- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087712872
作品紹介・あらすじ
なぜ控訴しない?-施設で育った過去を持つ「僕」は、刑務官として、夫婦を刺殺した二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している-。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
感想・レビュー・書評
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難しい本やった。
死刑制度については他の本も読んだことあるけど、この本ほど考えさせられたものはない。
刑務官の視点からの死刑制度。ものっすごく考えることが多かった。
一概に、犯人が悪いのではない、というのともかなり考えさせられた。
ほんまに、難しい本やった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルの通り、寝る前に読了したおかげで本当に"何もかも憂鬱な夜"になってしまった。
施設出身の主人公が、刑務官として夫婦を殺害した犯人を担当していくなかで自分の過去や犯人と対峙していく物語。
ずっしりと重い。
そして、現実にもこういうことってあるんだろうな、とはっきり認識させられる。
暗くて読んでいてつらいので星は3だけど、構成や文章力はさすがの一言。 -
孤児として施設で育ち、屈折した思いと闘いながら刑務官として働く主人公。
そしておそらく、主人公自身もお互いに無意識のうちに自分を重ね合わせている、死刑判決を受けた山井。
死刑制度について語る上司。
仮出所中に犯罪を犯す佐久間。
短いストーリーの中に、人間の深淵に関わるテーマがちりばめられていて著者の意欲が見えるが、死刑制度については私もちょっと考えるところがあるだけに、やや散漫に見えた。
ひとつひとつはとても重く深いはずで、主人公の屈折もこのままではちょっと説得力に欠ける。最後も突然主人公が殻を突き破ったようで、若干唐突感があり残念。
ただ、著者も意識したという湿った感じ、ねっとりしたじめじめした感じは全編を通して漂い続け、読み手を絡め取る。
また、死刑制度について語る上司の言葉は、この制度のもつ本質的な問題点を突いていて非常に説得力があり、この上司の言葉が同時に著者の死刑に対する考えであるといいなと個人的には思う。
とても惹きつけられる作品ではある。
もっと描き込んで欲しかったという残念な思いが残る。 -
タイトル通り、明るい話ではないのですが、いい本を読ませてもらったなぁと、不思議と心地好くなりました。
自分の抱える暗く澱んだ、公言したくないモノを、自分じゃない誰かも…もしかしたらたくさんの人も覚えがあるのかもしれないという、安心感。私は死の衝動というものを外に向けることは全くないしこれからもないと思うけど、純全なる善意というものにとても憧れた。(ここは『人間失格』にも通ずる何かがある)
真下のノートに、少しでも共感を覚えない人間になりたかった。そうだよね。そうだよ。フルバの透君みたいになりたかったなぁ。
13階段を読んで以来、死刑という言葉をニュース等で聞く度、刑務官のことを含めちらと考えるようになった。普通の人間に、人間を殺すということは多大なストレスがかかるはずだと。個人的に死刑制度には賛成派ですが、執行する側の気持ちは?とか、本当にそれが最適な刑に成りうるのか?とか。
結局のところ、本書に出てくるように、生殺与奪の権を本来人が持つべきではないから、矛盾がどうしても出てくるようになっているのだろう。…割り切れないように、そしてだからこそ、誰かが考えつづける問題であるべきなのだろう。
年若い人間が犯すという理由で刑が軽くなるのは納得できないと思う。だけど、与えられた時間が少なく、得るものを得るための時間が充分に無いまま死刑になるのは、極刑であるはずの死刑の意味も軽くなってしまうのではないかな。
…刑は結局の所、罪への罰でなく、善良な市民への戒めや、報復の代行にならざるを得ない気もする。…難しい問題。
中村さん、『掏摸』という本が気になっていたので見覚えはあったのですが、初読作家さんだったのです。『第二図書係補佐』で紹介され、読む機会を作れました。又吉さんに感謝。 -
殺人衝動や破壊衝動を持つ人たちの気持ちが生々しかった。展開は思ったより普通で、テーマの重さの割にサラッと読めすぎて物足りなかった。
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タイトルは好きだけど、内容は・・・
あまりにもエンタメ性が排除され過ぎてる気がして、入り込めなかった。幼少期を施設で育って、というのもこの作者では定番だし、死刑制度を語るくらいが目新しい部分かなという印象。
「考えることで、人間はどのようにでもなることができる。世界に何の意味もなかったとしても、人間はその意味を、自分でつくりだすことができる。」
2015.8.26 -
重いテーマだけれど一気に読めた。物事をひとつの角度から捉えることはできないと思うし、考えさせられるけれど、ひっかかるところがあったのも事実。自分の中に眠っている感情や心の奥底にあるものと対峙できるようになりたいと思う。