熱い風

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 75
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713190

作品紹介・あらすじ

彼は異国の地で、薬と酒を飲みすぎて死んだ。…たったそれだけの、新聞の三面記事に数行で表現される事実だけが真実なのであり、それ以外のことは何も詮索すべきではないのかもしれなかった。だが私は、何としてでも、彼の中にあった闇を根こそぎ白日のもとにさらけ出してみたかった。彼が本当に見ていたものを見て、彼が感じていたものを感じてみたかった。そうした、渇きにも似た強烈な思いが私の中にはびこり、だからこそ私は今、この街にやって来たのである。-幸福な日々の中に突然訪れた婚約者の死の知らせ。一年後、死に至る彼の足跡を追って、女はヨーロッパへ向かう。パリ、ブリュッセル、そしてアムステルダムへ。風の中に消えた彼と再び出会うための旅の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 唐突に死んだ男。彼に愛されていたと信じたい女。
    男の足跡をたどって旅をするうち、本当は愛されてなどいなかったのではないのかという思いが彼女の胸を埋めていく。

    設定はいい。
    そういうことってありえるよなぁ、と思う。携帯ひとつで個人と個人がつながる現代ならば、こんな唐突な別れは起こりうる話。愛する人の死を知らずに、無為に時を過ごしてしまう可能性も。

    だけど、次々に彼女の胸を押しつぶしていく不信感が、彼の友人の話によってすべてすっきりと晴らされるというラストは、それまでの描写がうまいだけに、ちょっと納得できない。
    なぁんだ、そうだったんだ~♪ で終わる話なら、これほどまでに長い「振り」は必要なかった。
    友人の登場のしかたも、あまりにも都合がよすぎる。彼の言葉に嘘はないの? なんて、ひねくれた私は疑ってしまう。

    辛辣な言い方をさせてもらえるなら、ヨーロッパ、それも素人の行かないレアなヨーロッパを旅してみたくなった作者が、出版社の経費で「取材旅行」し、それをもとに書いたような作品。
    悲しみにくれているはずの主人公なら目に入らないような「旅の描写」がとても多い。(こんな情報あなたご存知だったかしら?みたいなドヤ顔の)
    小池先生、ヨーロッパは楽しかったですか? ……なんて言ったら怒られちゃうんだろうなぁ。
    だけど、私にとってはそれ以上でも以下でもない作品だった。小池ファンの皆さん、ごめんなさい。

  • 狂おしいほどに愛した男が、異国の地で死んだ。
    そのあまりにも唐突な死に現実感の持てないまま、残された美樹はパリからアムステルダムまで旅をする。

    遼平の事を思い出し、彼を偲んで旅をするはずが、「自分は彼に愛されていたんだろうか?」という疑問を抱えることになる。

    口ではどんなに「愛している」と言われても、婚約しても、体を重ねても、それが口先だけのことだったら。考えただけで気が遠くなりそうです。

    でも最後、遼平の店のあった近所の「プリンス」というカフェで、ヤンという青年と出会い、遼平が心底自分を愛していてくれたのだと知る。

    遼平の死が納得できなかったんじゃない、愛されていたという確かな証拠が欲しかったんだろう。

    美樹はきっと、この思い出を抱えてこれから生きていける。

  •  彼の中には、いつも、虚無の暗闇が潜んでいた。目をこらしていないとわからないほどの小さな闇だが、それがどこまで深く彼自身を支配しているのか、わからなかった。
     私はその虚無の中に、ぎゅうぎゅうに、いやというほど我が身を詰め込み、私自身で彼を埋めつくし、以後、彼が一切の孤独やさびしさを覗きこまずにいられるようにしてやりたい、と願った。そんなことができるわけもないのに、そうできるなら、何を捨てても怖くないと思った。
     そんなことばかり考えていたせいか、そのうち彼と性を交わすたびに、私は世間一般の男と女とは逆のことを感じるようになった。彼の性器が私を埋めるのではない、私の性器が彼を埋めている、という感覚である。
     彼の中の欠落している部分を私が埋め尽くしていく。埋めて埋めて埋め尽くして、それでも足りずに、彼自身をのみこんでしまう。彼自身を私の子宮の奥深く、隠してしまう。
     世界で一番安全な場所に彼を導き、彼に休息をとらせるために、穏やかな眠りにつかせるために。

  • 海外に一人で行ったことがない人には,この話の核心が解らないかもしれない。
    一人で外国の街を彷徨い歩く。

    「私はハイネケンと一緒にグリーンサラダを注文した。」

    オランダとオランダのビールハイネケンが好きな人なら,ここに安心を描写していることが解るかもしれない。

    その前振りで,ヤンの登場と,家の紹介が続く。

    死因がよくわからないところが謎だが,小池真理子風の終わり方だと思った。書きすぎて,嫌味が残るよりはいい。

  • アムステルダムで突然死んだ恋人の根津遼平を偲んで,1年後にオランダを旅する高橋美樹.遼平がアムステルダムの近くに二人が結婚したら住む予定の家を探していた.それだけが遼平が美樹に残した唯一の具体的なもの.最終章で登場する人物がそれを証明するところが感動的だ.

  • 恋人を失い、その姿を追うにつれどんどん陰へと思考が引き込まれていく主人公。
    考えれば考える程に、信じていたものが本当なのか判らなくなる、人の心の動き。
    最後まで読んで、とても満たされた気持ちになれた。
    悲しさは消えないけれど。

  • 異国で死んだ婚約者の足跡を訪ねてのオランダ旅行。これほど好きになられた男は幸せだろうが
    死んじゃ何もならん。
    旦那の藤田宜永が好きだからついつい小池 真理子の本も読みたくなる。

     

  • オランダで死んでしまった彼氏がどんなところで生活していたか、彼氏の影を探しにいくお話。彼氏が自分のことをどう思っていたかがポイントなんだな。

  • 図書館の本

    内容(「BOOK」データベースより)
    彼は異国の地で、薬と酒を飲みすぎて死んだ。…たったそれだけの、新聞の三面記事に数行で表現される事実だけが真実なのであり、それ以外のことは何も詮索すべきではないのかもしれなかった。だが私は、何としてでも、彼の中にあった闇を根こそぎ白日のもとにさらけ出してみたかった。彼が本当に見ていたものを見て、彼が感じていたものを感じてみたかった。そうした、渇きにも似た強烈な思いが私の中にはびこり、だからこそ私は今、この街にやって来たのである。―幸福な日々の中に突然訪れた婚約者の死の知らせ。一年後、死に至る彼の足跡を追って、女はヨーロッパへ向かう。パリ、ブリュッセル、そしてアムステルダムへ。風の中に消えた彼と再び出会うための旅の記録。

    ああ、この焦燥感が小池真理子なのだとあらためて思う。
    恋焦がれる、その焦りと絶望の混合。
    愛して、愛されて、その人がいなくなって1年。
    彼を思い出す旅、彼の後を追う旅。

    いつになくラストがやさしい作品でした。
    アムステルダムの風景がみえました。

  • 内容説明 彼は異国の地で、薬と酒を飲みすぎて死んだ。…たったそれだけの、新聞の三面記事に数行で表現される事実だけが真実なのであり、それ以外のことは何も詮索すべきではないのかもしれなかった。だが私は、何としてでも、彼の中にあった闇を根こそぎ白日のもとにさらけ出してみたかった。彼が本当に見ていたものを見て、彼が感じていたものを感じてみたかった。そうした、渇きにも似た強烈な思いが私の中にはびこり、だからこそ私は今、この街にやって来たのである。―幸福な日々の中に突然訪れた婚約者の死の知らせ。一年後、死に至る彼の足跡を追って、女はヨーロッパへ向かう。パリ、ブリュッセル、そしてアムステルダムへ。風の中に消えた彼と再び出会うための旅の記録。

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著者プロフィール

小池真理子(こいけ まりこ)
1952年東京都生まれの作家。成蹊大学文学部卒業。89年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)、96年『恋』で直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。その他の著書に、『二重生活』『無伴奏』『千日のマリア』『モンローが死んだ日』などがある。
2019年1月6日から、『モンローが死んだ日』がNHK BSプレミアムでドラマ化。主演は鈴木京香、草刈正雄。

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