- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713732
感想・レビュー・書評
-
馴染み難い世界だったのでなかなか進まなかった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1/435
-
直木賞受賞作で読んでいないものを調べて、探して図書館で借りました。
私の好きな時代の小説でした。
ただ、私が途中で他の書籍と同時読みをしたために、そこまでのめり込めず。
変化の時代に生きる人の葛藤がわかる。
ポン太の存在が謎めかしい作品にしている。 -
2016 11 26
-
☆4
-
明治維新後の時代に翻弄される遊廓の人々。ポン太が漂砂について語る場面が印象的。「水面はさ、いっつもきれいだけどなんにも残さず移り変わっちまうでしょう。でも水底で砂粒はねェ、しっかり跡を刻んでるんだねェ」すべてを奪われたはずの自分であるのに、何かしら跡が刻まれている。周りが奪えるのは些細なもの。芯にあるものは奪われない。静かに肩を震わせて泣く定九郎の姿が心に残った。結局、己からは逃れられないってことなんだろう。文章が絶品だった。
-
すごく面白いというわけでもないけど読後感がいい時代小説でした。
-
第144回直木賞を受賞した時代小説。
時は明治10年。遊廓で働く25歳の男が主人公だ。
元の身分を隠し、鬱屈とした気持ちを抱えながら生きている。
徳川の世が終わり新しい時代になった時、「武士」は突然身分を奪われた。身分制度の代わりに流入してきた、「自由」や「平等」。当時の一部の人々にとって、この言葉は恐怖だったのかもしれない。
時代小説をあまり読まないせいか、最初は読み進めるのに時間がかかった。慣れてくれば心地よく、物語の世界により深く誘ってくれる。 -
諦め感が全体に漂う中、それに支配されることのない小野菊の意地と気負いない品格が光っている。
明治維新の町の空気も伺い知れて面白い。 -
「水面はさ、いっつもきれいだけどなんにも遺さず移り変わっちまうでしょう。でも水底で砂粒はねェ、しっかり跡を刻んでるんだねェ」
明治維新から十年、刷毛で塗り替えるように新たな慣習や思想が過去を覆ってゆくなか、その急激な変化についてゆけないまま谷底の遊郭で砂粒のようにうごめいている人びとの姿を彼らの焦燥や哀感とともに描いている。その中で、「駕篭の鳥」という身分ながら決然と時代に立ち向かう花魁「小野菊」、ある種の諦観をもって飄々と生きる狂言まわし役の「ポン太」が印象的。まさに漂砂のような速度で物語が進行するなか、後半、現実が三遊亭圓朝の噺とリンクしてゆく部分がスリリング。はたして、その後の言文一致運動に小野菊は一役買ったのだろうか……。