廃墟建築士

著者 : 三崎亜記

• 集英社 (2009年1月26日発売)

作品紹介・あらすじ

ありえないことなど、ありえない。不思議なことも不思議じゃなくなる、この日常世界へようこそ。七階を撤去する。廃墟を新築する。図書館に野性がある。蔵に意識がある。ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件たち。現実と非現実が同居する4編収録の最新作。

感想・レビュー・書評

[ちゃーはんさんの感想 · 2022年11月29日]

夢の中の話ような不思議な短編集だった。現実ではありえないような設定なのに、こんなことあるんじゃないか、突然起こり得るのでは？と思わせられるリアルな設定と描写が三崎さんの作品にはあっておもしろい。
本好きとしては、「図書館」は胸踊るものがあり好きな話だ。

[さしちゃんさんの感想 · 2022年9月30日]

図書館は面白く読めたんだけど…
私には合わなかったようで。途中で断念してしまった

[さむさんの感想 · 2017年8月11日]

建築物、「タテモノ」は人によってつくられ、人のためにあるものだと思っていました。
建築物は人工物。
…じゃなかったとしたら。

この作品は、神でも妖怪でもないものがそこにいました。
命のないもの、だけどそこに存在しているものを描かれています。
おそらく昔の人たちはそういったものを神や妖怪と名付けてきたのでしょう。
神や妖怪は現代にはいないように語られていますが、この作品は現代における神や妖怪を描いているのだと思います。

昔話でのそれらは恐ろしくて理解できない、それでいてどこか人間味があります。
この作品でも、そこは同じです。

不確かで輪郭がなく、捉えきれない。
惑わされ、何かを感じざるを得ない。
なのにそっと寄り添い思いを馳せてしまう。
そんな作品です。

[元TSUTAYAの書店員さんの感想 · 2012年3月27日]

４つからなる短編集。

[七階闘争]
とある街で起きた殺人、飛び降り自殺、火災、孤独死と何の関連性もない事件に一つだけ共通点があった。それは、全ては“七階"で起こったということ。
その後、街は「七階を撤去する」ことになり主人公・森崎のところにも市役所から転居するよう言われるのだが、取引先の気になる女性・並川も同じ街の七階にすんでいることを思い出す。
共通の話題を見つけた森崎は彼女に話しかけるが、彼女から七階撤去反対の集会に誘われる。

最初に笑ったのは市議会質問で七階で発生した事件に関する内容を発言・回答後の次議題が「覆面着用の自由化に伴う支援策について」だったこと。
この作品発表後「鼓笛隊の襲来」という短編集を出していますが、そこに覆面に関するストーリーがあるので「これってもしかして〜」みたいな笑いがでてしまいました。

「イルムーシャの七階」とか、七階の誕生秘話とか、世界最初の七階は地面の上に作られた…設定が面白いよ。何気に主人公も普通なこといってますが、それがこの世界ではシュールな発言に変わってるので、また面白く感じた。

[廃墟建築士]
男性ナレーター(田口トモロヲ)「人の不完全さを許容し、欠落を充たす、精神的な面で都市機能を補完する建築物を作ることに人生を賭けた男の話である。」

♪〜(「地上の星」イントロ)

女性ナレーター「プロジェクトＸ」


♪風の中のすばる〜(「地上の星」/中島みゆき)

みたいな話です。
いい話のようにみえるんだけど、やっぱり設定がずれてるからおかしくみえちゃう。

[図書館]
「バスジャック」に収録されていた[動物園]の続編みたいな話です。読む前に“続編がある"とレビューがあったので、読んでたらコレだったな。

[蔵守]
最初は読んでて「ん？」という感じだった。途中で、蔵守の存在意義というのかこの話の世界観が分かってきて、最後は感動路線チックになってます。映像化されたら泣くな、俺。

[けんさんさんの感想 · 2021年3月10日]

一言で言うと、『不思議な世界』
もう少し補足すると、『現実と非現実の境目のない融合』
『７階』『廃墟』『図書館』『蔵』を主人公（主題）とした４編の短編集。クセになりそう！

[suさんの感想 · 2021年1月23日]

タイトルから存分に三崎ワールドを感じさせてくれ、読む前から楽しい。廃墟を建築するという斬新な発想だけでなく、廃墟についての緻密な設定やルールも考えられている。最近は廃墟が観光スポットになったりしているが、そんな現実ではありえない世界観にしっかり仕上げられている。

[キキさんの感想 · 2020年12月9日]

前の作品に出てきた気に入った人が出てきて嬉しかった。

[isutabiさんの感想 · 2020年7月5日]

・先の展開を読みにくくワクワク感がある短編集。設定はむしろギャグで笑えるかもしれないのだが展開はけっこうしみじみしている。
・ぶっ飛んだ設定だが他のことに置き換えてみると普遍でもあると言えないでもない。あるいは現実の世界で大真面目でやってることのバカバカしさが見えたり。

・「七階闘争」は、マンション七階での事件が続発し七階が撤去されることになったって！？
・廃墟が（たぶん癒しとして）都市の必需品であるとされる世界でのハナから廃墟として建てられる建築を専門とする男の話が表題作「廃墟建築士」。わざと作ったんでは廃墟と言えないような気もするが数十年後数百年後、真に廃墟となることを目指して。ぼくらの世界では廃墟化するまえに取り壊されることが多く気軽には廃墟に出会えない。運良く残ったり、建てたはいいが見込み違いで使われないまま廃墟化するものはある。なんとなく落ち着くものではあり、廃ボーリング場や廃ホテルなんかは隠れ家によさそう。SFやRPGなんかではお馴染みで戦闘の現場になったり基地にしたり住み着いたりするが、人には廃墟を好む何かがあるのだろう。こういう建築士が実際にいても楽しそう。
・「図書館」は、夜間開館するために図書館を「調教」する仕事に就いている主人公。
・「蔵守」は、何かを守る蔵と、蔵を守ろうとする蔵守の話。これだけは多少先の展開を想像はできたけどそれにしてもヘンな感覚。

[うたまきさんの感想 · 2019年9月21日]

失われた町に続いての本。
いつもどんな非日常が日常のものとして書かれているのかをみるのがたのしみ。
当たり前のように書いてあるからファンタジーのようにも思えず、驚きがあって面白い。

今回の話の中では廃墟建築士が面白かった。
長く時間をかけて読んだから詳細覚えてないけど、

世間からは理解されない廃墟を建築し続ける、
壊れてこそ完成する
という概念が面白かった。

ほかの作品も一通りよんでみたい。

[彩海本さんの感想 · 2019年9月4日]

建築の勉強中で、つい気になって借りた本。

この人、毎回だけど世界館がすごい。絶対ありえない世界を創造するその感覚がすごいし、そのちょっとヅレテしまった世界に読者を誘う描き方がものすごい。ほんと。

今回なんて、7階で事件起きすぎだから、うちの地区の7階消しますよーっていう政府の意向により、7階消滅。

その時に、7階を消すなーっていう、7階に思いがある人たち有志が集まって、7階残す運動が始まったり。

7階が一日にして綺麗に消えるとかね。なんか、ファンタジーなんだけどリアル。リアルなんだけどありえない、そんな世界観から抜け出せなくなりそう。

廃墟つくる建築家とかね。

もう、設定が独特なんだけど、読んでるうちに普通かな。とか思い始める自分も怖い。そんなとなりの次元で起こりそうなそんな本です。

著者プロフィール

1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞しビュー。同作は18万部のヒットとなり直木賞にもノミネートされた。著書に『廃墟建築士』『刻まれない明日』『コロヨシ!!』『決起！　コロヨシ!!２』など。

「2021年 『博多さっぱそうらん記』 で使われていた紹介文から引用しています。」