- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713473
感想・レビュー・書評
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戦争物は苦手。浅田次郎じゃなきゃ避けたと思う。逃げてるわけではなく、学生時代に読んだ「人間の条件」わりと最近の「少年H」、短編で読み応えのある印象深い作品もあった。わりと敬遠してるのは、視点に疑問が残る作品が多いから。テレビドラマ等になると安易な決め付けに腹が立つ。
ともあれ、この「終わらざる夏」は良質で見逃されていた部分に焦点を当て、やや通俗的でも手を抜いていない。人物も活きているし、ロシア兵については絡ませるのに無理をした部分もあるが詰め込みたかった気持ちは判る。これは過去の悲劇じゃなく、現在の社会情勢にも通じている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまり知られていないポツダム宣言受諾後の1945年8月18日に始まった千島列島最北部の占守島における日本とソ連の戦いを最終的な題材にしている小説です。
赤紙により召集された男たち、残された妻・母親・子供たち、動員計画を策定する高官や末端で赤紙を届ける役人たち、相手の兵士、それぞれが戦争遂行に疑問を持ちながらも、翻弄されていく人生が描かれています。
貫かれているテーマは、戦争の理不尽さに尽きます。
戦争を語る時、犠牲者の人数のみが着目されますが、この小説では、その一人一人とその家族にそれぞれの人生があったという当たり前のことを再確認させてくれます。
疎開児童の場面は電車の中で涙ぐみながら読んでいました。
周囲にも勧めたい大作です。一読すべき小説です。 -
日本の若者達に読んで欲しい。
それにしても、浅田さんの“手紙”は卑怯(勿論、良い意味で)ですね。
もう、腕まくりして、泣かせにかかっている感じがします。 -
ところどころ涙する
「責任」がキーワード
この戦争は限界 軍隊が戦えても、未来を背負う子供らが壊れる 耐えられない教師が叩き壊してしまう
教育ではなく、管理になる
子ども=未来を叩き壊す国家は衰退するしかない
現代の日本にも通じる
吉江参謀元大本営参謀本部作戦課「終戦準備態勢づくり」
現場は最後まで戦いたい
これを「日本国の全体最適」=大義として説得し、納得させ、共感を生む
それを受容できるだけ、占守島の軍人のレベルは極めて高い
己個人の利益ではなく、公の利益が第一
戦争自体は大きな不条理でしかない
浅田次郎氏は一人ひとりに暖かい眼差しを向ける
人間に対する深い信頼がある -
こんだけ長い話だったのに、読んだ後に何も残らなかったというのが正直な感想・・・。
結局言いたいことが何だったのかがわからなかった。
戦争の無意味さを説いたり、もう二度と戦争はしてはいけないというメッセージを伝えたかったのかもしれないが、それにしては軽すぎてあまり心に響かなかった。
ステレオタイプな反戦感情が先行していて、読み進むごとにうんざりしてしまいました・・・。
期待をして読んだ分、がっかり度が大きかった。 -
終戦末期の千島列島の孤島・占守島での出来事を克明に記述した上下巻とも400P超える大作.読み応え十分.しかし最後が少し散漫になってしまったのが残念.戦争を知らない世代として読んでおくべき1冊.
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召集され、占守島にたどり着いた3人。
下巻でも、更に登場人物は増え、1人1人が丁寧に描かれます。
最果ての国境の島が、この時代どんな所だったのか、そこで過ごしていた人たちがどんな様子だったかと、人間ドラマが濃いため、最後はあっけなく感じました。
戦争の描写が、ロシア人の目線のため、敢えての描き方だったのかもとは思いますが、悲惨さが伝わって来ずらかった。
その分、強制収容所のシーンはきついです。
広げすぎだったかに感じた風呂敷、最後はみな回収はされていましたが、それぞれがさらりと触れられただけで、物足りなさは感じました。
でも、それが、終戦後の思いもよらない戦争の幕引けなのかもしれないですね。
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壮絶な結末。鋭利な著者の語り口にも心奪われる大作。言葉で表現できない感情に包まれたのは久しぶりだ。
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8月中に読了。淡々と、あくまで淡々と、登場人物それぞれの行く末が語られ、そこには中途半端な情はなく、われわれは思い知る。これは物語でありながら物語でなく、当時の人々の暮らしや運命と呼ぶべきそのものであるのだと。その抑えた筆致がそのことを際立たせる。浅田さん、よくぞ書いてくれましたと言うべき。