鏡の背面

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 657
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711523

感想・レビュー・書評

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  • 単純な人探し&犯人探しだと思って読み始めたけれど少し違った。女性のシェルター絡みで、心を病んだ登場人物が多いせいか精神論的?内容が多い。

  • 薬物依存症の患者、DV被害者、家族関係に悩み自傷行為に走る人など、社会の中で生きづらい女性の受け皿となっているシェルター「新アグネス寮」が全焼した。
    入居者を救うために逃げ遅れ、焼死体で発見された2つの遺体。
    1体は主催者の片腕として働いていた榊原久乃
    そしてもう1体は、この施設を運営・主催している小野尚子
    彼女は裕福な家庭のお嬢様でありながら全てを打ち捨てて
    苦しむ女性たちを助けている聖女のような人だった。
    ところが警察からの報告でこの焼死体は小野尚子ではなく別人だという
    入居者が小野尚子だと思っていた慈悲深い聖母のような小野尚子は誰だったのか?
    そして小野尚子の陰に見え隠れする殺人犯・半田明美という女性とは…?

    うわ~!
    読み始めたら止まらくなり、一気読みしてしまった。
    小野尚子の正体が知りたくてたまらなくなってしまった。
    そして、小野尚子になりすました理由が知りたくなってしまった。

    で、読んだんだけど…
    他のレビュアーさんも書かれていたけど
    私も榊原の「そうはさせませんよ」の意味がイマイチ納得いかんかったな~
    で、半田明美の手記で謎解きまとめっていうのがなんか「あ~」って感じだったかな。
    おもしろかったけど


    自分の価値観や存在は他者によって形成される
    影響を受けないで自分自身を確立できる人はいない…
    って言った哲学者は誰だった?
    マルクス・ガブリエルさんのインタビューだったか?

    自己は脆い
    自己の承認欲求は他人の存在によってしか成り立たないのか

    だからこそ洗脳という恐ろしい手法がある
    自分が信じる自分の価値感や存在
    それは本当に自分自身なのか?

    なんて書いている私自身も
    私のよく知っている友人や知人も
    実は知らない人なのかもしれない…

    ってな怖さがある小説だった。

  • 暴力や薬物により苦しむ女性たちのシェルター「新アグネス寮」で火災が起き、創設者の小野尚子は子供と母親を助けるために死亡してしまう。しかし警察から、小野の遺体はかつて殺人容疑もかけられた別の女性のものだと告げられる。スタッフの中富は、ライターの山崎らとともに真相を調べ始めるが・・・
    半田のなりすましに賭ける様は、ぞっとする描写でさすが。しかしながら、ここまでやりながら結局どうしたかったのかが分からずに、消化不良気味。長島のキャラはよかった。

  • 読みごたえのある一冊でした。
    最後のフロッピー、ぞわぞわしました。

  • 読んだ後で大きく裏切られないのは、著者と年齢が近く取り上げられるテーマに共感を覚えられるからだろう。
    今年最初の本でした。
    20年にも及ぶすり替えに、周囲が気づかなかった・・・。それは『人は顔を目だけじゃなくて心で見ている。人の視覚はカメラと違って、像の中に思い出を重ね合わせ感情のフィルターを通し、感情と約束事の枠組みの中で組み立てる。異なる人物でも雰囲気が似ていれば同人物に見える』
    ような意味合いの文章で裏付けされる。
     薬物依存症患者やDV被害者の女性たちが暮らすシェルターで先生と呼ばれていた「小野尚子」。彼女にすり替わっていた人物は正反対の人格を持つ人間だった。
    すり替わった人格や生き方まで変えられるのか!
    人は生まれ変われないけれど生き直すことができると信じたい。

  • 読み応えがあったのに、、、、最後の最後、告白文でって、、、
    ちょっと、がっかりした。
    「そうはさせませんよ」の真相が、もやもやしたまま、消化不良です。

  • 2019.3.7読了。
    めっちゃ面白かった。
    大満足。
    丁寧で一つ一つ謎を解いていく過程が緻密。

  • 久しぶりの篠田さん。
    息つく暇もなく、文字の羅列が続き、息苦しさを感じるほど。
    あぁ、これこそが篠田節子の文章。
    ぞわぞわとした感触が文章のそこかしこから現れるし。
    読みたくないけど読み進めちゃう。
    小野尚子というか半田明美、この壮絶な人生をなぜか演じてみたくなる。役者じゃないけど…
    いずれにしても読みごたえのある作品でした。

  • 財産も生活も全てを投じて慈善活動をしていた聖女。
    他人を救って命を落とすが、遺体を調べたところ、10年以上前から別人が彼女になりすましていたことが判明する。
    その女はとんでもない悪女で、彼女の財産を狙っていたと思われるが、聖女になりすましていた期間に一緒に暮らしていた人たちはみな、彼女は真の聖女であったと言う。
    どうして死ぬときまで聖女の仮面を守ったのか。

    読めば読むほど無慈悲な悪女ぶりが明らかになり、4cm厚ほどの本が残りあともう1mm、どうやって終わるのか心配になるが、最後の最後、かけはなれていく2人の姿が、唐突にぴたりと重なった。お見事。

  • ★3.5
    500ページを超える長編で、読み応えはあるものの疲れる1冊だった。シェルターと入居者の実情、フィリピン貧困層の現実、火災で亡くなった聖母のような先生の裏側。視点のひとりとなる優紀を始め、入居者たちが精神的に不安定で、恐怖と不安が伝染していく様を見るのが何とも辛い。特にオカルト要素が出てきた時は、本書自体がどこに向かうのかとこちら側も心配になった。そんな女性ばかりの中、柄は悪くも真っ当な長島の存在が救い。そして、問題の半田明美。彼女はいわゆる毒婦だけれど、自我が崩壊していく彼女は恐ろしく悲しい。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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