生のみ生のままで 下

著者 :
  • 集英社
3.69
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本棚登録 : 517
レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711899

作品紹介・あらすじ

「どんな場所も、あなたといれば日向だ」

互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣(あい)と彩夏(さいか)。
女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は……。

今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い――。
女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!


【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。

感想・レビュー・書評

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  • これは綿矢さんの挑戦作、意欲作でしたね!
    綿矢さんは恋愛をテーマにすることが多いけれど、これほど真正面から、「愛し合う」ことを書き通した作品はなかったのではないか。

    20代後半から30代前半。ただ勢いだけでは進めない、将来のことが頭をよぎり、女性にとって転機となることの多いこの時期に、ただ一人の人を一途に愛し続ける。
    好きになるのに男も女もない。あなただから好き。ドーンとただそれだけが伝わってくる。
    「好き」の力はこんなに強いんだ。

    綿矢さんといえば、観察眼の鋭さ。
    いや、そんなにじっと見ないで!というくらい、毎回ちょっとした表情の変化や目線や仕草から、隠れた感情や下心をあぶりだしてくるのだけど、今回は女性の身体の描写がものすごく細かいのですよ。でもおじさんが書くのと違い、すーっと流れるような文体でねっとり感がなく、さらっとしていて心地よい。
    「生のみ生のままで(きのみきのままで)」のタイトル、上巻でもなるほどと思ったけれど、読み終わってみると更に、これ以上のものはないなと思う。

    "今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽い"

    二人がこれからも、隣で笑い合っていますように。
    とても気持ち良い読後感だった。

    ★4.5

  • いろいろな意見があるのだろうが、極めて普遍的な恋愛小説だと思った。挫折や葛藤を経験しつつ障害を乗り越えて逢衣と彩夏の姿は美しく感動的で、リアルに胸に響いてきた。二人を心から応援したくなった。

    性別関係なく、この人だから好きになる、そんな恋愛もある。
    同性愛は特殊ではない。性は多様なもの。様々な幸せの形がある。逢衣と彩夏のようなカップルが、無駄な偏見を傷つくことなく幸せに過ごせるような、そんな社会になっていかないと。

    (p104)逢衣の言葉
    ー どれだけ真面目に、どれだけ世間の気に入るように生きたって、“普通“に必要な条件は次から次へと出てきて、絶対に追いつけない。

    誰しも、自らが「普通」でいることは非常に困難なはず。なのになぜ人には「普通」でいることを強要するのだろう。

    (p184)
    - 骨や灰や塵になる、それまでの短いひととき、なんで自分を、もしくは誰かを、むげに攻撃する必要があるだろうか。

    ほんとにそう。了見の狭い人こそ、自分が理解できないことを嘲笑ったり、怖がって攻撃したりする。

    ありのままを受け止める勇気を持ちたい。

    綿矢りささんの小説は読みやすい。まるで呼吸をするかのように当たり前に自然に読ませて、心に様々なものを置いていく感じ。

    あと、登場する音楽が良かった。
    仲が深まっていくカラオケでの小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」(僕ら世代にとってはベタ過ぎて笑)とか、彩夏の回復途上で逢衣が聴いているジェイソン・ムラーズとコルビー・キャレイの切なく優しいデュエット曲「Lucky」とか、センスが等身大でニヤリとさせた。


    幅広く読まれて欲しい本。

  • ”今まで事務所が彩夏にかけてきたお金をすべて返済するほど稼いだら、義務を果たしたら連絡をください。それまで一切彩夏とは会わないし連絡も取りません”
    彩夏の今後の活躍のことを考えて、彼女と会わない約束をした逢衣。
    何の準備もないまま、二人は引き離されてしまった。


    突然の別れから七年、平日は仕事を頑張り、土曜日は身体を鍛える生活を続けた逢衣。メディアで彩夏の大活躍を眺めることが彼女の生きがいだったが、彩夏が入院して仕事を引退したことを知り、会いたいと手紙を送る。

    全身を襲う痛みに苦しみ続け、薬の副作用で外見も変わってしまった彩夏は再会を拒むが、逢衣は彩夏を全力で看病し始める。

    逢衣はかつて一緒に暮らしたマンションを借り、彩夏の介護を続けた。最初は心を閉ざしていた彩夏も、病状がよくなるにつれて以前の明るさを取り戻し、身体の交流でついに二人は七年の歳月を埋める。

    回復した彩夏は仕事に復帰し、事務所に二人の関係を認めさせた。逢衣は、自分の娘の幸せを想って彩夏との付き合いに反対する母親の感情も”愛”だと悟る。彩夏への気持ちも、家族への気持ちも同じ愛だった。

    逢衣と彩夏は自然の神様に愛を誓う。
    お互いに相手を妻として、一生愛する、と。

    ---------------------------------------------

    P168の彩夏のセリフがすべてを物語っていると思うので引用。

    ”私を強烈に嫌いな人もいれば、強烈に好きな人もいる、どうでもいいと思っている人もいる。私のことを嫌いな人が間違ってるとか悪い人だとかは思わないよ、でもそういう人たちと向かい合うには人生は短すぎる。私たちのことだって同じ、色んなことを言う人たちがいるかもしれないけど、理解のある人たちを見つけて、その人たちと付き合っていけば、ちゃんとこの世界でも息を吸えるよ”

    人間関係におけるすべての答えがこれだと思う。
    自分を理解してくれる人たちと付き合う時間こそが人生であって、中傷してきたり、足を引っ張る人の相手をしている時間はない。

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    ”女性同士の恋愛!”って宣伝がやたら踊っていたけど、女だから相手を好きになったんじゃなくて、人間として相手を愛し、愛されたって話だから、”女性同士!”というよりも”性別を超えた愛!”っていうフレーズのほうがしっくりくるような気もする。
    まあ、”女性同士!”って書いたほうがインパクトあるし、わかりやすいからいいけど。
    それにしてもエッチな性描写がたくさんあってドキドキした。電車のなかで読まなくてよかった。この小説、本当に映像化するべきだなあ。


    七年経ってもお互いを想い合っていた二人の関係は最高だった。再び二人の心が通い出す直前の印象的な場面で、スーパーカーの『Lucky』が登場してすごく嬉しかった。大好きな曲。
    男女が温かい声で歌うその曲は、もの哀しい別れの曲なのかもしれないし、再会を願う明るい曲なのかもしれない。

    スーパーカー『Lucky』
    https://www.youtube.com/watch?v=XeDwoxC_Ug4

  • すらすらと上巻を読み終えて下巻へ。この人だ!と惹かれてしまうのは、女性同士でも成り立つ。そこまでは上手く行くけど継続はなかなか難しい。
    二人が一度離れてしまうけど、また一緒になれてよかった。
    そして、恋愛に対する想いが強いだけでなく、二人がそれぞれ仕事にむかって努力していたり外見を磨いたりしているところにも好感がもてる。精神的にも強い二人だなぁと思った。

  • 今まで読んだ著者の作者の中でもものすんごいハッピーエンド。現実はこう上手くいかないかもしれない。けれど良いじゃないか。私はハッピーエンドが大好きなのだから。
    「どれだけ真面目にどれだけ世間の気にいるように生きたって普通に必要な条件は次から次へと出てきて絶対に追いつけない」という逢衣の台詞が印象深い。

  • お互いに彼氏がいる中で急激に惹かれていく2人。彼への想いとは違うことへの戸惑いとそれでも手にしたい気持ち。結婚間近だった逢衣と芸能界に身を置く彩夏。2人でいる時の幸せな世界と、外に出た時の人の目。何があっても2人で生きていくという決意とそれでも揺れてしまう、負けそうになる気持ち。女性同士だからと偏見を持たれる空気がまだある中で、そういうものを飛び越えて逢衣だから、彩夏だから一緒にいるということ。周りの理解なんかより2人の間にある信頼、安心がこの先も生きていけるというなによりも強い決意になっているような気がする。そんな2人がとても愛おしく感じられる。

  • 女性同士、男性同士、それぞれの恋愛を差別したりするつもりはないが、それがまかり通ってしまったら生物学上ダメなんじゃないかと漠然と思っていた。
    だけど、自分自身、いろいろある人生を歩んできて、まずは心から愛し続けられる人に出逢えること、愛する人に愛されること、愛した人と人生を歩み続けられること、それらは奇跡だと思うようになった。
    おそらく一度しかないであろう人生で、どんな形であれ愛し合える人に出逢えたのなら、自分の心を信じてまっすぐ進んでもいいんじゃないかと思う。
    自分の子供が…って考えても、幸せで笑っていられるなら、私は反対しない。
    彩夏と逢衣が、これからもずっと一緒にいるところを信じられる終わりでよかったと思う。

  • 『ののはな通信』に次いで読んでみた女性同士の恋愛小説。
    『ののはな』より密度が濃く生々しい。

    まっすぐで正直で意地っ張りで天才肌の彩夏と真面目で自分を出す事に不器用で人を思いやりすぎる逢衣。
    どちらも女性特有の繊細さを持ち合わせていて、どちらにも共感してしまう。

    綿谷りささんは何冊も読んでいるけれど、女性の内面の表現は本当に細やかでリアリティに富んでいる。

    ラストはすこーし安直な気がしなくもなかったけど、こんな二人もアリかなと思ったし、上下巻を一気に読ませる勢いがある本だった。

  • 綿谷りさが紡ぎ出す同性愛ってどんな作風になるのだろうか?という興味は作品内の清々しく、熱く、時に生々しい表現に引き込まれ、でもしっかりと綿谷りさの出汁は効いており、引き込まれてるままあっという間に読了してしまった。そしてこういう作品を描き出す作家になったんだなぁという感慨深さを感じた。次はどのような作品を描き出すのだろうか。楽しみに待とう。

  • いきおいよく読了!

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞して作家デビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川賞、12年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。ほかの作品に『夢を与える』『勝手にふるえてろ』『ひらいて』『しょうがの味は熱い』『憤死』『大地のゲーム』『手のひらの京』などがある。

「2018年 『100万分の1回のねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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