何もかも憂鬱な夜に

  • 集英社 (2009年3月5日発売)
3.39
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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784087712872

作品紹介・あらすじ

芥川賞作家が死刑制度を描いた長編小説
刑務官の「僕」は、夫婦二人を刺殺した二十歳の死刑囚・山井を担当していた――。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。

みんなの感想まとめ

重いテーマを扱いながらも、一気に引き込まれる作品である。死刑制度に関する深い考察が、刑務官の視点を通じて描かれ、読者にさまざまな角度からの思索を促す。主人公が担当する死刑囚との関わりを通じて、自らの過...

感想・レビュー・書評

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  • 難しい本やった。
    死刑制度については他の本も読んだことあるけど、この本ほど考えさせられたものはない。
    刑務官の視点からの死刑制度。ものっすごく考えることが多かった。
    一概に、犯人が悪いのではない、というのともかなり考えさせられた。
    ほんまに、難しい本やった。

  • 重厚な話だ…。130ページくらいなのですぐに読み終わるんだけど、色んなことを提示してくる。純文学だ…。すごすぎ。
    刑務官の主人公がずっと自分の中にバグのようなものを感じ続けていて、それが表出したとき自分はこの柵の向こう側に行くんじゃないか…という恐れと毎日戦う話だと思いました。
    でも、柵の向こう側に行くことを恐れるのは人に大切にしてもらった温かさを知っているからだと明かされる後半が見事。

    前半に上司が死刑制度が定量的でないことを批判するシーンがあって、ここがしんどくて何度も休憩しながら読んだ。「刑務官は殺した者と殺されたものの間に否応なく入ること」のくだりが本当に…人を絞首台に力ずくで連行する仕事が世の中にはある。
    死刑って「死をもって償う」なのか「生きているべきではない」なのかがごちゃごちゃになってるんじゃないか。

    途中「こころ」のオマージュっぽい絶望的な手紙が挟まるんだけど、最後には希望の見える手紙が書かれて良い対比になっていた。希望の持てる結末にしたのは作者の現実への祈りや抵抗だと思う。

  • タイトルの通り、寝る前に読了したおかげで本当に"何もかも憂鬱な夜"になってしまった。

    施設出身の主人公が、刑務官として夫婦を殺害した犯人を担当していくなかで自分の過去や犯人と対峙していく物語。

    ずっしりと重い。
    そして、現実にもこういうことってあるんだろうな、とはっきり認識させられる。
    暗くて読んでいてつらいので星は3だけど、構成や文章力はさすがの一言。

  • 重かったーそして読みにくかったー
    死刑には興味があるので、その点は別に重くはなかったけど、時系列が変わっていくので少々分かりにくかった。

    山井と主人公の話をもう少し深掘りして欲しかった。

  • 重いテーマだけれど一気に読めた。物事をひとつの角度から捉えることはできないと思うし、考えさせられるけれど、ひっかかるところがあったのも事実。自分の中に眠っている感情や心の奥底にあるものと対峙できるようになりたいと思う。

  • 138ページと割と短めの長編で半日で読みきってしまった。ただ単に途中で止めることが出来なかった。帯の本文紹介では死刑制度に対する問題提起が主旨の様に書かれているが、それはあくまでも伏線である。施設で育った主人公 は刑務官をしているが、その生い立ちの精か否か、実際の自分の存在がもっと違う何かではないのか、今の自分はあくまでも表面的であり、いつか暴発しかねない内面との壁に苦悩している。
    思春期時代の悶々と苛々した感情を処理できず自殺した友人や殺人を犯したものを目の前にした主人公が精神のコントロールできなくなり下へ落ちていく様子を随所で水に例えて表現しているが、これがくっきりと頭の中で想像させることができ、臨場感を沸き立たせている。

    死刑執行に携わった主任刑務官がその制度の曖昧さ、マスコミが騒いだらその煽りを受けての判決や年齢のラインについて語る場面では、やはり制度の有無について果てしなく考えさせられる。漫画「モリのアサガオ」を読んだ時と同じ感覚が甦り、言い様のない虚無感が襲ってくる。
    服役囚の佐久間が言った「倫理や道徳から遠く離れれば、この世界は、まったく違ったものとして、人間の前に現れるんです。」この言葉に背筋が寒くなった。これに快感を覚えるようになった時が犯罪者との境界線を越えるときなのだろうか。

  • 死刑。
    これはずっとずっと考えても答えが出ない問題で。でもなんとなく死刑廃止論信者だった私の曖昧な考えに、この本は新しいヒントをくれた気がする!
    中村さんの多くの本のテーマとなっている、命。命は尊いものだから、誰の手によっても奪うことはできないから、死刑は廃止されるべきだというのは、もちろん道理にかなってて、その通りなんだけど、中村さんはこう書いている。
    命はアメーバだと。ニンゲンなんかが誕生する以前から、途切れることなくずっと続いてきた。その過程の何か一つでも存在しなかったら今はない、今に勝る過去はない、と。
    死とは、これまでの全ての命とこれからの新しい命を全て奪うものなんだってことを中村さんは言いたかったのかなと私なりに解釈しました。
    だから死刑は良くない。さらに、こうも思う。
    私は犯罪者になったことはないけど、誰しも経験したことがあるだろう、眠れないほど辛い何もかも憂鬱な夜にただ死んでしまいたいと願うのではなく、罪を犯したものは私たちがそうやって感じた何万倍もの苦痛を、考えて考えて考え抜くべきだ。
    答えはきっと出ないけど、罪の償い方とは死ぬことではない、自分の犯した罪を後悔し、もう生きていけないと思うほど考え抜くことだと思う。残酷かもしれないけど、中村さんも言うように、犯罪者の命とその罪を犯した者の人間性は違うから。恨むべきは命ではなく、その個の中身そのものなのではないかと思った。

    まだまだ死刑に対する考えはまとまらないし、どれだけ考えても足りないと思うけど、新しい視点を与えてくれたこの本を読んで本当によかった>_<中村さんの作品は、本当にいろんな人に読んでほしいものばかりです。

  • 孤児として施設で育ち、屈折した思いと闘いながら刑務官として働く主人公。
    そしておそらく、主人公自身もお互いに無意識のうちに自分を重ね合わせている、死刑判決を受けた山井。
    死刑制度について語る上司。
    仮出所中に犯罪を犯す佐久間。

    短いストーリーの中に、人間の深淵に関わるテーマがちりばめられていて著者の意欲が見えるが、死刑制度については私もちょっと考えるところがあるだけに、やや散漫に見えた。
    ひとつひとつはとても重く深いはずで、主人公の屈折もこのままではちょっと説得力に欠ける。最後も突然主人公が殻を突き破ったようで、若干唐突感があり残念。

    ただ、著者も意識したという湿った感じ、ねっとりしたじめじめした感じは全編を通して漂い続け、読み手を絡め取る。
    また、死刑制度について語る上司の言葉は、この制度のもつ本質的な問題点を突いていて非常に説得力があり、この上司の言葉が同時に著者の死刑に対する考えであるといいなと個人的には思う。

    とても惹きつけられる作品ではある。
    もっと描き込んで欲しかったという残念な思いが残る。

  • タイトル通り、明るい話ではないのですが、いい本を読ませてもらったなぁと、不思議と心地好くなりました。
    自分の抱える暗く澱んだ、公言したくないモノを、自分じゃない誰かも…もしかしたらたくさんの人も覚えがあるのかもしれないという、安心感。私は死の衝動というものを外に向けることは全くないしこれからもないと思うけど、純全なる善意というものにとても憧れた。(ここは『人間失格』にも通ずる何かがある)
    真下のノートに、少しでも共感を覚えない人間になりたかった。そうだよね。そうだよ。フルバの透君みたいになりたかったなぁ。
    13階段を読んで以来、死刑という言葉をニュース等で聞く度、刑務官のことを含めちらと考えるようになった。普通の人間に、人間を殺すということは多大なストレスがかかるはずだと。個人的に死刑制度には賛成派ですが、執行する側の気持ちは?とか、本当にそれが最適な刑に成りうるのか?とか。
    結局のところ、本書に出てくるように、生殺与奪の権を本来人が持つべきではないから、矛盾がどうしても出てくるようになっているのだろう。…割り切れないように、そしてだからこそ、誰かが考えつづける問題であるべきなのだろう。
    年若い人間が犯すという理由で刑が軽くなるのは納得できないと思う。だけど、与えられた時間が少なく、得るものを得るための時間が充分に無いまま死刑になるのは、極刑であるはずの死刑の意味も軽くなってしまうのではないかな。
    …刑は結局の所、罪への罰でなく、善良な市民への戒めや、報復の代行にならざるを得ない気もする。…難しい問題。

    中村さん、『掏摸』という本が気になっていたので見覚えはあったのですが、初読作家さんだったのです。『第二図書係補佐』で紹介され、読む機会を作れました。又吉さんに感謝。

  • 殺人衝動や破壊衝動を持つ人たちの気持ちが生々しかった。展開は思ったより普通で、テーマの重さの割にサラッと読めすぎて物足りなかった。

  • タイトルは好きだけど、内容は・・・
    あまりにもエンタメ性が排除され過ぎてる気がして、入り込めなかった。幼少期を施設で育って、というのもこの作者では定番だし、死刑制度を語るくらいが目新しい部分かなという印象。

    「考えることで、人間はどのようにでもなることができる。世界に何の意味もなかったとしても、人間はその意味を、自分でつくりだすことができる。」


    2015.8.26

  • 全編を通して「水」を感じた。

    生命の起源と水は深く繋がっている。「アメーバから人間まで、生き物はつながっていて、その長い線がどこかで途切れていたら今のお前はいないんだ。」

    というセリフが印象的だった。

    話しとしては暗く重いが、命の尊さを考えさせられる。

    「人は何のために存在するのか」。目先の業務や生活に追われ、考える時間が減ってはきたが、このような本を読むと考えさせられる。

  • 又吉さんの解説が、めちゃめちゃ的を得てる。
    「暗そうだな…」と思う方は、まず解説から読んでみるのもアリかと思います。

    太宰治や夏目漱石が過去あがき苦しんだように、中村文則さんもまた命を削って、徹底的に死について考え抜いたのが手に取るように分かる。
    それは読み進めたくなくなる程陰鬱で、執拗で、
    特に中盤、自殺した真下から主人公に当てた手紙は、沈んだ時に読んだなら、ちょっと気でも触れちゃうんじゃないか、それくらいのインパクト。
    台詞の必要以上に冗長で、頼りない登場人物に引きずり込まれ、結構、落ちるところまで落ちます笑

    けれど後半に導き出された中村さんなりのメッセージがとにかく秀逸で、解説にもあるように、この部分が現代における「生きる意味」の答えになるでしょう。
    (何度も言いますが、ホント又吉さんの解説は素晴らしいです。)
    途中で落ちてる分、最後に来る感動が本当に本当に大きくて、なんやろ、めっちゃ良いライブを観たあとの余韻のように、しばらく胸の奥の方でワォンワォン響きました。

    あと文章が恐ろしく上手い。
    吉本ばななや江國香織のような一線を画した情景ではないけれど、正しい日本語でスッスッと表現されてる点も好きです。
    万人に薦めたい本ではないけれど、よくあるセラピー本を何冊も読むヒマにあるのなら、ガッツリ本作を読んだ方がよいと思います。

  • この小説のキモは、養護施設の施設長が、自殺を図ろうとした主人公に言う言葉であろう。『現在というのは、どんな過去にも勝る。生命の始まりからお前を繋ぐ無数の生き物の連続は、全て、今のお前のためだけにあったのだから』
    死刑囚でもかけがえのない存在という発見がある。

  • 人が人を裁くとは何なのか。
    ここで描かれる刑の執行や罪を犯した者への接した方はネット上で散見されるようなセンセーショナルなものではない。
    淡々とし、絶望も希望も何もない。本人がやらかした事=罪に対して罰があるのだからそれでいいという人もいるかもしれない。
    死刑とは人が人を満足させるための娯楽ではない。村上龍はかつて青春の青さを限りなく透明に近いブルーと表現したが、ここで描かれるのは全てが灰色に染まった人間の日々である。

  • youtuberのけんごさんという方のショート動画を見て読破。彼がいうには絶望感がすざましいらしいが、いつも通りの中村さんな気がする。3日も寝込まなかったし。そんなことはさておき話は18歳の死刑囚とその刑務官との対話、刑務官の過去のお話。冒頭のインコに生命を感じる幼少期の主人公の表現が美しく引き込まれる。その後は丁度今のような雨の日に読むのがぴったりな話になっていく。彼の話を読むと絶望感と安心感は紙一重なのではないかと感じる。「いつ死ぬかわからない恐怖」と「もう誰も傷つけなくていい安心感」。それをまざまざと見せられた。インターネットで犯罪者はみんな死刑でいいと宣っているドーパミン中毒者には良い本だと思う。是非読んでほしい。

  • 3

  • 初めての作者だったからか、最初は文体や表現に慣れなかった。
    読み進めるうちに、施設の中でのある人との出会いによって、生きる力を得た主人公の死刑囚との関わりの物語なのだと理解した。
    死刑囚に対して、「命は使うもんだ」と言った主人公の言葉には、痛みと悲しみを人並みをはるかに超えた経験者にしか言うことのできない重みがあると感じた。

  • 死刑について考えさせられた本。
    重い内容。だけどすらすら読めた

    キーワード
    死刑
    刑務官
    少年犯罪

  • こちらで紹介されていて、読んでみようと思った本です。

    中村文則氏の作品を読むのはこれが初めて。『土の中の子供』を読もうか迷いながら、自分が受け止められない気がして、目をつぶって来ました。



    施設育ちの「僕」が刑務官として務めを果たそうとする中での葛藤、「僕」が怯えている自分の内面、関わった人たちの思い出が描かれながら、死刑制度、命、人間の持つ抑え難い暴力性や欲望について考えざるを得ない…。



    思春期の頃、中学から親元を離れて過ごした私も、自殺願望や、眼差しだけで人を殺せたら、と考えた事もあったと

    振り返りました。(少年院に居たわけではありません。悪しからず。)



    そして、「今ここにある命は、どんな過去や環境とも関係無く、奇跡だと言う事。現在はどんな過去にも勝る、気の遠くなる様な命の連鎖は、今ここに生きているお前のためだけにあった、と考えて良い。」と「僕」に語った施設長の言葉が、深く胸をうちました。



    上手く言葉になりませんが、

    罪を犯した人間と、その人間性とは別に、命と言う光の塊の様なものがある、そう言う事を、宗教や陳腐なヒューマニズムで無く、こんな風に書くのか、と思いました。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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