来福の家

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 118
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713831

作品紹介・あらすじ

台湾、中国、そして日本。3つの言語が織りなす初めての快感-在日台湾人の著者が解き放つ新しい文学、誕生!第33回すばる文学賞佳作受賞作品「好去好来歌」収載。

感想・レビュー・書評

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  • 台湾ー中国ー日本。
    幼いころに日本に来日して、文化の狭間に生きる葛藤や、違和感や、美しさを、日常のつぶさな記述でしっとりと織り上げていく。芥川賞の選考過程で「対岸の火事で共感できない」という感想を述べた選考委員がいたが、それぞれの文化の「囚われ」について、境界にいる人だから気づくことができる。結婚に伴う苗字の変更のこととか、名前の音が変わることの感覚とか。そうした意味で、今の日本社会に新たな気づきを与える、あまりに繊細な文化人類学的考察でもある。

  • 「好去好来歌」「来福の家」の2編がおさめられている。
    私は読後感がすっきり幸福感が残る後者が好き。
    2編とも台湾生まれ日本語育ちの作者でしか書けない、気づけないエピソードがちりばめられているようで興味深かった。自伝的小説?次のほかの作品を読んでみたい。また、2編とも親戚や祖父母さらにはその上の世代までの血縁の強いつながりを感じさせるお話だなぁと思う。私がそういったつながりをあまりもたないので、敏感になってしまっているのかも。
    「好去好来歌」は黒髪のほっそりした主人公で姚愛寗を想像しながら常に映像を観るように読みすすめた。映画にできそう。台湾人で日本語が不得意な母との衝突に悲しくなってしまった。望まずに日本育ちとなってしまった自分との葛藤とまざってしまい自分では制御不能となってしまう少女のこころのもやもやを想いこちらが苦しくなる。
    「来福の家」は前者と似た境遇ではあるが、主人公笑笑は少しふっきれているように感じられる。少し大人というか。自分の中のバランスも自分でとることができているようで安心して読み進めることができた。笑笑と姉がふたりしかできない言葉さがしをするところ、笑笑と里実が秘密の名前をもつところの女子特有のキラキラコソコソクスクストークの場面がお気に入り。笑笑がウェイウェイを連れて迷子になってしまった日の描写が暑い気温と色濃い緑と台湾の音が感じられ、むあっとした。姉歓歓が子供にどんな名前をつけたのか気になるところ。

  • 文学作品という観点からは色々批判できるでしょうが、率直に言って面白かったです。著者の個人的な経験、葛藤を生にぶつけているのだけれど、そういう小説で優れたものはいっぱいあるし、そこを突き抜けた先に行きつつあると思う小説でした。

  • 日本語を話し、ずっと日本に住んでいるけれど日本国籍ではない主人公達の、日常にしばしば現れる裂け目やひずみ。
    対岸の火事なんかじゃない、同じ岸で起きていることだ。
    胸の痛くなるところも多かったが、真摯に寄り添う作者の体温が感じられ、読後感は二篇とも良かった。
    表題作が特に好き。

  • 芥川賞候補作の選評が話題になっていたので、興味が沸きました。

  • 台湾生まれ日本育ちの作者による2作品を収録。
    名前と国籍が日本ではないことで、日本人独特の余所者を見る目で見られることもある中で、成長して行く台湾生まれ日本育ちの主人公。
    台湾と日本と中国の複雑な関係と、台湾語と日本語と中国語が飛び交うほのぼのと暖かい雰囲気の家庭で育ったのであろう作者の柔らかい文章のギャップが良い塩梅で混ざっています。
    とても台湾に行きたくなりました。

  • 同級生のだれもが、日本語を話すおかあさんがいて、パスポートが日本国発行で、中国語は習うものであって…自分は日本での生活は長いのに、おかあさんの日本語は完璧ではないし、パスポートは日本国発行でないし、中国語も習わないと話せない。いろいろな葛藤が個人の中にくすぶっていて、そこを想像しながら、リービ英雄や柳美里の作品を思い出していました。

  • わたしとほぼ同年代の、日本で育った台湾国籍の女の子の話。悲痛な1話目も、ほんわかした2話目もどっちも作者が感じたことがある気持ちなんだと思う。1話目が鋭くてよかった。言葉の話がメインだったけど、生活習慣でも色々なエピソードがあるんだろうな。

  • 2009年すばる文学賞佳作。両親が台湾人で、3歳から日本で育った著者が書いた、ほぼ自身と同じ境遇の女性が主人公の話。日本語と台湾語と中国語が途中に入り混じり、主人公の両親、祖母の話、今の恋人との話と行ったり来たりして読みづらいところもあったけれど、根底に流れている温かさ、みたいなところがよかった。

    表題作が後半に収められているけれど、こっちは更にストーリーがなかったけれど、まあ、明るい光に満ち溢れていて、なるほど〜、言葉は音かと思いながらさーっと読んだ。

  • 装丁がかわいい。

    読みやすかった。
    台湾語と中国語と日本語が混じる生活。
    台湾に住んだからかその感覚が少し分かる気がした。

    もう少しでやっぱりまた台湾に住もうかなーと思ってしまった。日本語教育を受けた世代がまだ生きているうちに。

    あと分かる。田中くんの気持ちも。
    必要ないんだけど、自分の中国語が試してみたくなってしまうのだ。通じるかなーって。

    中華料理屋でそう思う事よくある。

    「幸福の家」読んでまた日中学院通いたいなと思った。
    いつかまたね。

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著者プロフィール

温 又柔(おん ゆうじゅう)
1980年台北市生まれ、台湾籍の小説家。台湾人の両親のもとで生まれ、3歳から親の仕事の関係で日本に住まう。法政大学国際文化学部卒業、同大学院国際文化専攻修士課程修了。
2009年「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作となり、作家デビュー。2016年『台湾生まれ 日本語育ち』で第64回日本エッセイストクラブ賞受賞。2017年『真ん中の子どもたち』で第157回芥川龍之介賞候補。2018年、新刊『空港時光』を発行。

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