つるかめ助産院

著者 :
  • 集英社
3.70
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本棚登録 : 2317
感想 : 467
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713794

作品紹介・あらすじ

辛い出生の秘密を抱えるまりあは、ある日突然失踪した夫を探して、南の島をおとずれる。島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられて-。すべての命に贈る、誕生と再生の物語。「今ここにいる」ことの奇跡を力強く描き出す感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 夫が失踪し、ふらふらと思い出の南の島を訪れたまりあ。島をポツンと一人歩いているときに声をかけてきたのが、島の助産院のつるかめ先生だった。まりあはつるかめ先生に、妊娠していることを告げられ、成り行きからつるかめ助産院で住み込みで働きながら、出産までの日々を過ごすことになる。

    ゆっくりした時の流れる南の島で、おおらかな先生の助産院。地元の食材を使った美味しそうな日々の食事。
    "そうだ、私も、母親とこんなふうにへその緒で結ばれていたのだ。ずっとずっと、遥か彼方にいる人達とも、すべてがへその緒を通してつながっているのだ。"
    自分の出自を否定的なものとしか捉えられなかったまりあが、お産でへその緒を見て、母との確かなつながりを発見する。
    皆それぞれに色々なものを抱えているのだけど、
    "生まれてきてくれてありがとう"
    これに尽きるのだろう。

    私は自然なお産にこだわる気は全くなく、無事に生まれてくれたら形なんて何だっていいと思う。でも、現代でも自然のリズムに合わせた生活の中で、月の満ち欠けや潮の満ち引きに合わせたお産ができるのであればそれはとてもいいこと。お産はヒトの中の野生が開眼する、太古から続いてきた原始の営みだし、お産と自然を切り離して考えることはできない。
    「あなたは育む人なんだから、それだけでもう、立派に仕事をしてるんじゃない」と言ってくれる先生。
    あぁ、不安な気持ちでいっぱいだったあの頃に読みたかったなぁ。
    ほんと、妊婦さんはポワーンと力抜いてリラックスして、赤ちゃんと身一つの妊婦ライフを楽しんでほしいな。身近にこういう風に言ってくれる人がいてくれるといいなと思うし、私もそういう人になりたい。

    全体に好きなタイプのお話なのだけど、最後だけは唐突すぎてついていけなかった。私なら、今更現れて何やねん!と言ってしまいそう(そもそも失踪の理由がよくわからない)。
    まぁ二人の間では特段の言葉がなくても伝わっているようだったので、まりあが幸せならよかったです(笑)

    ★3.5

  • 南の国でであった人たちの優しさと命の誕生の神秘、自然の力を感じる物語り。

    主人公・小野寺まりあが、突然失踪した夫を探しに過去にともに来た南の島を訪れる。
    途方に暮れながら出会った島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられる。自分の生に対してネガティブなまりあが、自身の妊娠を通して人の生、自然の力を受け入れていくようになる。

    はじめて、小川糸さんの作品を読んだ。物語は、南の国の自然、人間の生の自然を感じ、素直な気持ちで受け入れることの大切さを教えてくれる作品。

    本作の出産シーンで「さっきつるかめ助産院にやって来た時とは別人になっていた。その姿は、野生動物そのものだ。」とある。出産は、決して綺麗な、美しい、幻想的なシーンではないことがこの説明でもわかる。確かに小さい産道を赤ちゃんが通ってくるのだから、母体にかかる痛みに絶叫することもうなづける。それでも、太古から、母親は同じ方法で出産してきている。医学が発達した現代でも、昔と変わりなく女性にとっては大変な儀式である。
    だからこそ、神秘的なもので、それは自然の支配下にある儀式であると感じざる得ない。

    お腹の中に命が芽吹き、十月十日の間、母と子はへその緒で繋がっている。お腹の子の成長と共に母もまた一緒に親となる準備をする。そして、まりあも自分が母となるための心の変化を自分の誕生や成長について、冷静に見つめ、徐々に受け入れていくようになる。

    島に来た時のまりあは夫に置いていかれた不安で、結婚生活でようやく見つけた自分の居場所にひとり取り残された悲しみだけで、それでもなお夫にすがろうとしているように思えた。だから「頑張って!」と、応援することさえ躊躇してしまうし、母になることができるのだろうかと、不安にも感じた。

    それが、島の自然と先生やパクチー嬢、ジミー、長老たちの優しさの中で、母になるという気持ちの準備をだんだんと整えていき、ひとりで生きていけるまでに成長している。これは自然がもたらす母の強さだ。

    その変化を本作はゆっくりと綴っていて、読み進めるスピードにそれを感じるスピードがゆっくりと、ゆっくりとついてきているような感覚であった。

    本作の中で、こんな考え方をしたいなぁと思ったところがある。

    「われたお茶碗を『器』と書いてある石の下に埋める。『地球からいただいたものは、また地球に戻さなきゃ。器だって、もともとは土でしょう?だったら、土に返してあげたら喜ぶと思う』」

    「大きい木には大きな影ができるし、小さい木には小さい影しかできないの。亀子は誰が見ても大きくて立派な木よ。でも、あんなに明るくて元気だからこそ、その内面に真っ黒い影を包んでいるのかもしれない。」

    こんなふうに考えながら日常を過ごしたいし、人と接したいと、思える一冊であった。

  • ドラマの方は見逃してしまいました…

    小川さんの作品はいつも食べものの描写が丁寧で、読んでいるとお腹がすいてしまいます。殻まで柔らかい海老のココナツカレー炒め、ニンニクたっぷりのカマイ(イノシシ)団子鍋、ハイビスカスの天ぷら…。

    夫の失踪、思いがけない妊娠に戸惑うまりあが、島の助産院に身を寄せるうち、心にあたたかいものが広がっていく…
    ラストにかけての展開が強引すぎて置き去りにされた感はありますが、新しい命の誕生には素直に感動しました。
    母もこんなに壮絶なお産の末、私を産んでくれたのか〜。ありがたや、ありがたや。
    病院によっても方針は違うだろうし、助産院も含め、妊婦さんには産む場所を事前に選ぶ自由があるけど、赤ちゃんの状態や自分の体質などでも慎重に選ばないと…。カンガルーケアも、赤ちゃんによっては良くないとも聞くし…大学病院のベテランの産科の先生でも手こずるお産だってあるんだから。この本自体は病院で産むことを否定したり、助産院を推奨している訳ではないけど、あまりに美しすぎ・優しすぎる展開に、読み手が「絶対島の助産院で産む」と影響を受けてしまわないか、少し心配になりました。

    こんな私もいつか、育む人になれるのだろうか。

  •  小川糸さんがごはんを書くとどうしてこうおいしそうに聞こえるのか。
    南の島での話で沖縄料理の本を参考文献にしている。
    ハイビスカスの天ぷらってどんな味がするのだろう。

     つるかめ先生のおおらかさが眩しかった。わたしもこんな人に声をかけられて人生変えてみたい。いや、人生かわる出会いが欲しい。
    どっちも他力本願だな。(笑)

  • 辛い出生に苦しみ続けたまりあ。唯一見つけた居場所だった夫は突然目の前を去り、絶望の中思い出の場所で身ごもったことを知る。
    つるかめ助産院の人々と触れ合いながら、自分の生きる意味を知り、自分が幸せであることを実感する。
    誰もが辛い思いを抱えて生きている。どんなに不幸にみえても、少しだけ見方を変えるとちゃんと幸せは目の前にある。不幸の鎧を纏っていないで、一歩自分から幸せに手を伸ばしてみると、いろんなことが変わって見えるのかもしれない。
    小野寺君は何してたんだろーとややもやっとするが、命の誕生を実感できるラスト。

  • リアルっぽく書いてるけど上っ面すべり。
    お産や妊娠に関する記述のほとんどが、信ぴょう性のない、『自然派志向』の人だったら喜ぶような内容ばかり。
    自分の考えに同調して欲しくて書いたような、自己満足さにあふれる文章。
    物語を自分の思い通りに進めるために、無理矢理な設定作りをしたり、人を殺したり。
    登場人物に感情移入できない。好きになれない。
    ふわっふわな、脳内お花畑の妊婦さんにはちょうどいいのかも。
    料理の記述だけ力入ってて、そんなに料理好きなら、料理本でも出せばいいのに。小説なんかやめとけ。

    あとがきの主な参考資料が、ふわふわ本ばかりで、お産や妊娠について偏った考えで作ったのが丸分かり。

    この本を素敵と思う人は、雰囲気に流されるタイプの人なのだろう。

    この本が原作のドラマも漫画も見たけれど、原作が一番の駄作に思う。

  • 現実味がない、と言えば語弊があるか。
    読み進める程に説得力の無さが目に付くこの作品は心や感情の動きから生じるものを蔑ろにして成り立った代物に見える。何がしかの不幸な生い立ちを背負い乗り越えてきたであろうはずの登場人物達へ私は心を沿わせる事が出来なかった。
    言い過ぎかも知れない。
    だがまりあの妊娠中の経過、出産の描写もそうであるのだが彼等の傷を著者はきちんと己が痛みとした上で本書を仕立てたのか、甚だ疑問に感じられる。ただただ空想のみの産物に思える所為で私の肌に合わない作品だった。

  • 南の島での自然と生きる生活と、妊娠出産という自分の力が及ばない状態は似ていることが多くて相性が良いと思った。

  • ああしてくれなかった、こうしてくれなかった、
    と不幸を周りの人のせいにして、
    今、自分に与えられているものを
    全く大切にしていない精神的に幼い主人公が、
    子を宿し、南の島で人の愛情や温もりにふれ、
    豊かな自然や食に癒されながら前向きになっていく、
    という一見感動的な話ですが、
    最後の最後でものすごく興ざめです。

    小野寺くんが失踪した理由が一切不明。
    しかもクライマックス時に忽然と現れるなんて・・・??

    この展開、ちょっとありえないでしょう。

    たとえシンママになったって、
    この島で息子と二人、感謝の気持ちを忘れずに
    生きていくんだ!という決意で終わる方が、
    よっぽど私にはしっくりきたかも。

    それから、食べ物については素敵な描写をする
    作家さんだと思いますが、
    妊娠~出産~育児の実体験はあるのでしょうか。
    巻末にずらずらと列挙された大量の参考文献から
    知識を仕入れて書き上げたような印象を受けました。
    リアリティに欠けている気がします。

    ということで、すみませんが★2つで。

  • 素晴らしい本だった。

    生命の誕生、
    人との出会い。温かみ。

    小川糸さんの本、
    やっぱりとても大好きだなぁと思う。


    へその緒で繋がった自分の赤ちゃん・・・
    産める日がくるのかな。

    いやー大感動。
    泣く泣く。ぼろぼろ泣いた。
    お産って、やっぱりとても神秘的で奇跡的なこと。

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2021年 『グリーンピースの秘密』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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