あなたの愛人の名前は

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 585
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711714

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞第一作!
すれ違う大人の恋愛を繊細に描く、全六篇の作品集。

「あなたは知らない」……私を「きちんと」愛してくれる婚約者が帰ってくる前に、浅野さんと無理やり身体を離して自宅までタクシーでとばす夜明け。ただひたすらに「この人」が欲しいなんて、これまでの人生で経験したことがない。

「俺だけが知らない」……月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない、優しく笑うだけの彼女を前にすると、女の人はどれくらい浮気相手に優しいものなのか、思考がとまる。

同じ部屋で同じ時を過ごしていながら、絶望的なまでに違う二人の心をそれぞれの視点から描いた1対の作品。他の収録作品に「足跡」「蛇猫奇譚」「氷の夜に」「あなたの愛人の名前は」など。

【著者略歴】
島本理生(しまもと・りお)
1983年生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。2018年『ファーストラヴ』で第159回直木三十五賞受賞。『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『よだかの片想い』『イノセント』『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 6編の恋愛短編集。
    こりゃ読ませた。大人の心の内、機微をよく描いたな。満たされない心とか。許せないとかわからないと思う人もいるかもしれないけれど、物語に共感する人もいるだろうし(いないかもしれない)、物語だったとしても実際でもそういう人はいるであろう、そういう人の心の内、それがうまく描けていたと思う。瞳さんが出てくるものは連作。物語は立体的になって面白く読めました。短編集なのでどうかと思ったけれど、読んでよかったです。

  • 他人から見た人生が幸せそうだからと言って、
    心の中のことなんて誰にもわからない。
    もしかしたら『幸せそう』だからこそ、
    自分の本当の心がわからなくなってしまうんじゃないだろうか。
    周りからはわからない秘密が、この短編集の主人公たちにはある。
    その秘密はもしかしたら世間的には不道徳だったとしても、人の心はそんなに四角四面なものじゃない。
    主人公たちのたどたどしい生き方が
    人間味を感じて、いいなぁと思いました。

  • それぞれのエピソードは、ありふれた日常に転がっていそうなものばかりで読みやすかった。各エピソードが微妙に繋がってるのが逆に困惑した。繋がりをしっかり持たせるか全く関係ないかの方が良かった。

  • 大人の恋愛集と銘打つ6編を収録。

    既婚だったり、婚約者のいる人たちが、もやもやとした違和感をもつうちにすれ違い、自分のあるべき姿を見つけ出し、新たな一歩を踏み出していく。「あなたは知らない」「俺だけが知らない」のみ、完全に対になっている。
    ほかの話も、少しずつ登場人物がかぶっているので、あとからつながりをチェックしてみたところ、唯一関連のないのが「蛇猫奇譚」。話自体も猫の語る異質なもので、初出を見るといちばん古い。これをあえて掲載順を変えて、2話目に入れたのはなぜなのか、少し気になった。

  • 「あなたは知らない」「俺だけが知らない」が印象的。
    ふたりが、惹かれ合ってから離れていく過程が悲しかった。

  • これを読んで思ったこと‥私は、この人の全部が欲しいと思えるくらいの人に出会ったことがないなぁ。全体的に共感出来ないことが多かった私は、まだオトナの恋愛をしていないのか、それとも穏やかで安定した愛情をもらえているのか分からなくなった。
    だけど、この人の全部が欲しい。そんな風に思える人、感情のままに大胆になれる人に出会ってみたい、そんな気持ちになってみたい、そんな風にも思った。その反面、そんな人と出会ったら私は気持ちを全てその人に持っていかれて、今の私の生活は間違いなく破綻するなぁ、そんなまるごと全部が愛おしくてたまらない人とは、なんだか幸せになれないような、そんな気もした。
    久しぶりに読んだ恋愛小説、とても女性らしい気持ちにさせてもらえました✨

  • 寂しい大人たちの、6つの恋愛短編。
    3.4.5.6話のオムニバス形式が読み応えあった。こういうの好き。
    4話、瞳はなぜあのような俳句を浅野に贈ったのか、謎でした。3話、瞳側の話ではあんなに会いたい会いたいって言いながら終わったのに。
    6話、懐かしさは人をお喋りにさせてくれるんだと思った。

  • 稲田豊史氏の書評によって出会った本である。書評が素晴らしく、ここにその一部を引用する。


    全編に共通して描かれるのは、呪縛から解放されようともがくじょせいのすがただ。
    呪縛のかたちはさまざま。「足跡」「あなたは知らない」の主人公は、夫や既婚者が善人であるがゆえに、むしろ離別する理由を奪われている。「蛇猫奇譚」と表題作の底にあるのは母娘の血の縛り。「俺だけが知らない」「氷の夜に」では、呪縛から解放される可能性が鮮やかに示される。

    夢と希望に満ちた結末を描くのが男性的なロマンチシズムだとすれば、女性はエンドロールの後も厳しい人生が続いていくことを知っている。手放しのハッピーエンドという概念が存在しない。それ自体が女性特有の呪縛ではないかと投げかける点に、本書の魅力がある。
    (稲田豊史・ライター:琉球新報2月10日[読書])

  • 静寂の中で人の心の奥底を見ているような気分になった。恋愛短編集(「蛇猫奇譚」は恋愛なのだろうか?)だがどの登場人物も何か心の奥底に秘めているものがあって、その微妙で繊細な部分がとても丁寧に描かれていた。人間、正直に生きるって簡単そうで難しいんだなぁと思いながらも、じれったくなったり空しくなったり。ラストの方でようやく希望が見えた気がしたが、最初から最後まで色々な気持ちにさせられた短編集だった。

  • 初出2017〜18年「小説すばる」の6短編。
    この直木賞作家さんは初読みだったけど、面白かった。

    「足跡」は、セックスレスの若妻が、抱いてくれるという隣町の治療院へ通う話で、罪悪感が欲しかったという動機には「?」だった。
    「蛇猫奇譚」は異質な話で、猫の一人称。赤ちゃんが生まれて飼い主の愛情が移ってしまうことにたじろぐのだが、飼い主もそのことに動揺する。
    後半は、堅実な婚約者がいながら好きな人ができてしまって別れる女性の一人称、その好きになった相手の男性の一人称、(あとからわかるのだが、男性の妹の友人で、幼い頃の性被害がトラウマになっている)女性客に惹かれるオーナーシェフの一人称、男性の妹で、引きこもり気味だがマカオへの旅行が転機になりそうな女性の一人称の4話が続く。
    思っていることを相手に伝えられず、不安になり葛藤しつつ自分の道を選んでいく人々を、描いていて巧みだと思う。最後は希望が持ててほんわかするのだが、ずっと不安定な感情移入で読んでいた。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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