遥かなる水の音

著者 :
  • 集英社
3.79
  • (79)
  • (119)
  • (99)
  • (16)
  • (5)
本棚登録 : 765
レビュー : 142
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713275

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  アマネのルームメイト・ジャンクロード、姉のヒサコ、友達の浩介とユイ。病気で逝ったアマネを弔うために、彼の希望どおりに骨をまくため、
    サハラ砂漠へ行く。それは便利で速い最短ルートではなく、
    アマネのかつて通ったルートでだった。
     それぞれの想いとして書きつづられる間にアマネの目線が入っていた。

     パリで働くヒサコの感情やパリの景観に関する描写、サハラまでのその街々に関する描写が
    本当にすばらしい。まるで自身で見ているかのようだった。

     ユイが浩介に対して素直になれた件がいい。
     死んでしまうとは思わず、時間はたっぷりとあって、ずっとその時間が続くと
    思っていた気持ちはよくわかる。
     
     行ったことのないサハラがそこにあるかのような錯覚に陥った一冊。

  • 「ゲニウス・ロキ。ラテン語で、地霊のことを言うんだけどね。たとえば、旅した先の土地にすごく惹かれるものを感じた時は、その土地のゲニウス・ロキに気に入ってもらえたってことなんだそうだよ。



    そもそも人は、迷うと思うから迷うのだ。言い換えると、目的地へ一刻も早くたどり着こうとするから迷う。費やす時間の多寡さえ初めから考えなければ、たいていの場合、いつかはたどり着く。回り道ではあるにせよ、それは迷い道ではない。





    信じる神がいるかいないかって、本当に危機ったときに違う。
    飛行機が落ちた時の『だいじょうぶ。私の神様が守って下さいますから。』にインドを思い出した。インドで何回もきいたこの言葉。神を信じてる人が言うと、重みが違う。

    最近村山由佳あれだなとか思ってたけど、やっぱいい。やっぱすごい。
    インディアンの話を昔読んだんだけど、あれに似てた
    死んでもここまで思ってもらえる生き方をしたいものです

  • 村山さんの本は久しぶりかな。

    あの〰、すごくよかったです。
    長編ならではのスケールの大きさにはちょっとうっとりしちゃったし。
    行ったことのない国々が舞台なので、想像力をフル稼働して、読みました。でも、村山さんの表現力で、まだ見ぬ土地ながら、なんとなく目に浮かぶようで・・・。

    人物描写も的確で、同性愛や、死者の声が聞こえる、などは、私は経験したことのない感情だけど、理解はできたし、それぞれの人物の思いも伝わってきた。


    物語は若き青年、アマネの死により、アマネの周りにいた人々が死後のアマネを楽にしてあげようと、アマネの骨をサハラに還しに行く物語。
    アマネの姉、アマネと共に住んでいたジャン・クロード、アマネの友人の浩介とユイ。
    それぞれの思いを胸に、かつてアマネが旅したのと同じルートでサハラに向かう・・・。

    これぞ、作家!
    って感じの作品でした。
    こういうズシンと胸に響くような作品をたくさん読みたいな。

  • 人気作家において割と見受けられる「取材と称した成金海外旅行紀」の典型。それでも多少の心ある作家なら庶民目線での安宿やヒッチハイクなどで体験したりするのだが、ご丁寧にも登場人物に金持ちを入れることによって作家自身の散財を作品に落とし込む必然性を作っている。そんなノイズを圧倒凌駕する手腕がある。砂漠でのラストは見事。

  • パリで死んだ青年、久遠 周(あまね)
    その最期を共に過ごしたフランス人、ジャン=クロード・パルスヴァル
     周の姉、久遠 緋沙子
     高校からの友人、奥村 浩介と早川 結衣
     通訳兼ドライバー、サイード・アリ
    周の「僕が死んだらその灰をサハラにまいてほしい」という遺言を叶える為にフランス、スペイン、モロッコへ。
    周が生前辿った行程通りにサハラを目指す旅に出るそれぞれの登場人物が順番に想いをかたる。

    ジャン・クロードの細やかな感情の起伏が素敵に描かれている。優しい人だな、私もこんな人がいたら好きになる。

    緋沙子の同居人のアランジルボーも、とてもステキな男性。やっぱり、こんな人がいたらすぐに好きになる!
    なのに緋沙子は、自分の想いの重さとアランの重さが違うことに気づき、充分に愛されているけど、この寂しさは埋まらない、と感じてしまう。
    緋沙子の気持ちが、一番、今の私にはしっくりくる。代弁してくれているかのように感じた。

    アマネの想いをかたる部分だけが字体が違うのは、細かい気の配り方だと思う。アマネらしいというか。

    サハラに行ったことはないけど、目の裏に浮かんでくる。風景の描き方が、とてもいい!そんな感想しか述べられない語彙力の無さが悲しい。

    素晴らしい作品でした。
    サハラって、日本語では砂漠、の意味なんですね。

  • 村山さんの「星々の舟」は、とても良かったが他の作品は官能的過ぎるものが多くあまり読む事はなかった。でも、この本は色んな賞を受賞しているということで読みたくなりました。亡くなった男性の遺骨をサハラにまくために近しい4人の男女がスペイン、モロッコを旅しながら自分の恋愛を見つめ直すストリー。中東の街並み、人とのふれあいとなかなか思うようにいかない恋愛が切なくて美しい。甘い余韻が残る素敵な小説でした。

  • 無限に今があると何の根拠もなく信じているけれども、後悔しないように生きるのは難しい。
    ジャン=クロードがただただ痛々しい。
    自分もサハラが見たくなった。

  • この作品も大好き。
    エロスという銘柄の紅茶缶に遺灰を入れて旅に出る。
    素敵で気になって、紅茶も買いに行った。
    敷居の高い紅茶屋さんでドキドキしていたら、店員さんに当店をどこでお知りに?と質問されて、思わず正直に小説で…と言ってしまい恥ずかしかった思い出。笑(店員さんには素敵ですね、と言って貰った)

  • 同性愛者の描写が丁寧で安心

    2015 3/13

  • <お願いがあるんだ。僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな>

    そんなインパクトのある一文で始まるこの小説は、一瞬で心を異国の地に連れ去ってくれる、泣きたくなるくらい静かで孤独な、だけど人肌のようなぬくもりのあるものでした。
    もともと村山さんは異国を舞台にした小説も多いですが、共通していつも遠いところに想いを馳せているようなところがありますよね。本書を読むと、旅に出たい気持ちが刺激されて、すぐにでも遠い異国の地に行きたくなります。

    小説の端々から村山さん自身とても感性が鋭い人なんだろうと感じますが、きっとだからこそ生きにくい部分があったんじゃないかと思います。
    そんな生きにくさと折り合いをつけながら生きてきた哲学が本書にも詰まっていて、ああやっぱり村山さんの小説が好きだと改めて感じました。

    感性の鋭さといえば、いつも思うことですが、村山さんの言葉選びがすごく好きです。
    例えば、お砂糖入りの濃いミントティー(モロッカン・ブランデー)について、「脳を洗い清めるかのようなあの芳香」とか、センスのある言い回しが溢れています。読めて、もうしあわせ。

    男女の機微、異国の美しい景色、ハプニングありつつの濃い旅路など描かれていますが、読み終わってもどこか蜃気楼を見た後みたいな、夢のような不思議な読了感です。
    それから本書で何度も登場したポール・ボウルズの作品も一度読んでみたい。読了感はとても悪そうだけれども。

全142件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

村山由佳(むらやま ゆか)
1964年7月10日生まれ、立教大学文学部日本文学科卒業。不動産会社、塾講師などの勤務を経て作家となる。
1991年 『いのちのうた』でデビュー。1991年『もう一度デジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作、1993年『春妃〜デッサン』(『天使の卵-エンジェルス・エッグ』に改題)で第6回小説すばる新人賞、2003年『星々の舟』で第129回直木三十五賞、2009年『ダブル・ファンタジー』で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞している。ほか、代表作として『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズがある。

遥かなる水の音のその他の作品

村山由佳の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

遥かなる水の音を本棚に登録しているひと

ツイートする