つるかめ助産院

著者 :
  • 集英社
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感想 : 492
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713794

作品紹介・あらすじ

辛い出生の秘密を抱えるまりあは、ある日突然失踪した夫を探して、南の島をおとずれる。島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられて-。すべての命に贈る、誕生と再生の物語。「今ここにいる」ことの奇跡を力強く描き出す感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「母親」は最初から完璧な母親だったわけではない。
    命を宿したそのときから「母親」になれた人などいない。
    驚いて、喜んで、だけど不安や怖さもたくさんあって、
    きっとみんな、悩みながら、自分なりの「母親」になっていく。

    家族についてある過去をもつまりあが、妊娠して出産するまでを描いた作品。
    最後、いざ出産するシーンは確かにばたばた感があったが
    トツキトオカという長い期間を考えると、現実でもそういう実感になるのかもしれない。

    妊娠後期、臨月の少し手前の今の時期に読んでよかった。

    • アールグレイさん
      衣都さん(*^_^*)こんにちは

      私もこの本は読みました。でも、最後に旦那さんがどんな現れ方をしたかが、思い出せません。
      間違えたらごめん...
      衣都さん(*^_^*)こんにちは

      私もこの本は読みました。でも、最後に旦那さんがどんな現れ方をしたかが、思い出せません。
      間違えたらごめんなさい(^-^; “臨月の少し手前の今”ということは、もしかしてオメデタですか?とにかく、体は大事にして過ごして下さいね!
      (^。^∥~…
      2023/09/03
  • 南の国でであった人たちの優しさと命の誕生の神秘、自然の力を感じる物語り。

    主人公・小野寺まりあが、突然失踪した夫を探しに過去にともに来た南の島を訪れる。
    途方に暮れながら出会った島の助産院の先生から予期せぬ妊娠を告げられる。自分の生に対してネガティブなまりあが、自身の妊娠を通して人の生、自然の力を受け入れていくようになる。

    はじめて、小川糸さんの作品を読んだ。物語は、南の国の自然、人間の生の自然を感じ、素直な気持ちで受け入れることの大切さを教えてくれる作品。

    本作の出産シーンで「さっきつるかめ助産院にやって来た時とは別人になっていた。その姿は、野生動物そのものだ。」とある。出産は、決して綺麗な、美しい、幻想的なシーンではないことがこの説明でもわかる。確かに小さい産道を赤ちゃんが通ってくるのだから、母体にかかる痛みに絶叫することもうなづける。それでも、太古から、母親は同じ方法で出産してきている。医学が発達した現代でも、昔と変わりなく女性にとっては大変な儀式である。
    だからこそ、神秘的なもので、それは自然の支配下にある儀式であると感じざる得ない。

    お腹の中に命が芽吹き、十月十日の間、母と子はへその緒で繋がっている。お腹の子の成長と共に母もまた一緒に親となる準備をする。そして、まりあも自分が母となるための心の変化を自分の誕生や成長について、冷静に見つめ、徐々に受け入れていくようになる。

    島に来た時のまりあは夫に置いていかれた不安で、結婚生活でようやく見つけた自分の居場所にひとり取り残された悲しみだけで、それでもなお夫にすがろうとしているように思えた。だから「頑張って!」と、応援することさえ躊躇してしまうし、母になることができるのだろうかと、不安にも感じた。

    それが、島の自然と先生やパクチー嬢、ジミー、長老たちの優しさの中で、母になるという気持ちの準備をだんだんと整えていき、ひとりで生きていけるまでに成長している。これは自然がもたらす母の強さだ。

    その変化を本作はゆっくりと綴っていて、読み進めるスピードにそれを感じるスピードがゆっくりと、ゆっくりとついてきているような感覚であった。

    本作の中で、こんな考え方をしたいなぁと思ったところがある。

    「われたお茶碗を『器』と書いてある石の下に埋める。『地球からいただいたものは、また地球に戻さなきゃ。器だって、もともとは土でしょう?だったら、土に返してあげたら喜ぶと思う』」

    「大きい木には大きな影ができるし、小さい木には小さい影しかできないの。亀子は誰が見ても大きくて立派な木よ。でも、あんなに明るくて元気だからこそ、その内面に真っ黒い影を包んでいるのかもしれない。」

    こんなふうに考えながら日常を過ごしたいし、人と接したいと、思える一冊であった。

  • ドラマの方は見逃してしまいました…

    小川さんの作品はいつも食べものの描写が丁寧で、読んでいるとお腹がすいてしまいます。殻まで柔らかい海老のココナツカレー炒め、ニンニクたっぷりのカマイ(イノシシ)団子鍋、ハイビスカスの天ぷら…。

    夫の失踪、思いがけない妊娠に戸惑うまりあが、島の助産院に身を寄せるうち、心にあたたかいものが広がっていく…
    ラストにかけての展開が強引すぎて置き去りにされた感はありますが、新しい命の誕生には素直に感動しました。
    母もこんなに壮絶なお産の末、私を産んでくれたのか〜。ありがたや、ありがたや。
    病院によっても方針は違うだろうし、助産院も含め、妊婦さんには産む場所を事前に選ぶ自由があるけど、赤ちゃんの状態や自分の体質などでも慎重に選ばないと…。カンガルーケアも、赤ちゃんによっては良くないとも聞くし…大学病院のベテランの産科の先生でも手こずるお産だってあるんだから。この本自体は病院で産むことを否定したり、助産院を推奨している訳ではないけど、あまりに美しすぎ・優しすぎる展開に、読み手が「絶対島の助産院で産む」と影響を受けてしまわないか、少し心配になりました。

    こんな私もいつか、育む人になれるのだろうか。

  • まりあの言動にところどころ引っかかっていた。それが何かは深く考えず、読み進めていたが、サミーが言った「捨て子、捨て子ってそんなこと自慢すんなよ」「なんだかんだ言って、そのことにしがみついて生きてるっていうか、それをアイデンティティにしてるように見える」ってことに納得。それを感じていたから引っかかっていたのかも。
    それに、最後の出産はあっさりしすぎて拍子抜け。
    小野寺くんが突如現れて、「おかえりなさい」「ただいま」「産んでくれてありがとう」「これからもよろしく」って、なんじゃそりゃ。

  • 本屋さんで見かけて、気になっていて、図書館でも見つけたので読んでみることに。
    小川さんの作品は読みやすい。文体が私に合っているのか、一気に読んでしまった。
    人との繋がりが暖かく、大事なことに気づかせてもらえる作品だった。主人公の旦那さんは何でいなくなっちゃったんだろ?

  •  小川糸さんがごはんを書くとどうしてこうおいしそうに聞こえるのか。
    南の島での話で沖縄料理の本を参考文献にしている。
    ハイビスカスの天ぷらってどんな味がするのだろう。

     つるかめ先生のおおらかさが眩しかった。わたしもこんな人に声をかけられて人生変えてみたい。いや、人生かわる出会いが欲しい。
    どっちも他力本願だな。(笑)

  • つるかめ助産院のような場所があったらいいな
    私もまりあのように、先生やパクチー嬢、エミリー、サミー、長老に囲まれて暮らしたいな
    そんなことを素直に思えるくらい、島や人々の描写が温かくて癒される。
    人と関わることにも、自分から何かをすることにも後ろ向きだったまりあが、島での暮らしや妊婦としての生活の中で自立し、再生していくさまは、読んでいてとても清々しかった。

    それだけに、まりあの夫・小野寺くんの扱いが残念…
    小野寺くんの失踪から始まったこの物語、小野寺くんと子どもと3人の生活に向かうラストはハッピーエンドなのだろうけれど、ここまでしっかり自立できたまりあは、なぜ突如戻ってきた彼のことを受け入れられたのだろう?
    そもそも小野寺くんはなぜ失踪し、なぜしれっとまりあの前に現れた(戻ってきた)のか?
    そのあたりがもう少し詳しく語られていたら、もっと納得してラストを読み進められたのではないかな、と感じる。

  • 辛い出生に苦しみ続けたまりあ。唯一見つけた居場所だった夫は突然目の前を去り、絶望の中思い出の場所で身ごもったことを知る。
    つるかめ助産院の人々と触れ合いながら、自分の生きる意味を知り、自分が幸せであることを実感する。
    誰もが辛い思いを抱えて生きている。どんなに不幸にみえても、少しだけ見方を変えるとちゃんと幸せは目の前にある。不幸の鎧を纏っていないで、一歩自分から幸せに手を伸ばしてみると、いろんなことが変わって見えるのかもしれない。
    小野寺君は何してたんだろーとややもやっとするが、命の誕生を実感できるラスト。

  • 最近出産を終えた友人に勧められて読みました。  

    産まれることも死ぬこともそんなに変わらないんじゃないかな、空気のトーンが一緒
    おごそか、神聖、人間の手には及ばない神様の領域

    というような文章が出てくるんだけどとても印象深かった。
    ご飯や景色の描写がすごく好きです。
    赤ちゃんを産みたくなる本。

    結末はだだだだたーっと過ぎてしまい、ハッピーエンドだけどあっというまでもう少し楽しみたかったです。

  • 温かい人のご縁に、命のつながりに、感動感涙しました。

    二度捨てられる…こんなにも悲しいことってあるのかなと嘆いてしまいますが、南の島で出会った人たちとの交流で心の傷を癒し、やがて出産へ。

    前半は、たくさんの情報や人付き合いに疲れてしまった人へ、ささやかだけども尊い時間をゆっくりと過ごす心地良さを。
    後半は、島の人との交流から、自分の人生をこれからどう行きたいかを。

    躓いても前を向く人の物語に勇気をもらいました。

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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