ここに消えない会話がある

  • 集英社
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レビュー : 116
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713053

感想・レビュー・書評

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  • 夕日テレビ班の6人広田、岸、佐々木、魚住、別所、津留崎の
    なにげない日常「ここに消えない会話がある」
    この冒頭がたまらなく好き。


    夾竹桃の花が咲き、世界は甘く。
    電車も光の中を走っている。
    足を不自然に曲げて、手の爪は伸び過ぎ。
    まばたきで残像が残るほど明るい。
    長袖をやめようか。
    ~中略~
    夏の気配がアスファルトから立ち上ってくる。
    目眩。意識すれば海風。



    あと、パン工場で働く鈴木と山田の日常の
    「ああ、懐かしの肌色クレヨン」の二編。


    文章が相変わらずにきれいで過激。
    詩のように短い言葉なのに、情景がサーと浮かんでくるような
    クリアな文章が好きだわ。


    そして過激な方はというと・・・
    「人々の小さな営みは蛆虫のように温かい。」だ。

    ・・・・・・・・・おぉ~。ナオコーラ節花火炸裂だ。


    「人のセックスを笑うな」の「夕日がマグロ刺身のよう」も
    キョーレツだったけど
    「ここに消えない会話がある」の「蛆虫のように温かい」も
    なかなかのキョーレツっぷりだ。


    でもナオコーラさんの作品って、嫌いとか苦手と思えずに
    さらさら~と読んでしまう。
    恋愛感情を持たなくてもいい男女関係っていいな・・・
    (こんな職場いいな・・・)と感じる。
    不思議な読み心地だ。

    きれいとキョーレツのバランスが絶妙というか・・・「おっ?!」と思うけど
    違和感なく楽しめるから不思議だ。

    「ああ、懐かしの肌色クレヨン」の「肌色」が
    なぜか「郷愁」を誘う。
    私の中でも「ペールオレンジ」ではなく「肌色」なのだ。
    うん、やっぱり今でも「肌色」という言葉が好き。

  • 「小説すばる 2009.4」

    やはり同年代の作家さんだけあって、共感するフレーズがあちらこちらに鏤められている作品であった。

    彼女の作品は、平凡な日常にある種のスパイスを与えてくれる。
    それはストーリーの中でもあり、私自身の生活の中でもある。

    【付箋メモ】
    生きるのが面倒なのは、不幸だからではなく、生半可な幸せと堪えられそうな不幸が交互に訪れるからではないだろうか。(p36)

    世間の規範から外れた幸せが欲しい。
    ひとりだけで、こっそり笑うような。(p38)

    誤解が起きたら、言いわけはしないことだ。面倒だからだ。人の噂話はしない。自分の噂は放っとく。否定するのもばかばかしいことだ。
    なんでもかんでも得するように努力することが人生の近道ということはない。得するように考えることは、神経を擦り減らすことになる。(p46)

    二人で黙るのは楽しい。喋ると「伝え合う」ような気分になってしまうけれど、黙ると「共有」のような気持ちになる。(p68)

    痛みというものは消えることがないが、薄らぐという性質を持っている。(p69)

    先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人間を成熟に向かわせるものではない。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。(p69)

  • いままでに出会ったことのない、
    文体というか。
    不可思議ー!

    拙い、わけじゃないんだけど。
    極力、文字数を減らして
    シンプルにしてる感じ。

    ハマります。
    ナオコーラワールド。

  • 今まで読んだ山崎ナオコーラ作品でベストスリーに入る。(一番好きな作品のタイトル忘れてしまった。文学界で読んだんですが)

    会話の暖かみとぬけたようなリアルな雰囲気。

    味気なくも感じる物語の世界で、たまにキツイやりとりや文章が出てきてぐっと来てしまう。

    同時収録の「ああ懐かしの肌色クレヨン」もよかった。
    肌色のクレヨンが存在した時代も私は好きだとかなかなか言えない言葉だと思う。

  • ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ

  • p.83
    「他愛のない遣り取りが ビルの十階で泡のように生まれ続ける

    会話の泡は球体のまま冷凍保存されて

    氷河の中のマンモスのように一万年後に伝わる」

    新聞のテレビ欄の配信会社で働く、同じデスク6人の物語。事件も起きないし、すれ違いもない平和な仕事風景の続く日常。

    感傷の先行しない、感情の浮き沈みのない、的確な言葉で、日常の想いを読み手を意識せずに書くのって難しいと思う、けれどこの作家さんはそれが出来ているんだと思う。「イタくない」叙情。
    この会話の距離感と視点の柔らかさが、読んでいて心地良かった。

    会話で、思想の違いでなく、自然な言葉で、それぞれの性格が書き分けられているのが見事。

  • 「ここに消えない会話がある」:主人公はおそらくアキバ系の広田。準主人公は岸。1ページ目に人物紹介があり、そこから誰が主人公かを想像するのが面白かった。
    「ああ、懐かしの肌色クレヨン」:今、肌色のクレヨンってないんだ!初めて知った。
    何も生まれず、何も壊れない。「日常を切り取っただけ」を詩的に各作。

  • 読みやすい。生きにくさが淡々と描かれていて共感しやすい。

  • 何も成就しない。劇的な事は何も起こらない。
    でも。
    なんだろう、「捨てがたい」のだ。

    「同僚」って不思議だ。家族よりも断然会話をする。
    仲が良い悪い、好き嫌いさえ超えて。
    好きだった人さえ出てこないのに何年も前の同僚が夢に出てきたりする。
    いつも通りに何か喋りながら作業をこなす。

    「友達」にはなれないことは何となく分かる。
    でもこの人と仕事をしている時間が好きだと思う。

    そんな日常がこの本の中にある。

    2014年不忍一箱古本市にて売却

  • 表題作と「ああ、懐かしの肌色クレヨン」の2篇収録。表題作はテレビのラテ欄を作る人々の会社生活を書いたもの。働きながら小説を書いてる女の子が出てくるけど、この子は作者の投影かなぁ?なんて思ったり。ところどころいい言葉があった。もう1篇については、肌色なるクレヨンがもうこの世に存在しないということにワタクシ軽くショック。確かに肌の色は千差万別だから統一できないにしても…。そして、装丁の写真が食パンだと感想を書きながら気づいたよ…。2012/057

著者プロフィール

1978年福岡県生まれ。2004年『人のセックスを笑うな』で文藝賞を受賞し、デビュー。小説に『ニキの屈辱』『美しい距離』『趣味で腹いっぱい』、エッセイに『母ではなくて、親になる』など。

「2019年 『リボンの男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山崎ナオコーラの作品

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