蝶のゆくへ (単行本)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711530

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  • 初出 2016〜17年「小説すばる」


    まだ出る葉室麟の遺作。どれだけ連載してたんだろう。

    新宿中村屋の女主人相馬(旧姓星)りょう(号は黒光)と彼女に関わった人々の物語7章。

    旧仙台藩士族の娘りょうは、「ガールズ・ビー・アンビシャス」とその才能を励まされ、明治文学の一潮流をなす若い文学者を教員にも迎えていた明治女学校に入り、校長から「蝶として飛び立つのを見守る」と言われる。

    学友の冬子は教師の北村透谷と恋に落ちて、透谷は自殺し冬子は病死する。透谷の親友島崎藤村も学生に恋慕して苦しむ姿を、りょうは目にする。
    また、りょうの従姉妹の信子が国木田独歩と熱愛の仲となり、家族の反対を押し切って家出同然に結婚したものの貧困の家に閉じ込められて逃げ帰り、親戚の世話で米国留学中の農商務省の官吏と婚約したが、渡航中に妻子ある船員と恋に落ちてそのまま帰国し同棲するに至り、有島武郎は『或る女』のモデルとし、国木田独歩も『鎌倉夫人』に書く。有島も夫のある若い編者と情死する。

    りょうが書いた小説の筋書きにそって、仮名だがりょうとおぼしき女性が井戸に身を投げたという新聞記事が出て、明治女学院の教師で勝海舟の息子の嫁クララが勝の示唆を受けて真相を解明する。ここはミステリー。

    りょうは、女性が社会の中で自立して生きることと恋をして幸せに暮らすことが両立しがたいことを思うのだが、病床にあった校長夫人で作家の若松賤子から託された詩を樋口一葉に届け、一葉と語る。

    ロシア正教会の神学校教師で校長と結婚した瀬沼郁子は尾崎紅葉門下で夏葉の筆名をもらっていたが、ロシア人青年と恋に落ちて家を出る。
    同じ頃りょうも穂高の旧家の若当主相馬愛蔵と結婚するが、東京に出て中村屋を経営しつつ芸術サロンを形成し若い芸術家を支援する。その中の荻原守衛はりょうを慕いりょうの魂を表現する裸婦像を制作するが、結核で命を落とす。

    りょうの娘俊子は「母のように生きたくはない」とインド独立革命運動の闘士と結婚するものの若くして病死するが、りょうは昭和30年に78才でなくなる。
    なかなかに重みのある人生を自分の考えで生きた人だったのだろう。

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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