桐島、部活やめるってよ

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 3969
レビュー : 937
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713350

感想・レビュー・書評

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  • 「桐島、部活やめるってよ」という本のタイトルを知ったとき、そのセンスの素晴らしさに驚いた。
    だから、逆に反発心が起きた。
    なんでこんなセンスのいいタイトルをつけられるんだ!! という単なる妬みである。
    へっ、カッコ良すぎる! こやつ若いのに生意気な! と思ったわけですな。
    いい年こいて、ジジイの僻みだ。情けない。
    それゆえ、この本を敢えて読みたくなかった。
    おかげで読むのにこんなに時が経ってしまった。無駄な時間の浪費。
    変なところで対抗心など持つべきではないですな。いいオトナなんだから(笑)。

    さて朝井リョウ君の鮮烈なるデビュー作。新鮮である。そして強烈である。
    現在の高校生のリアルな心情、葛藤。
    スポーツ系男子はイカシている、文科系男子はくすんでいる、という高校生独特の不思議なヒエラルキー。
    その男子を取り巻く、意識過剰なオトナ感覚の女子たち。
    高校生たちの声に出さない気持、言葉にならない思い。
    忸怩たる思いを抱きながら、みんないろんなことを考えている、悩んでいる。
    優越感と疎外感を複雑に交差させながら、彼らの関係性をあぶりだしていく。
    焼け付くような痛みをも伴って読者の側に伝わってくる。
    ヒリヒリしている、でもキラキラしている彼らの日常。
    現代高校生の日常の爽やかさと、苦さと、痛さと、混沌をすべて閉じ込めたような作品。
    まさに、朝井リョウの真骨頂だ。
    その心理描写や情景描写が、しなやかな比喩や言葉を用いて表現されている。されまくっている。

    例えば──。
    P58:私はどきどきしている。昨日、グラウンドに置きっぱなしだった心が、一瞬で私の小さな胸に戻ってきて、ばくばくと激しく脈を打ちながら体温を上げていく。
    P59:ピンクが似合う女の子って、きっと勝っている。すでに、何かに。
    P63:私の中の神様は、きっともう小さく萎んでしまっている。
    P93:今まで起きたうれしかったことや楽しかったことを大声で叫んだとして、その全部を吸い込んでくれそうな空。この空の分だけ大地がある。世界はこんなに広いのに、僕らはこんなに狭い場所で何に怯えているのだろう。
    P113:空は全体的に光の線が編み込まれた橙色をしていて、雲は白だったり薄いオレンジだったり真っ赤だったり、部分部分で色を変えている。この街に生きるすべての人の、今日一日に起きた楽しかったこと、辛かったこと、幸せだったこと、悲しかったこと、何もかも全部を吸い込んだらきっとこういう色になるんだろう、と僕は思った。

    輝くような言葉を駆使し、混沌と葛藤を繰り返しながら物語は核心に迫っていく。

    目の前のことに正直に悩んだ奴は、苦しんだ分だけ、もうその悩みに距離を置くことなく、真っ直ぐに立ち向かっていける。
    だから──桐島、部活やめるなんて言うなよ──
    と、最後に思うのだ。

    私もこうだったろうか、と遥か昔の高校生活に思いを馳せる。
    どんなに記憶を掘り起こしても、これほど毎日がドキドキ感の連続だった覚えがない。
    やはり違うんだな。同じ教室に、同じ学校に、女の子がいるのといないのでは。
    これを読んで、高校が男子校だったというのは、いまさらながら悲劇だったなと思った。
    女生徒の姿も見えない高校生活を送ったせいで、人としてこの時期に必要な考え方や危うい心情を経験せずに通り過ぎてしまった気がする。
    ある意味、それは大切な落し物をしてきた、そしてそれは時が経ってからは決して探し出せない何かではないかと、そんな気がしてしまうのだ。
    どうしたって時計の針を巻き戻すことはできない、という悲しい事実に直面するのみだ。
    ナイモノネダリか……。

    彼の作品を読むのはこれが三作目で順番が逆になったが、高校生の痛みも爽やかさも合わせ持ったこの素晴らしい作品がデビュー作というのは綿矢りさ「インストール」以来の衝撃感だ。
    映画もかなり評判が高いようなので、DVDで早速見てみたい。

    • kharaさん
      実は私もタイトルに反抗し、話題作ということで更に反抗し今に至るわけです。
      ピンクが似合う女の子、云々はまさに!一気に読みたくなりました。
      『...
      実は私もタイトルに反抗し、話題作ということで更に反抗し今に至るわけです。
      ピンクが似合う女の子、云々はまさに!一気に読みたくなりました。
      『何者』も同じような理由で読んでいませんがそろそろ覚悟を決めようかな(笑)
      2013/02/15
    • koshoujiさん
      kharaさん、コメントありがとうございます。
      やはり人間は変な反抗心は持たないほうが良いみたいです。(笑)
      「桐島」も「何者」も早くお...
      kharaさん、コメントありがとうございます。
      やはり人間は変な反抗心は持たないほうが良いみたいです。(笑)
      「桐島」も「何者」も早くお読みになるのをオススメします。
      どちらも、朝井くんの才能を感じさせる傑作です。
      もう、私は彼の作品を全部読まずにはいられなくなりました。
      2013/02/18
    • kharaさん
      とりあえず桐島、購入し本日読みはじめました。
      なんだか高校生ってこんなかんじだったな、と当時を思い出しなんとなく面映くなったり…
      読み進める...
      とりあえず桐島、購入し本日読みはじめました。
      なんだか高校生ってこんなかんじだったな、と当時を思い出しなんとなく面映くなったり…
      読み進めるのがたのしいです(*^^*)
      2013/02/21
  • 朝井リョウさん、直木賞おめでとうございますヽ(^o^)丿

    「学生時代にやらなくていい20のこと」を先に読んでいたので、
    受賞した時には「うそー!」と失礼ながら、言ってしまいました。

    だって、数年前には自分の学部とは違う学部を受けていて、それを試験の日まで気付かなかった人が!!


    そして早速、「何者」を読もうとしたけれどもちろん、予約でいっぱい。
    変わりにと言っては何だが、この本を選択。

    この選択は間違っていませんでした。

    高校生独特の「序列」
    頭のいいやつではなく、スポーツ・勉強ができない奴らがつける格付け。

    うんうん、と、学生ならではの感覚がリアリティで共感できる部分が沢山ありよかったですヽ(^o^)丿

    映画化もされて、人気出て、何となく内容は知っていたものの、やはり題名の「桐島」が出てこなかったのが驚き。。


    また、何年後かに読んでみると、違う視点で読めるのかもしれないなあ。。

  • バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こしていく。部活という共通点から浮かび上がる17歳の青春群像小説。

    著者は早稲田大学在籍中の2009年にこの作品でデビューしており、私の年齢に比較的近い。年が離れた作家が書いた青春小説は、年代のギャップを感じながらも仕方ないと思って読み進めるものである。しかしこの物語では違和感なく、すっと物語の世界に溶け込める。部活に打ち込む熱心さ、友人との微妙な距離、将来への期待と不安、どれもが高校時代のそれで、まるで私自身の学生時代に戻ったかのように近しく感じることができた。

    5人の高校生がそれぞれの視点から自身の高校生活を語っていくのだが、題名にもなっている“桐島”は語り手とならない。噂話といった登場人物たちの会話には登場するのだが、直接姿を現す描写は一切ない。桐島はバレー部のキャプテンでありエースで、賑やかな友達も彼女もいて、学生生活を満喫している生徒のようであるが、そのような華やかな生徒が学生生活の中心人物、主役であるのではなく、すべての学生が各々の学生生活の主役であるということを示しているように思った。

    5人の高校生はそれぞれタイプが異なるが、特に前田涼也と菊池宏樹はまったく正反対である。映画部の前田涼也はクラスでも目立たないおとなしいタイプである。教室内の“階層”に敏感で常に劣等感を感じている。しかし大好きな映画のことになると活き活きとして、専ら映画部の仲間と映画を撮ることに熱中している。菊池宏樹は学生服を自己流に着崩し、クラスでも賑やかな仲間とつるむタイプ。一応野球部ではあるが練習には全く顔を出さない。日々楽しければそれでいい、というような人物である。涼也が劣等感を抱いている対象はまさに宏樹のような人間である。涼也は、自分は“階層が下”の人間であり目立たないようにしなければならない、とクラスの中のポジションを過剰に気にしている節がある。一方宏樹は毎日派手に楽しく過ごしているように見えるが、本人は打ち込めるものがない虚無感を感じている。そんな宏樹が映画の撮影をしていた涼也を偶然見かけた時、宏樹は涼也にひかりを感じる。夢中になれるものを持っている人間だけが放つことができるひかりを。涼也にとって宏樹は“上”の人間であるが、宏樹にとっては涼也が、自分にないものを持つまぶしい存在だったのだ。人の価値はひとつの側面だけでははかることができないのだ、と感じた。同時に、もしかすると自分が知らない自分の価値を他人が知っていることもあるのかもしれない、と思った。

  • よかった。すごくよかった。
    映画より小説のほうが何倍もいい。
    高校生だった頃を思い出して落ち込んだ。
    この小説をよくわからなかったと言っている人は、クラスカーストで苦しんだことのない人なんだろうな。

    一番地味扱いの前田くんが、一番キラキラしてたのが印象的だった。

  • どんな高校時代を送ったかによって感じ方が違うかも。
    どの子に自分を重ねるか。
    人物相関図が最初つかみかねて、ちょっと行きつ戻りつしちゃいましたが、それぞれの章の主人公は、派手な子も地味な子もみんなうまく描き分けられてる。
    作者自身はどんなタイプだったのか予想がつかないくらいに、それぞれの描き方がうまい。

    桐島くんが最後まで出てこずに、周りの人物が桐島くんを語っていくうちに全体像が浮かんでくる、「吉原手引草」方式なのかな?と思ってたら、それほど桐島くんのキャラとか桐島くんが部活をやめた原因とかがはっきり出てくることはなくて、うっすら接点のある周りの子たちのそれぞれの日常という感じ。

    いやーしかしこの繊細な感じ、色々悩んじゃってはいるけど、でもなんとなくさらさらした手触りがいいです。
    すんごい深刻でもなく(中には結構ハードな状況の子もいるんだけど、態度はそれほど暗くない)、ドラマティックな出来事もないけど、自分の中で少しずつ答えをみつけていきます。
    チャットモンチーだとか岩井俊二だとか、固有名詞もたくさんでてくる。それがとってつけたような感じではなくて、等身大のいまの高校生なんだろうなあ。

    季節が高校2年生の秋から冬。
    この季節感もうまく作用してて、放課後の気の抜けた感じとか、部活終わりの夕暮れ時の感じとかもいいです。

    特別な時間だよなあ。高校2年生って。
    中学生みたいな幼い悩みからも解放されて、でも達観するにもまだ自分が何者かはまだ確立されていなくて。
    そのどまんなかにいるときは気付いてないけど、根底にはいつも未来への可能性と希望がある。
    だからこんなみんなキラキラしちゃうんだよなあ。

  • 人の切り取り方が上手い。特に最後の宏樹パートにはヒリヒリした感情が伝わってきた。狭い高校では、有名な誰かのちょっとしたことで周りが変化したり悩んだりする。その姿は多少のデフォルメはあれど、リアルな人物像としてかきあげている。
    高校生の真っ白なキャンバスが、歳を経るごとに何かが描かれるわけでなく、ただ黒く塗りつぶされて、その辺りに棄てられる。大人になって行くに連れて気づくそれにまだ気づかず、今を生きる者たちの将来はどうなるんだろう。この作品を大学生で書き切った筆者は、その過程で何を見出したのだろう。気になる。

  • 高校生の青春小説。
    著者の朝井リョウは完全に私と同年代みたいだ。音楽やら映画やら、被っている。
    これ、執筆は大学1~2年生くらいか?高校卒業してすぐか。
    やっぱり大学生じゃないと書けないとは思う。感情は劣化していくし、高校生じゃ生々しくて痛すぎる。

    たぶん、ぎりぎり今だから共感できる作品なんだろうと思う。
    教室内カーストって、ティーンのすごく特殊な環境下で起こる現象で、
    ほんとうにそこが世界の総てだった。はっきりとした線引きがあって、優劣があった。上にいる人たちは根拠のない自信に満ちていたし、無意識の内に八方美人に徹していた。特殊であることに自分たちが気づいていなかった。でも、最重要懸案事項だった。
    大学生になった今では、どうして彼・彼女たちにあんなにビクビクしていたのかわからない。完全に社会に出たらどんどん忘れていって、些末な感情になってしまうのだろうか。数年後、再読して自分がどう感じるのか。

    恋をする彼女たちは確かに可愛かった。
    私と彼女たちを分けていたものはそれだったのか、線引きが私をそうさせたのか、わからないけれども。

  • 読んでるとき、思わず泣き出しそうになった。高校生それぞれがもつ不安。そうだ、わたしもこうやって思ってた。思ってたのは私だけじゃなかったんだ、と救われた気持ちとじゃあこの気持ちから抜け出す術はなかったのか、という絶望と。高校時代、私が過ごしたあの時間はあれでよかったのかな。もっともっと大切なことがあって、大切なものの多くを見落としてしまっていたのではないかと。

  • うーん。良い。やはり青春群像劇がわたしはすきだ。
    一番感情移入したのは、沢島亜矢かな。

  • 学校が世界の全て。
    クラス内の上と下。痛くなるほど共感した。
    この狭い世界の中で何に怯え、もがいてるいるのか。ほんとその気持ち分かる。

    グループという派閥に組まれたまにメンバーチェンジ。上に舞い上がったり下に蹴落とされたり。自分の立場がどうであれ、それぞれの派閥が懸命に今を生きようとしている。切ないのに切ないのにキラキラしてる。

著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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