしてわたしはあの子じゃないの
    と同じ舞台だと知り、手に取りました


    それぞれ違う目線から書かれた連作短編です
    次は誰かな?と考えながら読むのも楽しいです



    短編の感想って難しいー
    今回はそれぞれの感想を書く感じにします

    上手く書けるかなー


    ◯大人は泣かないと思っていた
    主人公の時田翼がなかなかいい
    男らしいとか、
    お酌警察とか、
    田舎同士のプライドとか
    いろんなことに疑問を持ちながら
    自分をきちんと主張してる感じがいい


    ◯小柳さんと小柳さん
    とにかく、子持ちの再婚に対する
    周りの意見が嫌すぎる!!!
    子どもが高校生だからって
    周りが余計なこと言ってくるのが
    すごくいや!!!

    そしてそういう事件もあったりするから
    それも難しいんだけど
    もううるさいー!!って感じでした
    (わたしの語彙力不足…)


    ◯翼がないなら跳ぶまでだ
    もう玲子さん最高!!
    徐々に溜まってたイライラを
    蹴散らしてくれました!!好き!!笑


    ◯あの子は花を摘まない
    大人の女性のこういう前向きな考え方は好きです
    自分もそうやって未来を見て生きたい


    ◯妥当じゃない
    亜衣がなかなか凄いなー


    ◯おれは外套を脱げない
    ここでの時田翼もなかなかいい
    一作目よりもよくなってるのもいいー!

    そして奥さんが素敵!


    ◯君のために生まれてきたわけじゃない
    ここまで株を上げてきた時田翼目線に戻ります

    他人から見るとなかなかいいのに
    本人から見ると点でダメになる不思議


    でもそういうものなのかも。


    ひとりで頑張っちゃうの、わかるなー



    ラストもいい感じにまとまってて
    読了感もいいです(^^)



    肘差村の閉鎖的な感じは嫌だけど
    いろんな人のいろんな考えを描くには
    とてもいい舞台なんでしょうねー

  • ブクログでフォローさせてもらっている多くの方が読まれており、皆さん高(好)評価なので1年以上前から読みたいと思っていました。
    タイトルの「大人は泣かないと思っていた」も、ジャケットの爽やかな感じも好きです。
    読まずに本棚に飾っておくだけで満足しちゃいそうです。

    7編の中では平野さんの目線で語られる「妥当じゃない」が良かった。
    個人的に平野さんのようなタイプが好きだからかな(^^;)
    改めてジャケットを見返すと、浜辺を歩く二人はこの話に出てくる翼と小柳さんなのですね。

    全編に渡り、友情、恋愛、家族、世間体に関する気持ちがサラッと語られていました。
    人の生き方はそれぞれですから、いろんな考え方があるし、思っていても敢えて口にしないことも多いでしょう。

    「隙の無い女は、もてないよ?」と言われた玲子さんの返しには思わず私もしびれました。
    「女の隙につけこむような男を私は好きになりませんから。そういう人からもてなくても平気なんです。」
    いまだに日本は男尊女卑から抜け出せていないので、こんな男のセリフが頻繁に聞こえてきますし、現実の社会ではこうはっきりとは言い返しにくいですよね。

    自分勝手な行動をとってしまう人も出てくるけれど、本質は皆優しい人達ばかりだったので感情移入しやすかったです。
    皆さんの高評価には納得です。

    • raindropsさん
      Kazuさん、こんばんは。

      この台詞、私もしびれました。「なんてかっこいいんだ!」としばらく読み進めるのを忘れてました。
      Kazuさん、こんばんは。

      この台詞、私もしびれました。「なんてかっこいいんだ!」としばらく読み進めるのを忘れてました。
      2021/03/29
    • Kazuさん
      raindropsさん、コメントありがとうございます。
      多くの人がこの場面でスカッとしたでしょうね。
      raindropsさん、コメントありがとうございます。
      多くの人がこの場面でスカッとしたでしょうね。
      2021/03/30
  • たまたま目にした書名がとても気になって読んだ作品でした。

    なんだか読みづらい文章、違和感のある主人公・翼、そして極めて閉鎖的な田舎が舞台ということで気乗りのしない読み始めでしたが、『母は姫路城に似ている。あるいはノートルダム大聖堂に似ている。』というかっ飛んだ表現に えっ?となり、『俺は、お酌警察を壊滅させたい』という翼の考えに激しく同意してしまった瞬間、この作品に入り込んでいました。

    物語は、7つの連作短編集という構成ですが、最初と最後の章が翼視点で、他は他の登場人物視点で進んでいくという作りです。それぞれの予想外の内面が垣間見えて興味深いのですが、<おれは外套を脱げない>が良かった。最初、これが誰の視点か全く分からず、あんた誰?という感じでした。全く予想外の人物からの視点。こういった構成の作品は他にもたくさんありますが、こんな位置の人物を視点にするのはとても面白いと思いました。そして、この章を機に作品は何だか深みを纏っていき、翼視点の最終章へ進みます。

    『なにもかもうまくいく場所などどこにもない。どの場所で咲くことを選んでも、良いことと悪いことの総量は同じなのかもしれない。生まれてから死ぬまでの時間で均してみれば。』、濃厚で息苦しくなるような田舎での人生であっても、希薄で時に人恋しくなるような都会で人生を送っても、それぞれの人生の中に喜びと悲しみがある。その両方で、もしくはそのどちらでもなくても泣きたくなることがある。大人だって泣きたい時もある。泣いてしまう時もある。
    大きな事件もなく淡々とした人の暮らしを描いたこの作品。だからこそエンディングで翼が肩の荷を下ろした瞬間の光景にじわっと暖かくなるものを感じました。

    「大人は泣かないと思っていた」何だか心にふっとくるものを感じた作品でした。

  • 読み終わったあとに、著者のプロフィールを見る。1977年生まれ。現在43歳か。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年ポプラ社小説新人賞でデビュー、この本が7冊目。1年に1〜2冊の割合だな。書くのが好きなんだなと思う。ライトノベルの流行を受けて描写はやさしい。映画のように場面の切り取りには、かなり神経を使っている。

    「大人は泣かないと思っていた」いい題名だと思う。人生の何処かで、誰もがそのことに気がつく。読む前の予測は15歳ぐらいの少年の話かと思っていたが、21歳とかなり遅い。しかも時系列では物語が始まる11年ほど前になる。よって、青春モノではない。片田舎の住人の、穏やかな日常と、それなりの人生の転機を描く。

    いろんな年齢層の人物の視点から紡がれる約1年間の連作短編集になっていて、主人公の青年視点は1番最初と最後に置かれる。でもやはり、30代の人物像が1番生き生きしている。青年が幸せになればいいなと思う。そうなんだよ、大人は案外泣き虫なんだよ。

    2019年5月28日読了

  • 「子どもの頃、大人は泣かないと思っていた。そんなふうに思えるほど、子どもだった。」(39ページより)

    子どもの頃、確かに私も思っていた。
    子どもは子どもで、学校という狭い世界で生きていくのに大変で、つらい思いをしたけれど
    大人の世界も、大変なのだ。
    学校みたいな範囲のない、とてつもなく広い世界で、いろいろな人とかかわって、うまく生きていかなくてはいけない。
    そして長く生きる分だけ、いろいろな「事情」もできあがってくる。

    「未来」とやらは、いったいどれくらいの時間を持っているのかわからない。明確な終わりのときが見えない。
    だからこそ、ひとつひとつ確かめながら、もがきながら、大切なものを大切にしながら、生きていきたいなと思った。
    大人だって、泣いてもいいのだ。
    弱くていいんだとそっと背中を押してくれた気がした。

    「小柳さんと小柳さん」に特に共感。
    ゆずシロップの炭酸割りが飲みたくなった。甘酸っぱい、濃いめの。

  • 言葉の宝庫のような一冊。
    すごく良かった。
    どのページにも必ず散りばめられていると言っても過言ではないぐらい、数々の心を魅了する言葉がいっぱいだった。

    温かさや癒しはもちろん、時にはチクンと胸をさしたりハッとさせられたり、心がざわついたり。どの言葉も愛おしくて、大切にしたい気分、そしてこの言葉たちが心から逃げださないように鍵をかけたくなるほどの読書時間だった。

    いくつになっても泣いたって良いよね。
    歳を重ねれば重ねるほど、それは言葉以上にチカラを持った良質な涙に違いないもの。

    • あいさん
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで...
      寺地さんは1冊読んでる。
      ただのいい話で終わらないチクっとする感じが好きだったけど、この作品もそうなのかしら?
      今色々買いすぎ借りすぎで大変よ〜、私(笑)

      「出口のない海」は読んだ事ないよ。戦争ものだよね?いつかは読んでみたいと思いつつ…
      2019/03/05
    • くるたんさん
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほ...
      そうそう、決して丸ごとほっこりではないんだよね。
      これは所々ピリっとしながらもラストはほっこりかなぁ。ってか、泣けちゃう。

      たまに読んでほっこりしたくなる寺地さん♪

      出口のない海、評判良いよね(๑ᵔ ᵔ๑)
      私もいつか…いつか…(笑)
      2019/03/05
  • また1人、素敵な作家さんと出会うことができた。これが読み終えたばかりの私の感想だ。
    きっとこの作家さんは、これからも素敵な物語を描いていくに違いない。

    まず、のっけからこのタイトルにやられてしまった。『大人は泣かないと思っていた』秀逸だ。このタイトルから物語を想像してみる。私も、子どもの頃は大人は泣かないものだと思っていた。でも、決してそうではないことを大人になってからわかった。
    当たり前のことだが、大人だって、同じ人間で、悲しいことも辛いことも抱えていて、それでも人前では泣かないように堪えているだけだ。

    もちろん、涙には悲しいことや辛いことだけでなく、時には嬉しかったりして流れる涙もある。これは、そういう涙がたくさん詰まった7編の短編から成る物語。

    主人公の翼は32歳。年老いた父親と2人で暮らしている。父親は、庭の柚子が隣の婆さんに盗まれていると言い、翼に現場を押さえろと命じる。柚子が盗まれる現場を目撃し、犯人を押さえた翼。犯人は思いもよらぬ人物で、その目的も予想外のものだった。

    翼の周りの人物が章ごとに主人公となり、その人物を通して物語は展開していく。また、彼らの目を通した翼は、物静かではあるが、周りに流されることなく、どんな理不尽なことにも立ち向かえる強い人物であるというイメージを固められていく。しかし、翼目線で語られた最後の章では、翼は完璧じゃないし、実は色んな人によって支えられてきたことがわかる。

    この物語に登場する人物は、みんなどこか弱い部分を持っていて、実に人間らしく、そして愛おしい。もちろん自分も1人の弱い人間だ。それでもいいじゃないかと寄り添ってくれるような、優しいながらも切なく愛おしい物語。

  • 主人公の遠くばかり見てるとこ…
    ちょっと共感…笑
    田舎の雰囲気懐かしいな
    お酒ばっかり飲んで妻に愛想をつかされ逃げられた翼の父親に対して抱く感情がなんとも言えないのは読者の自分が今は翼目線で見ているからだろうか。


    自分もたまに、ふとした時に時代の移り変わりを
    父達はどう感じているのだろうかと思い勝手に想像して切なく感じることがあった。
    でも、きっとそれは本人にしか分からないし身内でも知らないことのほうが多い。それでいいのかもしれないと思った。

    あるべき姿というのも周りからの影響や自分の意思で作られた自分の中の固定観念に過ぎないのかな?多数派の枠から出ることも勇気がいるけど合わせて生きていくことが頑張っても難しい人もいる。

    れもんちゃんと翼くんの関係には優しい気持ちになれたし、平野さんもいいな、鉄腕くんもいいな。

  • あったかかった。
    時田くんも小柳さんも、まっすぐで可愛らしい。
    田舎暮らしって、人付き合いって、家族って、、、
    色々あるよねーー。

著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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