柿のへた 御薬園同心 水上草介

著者 :
  • 集英社
3.68
  • (21)
  • (37)
  • (49)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 250
感想 : 56
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714203

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ★3.5

    小石川御薬園は、薬草栽培と御城で賄う生薬の
    精製をする幕府の施設だ。
    水上草介は、二十歳で水上家の跡を継ぎ御薬園の同心を賜り、
    二年という青年同心。
    そんな草介のもとへ、悩みを抱えた者たちが訪れるーー。


    人並み外れた草花の知識を持つものの、
    のんきに植物を眺めているのが好きだという
    のんびりした性質の上に、どうも人より反応が一拍遅い。
    おまけに手足がひょろ長く、吹けば飛ぶような体躯の為、
    『水草さまぁ』と呼ばれているが意に介さない。
    皆に親しまれているんだなぁ。
    御薬園の中で穏やかに日々が過ぎて行く。
    緑が匂い立つ様な、草花やせせらぎが浮かぶ様な
    その穏やかさが、とっても気持ち良い。
    それでも、揉め事は起きるもので、その難事を
    草介が草花の知識をいかして収めていく。
    草介の植物に向けられる愛情も微笑ましく、
    植物についても、解り易く説明されている。
    今も、耳にする名前や効果も多く登場し、
    うわ~江戸時代から繋がってるって思うと凄いって思った。

    御薬園を預かる芥川家のお転婆娘・千歳との関係も微笑ましかった。
    全く、異なる様な二人だけど、芯には同じ優しさに溢れている。
    二人のこれからが、とっても気になります。
    緩やかな時間と、優しさに満たされていて気持ちが和らぎます。
    穏やかで、優しい気持ちになれました。
    続編が出ているとの事。読むのが楽しみ♪

  • 水草さまの、植物を愛し、マイペースながらも自分の目で見て、地に足つけて考える姿が癒される。

  • 主人公の水上草介さんがとっても素敵。水草ってあだ名がしっくりくる。こんな人が周りにいたらほんわかしていいな。千歳さんも好き。ふたりがうまくいってほしいなぁ。

  • やきもきさせられっぱなし。
    朴念仁の鈍感にも程がある。
    時に「わざとやっているのか」とも思わせる。
    心を弄んでいるようにも感じた。
    千歳は大変な人を好きになったもんだ。
    さっさと幸せになれい。

  • さらっと読める癒し系時代小説。 あだなの「水草どの」はヒットでしたが、千歳の人物設定が極端すぎて今一つピンとこない。

  • 小石川御薬園同心・水上草介。
    草花の知識を生かし、薬草栽培、生薬の精製に
    つとめている。女だてらに若衆髷を結い、袴姿で
    剣術道場に通うお転婆娘・千歳におされながらも
    揉め事を穏やかに収めていく連作短編集。

    主人公、水上草介、通称水草様のキャラクターの
    おかげもあってのんびりのほほんとしていて
    当時の日常の謎系の事件も起きるのですが
    すっごくハラハラすっごく泣けるという
    感じではなくてほんわか読めます。
    御薬園の緑が目に浮かぶような
    穏やかで爽やかな短編集。

    「安息香」「柿のへた」「何首鳥」
    「二輪草」「あじさい」「ドクダミ」
    「蓮子」「金銀花」「ばれいしょ」収録。

    植物についてわかりやすく説明されているし
    当時でもこういう効能があると
    わかっていたのかな…と思うとすごいなぁ~と
    わくわくします。
    個人的には親子の絆を描いた二輪草と
    みかたによって違って見える人の思いが描かれた
    あじさいが好きでした。

  • お正月の新聞にて
    書評担当の方が
    新年に読む本として
    このシリーズの最新作を紹介され
    どうせなら、はじめから読んでみたい
    と思い、読んだ。
    御薬園同心の主人公と
    その身の回りで起こる出来事が
    たんたんと描かれ、
    主人公の人柄もあいまって
    安心感がある。

    やさしい文章なのに
    私には、なかなか読めず……
    慣れた頃読み終ってしまったので、
    次も読みたい。

  • 四つの星を付けようかと思ったくらい楽しく読めた。感動ではないが非常によい娯楽読み物です。同心といっても刀はからきしだめな幕府所領の薬草栽培園に勤める武士とそこの責任者の武家の娘、また底に出入りする商売人などなどまず人物設定が楽しい。短編集だがそれぞれのお話がユーモアにあふれ、ふっと微笑む事ができる作品でした。

  • 普通に面白かった。馴染みのある植物が薬になったり、じゃがいもがまだ一般的でない時代。

  • 御薬園同心 水上草介こと水草が
    日常の事件を解決していく、(本人の意志に関係なく、半ば強引に…)

    サラッと読め、ほんわかする話。
    少し前に小石川養生所の話を読んだので、御薬園との関係が分かりやすくて良かった。
    千歳との関係をみると、続編ありかな?

  • 小石川御薬園に勤める御薬園同心「水上草介」、植物好きの彼のあだ名は「水草」…植物と効用を扱った短編集。爽やかな終わり方と剣術道場に通う千歳さんとの仲も気になるので、続編あるのかな。

  • いいと思います

    水草さまの生き方

  • なんか女性視点な話だなあ・・・と。もっというと「いかにも女性の作家が書いた」って小説だなあと思いました。
    主人公がいかにもなよなよっとした感じで「女性が描く男性主人公」のテンプレートのような。「男性作家が描いた都合のいい女性像」の反対みたいな印象。

    時代考証とかはどうなんでしょうね?ヒロインの千歳さんのような人っていたんでしょうかね?御薬園ってのも実際にはどんな感じだったんだろう?ホントにこんなんだったんだろうか?と思ってしまいました。

  • 幕府に納める薬草を育てている水上草介が静かな人物で魅力的です。毎回、桜吹雪も印籠も出てこないですが、薬草の力で仕事仲間や市井の人物のごたごたをまるくおさめる。漢方だけでなく、蘭学を学び医師になることをすすめられるが、しばらくは今のまま御薬園同心で良いとのことでした。続きがあるのかな。

  • ぬぼーっとしたお人好しの草介と、お転婆でツンツンと怒りっぽい千歳。
    彼らが織り成す物語は、ゆったりとした時間が流れていて、読んでいるこっちまでほのぼのとする。

    なかなか良い。シリーズ化されないかな。

  • 草花の知識と記憶力を生かし、薬草栽培、生薬の精製につとめる、のんびりやの小石川御薬園同心・水上草介。剣術道場に通うお転婆娘・千歳にたじたじとなりながらも、揉め事を穏やかに収め、成長していく姿を生き生きと描く連作時代小説(「BOOK」データベースより)

    『一朝の夢』がすごくよくて、こちらも期待しつつページをめくりはじめましたが、期待は裏切られませんでした、よかった!
    あの作品ほど厚みのある話ではありませんが、こちらは読後爽やかで、心が清々しくなるような短編集に仕上がっています。

    職場の仲間の恋心と、気持ちを奮い立たせる安息香。
    実力はあるのに試合に勝てない少年と、しゃっくりを止める柿のへた。
    高飛車蘭方医のひそかな悩みと、腎の働きに作用する何首烏(かしゅう)。
    互いに思い合う親子と、疼痛に効く二輪草。
    きつい嫁に悩まされる隠居武士と、熱さましのお茶になるあじさい。
    御薬園縮小の風聞と、十の病に効能があるドクダミ。
    漢方を用いた新作菓子を作り出そうとする菓子屋と、滋養によいとされる蓮子(れんし)。
    大店の娘の偽物騒動と、口中の病を防ぐ金銀花。
    高名な蘭学者に見こまれた草介と、栽培しやすく飢饉の時に役立つばれいしょ。

    様々な薬効と絡めて進められるお話は、どれも小さいながらも極上品。
    どれも「ふふふ」と微笑んでしまう、あたたかなお話ばかりでした。
    登場人物もみな魅力的。
    次の作品も楽しみな作家さんが、また一人増えました。

  • こういう、極悪人が出てこない話は好き。
    千歳さんともう少しどうにかなるかな~と思ったけど。
    続編出そう。

  • 「小説すばる」に掲載した連続9編の単行本化。
    3年前のデビュー作『一朝の夢』以来、『みちのく忠臣蔵』、『いろあわせー摺師安次郎人情暦』、『迷子石』と爽やかな読後感のある作品を書いている。

    舞台は江戸小石川に幕府が設置した薬草園で、主人公は薬草の生育、園丁の管理をする同心(下級御家人)を親から継いだ水上草介。細くひょろひょろとした体つきから「水草」と呼ばれるが気にせず、好きな植物を相手にして、本草学の研鑽を積んでいる。

    反応が人よりワンテンポ遅れるが、誠実で無欲な人柄が回りから好かれ、御薬園内の療養所で本道医(漢方の内科医)と確執のある蘭方医からは科学的な取り組みの態度に信頼が寄せられる。さらに御薬園を預かる芥川家の娘で剣術に励む千歳が寄せる好意は、読者を気にさせずにはおかない。


    表題作の「柿のへた」は、千歳の通う道場の後輩で、縁戚でもある旗本の子息の寅之助が、実力があるのに試合のたびにしゃっくりが出て負けるのを見かねて、千歳からなんとかして欲しいと頼まれる。
    草介はしゃっくりを止めるのに柿のへたを粉末にして処方するが、寅之助と会って、しゃっくりは心因性で解決の道は別のところにあると気づく。
    寅之助は自分が強過ぎて、父が求めるように相手を打ちのめして怪我を負わせることを恐れる優しい心の持ち主だったため、試合に勝てば大人を相手に稽古することを父親に許してもらうことで、しゃっくりをせずに試合に臨み勝つこととができた。


    最後の「ばれいしょ」では、飢饉で江戸に人が流れ込んできている状況を危惧し、かつて御薬園でサツマイモを試作したため、備荒作物としてジャガイモに着眼して栽培を試み、それを尚歯会のメンバーから伝え聞いた高野長英に見込まれるが、長崎留学の話を断わる。
    この蘭学との関わりはこの後も続きそうな予感がする。

著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梶よう子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×