- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713961
作品紹介・あらすじ
したい、されたい、なりたい、ほしい。千年前に紫式部が考えていたこと。秘密をばらしたい、乱暴に迫られたい、待っていてほしい、ほか、紫式部がぐっと身近になる全19章。『源氏物語』の新しい読み方。
感想・レビュー・書評
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源氏物語を原文で読み終えた酒井氏は、紫式部という女性に興味を持った。受け身であることが女性に求められた時代に彼女が源氏物語を書いた理由を鬱屈した己の欲望を発散させるため、と定義して読み解く。
氏の軽めのエッセイを読み慣れた身にはかなりしっかりと読み応えを感じる作品だった。氏はどちらかと言えば清少納言タイプだと思うけれど…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
改めて、すごいなあ酒井順子!!と思いましたね。人間観察眼の鋭さ、古典がテーマでもばっちり発揮されており、あまりにも的確なツッコミについ笑ってしまった。
何が斬新って、「源氏物語」を紫式部の「欲望」という視点から読み解くとは。物語のあちらこちらに紫式部の「~したい」がちりばめられており、今更ながら「そんな解釈もありなのか!!」と新鮮に感じたのだった。紫式部って、何気に意地悪?書くことで鬱憤を晴らしていたのかという部分が垣間見られ、むしろ親近感がわくというもの。昔の人も色々どろどろしていたものを抱えており、千年前とはいえ、共感ポイントはそう変わることはないんだよな、と。
源氏をとりまく女性達を「源氏ガールズ」と表現してみたりとライトなノリでユーモラスに解説してくれた酒井さんだが、しっかり読み込んでいるからこそできること。原文も多数引用しており、自分もいずれは原文で読めたらなと思ったのだった。
その前にまずは現代語訳だな。 -
学生時代に周囲の友人達が「あさきゆめみし」を読んでいて、その話を聞くにつけ、源氏のゲスさ加減に嫌悪感を感じ避けてきた。
著者の「枕草子REMIX」を先に読み、この著者の解説なら読めるかも知れないと挑戦。結果読んで良かった。やはり酒井氏も予想通り源氏のゲスさにムカついていらした。ほっと胸を撫で下ろす
源氏のモデルは時の人、藤原道長ではなかったか、という説。もしそうなのであれば、紫式部は道長に当初は尊敬の念を感じることもあったかも知れないが内心は女性を物のようにとっかえひっかえしていることに対する批判があの物語の中に含まれていはしまいか。道長には面と向かって非難出来ないので、紫式部はそこを強調させないようにそれとは分からないように光源氏を魅力的に描き出し実はそのゲスさ、卑劣さを批判していたのではないか、大奥の女性陣らで「あいつゲス!」と言いあって陰では軽蔑していたのではあるまいか、とすら感じてしまった。
現代の女性達が光源氏にムカついている方々多数なのだから今より自由でなかった平安時代の女性達はその不自由さと男達の身勝手さ相まって悶々とムカついていたとしても不思議ではない。紫式部のような能力の高い女性なら尚更女だと思って馬鹿にすんなよ、自分が男だったらお前には負けない、くらい内心絶対思っていたはずだ。
酒井順子氏の著書は世の中に対する噛みつき具合がスカッとさせてくれて大変面白くストレス発散になる。また古典文学に興味を持たせてくれる1冊だった。 -
目次が欲望だらけで面白い。
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先日この7年前に書かれた『枕草子REMIX』を読みましたが、この『紫式部の欲望』はそれよりはるかに優れた作品でした。
資料である作品が『枕草子』だけであったのに対し、こちらは『源氏物語』以外に『紫式部日記』『紫式部集』も参考にしているから、いろいろな角度から見られるということがあるでしょう。
また『枕草子』より『源氏物語』のほうが断然ポピュラー。
そしてこの7年で酒井順子さんの作家としての腕が非常に上がったといえるのでは。
光源氏やルイ15世のようなタイプは大嫌いで、「どうしてこんな人に美女たちがなびくの…」とがっかりするのですが、この本を読むと『源氏物語』はそれだけではなく、とても深い意味があるのだ…と順子さんの読み解きを読んで思います。
私の心にしみじみと残った紫式部の欲望第一位は「娘に幸せになってほしい」です。
順子さんは「清少納言と親友になれそう」と言われましたが、はい、彼女は清少納言に近いような気がします。
でも私はどちらかというなら紫式部だな。ウェットなところ。
紫式部集にこういうのがあります。
「若竹の おひゆくすゑを 祈るかな この世をうしと いとふものから」
紫式部はこの世を「憂し」と思っているけれど、幼いわが娘が成長する行く末は、どうか無事であってほしいという内容の歌なのです。
順子さんは源氏ガールズの娘たちから3人挙げますが、源氏は彼女たちには手をだすことなく、また彼女たちは幸せな人生を送ったそうです。
紫式部の娘賢子は、母の祈りどおり幸せな人生をおくります。
酒井順子さんのお言葉をのせます。
「不幸な女性が多く登場する源氏物語の中で、娘たちが幸せになっていく姿は、私達をほっとさせます。その背景に、作者の母としての愛があるとするならば、
その愛こそが、この物語の中の救いとなっているような気がするのでした。」 -
源氏物語を通じて紫式部や時代を考察している本です。
サバサバと言い切っていく書き方に面白く読ませてもらいました。
おそらく酒井さんの本は読むの初めてだと思うんだけれど好きになりました(笑)
紫式部って人や物事に対しても何でも考えすぎる人なんでしょうね。
もうちょっと楽になればいいのに…。
多分私も紫式部と同じタイプだから何となく気持ちがわかります。 -
こういう観点で読めば「源氏物語」も読破できるかも?物語を操るのは作者。痛快。
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腑に落ちるっていうか“なるほど”って感じ。
当たり前なんだけど、紫式部も矛盾を抱えた人間だったんだろうな。
女なら“わかる”というか共感出来る部分が結構あるはず。