九つの、物語

  • 集英社 (2008年3月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784087712162

作品紹介・あらすじ

大切な人を、自分の心を取り戻す再生の物語
大学生のゆきなのもとに突然現われた、もういるはずのない兄。だが、奇妙で心地よい二人の生活は、続かなかった。母からの手紙が失われた記憶を蘇らせ、ゆきなの心は壊れていく…。

みんなの感想まとめ

心の再生をテーマにした物語は、大学生のゆきなと亡き兄との不思議な日常を描いています。兄が作る九つの料理と、それに寄り添う九つの純文学が織りなすストーリーは、家族の絆や忘れかけた記憶を呼び覚まします。ゆ...

感想・レビュー・書評

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  • なんて…なんて…なんて素敵なお兄ちゃん。
    妹を見守る温かい愛に滂沱の涙が止まらない。

    文章は、ふとした瞬間を切り取ったような描写が美しくて、
    ひりひりするような臨場感と、その繊細さに思わず何度も息をのんでしまった。

    そして一話ごとに、
    巨匠の文学作品を読んでいる、妹・ゆきな。フレーズが引用され、噛み締めるように味わう姿に、素敵な読書の楽しみ方だなと思った。
    何で九話の構成なんだろう?と思っていたけど、
    第九話に出てくるサリンジャーに『ナイン・ストーリーズ』という短編集があるらしい。

    そしてそして一話ごとに、
    兄は妹のために料理を作る。
    誰かの為に料理をすることが、愛を与えることのように描かれていて、
    作ってもらった料理を食べることが、愛を受け取ることのように描かれていると思った。

    兄の料理で心が満たされたゆきなが、
    兄から料理を教わって、
    今度は大切な人に料理を作ってあげたいと思うこと。
    これから生き続けるゆきなに必要な回復の時間だったんだろうな。

    繊細で愛おしい、そんな作品でした。

  • 九つの物語で成り立つ連作短編集に、幽霊の兄が作る九つの料理と、九つの純文学が登場します。

    置かれた現状といびつな家族の形と忘れていた悲しい記憶にもがく女子大生の「ゆきな」の姿に不覚にも泣いてしまいました(そんな若い年齢でもないのに)。

    でも、恐怖や悲しみや苦しみを抱えて時に誤った選択をしそうになりながらも、幸せな瞬間を噛み締めて季節の巡りとともに歩み続けたゆきなと、お兄ちゃんの大雑把で曖昧なくせに真理をついた人生哲学に救われました。

    料理が美味しそうと話題の本でしたが、九つの料理とともに終焉に向かって過ぎ行く時間の中でゆきなの環境と心に寄り添った九つの純文学も併せて読みたくなりました。

    そして、読み終わってみると、なぜこの物語のタイトルが「九つの物語」ではなく「九つの、物語」であるのかわかった気がしました。

    あと、何故かわからないけど、この物語を読んで、菅原孝標女の「更科日記」を思い出しました。季節の移り変わりの描写や侘しさ、儚さの表現が見事だったからかもしれません。

  • 兄妹の優しい間柄が感じられる話だった。
    お兄さんの作る料理が美味しそう。そして、タイトルの通り9つの純文学が出てくるので、そちらも併せて読みたくなる。

  • 「ふれられるよ今は、君のことを」を読んだあとだけに
    人が消えたり現れたりする状態が重なった。
    もちろん、まったく同じではないけれど。

    幽霊となって妹・ゆきなの前に現れる兄・禎文。
    いっしょに本の話をしたり、出かけたり、おいしいごはんを作ってくれたり。
    橋本さんのごはんは仰々しくなく、頭のなかに自然と浮かんでくる。
    それはときにとても鮮やかだ。

    禎文がゆきなの香月くんとの恋を見守る姿勢もあたたかい。

    ゆきなが合コンへ行ったときの香月くんとの電話のやりとりでは
    「ああ、もう。どうして帰らないのーーー」とじれったくなったけれど
    当人にしてみると帰れなかったりするよね・・・とも思ったのだった。

    人の気持ちはむつかしい。
    距離ができてしまったふたりをみながらつくづく思った。

    謝ってもらえればもとどおりになれるということではないし、
    それが心からのものでも抱いてしまった感情は
    なかなか消えてはくれない。
    どんなときも仲直りは大仕事だ。

    禎文の死の理由がそんなことだとはまったく思わなかった。

    表紙のイラストがステキ。
    やわらかい雰囲気がピッタリ。

  • しんでしまった兄が、ある日突然いつものように家に帰ってきた…という本好きな兄妹の物語。
    兄は妹に料理を作り、妹はそれを美味しく食べる。
    それだけの日常に、愛情が満ち足りていることに気がつく物語。
    淡々としているようで穏やかで優しい雰囲気でした。すきです。

  • 本が大好きな普通の兄妹の物語。
    ただちょっとお兄ちゃんが○○なだけで。なぜお兄ちゃんは…?
    それだけでも、面白いけど、この本を特別に思うのは、本の中でいろんな本と出会えたから。
    小説が全部で九つ。少しだけどゆきながそれを読んでいく。私も一緒に読む。ゆきなが感想を言えばうなずき、ゆきなが本を閉じれば私もほぅっとなる。そんな九つの、物語。
    読み終わった後、タイトルの本全部読もう!ってはりきったけど、結局読めたのは、「待つ」と「山椒魚」だけ。泉鏡花とか、永井荷風とか難しそうで…。でも、頑張ろう。

  • 今自分が生きている世界が、どれほど不安定で優しくてあたたかいものかをそっと囁いてくれる話。いろいろな人の狭間で揺れる「ゆきな」の素直さや不器用さが愛おしくなりました。

  • 果たして兄は、実在したのか?
    そのことを考えるだけでも面白い!

  • お兄ちゃんの愛があふれてる

  • 橋本紡さん2冊目。この人の書く柔らかい文章、好きです。

    お兄ちゃんの、妹に対する大きくて深い愛情のお話。苦しくて苦しくて愛おしい、そんなお話。だと思いました。図書館で何とは無しに借りたけど、良い本に出会えました。

    お話は各章が実在する小説とリンクしているけど、わたしはひとつとして読んだことがなかった。それらを読んでから、再読したいなぁ。特に物語の肝となる山椒魚の改変前後は、どちらも読みたい。

    最後、お兄ちゃんが世界に溶け込んで召された、という表現が、とても素敵でした。よく亡くなった人は「あなたの心の中で生きている」とか「いつもあなたを見守ってくれている」という表現をされることがありますが、わたしはこれが好きではありません。あまりによく使われるからなのか、生きている側の勝手な考え方に感じるのか、理由はよくわかりませんが。
    実際ふとした時に故人を感じるということは、あるのかもしれません。世界に溶け込むという言葉は、とてもわかりやすく、押し付けるでもなく、わたしの中にストンと落ちる表現でした。

    あと、お兄ちゃんの作る料理がどれも美味しそうで、禎文式トマトスパゲティはこの通りに作ったらできるのかな?!とか思ったけどスパイス集めるの大変…いつか、やりたい。

  • 私にとっては読みやすい文章でスラスラ進みました。読んだあと心がほっこりしました。感動しました。登場する本も今度読んでみたいです。今回は図書館でかりましたが,自分で買って読み返したいなと思いました。今度はこの作者の本を読もうかな。

  • 有り得ないことが突然起こって、徐々にその説明がなされてゆく。
    この作家は男性??
    20歳くらいの女の子の心情がよく分かっているなぁ。
    主人公には共感する。
    そして、お兄ちゃん。
    こんな理想的な兄、いるかな?
    登場人物はできすぎているけど、サラッと読めて読書欲も刺激してくれる、素敵な本。
    個人的には、名言も多い。

  • 始まりは、ゆきなとお兄ちゃんの会話に緊張感があり、読んでいる方も緊張してしまった。その緊張感からてっきり近親××系の話かと思ったが、お兄ちゃんが他界していたと知り納得。
    香月くんとの恋愛が静かに進んでいく中で、お兄ちゃんとの過去の思い出が良い具合にでてきて、仲の良い理想的な兄妹だなあと思った。お兄ちゃんが亡くなってしまった理由を知ってしまったゆきなは傷ついたけれど、きっとこのお兄ちゃんとの奇妙な同居のことを幸せな思い出として生きていくのだろうと思う。
    とっても優しい物語でした。

  • 大学生のゆきなのもとに突然、もういるはずのない兄が現れた。料理上手で本を愛し、恋人を次々にとっかえひっかえして自由奔放に振舞う兄に惑わされつつも、ゆきなは日常として受け入れていく。奇妙だが心地良い二人の生活は、しかし永遠には続かなかった。母からの手紙が失われた記憶を蘇らせ、ゆきなの心は壊れていく。

    この物語は九つの章で構成されていて、それぞれの章にひとつずつ文学作品が登場する。本好きの兄が残した蔵書をゆきなが読み、彼女はその書に出来事や感情を重ねていく。私は文学作品はほとんど読まないが、ゆきなが本に引き込まれていくにつれて「読んでみたい」と興味を持った。
    また兄が作る料理も私を惹きつけた。二人が再会した夜に兄が作った懐かしいトマトスパゲティ、ゆきなの彼氏、香月君を家に招いたものの、なぜか香月君と兄で作ることになった小籠包、心を壊して食べ物を受けつけないゆきなに、兄が一口ずつ食べさせたパエリア・・・一品一品に兄がゆきなを大切に思う持ちが込められているようで、温かな料理同様、私の心もほっこり温かくなった。

    いわゆるチャラ男な兄に対して、ゆきなは地味で交友関係も広くない。二人の性格は正反対で、兄妹らしく憎まれ口をたたくこともあるが、互いに相手を深く思いやっていることが伝わってくる。兄が不在になる以前から仲の良い兄妹だった二人は、つかの間の再会であるという予感を抱いていたからこそ、一緒にいられる時間をより大切に刻んでいたのだろう。
    過ぎ去った存在である兄のおかげで、ゆきなは崩壊した家族、過去の出来事に向き合い、未来へ一歩ずつ歩み始める。生と死、家族の崩壊を描いているにもかかわらず、全体が温かな空気に満ちていて、やさしい気持ちになれる物語だった。

  •  作品全体の雰囲気が温かく、優しい物語です。

     何もかもがリアルで温かい話でした。読み終えた後には不思議と優しい気持ちになりました。それでも、何故だか終始切ない気持ちでした。

     橋本さんの作品はこれが読むのが初めてですが、どれもこんな風に温かい話ばかりなのでしょうかね?もっと沢山読んでみたいです。

     とにかく、今のところオススメしたい作品の一つです。とても温かい話なので、悲しい時、イライラしている時に読むと良いかもしれません。

  • 2年前に亡くなったはずの兄が姿を現す。戸惑いつつ、兄のおいしそうな料理を食べ、以前のように暮らし始める主人公。兄が主人公に食事を作るのは、生きてほしいって思いを込めている気がした。兄の蔵書の中から九つの本を読みつつ、いろんな思いを感じる。でもその思いが、読む人それぞれに違うってのは、その通りだなぁと思いました。

  • 2年前に亡くなったはずの兄が主人公の前に現れる、不思議な話。9つの本を読みつつ、話が進んでいく。本は読む人によって、感じる思いが違うって、その通りだと思います。ラストの言葉、
    『失ったものはたくさんある。けれど、得たものもたくさんある。』 それが生きていくってことなんだなぁと思います。

  • 私の兄も逢いに来てくれないだろうか。
    料理を作れとは言わないから。

    兄だけでなく、祖母も。弟も。

    いや、逢いにきてるはずだよな。
    気づかないだけで。

    ほら、こうして時々思い出してる瞬間は
    そばにいるんだろうな。

  • 読み終えたとき、大きなため息が漏れた。
    「生きている」
    なんだかわからないけれど、ただ、そう感じた。

    生きているが故の、
    心の揺らぎが、
    迷う弱さが、
    間違える愚かさが、
    そして、それを赦し包みこむことができるのもまた「生きているということなのだよ」と言われたような、そんな気がした。

    再生の物語。
    うん。
    これは、良作だ。

  • 不思議な話だった。現実的な物語かと思いきや、幽霊が普通に見える生活とは…。ラストは想像してた通りだったけど主人公と同じ気持ちになって淋しいとか思ってしまった。この作家の物語にはよく料理上手な男性が登場する。作家も料理上手なのでしょうね(笑)

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