- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087711462
作品紹介・あらすじ
チベット、台湾、クアラルンプール、京都……。言葉の魔力がいざなう、アジアへの旅路。
はるかな歴史を持つ僧院で少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、雨降る村でかつて起こった不思議な出来事を描く「Jiufenの村は九つぶん」、時空を超え、熱帯雨林にそびえる巨樹であった過去を持つ男の物語「天蓋歩行」など、アジアの土地をモチーフに、翻訳家でもある気鋭の著者が描く、全五編の幻想短編集。
感想・レビュー・書評
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初めて読む作家のせいか、文体に馴染むのにちょっと時間がかかってしまった。ジョルジュ・バルビエの表紙絵、そしてたしか山尾悠子がツイッターで紹介されてたので、きっと自分の好き系だろうと思って手に取ったのだけど、ややとっつきにくかったかな。
収録作品中で一番長い「天蓋歩行」は、輪廻転生テーマ、かつて巨大樹だった頃の記憶を持つ男の転生の話だけど、読みながら何度もウトウトしてしまい…無関係だけど『ブンミおじさんの森』という映画のことなど思い出しました。とても芸術性が高く、美しい映画なのだけど、どうしても途中で寝てしまう…。
いちばんとっつきやすかったのは日本が舞台の「国際友誼」で、他作品でも頻出する、突然のアルファベット表記、漢字にアルファベットのルビなどが、言語がテーマのこの作品では生かされていたと思う。台湾が舞台の「Jiufenの村は九つぶん」は、地名の由来譚ぽくてわりと好みでした。
※収録
……そしてまた文字を記していると(チベット)/Jiufenの村は九つぶん(台湾、九份)/国際友誼(日本、京都)/天蓋歩行(マレーシア、クアラルンプール)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
チベット、台湾、日本、インド、マレーシアと、アジアを舞台に綴られた幻想的な短篇集。文章から漂うどこか冷静な目で見つめる感覚が心地よい。それでいてぼやあっとした印象も受けるので不思議だが、読んでいる間は静謐なひとときを堪能できた。ただ何となく、好き嫌いの分かれそうな作家だなと思った。
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文章が装飾過多で読みにくい。独特な空気感漂う短編集。
どの短編も内容まで装飾過多になってて、話に入っていくのが難しい。 -
樹木の話と、海からくる未来を見る男の子の話がよかったな。
手元において時々読みたい感じの本だ。 -
百年か一年か一日、ほんの数分を書物のなかで過ごしたように思う。
書物は鏡。一点に静止しながら時空のすべてを映しとる。円環的につながった過去・現在・未来のあらゆる事象を同時に映現する。既視感と未視感。はるかな過去を追っていくといつの間にか未来に到達してしまう。わたしはかつて砂であり、海であり、木であった。脈打つ血の音が地の底を流れる水の音として聞こえてくる。わたしは記憶を渡されたのだ。かなたから、あなたから。
ふり返ったとき遠く時間の向こうに、命脈のうちに、わたしの黄金の季節が侵されずにあればそれでいいのです。 -
2018-7-29