桐島、部活やめるってよ

著者 :
  • 集英社
3.30
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本棚登録 : 3939
レビュー : 934
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713350

作品紹介・あらすじ

バレー部の頼れるキャプテン「桐島」が突然部活をやめた。
それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に小さな波紋が広がっていく。
物語をなぞるうち、いつしか「あの頃」の自分が踏み出した一歩に思い当たる…。
小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウが描く、世代を越えて胸に迫る、青春オムニバス小説。
2012年夏、神木隆之介 主演、吉田大八 監督により映画化された。

感想・レビュー・書評

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  • 朝井リョウさん、直木賞おめでとうございます!
    わずか数年前は、雨の中、水を吸い尽くしたバスローブ姿で仲間と公道を行進し
    青函トンネルを一般車両もすいすい通れると思っていたあなたが直木賞を受賞するなんて
    おかあさんは。。。おかあさんじゃないけど、親戚でもないけど、うれしい♪

    というわけで、予約したはいいものの、なかなか届かない『何者』は後回しで
    お弁当の中の甘い卵焼き(大好物)を最後まで残しておくかのように
    読まずに取っておいた、『桐島、部活やめるってよ』を読んでみました。

    う~ん、みずみずしい!
    制服の中を吹き抜ける風、自分の不甲斐なさに気づかない振りをする痛さ、
    片想いの相手が不意に近づいてきた時に、全身の細胞が一気に目覚める感じ。。。
    高校時代を振り返ろうとすると(かなり)遠い目をしなくてはならない私でも
    当時の皮膚感覚や切なさ、苦さを思い出してしまうほどの臨場感。

    デビュー作だけあって、後に書かれた『少女は卒業しない』などの
    煌めくように美しい比喩に比べると、表現がかなり素直というか、直接的だけれど
    そこもまた、若さが迸るようで、微笑ましくて。

    校内ヒエラルキーの頂点にいたらしい桐島くんが男子バレー部をやめたことで
    部内のバランスが狂って大きく影響を受けた子、噂話をするくらいの距離感の子、
    トップが崩れようがどうしようがほとんど影響を受けない「底辺」と言われる子。
    チャットモンチーやaikoの歌詞、映画『ジョゼと虎と魚たち』の台詞と
    登場人物のその場その場の気持ちを絶妙にリンクさせて描くセンスが素敵♪

    こういうテーマを選ぶと、「底辺」にいる子たちの苦しみを描くことに終始しがちだけれど
    容姿にも恵まれ、たいして苦労もせず何事もそつなくこなしてしまう「上」の子の目に
    全身全霊で打ち込める、大好きなものを持っている「底辺」の子を
    「まぶしいひかり」として映し出すところに、朝井さんのやさしい視線を感じます。

    それぞれの場所に必死に喰らいついてもがく5人の高校生の
    けなげでいとおしい毎日の向こうに、爽やかな笑顔でトップに君臨していたはずの
    桐島くんの苦しさや、地道な努力もちらちらと垣間見えるのが心憎い、
    まさに「取っておいてよかった卵焼き♪」のような作品でした。

    • まろんさん
      kwosaさん☆

      こんな作品を大学在学中に書いた上に、直木賞受賞までの数年で
      加速度的な進化を遂げてしまう朝井リョウさん、ほんとうに「何者...
      kwosaさん☆

      こんな作品を大学在学中に書いた上に、直木賞受賞までの数年で
      加速度的な進化を遂げてしまう朝井リョウさん、ほんとうに「何者?!」と言いたくなりますね。
      コンスタントに作品も発表しているし、これだけの人気作家になったのだから
      大学卒業と同時に作家生活に入ってもよさそうなものなのに、
      ちゃんと堅実に就職するあたりも、謙虚でいいなぁ、なんて思ったりして。

      私も『何者』は予約しているので、kwosaさんと同じころに読めたら素敵ですね♪
      kwosaさんのレビューが、今からとても楽しみです。
      2013/01/20
    • koshoujiさん
      こんにちは。
      朝井君には、おめでとうですね。
      「何者」のレビューにはああいう風に書きましたが、内容的には素晴らしい作品です。
      直木賞を...
      こんにちは。
      朝井君には、おめでとうですね。
      「何者」のレビューにはああいう風に書きましたが、内容的には素晴らしい作品です。
      直木賞をとっても何の不思議もありません。
      特に最後のどんでん返しが秀逸です。
      選考委員が評価したのも最後の部分があったからだと思います。
      早くまろんさんのお手元に届くように祈っています。
      私は、これで彼が脚光を浴びて、図書館人気が出ると困ると思い、
      「桐島」「星やどり」「もう一度生まれる」の三冊を慌てて予約しました(笑)。

      それにしても、ニコ動で芥川賞、直木賞受賞者三名の記者会見を見ましたが、
      三人とも個性があって素晴らしい会見でしたね。
      黒田さんの日本語に対する飽くなき探究心、年齢を感じさせない凜とした語り、
      面接を埋めているような朝井君の素直さと真面目さ、ユーモアセンス、
      安部さんの人の良さそうな真摯な受け答えと自作に対する確固とした信念、
      などなど、三者三様ながら、みなさん自分の作品にしっかり責任を取る覚悟で
      モノを書いているのだなあ、と感じました。
      こちらが勇気づけられるような素晴らしい会見でした。
      2013/01/20
    • まろんさん
      koshoujiさん☆

      おお、「何者」には、どんでん返しがあるのですか!
      いろんな人のさりげない日常が交錯して、変っていく未来の予感を匂わ...
      koshoujiさん☆

      おお、「何者」には、どんでん返しがあるのですか!
      いろんな人のさりげない日常が交錯して、変っていく未来の予感を匂わせるように終わる、
      これまでの朝井リョウさんの作品とは、ちょっと印象の違う作品なのでしょうか。
      とてもとても気になります!
      あ、私も、koshoujiさんを見習って、
      まだ読んでない「星やどり」をあせって予約しなくては♪

      koshoujiさんがブクログを通してリアルタイムで知らせてくださったおかげで
      ニコ動での会見、うきうきしながら見ることができました。ありがとうございます♪

      私は例によって不勉強なので、黒田さんも阿部さんも、作品はもちろん
      お顔も見たことがなかったのですが、
      黒田さんは年齢より遥かにお若く見える上に
      口跡がとても美しくて、聞き惚れてしまいました。
      阿部さんは、テディベアのような素朴な容貌が、失礼ながらとても可愛らしくて
      受賞作とのイメージのギャップが素敵でしたね(笑)
      朝井さんは、写真でお顔だけは知っていましたが
      本当に面接を受けてる就活生みたいに居心地が悪そうで
      そこがまた母性本能をくすぐりました♪
      これからの作品が、ますます楽しみですね(*'-')フフ♪
      2013/01/21
  • 「桐島、部活やめるってよ」という本のタイトルを知ったとき、そのセンスの素晴らしさに驚いた。
    だから、逆に反発心が起きた。
    なんでこんなセンスのいいタイトルをつけられるんだ!! という単なる妬みである。
    へっ、カッコ良すぎる! こやつ若いのに生意気な! と思ったわけですな。
    いい年こいて、ジジイの僻みだ。情けない。
    それゆえ、この本を敢えて読みたくなかった。
    おかげで読むのにこんなに時が経ってしまった。無駄な時間の浪費。
    変なところで対抗心など持つべきではないですな。いいオトナなんだから(笑)。

    さて朝井リョウ君の鮮烈なるデビュー作。新鮮である。そして強烈である。
    現在の高校生のリアルな心情、葛藤。
    スポーツ系男子はイカシている、文科系男子はくすんでいる、という高校生独特の不思議なヒエラルキー。
    その男子を取り巻く、意識過剰なオトナ感覚の女子たち。
    高校生たちの声に出さない気持、言葉にならない思い。
    忸怩たる思いを抱きながら、みんないろんなことを考えている、悩んでいる。
    優越感と疎外感を複雑に交差させながら、彼らの関係性をあぶりだしていく。
    焼け付くような痛みをも伴って読者の側に伝わってくる。
    ヒリヒリしている、でもキラキラしている彼らの日常。
    現代高校生の日常の爽やかさと、苦さと、痛さと、混沌をすべて閉じ込めたような作品。
    まさに、朝井リョウの真骨頂だ。
    その心理描写や情景描写が、しなやかな比喩や言葉を用いて表現されている。されまくっている。

    例えば──。
    P58:私はどきどきしている。昨日、グラウンドに置きっぱなしだった心が、一瞬で私の小さな胸に戻ってきて、ばくばくと激しく脈を打ちながら体温を上げていく。
    P59:ピンクが似合う女の子って、きっと勝っている。すでに、何かに。
    P63:私の中の神様は、きっともう小さく萎んでしまっている。
    P93:今まで起きたうれしかったことや楽しかったことを大声で叫んだとして、その全部を吸い込んでくれそうな空。この空の分だけ大地がある。世界はこんなに広いのに、僕らはこんなに狭い場所で何に怯えているのだろう。
    P113:空は全体的に光の線が編み込まれた橙色をしていて、雲は白だったり薄いオレンジだったり真っ赤だったり、部分部分で色を変えている。この街に生きるすべての人の、今日一日に起きた楽しかったこと、辛かったこと、幸せだったこと、悲しかったこと、何もかも全部を吸い込んだらきっとこういう色になるんだろう、と僕は思った。

    輝くような言葉を駆使し、混沌と葛藤を繰り返しながら物語は核心に迫っていく。

    目の前のことに正直に悩んだ奴は、苦しんだ分だけ、もうその悩みに距離を置くことなく、真っ直ぐに立ち向かっていける。
    だから──桐島、部活やめるなんて言うなよ──
    と、最後に思うのだ。

    私もこうだったろうか、と遥か昔の高校生活に思いを馳せる。
    どんなに記憶を掘り起こしても、これほど毎日がドキドキ感の連続だった覚えがない。
    やはり違うんだな。同じ教室に、同じ学校に、女の子がいるのといないのでは。
    これを読んで、高校が男子校だったというのは、いまさらながら悲劇だったなと思った。
    女生徒の姿も見えない高校生活を送ったせいで、人としてこの時期に必要な考え方や危うい心情を経験せずに通り過ぎてしまった気がする。
    ある意味、それは大切な落し物をしてきた、そしてそれは時が経ってからは決して探し出せない何かではないかと、そんな気がしてしまうのだ。
    どうしたって時計の針を巻き戻すことはできない、という悲しい事実に直面するのみだ。
    ナイモノネダリか……。

    彼の作品を読むのはこれが三作目で順番が逆になったが、高校生の痛みも爽やかさも合わせ持ったこの素晴らしい作品がデビュー作というのは綿矢りさ「インストール」以来の衝撃感だ。
    映画もかなり評判が高いようなので、DVDで早速見てみたい。

    • kharaさん
      実は私もタイトルに反抗し、話題作ということで更に反抗し今に至るわけです。
      ピンクが似合う女の子、云々はまさに!一気に読みたくなりました。
      『...
      実は私もタイトルに反抗し、話題作ということで更に反抗し今に至るわけです。
      ピンクが似合う女の子、云々はまさに!一気に読みたくなりました。
      『何者』も同じような理由で読んでいませんがそろそろ覚悟を決めようかな(笑)
      2013/02/15
    • koshoujiさん
      kharaさん、コメントありがとうございます。
      やはり人間は変な反抗心は持たないほうが良いみたいです。(笑)
      「桐島」も「何者」も早くお...
      kharaさん、コメントありがとうございます。
      やはり人間は変な反抗心は持たないほうが良いみたいです。(笑)
      「桐島」も「何者」も早くお読みになるのをオススメします。
      どちらも、朝井くんの才能を感じさせる傑作です。
      もう、私は彼の作品を全部読まずにはいられなくなりました。
      2013/02/18
    • kharaさん
      とりあえず桐島、購入し本日読みはじめました。
      なんだか高校生ってこんなかんじだったな、と当時を思い出しなんとなく面映くなったり…
      読み進める...
      とりあえず桐島、購入し本日読みはじめました。
      なんだか高校生ってこんなかんじだったな、と当時を思い出しなんとなく面映くなったり…
      読み進めるのがたのしいです(*^^*)
      2013/02/21
  • 川沿いの大手予備校の向かい側に、打ち立ての讃岐うどんを食べさせる店がある。
    久しぶりの一人の日曜日、昼食はそこでとろうと自転車を走らせた。
    一時を少し回った頃だったが、十人掛けの長テーブル三列はそこそこ埋まるくらいの繁盛ぶりだった。
    かき揚げのトッピングを選び会計を済ませ、向かい合わせに座る男子高校生二人組のそば、椅子を一つはさんで隣に席を取った。
    さあ食べようとしたその時、女子高校生がひとり僕の隣に座る。
    満席というわけではない店内で、この年頃の女の子が男性客に囲まれるように席を取るのは珍しい。その子がセルフサービスの水を汲みに席を立ったとき、男子二人組の片方が
    「もっといい席があろうに」
    そうつぶやくのが聞こえた。
    向こう側のテーブルでは四人組の女子がたのしそうにおしゃべりしていて、その側にはグループ客が帰ったばかりか、ぽっかりとスペースが空いている。AKBの練習生くらいには華があるその四人組がちらちらとこちらを気にしている。
    僕の隣の、おとなしめのちょっと垢抜けない女の子は、テーブルのかたわらの携帯電話から片時も目を離さない。それが自分を守る護符かなにかのようにじっとみつめて、ただただうどんを啜っている。
    なんだか居たたまれない気持ちになった。

    高校時代、学園ヒエラルキーの中ではクラスの「一軍」に憧れながらも、たまに代打要員としてベンチ入りする程度のポジションだった僕は、特にトラブルもなくそれなりに楽しく学生生活を過ごせた方だと思う。しかし振り返ってみれば、そこには自分がまるでバラエティー番組のひな壇にいるかのような狂騒と軽い緊張感があったことも確かだ。

    この物語に『桐島』は登場しない。
    男子バレー部のキャプテンで、スタープレイヤーの桐島の栄光と挫折を描いた一冊の本がきっとどこかに存在して、この物語はそのスピンオフだ。
    でもいまの高校生達にとって、いやかつて高校生であった人達にとって、この「外伝」の方が圧倒的にリアルだ。

    「外伝」の主人公達の「物語」は、まだ始まってすらもいない。
    それぞれのラストに物語の萌芽が見えるだけだ。
    それがいい。その萌芽に胸が熱くなる。

    • kwosaさん
      agk333さん

      コメントありがとうございます。
      これからもよろしくお願いします。

      石田衣良さん。
      初期の『池袋ウエストゲートパーク』は...
      agk333さん

      コメントありがとうございます。
      これからもよろしくお願いします。

      石田衣良さん。
      初期の『池袋ウエストゲートパーク』は好きだったのですが、最近はどうなのでしょうか。

      僕がうどん屋で見た女子高生も、決して「いじめ」とか仲が悪いとかそういうのではないでしょうが、微妙な距離感とか空気感ってありますよね。

      映画版は評判いいですね。
      吉田大八監督の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が良かったのと、神木隆之介や橋本愛らのキャスティングの素晴らしさに期待できます。
      これは観てみないといけませんね。
      2013/01/23
    • しをん。さん
      フォローありがとうございます(^^♪
      紫苑(しおん)です。

      実は、kwosaさんのレビューに引き込まれて、今読んでいる最中です♪

      映画...
      フォローありがとうございます(^^♪
      紫苑(しおん)です。

      実は、kwosaさんのレビューに引き込まれて、今読んでいる最中です♪

      映画化もされていて、何となく「桐島は登場しない。」みたいなことを神木隆之介さんが仰っていて「えっ?」と、なったのですが本当に出てこないのですね。。

      kwosaさんの女子高生のお話。
      ヒシヒシと分かります。
      やっぱり、知らない女の子同士でも、ある程度の距離を取りたいという気持ちがわき出て…。
      難しい年頃ですかね?
      2013/01/23
    • kwosaさん
      紫苑さん

      コメントありがとうございます。

      レビューを読んで本に興味を持って頂けるとは、なんて嬉しいことでしょう。
      僕もブクログを始めてか...
      紫苑さん

      コメントありがとうございます。

      レビューを読んで本に興味を持って頂けるとは、なんて嬉しいことでしょう。
      僕もブクログを始めてからは、かなりみなさんの影響を受けています。
      紫苑さんの本棚もまめに拝見させてもらいますので、これからもよろしくお願いします。

      男子には表面的にしかとらえられないことも女子には分かる。また、その逆もあるかも知れませんね。
      いろいろ難しいですね。
      2013/01/23
  • 朝井リョウさん、直木賞おめでとうございますヽ(^o^)丿

    「学生時代にやらなくていい20のこと」を先に読んでいたので、
    受賞した時には「うそー!」と失礼ながら、言ってしまいました。

    だって、数年前には自分の学部とは違う学部を受けていて、それを試験の日まで気付かなかった人が!!


    そして早速、「何者」を読もうとしたけれどもちろん、予約でいっぱい。
    変わりにと言っては何だが、この本を選択。

    この選択は間違っていませんでした。

    高校生独特の「序列」
    頭のいいやつではなく、スポーツ・勉強ができない奴らがつける格付け。

    うんうん、と、学生ならではの感覚がリアリティで共感できる部分が沢山ありよかったですヽ(^o^)丿

    映画化もされて、人気出て、何となく内容は知っていたものの、やはり題名の「桐島」が出てこなかったのが驚き。。


    また、何年後かに読んでみると、違う視点で読めるのかもしれないなあ。。

  •  この作品は、朝井さんが20歳のときの発表した作品だというから驚きだ。20歳でこのボキャブラリーの多さには、舌を巻いてしまう。
     しかも、タイトルにばーんと出ている「桐島」くんが一度も登場しないままに物語が展開していくのも、斬新だった。アレっ、桐島、出てこんの!?みたいな。

     高校という、狭く小さな世界に生きる高校生たち。誰に教わったわけでもないのに、その世界にはいった瞬間から、彼らは「上」と「下」にランク付けされる。「上」の彼らは、制服をかっこよく着ていいし、髪の毛だって凝っていいし、大きな声で話していいし、行事でも騒いでいい。
     女子も男子も、「上」は上同士、「下」は下同士、固まって生きる。この決まりから逃れられる高校生は、いない。

     けれど、「上」にいるからといって、彼らが満たされているわけではない。「上」に所属する菊池宏樹は、自分のしたいことが分からずもがく。何をやってもそこそこできるがゆえに、本気でやって失敗することを恐れる。そして、やりたいことを本気で取り組んでいる「下」の前田涼也に光を見出す。

     この世界で、日本で、本当に思っていることを思ったように口にしている人なんて、きっと、いない。大人も子供も、きっと、いない。
     桐島は、きっと、いつか、バレー部に戻ってくるんだろう。そしてまた部活に精を出す。
     きっと大丈夫。思ったことは口に出せなくても、彼らは受けた傷をすぐに治す力を持っているのだから。
     
     だから、これからも手探りでいいから進んでいけばいい。そうして、大人になっていけばいい。

    • kwosaさん
      ayakoo80000さん

      >だから、これからも手探りでいいから進んでいけばいい。そうして、大人になっていけばいい。

      ayakoo800...
      ayakoo80000さん

      >だから、これからも手探りでいいから進んでいけばいい。そうして、大人になっていけばいい。

      ayakoo80000さんのこの言葉が胸に響きます。
      朝井リョウさん、若くしてこんな作品を書くって本当に凄いですね。僕は20歳の頃、ここまで自分や周囲を客観視できてはいなかったし、おそらく言語化もできなかったでしょうね。読んでいて胸の奥が常にひりひりしていました。

      素敵ですね。
      ayakoo80000さんのレビューからも「ひかり」が放たれていますよ。
      2013/01/14
    • HNGSKさん
      まろんさん>>いま、手元に朝井さんの「何者」があります。直木賞候補作品なので、急いで借りました。
       「もういちど生まれる」ですね。なるほどな...
      まろんさん>>いま、手元に朝井さんの「何者」があります。直木賞候補作品なので、急いで借りました。
       「もういちど生まれる」ですね。なるほどなるほど。これは絶対読ませていただきます。
      2013/01/14
    • HNGSKさん
      kwosaさん>>わたしも、自分が20歳のときを思い出したら、こんなに自分や周りを見つめていなかったなあ、と思わざるを得ません。
       それはそ...
      kwosaさん>>わたしも、自分が20歳のときを思い出したら、こんなに自分や周りを見つめていなかったなあ、と思わざるを得ません。
       それはそうと、こんなに、素敵なメールをありがとうございます。kwosaさんのメールで、あと100年くらい生きていけそうな気がします、私。
      2013/01/14
  • 朝井さんのデビュー作。
    朝井さんの作品を初めて読んだのは「星やどりの声」
    表現の瑞々しさと、全体の透明感に感動し、朝井さんの作品を追っかけた。
    この作品は、やっぱりデビュー作だなぁと思えるような初々しさを感じた。
    でも、わずか数年でこんなにも変わるの??と逆に驚いた。

    「桐島」がでてこないまま、話が進む。
    意外だった。最後には出てくるのかな・・と思った。
    高校生のリアルな現実が描かれていて、時代は変わっても悩んでることとか、そんなに変わらないんだな・・と実感した。

  • バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こしていく。部活という共通点から浮かび上がる17歳の青春群像小説。

    著者は早稲田大学在籍中の2009年にこの作品でデビューしており、私の年齢に比較的近い。年が離れた作家が書いた青春小説は、年代のギャップを感じながらも仕方ないと思って読み進めるものである。しかしこの物語では違和感なく、すっと物語の世界に溶け込める。部活に打ち込む熱心さ、友人との微妙な距離、将来への期待と不安、どれもが高校時代のそれで、まるで私自身の学生時代に戻ったかのように近しく感じることができた。

    5人の高校生がそれぞれの視点から自身の高校生活を語っていくのだが、題名にもなっている“桐島”は語り手とならない。噂話といった登場人物たちの会話には登場するのだが、直接姿を現す描写は一切ない。桐島はバレー部のキャプテンでありエースで、賑やかな友達も彼女もいて、学生生活を満喫している生徒のようであるが、そのような華やかな生徒が学生生活の中心人物、主役であるのではなく、すべての学生が各々の学生生活の主役であるということを示しているように思った。

    5人の高校生はそれぞれタイプが異なるが、特に前田涼也と菊池宏樹はまったく正反対である。映画部の前田涼也はクラスでも目立たないおとなしいタイプである。教室内の“階層”に敏感で常に劣等感を感じている。しかし大好きな映画のことになると活き活きとして、専ら映画部の仲間と映画を撮ることに熱中している。菊池宏樹は学生服を自己流に着崩し、クラスでも賑やかな仲間とつるむタイプ。一応野球部ではあるが練習には全く顔を出さない。日々楽しければそれでいい、というような人物である。涼也が劣等感を抱いている対象はまさに宏樹のような人間である。涼也は、自分は“階層が下”の人間であり目立たないようにしなければならない、とクラスの中のポジションを過剰に気にしている節がある。一方宏樹は毎日派手に楽しく過ごしているように見えるが、本人は打ち込めるものがない虚無感を感じている。そんな宏樹が映画の撮影をしていた涼也を偶然見かけた時、宏樹は涼也にひかりを感じる。夢中になれるものを持っている人間だけが放つことができるひかりを。涼也にとって宏樹は“上”の人間であるが、宏樹にとっては涼也が、自分にないものを持つまぶしい存在だったのだ。人の価値はひとつの側面だけでははかることができないのだ、と感じた。同時に、もしかすると自分が知らない自分の価値を他人が知っていることもあるのかもしれない、と思った。

  • よかった。すごくよかった。
    映画より小説のほうが何倍もいい。
    高校生だった頃を思い出して落ち込んだ。
    この小説をよくわからなかったと言っている人は、クラスカーストで苦しんだことのない人なんだろうな。

    一番地味扱いの前田くんが、一番キラキラしてたのが印象的だった。

  •  図書館より。
     同じ高校を舞台に、5人それぞれの視点から学校生活を切り取った連作小説。

     前半は普通の青春小説だな、と思ってしまったのですが「前田涼也」の章でその考えが一変しました。

     よく本や歌で「ここに書かれているのは自分のことだと思った」という感想が聞かれます。自分自身はそこまでつよくそういう感情を持ったことはないのですが、前田涼也はそれに近いものを感じました。

     彼の章で描かれるのは、文化部と運動部やいわゆるスクールカースト間の越えられない壁です。みんななんとなく自分のやってはいけないことを理解している、という記述には大いにうなずいてしまいました。そして体育のサッカーの描写もすごかったです。切なくて、残酷で、自分にも身に覚えがあってある意味泣けてきました(苦笑)。

     大学生になってから、自分の趣味を肯定的にとらえる機会が多くなったような気がしますが、なぜか小・中・高校時代は本好きということは一つ下に見られているような気がして恥ずかしかった覚えがあります。あの劣等感はどこからやってきたのか本当に不思議でなりません。自分が運動得意だったらまた違ったのでしょうけど。

     前田涼也に話を戻すと、決してクラスで目立つわけでもない彼がそれでもうらやましいと感じました。彼には映画という光があるからです。自分自身は彼と同じ時代にそこまで打ち込んでるものがなかったので、そういう光を持っている彼がとてもうらやましく思いました。終わりかたもいい感じ。彼の最後の決断が実行されたのかどうなのか、想像してしまいます。

     前田涼也以降の二人の章も、高校生のモヤモヤを非常に巧く表現してくれていたと思います。「宮部実果」の章は彼女の家庭事情が特殊でこの本の中で少し浮くんじゃないか、と読み始めは思ったのですが、その設定を学校生活にしっかりと落とし込みつつ、しっかりと家族の物語にも一つの区切りをつけてくれているあたりが良いなあ、と思いました。

     「菊池弘樹」では何をしたらいいのか、もしくは何かしていても「本当にこれでいいのか」と思ってしまうそんなだれでも一度は感じたことのある焦燥感がとても伝わってきました。これも自分に近いものを感じてしまいました。

     こういう学生時代の感情って世代によって違うものなのでしょうか? ぜひいろんな世代の人に手にとってもらって自分の学生時代と比べてほしい、そう思いました。

     第22回小説すばる新人賞

    • koshoujiさん
      花丸&フォローありがとうございます。
      とし長さんのレビュー拝見し、なかなかのものでしたので、こちらからもリフォローさせていただきました。
      ...
      花丸&フォローありがとうございます。
      とし長さんのレビュー拝見し、なかなかのものでしたので、こちらからもリフォローさせていただきました。
      これからのレビューも楽しみにしています。

      ところで、この作品の疑問の件。
      学生時代の感情は世代で違うというよりも、男子校、女子校、共学校の違いではなかったのか、と私は思っているのですが。
      私は男子校だったので、このようなひりひりするような感じがさほどありませんでしたので。
      私はすでに齢50を過ぎましたが、それでもこの作品の青春の香りは十分に堪能できました。
      朝井リョウ君の観察眼と表現力の鋭さは群を抜いていると思います。
      是非、他の作品も読んでみてください。<(_ _)>
      2014/02/26
    • とし長さん
      koshoujiさん
      コメントありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

      koshoujiさんの男子校、女子校、共学校の...
      koshoujiさん
      コメントありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。

      koshoujiさんの男子校、女子校、共学校の違い、なるほどと思いました。自分は小・中・高とすべて共学でしたが、異性の存在を意識しての行動や心理というもののあった気がします。また高校時代は文系コースでクラスの男女比が男子1、女子3くらいだったので余計にそういうのがあったのかもしれません。

      朝井リョウさんの作品、今回が初読でしたが、たしかに観察眼の鋭さを感じました。朝井さん本人はスクールカーストで言うとどのあたりにいたのか気になります(笑)

      折に触れて他の朝井作品も読んでみますね。
      2014/02/27
  • 映画を観て良かったので、原作も読んでみました。映像だけでは伝わらなかった、それぞれの心情が細かに描かれていて良かったです。
    映画のシーンが頭に浮かびながら読んでいたので、小説だけを読むより評価が高くなってるかもしれません(*^^*)
    高校の時って、その狭い世界が人生の全てみたいになってて、人間関係の優劣や立ち位置に必要以上に縛られてた気がします。その中でそれぞれ思い悩んだり、青春時代の淡い気持ちがよく伝わってくる小説でした。
    『真っ白なキャンバスでも、真っ暗闇の中で見れば真っ黒だ。もう何も描けない。』
    この一文が印象的でした。確かに。

    • 九月猫さん
      フーミンさん、こんにちは♪

      はじめまして、九月猫と申します。
      フォローしてくださってありがとうございます。

      最近、朝井さんの作...
      フーミンさん、こんにちは♪

      はじめまして、九月猫と申します。
      フォローしてくださってありがとうございます。

      最近、朝井さんの作品を読みはじめ、
      先日ブクログのお仲間さまに紹介していただいた「少女は卒業しない」で、
      甘酸っぱさときらめかしさにすっかりやられてしまったところです(*´ω`*)
      次は「桐島」を読もうと思っています。
      フーミンさんが引用なさっている文章が素敵で、ますます楽しみになってきました♪

      こちらからもフォローさせていただきました。
      これから末永く仲良くしてくださると嬉しいです。
      どうぞよろしくお願いします(*_ _)ぺこり。
      2014/06/05
  • 有名な話だけど、桐島は出てこない。
    もっと言ってしまえば、桐島は部活を辞めるらしいけど、それも物語の本筋ではない。

    章立ては6章
    菊池宏樹
    小泉風太
    沢島亜矢
    前田涼也
    宮部実果
    菊池宏樹

    桐島に見えて、あるいは映画の影響で前田に見えて、菊池がメインなんだろうなぁ、一応。

    同じ高校に通う高校生が、関わり合い、あるいは関わらないままで、それぞれが主人公で進んで行く物語。

    届かない思いとか、形のないもやもやとか、押しつぶされそうな羞恥心とか、焦りとか、リアル。
    様々なカラーの登場人物が代わる代わる登場して、多彩だし、視点が変わるとはっとすることもある。

    個人的には前田の回が好き。
    中学まではうまくやれてたのに、とか、いつの間にか「ダサい」側に馴染んで、ぐっと黙ってしまう自分、とか。
    でも大好きなことをしているとき、世界はぐっと輝きを増して。
    かすみにも、伝えられるような気がする。そんな気持ちにさせてくれるものをちゃんと持ってる。
    私の高校生時代は、どちらかと言えば前田タイプだったなー。

    実果の話が唐突で、全体の中でがっつり浮いてる感じがする。
    話としては好きだけど。

    そして、恐らくメインの菊池。
    「上」のグループにいながら、なんかいまひとつ納得できなくて。
    いつも一緒にいる友人の軽薄な言葉にカチンときたり、彼女の価値観にちょっと引いたり、でも結局、自分もそうなんだって、わかってしまってる。
    これが、高校生の間だけなんだとも、知ってしまってる。
    ちょっと早熟で、感じやすくて、考えすぎちゃう男子校生。
    うん、こういう子いるよなぁ。
    斜に構えたイケメンだけかと思いきや、「青春小説」といえばまさにコレ!という王道を一手に引き受けてくれる子。傷つきやすく自分を持て余してる感じ。
    たぶん、作者自身の姿を投影してるんだろうなぁ、なんて深読みしつつ。

    最後まで読んでみると、桐島が出てこないことも、全く違和感がない。
    結局高校生の頃って、友達が部活辞めるとか辞めないとかって、その程度の話題な気がする。
    その子がどんなに真剣に取り組んでたとしても、「辞めるんだってさ」「まじかー」みたいな。
    話題への返答として驚いてみせるけど、だからといって自分の生活に大きく何か影響するわけでもない。
    だから別に、「桐島」に顔があろうとなかろうと関係ない。
    作中に名前が出てる子たちもたまたま出てるだけで、本質的には特に変わらない。「自分」と、「今目の前にいる相手」と、「その他大勢」の世界。

    ラストが、よくある希望を胸に前へ進もう!って感じじゃなくて、あくまで等身大な感じで終わるのがいい。

    若い作者にしか書けない、リアルな作品だったと思います。
    だからか、創作小説というよりは、自伝とかブログを読んでいるような気分で読めました。
    読み物としてめっちゃ面白いかと言われると首を捻らざるを得ないけど、だからこそその分、斬新な作品だと思う。
    高校生の頃の気持ちを思い出したいときとか、さっくり活字を読みたいときとか、いつもとちょっと違う毛色の作品を読んでみたいときにオススメです。

  • タイトルになってる桐島くんが伝聞でしか出てこない。
    何処からこういう方法論が涌いてくるのか。
    朝井リョウ氏の脳味噌割って見てみたい(一応褒めてる/爆)。
    うっかり先に読んじゃった『もういちど生まれる』と流れは同じで
    やっぱり相関図書きたくなった。

    先ずは自分がイケてるかイケてないかを正確に判断して
    そのポジションからはみ出さないように振る舞う。
    そして、どのポジションにいる子もそれぞれに
    コンプレックスだったり悩みだったりを見えないようにこっそり抱えている。
    この話に出てくる子たちはみんな基本的に自分に自信がないんだな。きっと。
    『桐島』くんはその子たちそれぞれの『象徴』として登場する。
    憧れだったり、疎ましさだったり、自分を映す鏡だったり。
    目線として語られない子たち、例えば沙奈ちゃんとか竜汰くんとかが
    無邪気に発する棘が刺さってくる様が読んでる側にも刺さるのが
    チクチクしてちょっとイライラしたものの、
    最後の菊池くんの話のラスト、前田くんたちを眩しいと思う気持ちが
    ただひとつの、尚且つそれまでの全部をひっくり返すくらい強力な救いだった。

    いけ好かない(爆)、と思いつつ気になったのは実果ちゃんだった。
    彼女と彼女のお母さんが救われる日は来るのだろうか。

    大昔吹奏楽部員だった身としてちょっとだけ重箱の隅をつつくと、
    吹奏楽のコンクールは通常夏から秋に行われるので
    11月末に追い込みというのは若干違和感(爆)。
    まぁ全くどうでもいいことなんだけど。

  • 映画がよかったので、小説も読んでみた。前田涼也の章以外は、青臭すぎて感情移入が難しかった。
    スクールカースト上位にいて、周りからもちやほやされて、いい気になっているけれど、高校を卒業したその先に何があるのか、ふと気づく狭い世界のお山の大将である宏樹。
    中学のときはそんなことなかったのに、高校に入ってスクールカースト下位になってしまう。でも映画に対する情熱は高く、映画の甲子園で特別賞を取る涼也。
    この二人の対比がよかった。
    確かに、中高と目立つ子たちが東京に出てきて、社会人になるとさえない人になってしまうのはよくあること。宏樹はそこをなんとなく感じ取っていたんだろう。
    と言って涼也がこののち、大成するかどうかはわからない。賞は取ったけど・・・というのもよくあること。
    ただ、この時点で未来に向かって輝いているのがどちらかというのが重要。いつまでも輝き続けるのは難しいけど、高校生で日和るのも残念な話だ。

  • 高校生いいなー。
    クラスの中で階級があって、お互い話してみたくてもはなせなかったりするんだね。
    読んでるこっちとしては、この子とこの子仲良くなれるのに!ってもどかしいきもちになった。
    わたしの高校は女子校で、みんなお互いにあんまり興味なかったからクラス内のカーストなんかなかったな。でもあったらこんな感じなんだろうなと。
    共学は青春だねえ。
    放送部だったから、前田くんの自分は下だって気持ちが少し共感できた。
    同年代の作家さんの小説を読むのは初めてだったけど、文章が若くて奇麗だなとおもった。

  • 情熱大陸にも出演し、今をときめく新進気鋭の若手作家、朝井リョウ氏のデビュー作。映像化もされてますね。

    このタイトルですが、桐島は出てこないんですね。うまいですね。今の高校生たちの息づかいが伝わってくる作品で、読みやすくて、人気があるのがうなずける作品でした。

    学生時代の派閥・グループ(最近はスクールカーストって言うみたいですね)を見事に表現していて、今も昔も変わらないんだな、と懐かしく思いました。
    自分はそういうカーストがあまり好きではなくて、いろんなグループに片足をかける感じだったので、修学旅行のグループは、それぞれのカーストからグループ人数の関係で微妙に溢れてしまった人たちを集めた混合チームのリーダーをやって、それなりに楽しく過ごしたりするような学生生活でした。そんなことを懐かしく思い出し、こんな役回りもあるんだぜ、朝井リョウくん、そんな人がいることまでは描ききれなかったでしょう、と、なぜか作者に対抗意識をもたせてくれるくらい、リアルなイメージを沸かせてくれる面白い作品ですよね(^-^;

    主人公?の菊池宏樹くんのように、やんちゃしてることがステータスみたいなところもあって、普段は友人らに合わせてるけど、なんとなく自分に嫌悪感があった学生時代。全てが一致するわけではないけど、確かに、ページのどこかに17歳のあなたが見つかる作品でした。

  • 今から思うとものすごく狭い世界だけど、
    あの当時はここが世の中のすべてだった。
    将来やりたいことも、
    卒業後にどこへ進んだらいいのかもよく見えないまま、
    周りからどう見られているかを気にしながら、
    過ごしていた息苦しさ。鬱屈感。

    高校生の時って、ほんっとこんな感じだったよね、
    と、自分の姿をまざまざと思い出させられた。

    心がひりひり、そして恥ずかしい感じがするのは・・・
    私だけかな。

  • 映画部の子が「映像は言葉を越える!」というようなことをいう場面があった。映画を先に観たから、なるほど言い得て妙だなと思った。原作には原作の良さがあるから映画と同列には語れないけれど、なるほどこの原作がああいう風に映像になるのかと思いながら読んだ。

    映画ほど桐島が中心ではない気がした。
    ヒエラルキー上位にいる何でも卒なくこなしちゃう菊池が、逆に自分には何にもないと諦観していて、ステージに上がって笑われてしまうような前田を眩しく感じる。この二人の対比は映画でとても好きなところだから、原作そのままで嬉しかった。

  • 高校時代の独特な空気感の表現は辻村深月と似てるなぁと思った。
    ラストの菊地宏樹の気持ちにとても共感できた。

    でもなんだろう…すごくあっさりと淡々と表現される高校生の日常。こういのが瑞々しいと言われるなら私にはちょっと分からないかも。

    映画の評価が高いので観て確かめたい。

  • 制服の着方とか持ち物とかいかに目立つかとか中身はどうであれそういう価値観で上とか下とか決まっていくのが高校。
    高校なんて小さい世界のはずなんだけど、そこにいるともうそこが世界のすべてだと思ってしまう。
    高校時代のなんともいえない心理描写がとても上手に表現されているなと思いました。
    スピンオフ風に一人ずつの物語がそれぞれ繋がっていたりしておもしろかったです。最後に桐島くんはどんな暮らしをしているのか気になりました。

    • HNGSKさん
      ちょこさん、はじめまして。あやこと申します。
      この作品を読んでいると、学校にいた自分を思い出してしまいますね。上とか下とか、自分で自分をラン...
      ちょこさん、はじめまして。あやこと申します。
      この作品を読んでいると、学校にいた自分を思い出してしまいますね。上とか下とか、自分で自分をランク付けして、自分の行動範囲を狭めてしまっていたこととか・・・(汗)
      2013/02/04
  • 2013年の顔、朝井リョウさんのベストセラー小説です。

    重松清さんが描く若者が、重松さんなりの経験や想像をこらして表現した、ある意味究極に俯瞰的であるのなら、本作はもう、主観を極めた等身大の高校生。
    モラトリアムの塊のような彼らは学生時代の朝井さん自身であるから、一見型破りな話し言葉の文体も全く無理なくすんなり入ってきました。
    各物語は、朝井さんの言葉を借りるなら「上中下」それぞれの視点から描かれていますが、それぞれに学校固有の息苦しさが感じられ、いわゆる普通の学生ものの小説よりも実はずっとサッドストーリーです。
    けれど前述の通り間違いなく等身大の彼らであるから、彼らなりの答えもとても現実的です。
    彼らは信じられない集中力があって、小さな世界とどうやって折り合いを付けるか、
    大人になってそういった世界から抜け出しましたが、本作を読むと「お前、ちゃんと考えてるか?」と叩きつけられてるような焦燥感を抱きました。
    予想よりずっと良かった。

  • 高校生の感性や価値観がいろんな立場から描かれてて、なんだか懐かしくもあり今となってはちょっと残念でもあり。
    わたしの高校はここまで上下がかっきり階層化してなかったような気もするからかな。
    ああ、そういうのあるよね~、そうそうそうなんだよね~
    って誰もが感じてしまうだろう微妙な感情描写がうまい。

    肝心の桐島くんが全く登場せず、その友だちや友だちでもない人の話が重なってつながっていって、最終的にみんな前向きな感じがよいと思う。
    これを二十歳そこそこで書いたのかー。
    デビュー作なので少々甘めですが、おもしろかったです。

  • 図書館。
    発売されたころにブランチで
    紹介されてたのかな、
    それで読みたいと思っていたけど
    やっと読んだ。

    読んでてちょっとつらかった。
    わたしは今高校生だけど
    部活もサボってるし
    高校生っていう
    何かのブランドを持つ時間を
    それに与えてもいいってくらい
    やりたいこと、すきなことがないから。
    そしてこの本で言えば
    自分は明らかに
    下の人間だから。

    中学も高校も
    部活は現在進行形で入ってるけど
    どちらも中途半端にしか
    やってないし、打ち込んではいないし、
    私は部活をするってことを
    捨てたんだなぁ、って思った。
    この本のなかに出てくる子達のように、
    輝くことはもうできない。
    悩むことも、葛藤することもできない。
    だから同じ高校生だけど
    共感できることとできないことがあった。

    また、この作者は
    見るからに上の人間に見えるけど
    それにしては
    前田くん?のところの
    サッカーのくだり。
    あのへんがすごく生々しくて
    本当に自分たちみたいで
    きっと、作者も
    下にいるときがあったのかな、
    っておもった。

    下にいて
    打ち込むこともなにもない自分を
    この本を通して改めて
    知っちゃった感じ。
    でも、高校時代に読めてよかった。
    上の人間も同じようなことで悩む
    高校生なんだ、って思った。
    とりあえず打ち込めること、
    見つけたいなー。
    映画みたい。

    • akasakeさん
      悩めることが素晴らしいのだと思います。
      悩めることが素晴らしいのだと思います。
      2012/08/09
  • どんな高校時代を送ったかによって感じ方が違うかも。
    どの子に自分を重ねるか。
    人物相関図が最初つかみかねて、ちょっと行きつ戻りつしちゃいましたが、それぞれの章の主人公は、派手な子も地味な子もみんなうまく描き分けられてる。
    作者自身はどんなタイプだったのか予想がつかないくらいに、それぞれの描き方がうまい。

    桐島くんが最後まで出てこずに、周りの人物が桐島くんを語っていくうちに全体像が浮かんでくる、「吉原手引草」方式なのかな?と思ってたら、それほど桐島くんのキャラとか桐島くんが部活をやめた原因とかがはっきり出てくることはなくて、うっすら接点のある周りの子たちのそれぞれの日常という感じ。

    いやーしかしこの繊細な感じ、色々悩んじゃってはいるけど、でもなんとなくさらさらした手触りがいいです。
    すんごい深刻でもなく(中には結構ハードな状況の子もいるんだけど、態度はそれほど暗くない)、ドラマティックな出来事もないけど、自分の中で少しずつ答えをみつけていきます。
    チャットモンチーだとか岩井俊二だとか、固有名詞もたくさんでてくる。それがとってつけたような感じではなくて、等身大のいまの高校生なんだろうなあ。

    季節が高校2年生の秋から冬。
    この季節感もうまく作用してて、放課後の気の抜けた感じとか、部活終わりの夕暮れ時の感じとかもいいです。

    特別な時間だよなあ。高校2年生って。
    中学生みたいな幼い悩みからも解放されて、でも達観するにもまだ自分が何者かはまだ確立されていなくて。
    そのどまんなかにいるときは気付いてないけど、根底にはいつも未来への可能性と希望がある。
    だからこんなみんなキラキラしちゃうんだよなあ。

  • よく書けてるなとは思いましたが全体的に薄っぺらい印象です。

    実在する歌手名・俳優名などを小説に出してくるのも何だか気に食わなかったです。他の小説だと嫌な感じがしないけど、この本は使い方が下手なのでしょう。

    あと著者のプロフィールは必要だと思いますが、顔写真と大学で何のサークルをやっているかなんていうのは全く不要だと思いました。

  • 桐島が部活を辞めた。

    おかげでレギュラーに就けることになったバレー部の少年は、
    それを嬉しく思う自分の中の「嫌な奴」と向き合う。

    ブラスバンド部の少女は、放課後、校庭でバスケをしながら
    桐島を待っていた少年の姿をもう見ることができない。

    映画部の少年は、桐島の抜けたバレー部が練習をしていない
    おかげで、かつて仲が良かったバドミントン部の少女を
    思いがけず撮影することができる。

    桐島の彼女と友達のソフトボール部の少女は、
    精神を崩した母に合わせて、死んだ姉の身代わりを続ける。

    野球部を続けることも、辞めることもできず、夢中になれるものを
    見失いながら過ごす少年は、自分の確固たる世界を持つ映画部の
    少年をまぶしいと思う。
    そして、部活をやめた桐島に「やりなおせる」と説きにいく。


    17歳のあの頃。世界は半径3mでできている。明確に階層化された世界で、自分の立つ位置が、自分の所属するグループが「上」か「下」かと探り合いながら、それぞれの小さな世界を生きている。

    そんな高校生活を思い出して懐かしかった。
    そして、一度も桐島が登場しなかったところが良かった。

  • 17歳‥懐かしい記憶を呼び覚まして一気にタイムスリップしてしまいました。放課後の部室や、昼休みや、学校帰りの寄り道先で、たわいないお喋りをしながらも、けして心の奥底はさらけださないで、空気を読んでいく登場人物たち。私の高校時代と変わらない「あの頃」がこの小説の中にあります。

    この小説には大人目線が全然ない。そこがいいと私は思うのです。他のレビューのご指摘もあるように「軽さ」はあるんだけど学生ド真ん中でないと書けない作品、という点でこの作者をもう少し見守りたいなと思います。普遍的な青春の葛藤や苦悩を時代を反映しながら描けています。

    みんな自分のクラスや部活での「立ち位置」をよく知っている。高校って社会の縮図だと改めて痛感します。桐島君が出てこない構成がこの小説に深み与えています。女の子の心情描写は秀逸。かつて太宰治が『女生徒』を書いたように‥。
    <小説すばる新人賞受賞作>

  • 若いなー、青いなー、甘酸っぱいなー。
    同じ高校に通う5人の生徒各々の視点で描かれた青春連作短編集。
    軽いノリで交わされる会話中心の進行はあまり好きではなかったけれど、各々が抱える悩みや心の澱を高校生特有の他者との関係性の中で多面的に描く様は興味深かった。
    軽々しく薄っぺらな生活の中にも、最終的には希望の芽吹きを感じることができたことも良かった。

  • 2017.8.24
    あの頃の悶々とした言葉にできない感情を思い出しながら読みました。
    わたしが高校生だった頃からもうかなりの時間が経っているけど、基本いつまでも高校生は変わらないのだろうか。
    「スクールカースト」って言葉は当時なかったけど、確かに存在はしていた。
    中学、高校ともマジョリティに所属していても、好きなことがあれば学校生活しんどくても乗り切れたなあ。

  • 結局、桐島はどうなってーん!!!!ってまず思った。笑
    あと、時系列にしたらたった2・3日なんだね・・・学校に来てる平日だけやから、土日含めたらもうちょっとあるけど。
    その視点というか、あえてそこで1作にしたのは凄い。

    しかし、タイトルになってるのに一切出て来ないって凄いなw
    まず原作読んで、そのあと映画観たけど、そんな風に映像化するのか・・・
    感想というか映画との違いになっちゃうけど、登場人物の設定違いすぎない?観てたら混乱してきたから相関図作ったけど、カップルの組み合わせとか、割と違いがあった。
    あと原作では宏樹が中心なのかなと思ったけど(宏樹視点で始まり、終わったから)、映画は違う・・・?どっちかっていうと、涼也?
    それと映画での桐島のカリスマ性ね。どんだけ桐島は求められてるん!?みたいなw

    でも学校でのカースト制度はリアルよね。学校だけじゃなくて、一生どこでもあるんだろうけど。

  • うん。こういう感じ、覚えがある。
    狭い狭い世界の中で、だけどそこで生きていかなきゃならなくて、ささいなことに一喜一憂して、友達の顔色をうかがって、自分の立ち位置を確認して、泣いたり笑ったり悩んだり。
    今まで経験した嫌なこと、楽しいことの大部分が、あの頃にあったような気がする。
    この本は、50を過ぎたオバサンにもそんな思いをよみがえらせてくれました。感謝の意味をこめて、星4つ。

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著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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