放蕩記

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714227

作品紹介・あらすじ

"母"という名の恐怖。"躾"という名の呪縛。逃れようともがいた放蕩の果てに向き合う、家族の歴史、母親の真実-。女とは、血のつながりとは…。村山由佳、衝撃の半自伝的小説。

感想・レビュー・書評

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  • 母と言う名の恐怖。躾という名の呪縛。
    私の中で読みながら、自分の母ではなく、おばの記憶がよみがえってきた。
    よみがえってきた・・では無い。思い出さないようにしているが正解だ。
    夫の浮気に悩み嫉妬し、女をこれでもかと娘に見せ付けてくる。全てはお見通しの如く、物事に首をつ突っ込み論破しようとしてくる。
    思春期の頃に聞きたくもない、性の話を体験談交えて延々語る。
    その態度は姪や甥である私達にも、否応なしにされ続ける。
    私にとっての呪縛はおばだ。
    妹である母にも嫉妬し、母そして自分の娘が亡くなった後も私達を我が子の様に縛ろうとする。
    この主人公の夏帆の母親、美紀子が娘にどれ程のトラウマを植え付けたのかわかる気がする。
    作者の村山由佳さんの半自伝的小説とあり、だからこういうものが書けてしまうんだと納得。
    「愛情がなかったとは言わない、でもまともに愛せてはいなかった。娘っていうより、女どうし張り合わなきゃいけないライバルみたい。何かこう若さへのやっかみみたいな。普通じゃなかった。異常だった。だからお前がおふくろのことを愛してられなくても、それはお前だけのせいじゃない。」実家へ帰省した帰りの車中で兄が言った言葉。

    子供なんて全く思い通りに育つ訳なんて無いのにな。かつて親が子供だった時、そうであったように。
    ここ最近暫くみていなかった、おばの夢を今夜は見そうで気持ちがざわざわしてしまう。
    明日の朝、「うなされていたよ」なんて言われ無いように、大葉と茗荷と玉ねぎたっぷりの鰹のたたきと冷えたビールで気分を上げることにしよう!


  • 自分の話かと思った。
    幼い頃男の子のように振る舞っていたこと、本当の自分のキャラクターが分からないこと、場面・状況によって演じている部分があること、何かを成し遂げたとしても「お母ちゃんのおかげ」になって自分は一切褒められないこと、両親の浮気、体のこと、名前も一文字違い、挙げたらキリがないくらい自分だった。
    「母と娘」女同士特有のマウントの取り合いのようなものに、共感しすぎた。

  • 半自伝的な本ということで、よくぞここまで書いてくれました!というのが感想。

    家庭環境が似てて読んでて辛かった。
    でも共感。
    母親って長女にはなぜか厳しいのよ。
    妹にはそこまでじゃないのに。
    何よこの差は。

    とかね。

  • 昨年11月に王様のブランチに村山さん本人が出演してこの本を紹介しました。発売日前なのに即行図書館に予約。一昨日手元に届き、分厚いけど一気に読んでしまいました。

    TVで彼女が言った言葉
    >娘の側が逆に母親の母親になるぐらい、それくらいの肝っ玉でいないと、なかなかその母との間の距離感というのは、うまく取ることができないのかなって思いますね。
    「母を愛せない」っていうことは、この世の中、口に出してもいけないような感じをみんなが持っていて、そのことそのものが罪であるような。
    でも、もしかしたらそれを一旦認めたところから新しい関係性が始まるかもしれないんですよね。


    私もその当時ほぼそういう結論に達しつつありました。
    しかも彼女の経歴に「え?!」と思い、この本を読むしかないと思いました。二ヵ月半以上も首を長くして待っていました。

    もちろん共感する部分はたくさんあるけど、中学以降の生活が私とは全然違う。読んでみないとわからないものです。
    彼女は親に隠れてずいぶんいろいろやっていました。私はその頃もその後もずーっと「親に言えない事をしてはいけない」と思っていたから。

    また彼女の自伝的小説が出たら読んでみます。

  • 読んでる途中、美紀子が嫌すぎて読み進めるのが辛かった。なぜ子供の意見を聞こうとしないのか。なぜ子供を自分の思い通りにできると思っているのか。
    夏帆がおかしくなるのももっとも。
    夏帆のようにいろいろとよく考えるのもよくわかると思った。

  • うああああああっjslsけおうvんlせふぃれうあslうぇお!!
    すばらしい!
    文章の無駄もないし、さらっとした流れで一気に読みました。
    もう絶叫するしかありません。絶対です。

  • 根っこのところで許し合えるのが家族。そうじゃない家族と過ごすのってすごくつらいよね。わかるー!と思いつつも、主人公の母親への思いが赤裸々すぎて怖かった。ここまで書き切ったことに拍手。終盤も良かった。何も変わらないけど時間が解決することもある。こんなお兄ちゃんがいてよかったね。

  • 娘にとっては母は絶対的な存在で、母を受け入れ乗り越えるということはかなり難しい行為だと思う。
    母と娘は永遠に鎖で繋がれた関係。躾という調教を施され、母の言動に怯え、顔色を伺いながら生活をする。

    男性作家が描く家族のお話より、女性作家の物語に共感し自分のことのように感じ涙を流すのは、私が【娘】だからだろう。
    実家を離れて10年以上、結婚もしている私。しかし今でも母の顔色を伺っている自分がいて愕然としてしまう。

    夏帆の、固くて柔らかくて。本人ですら触れてはならないその塊を1つ1つ薄く剥ぎ取って行く作業は、読者である私の心をも乱れさせる行為だった。

    そして母・美紀子の『認知症』が進むにつれ、美紀子のその頑な塊も1つ1つ剥ぎ取られていくことになる。

    物語が壮大な交響曲のようで、たくさんの楽章がそれぞれの痛みと彩りを作り出していた。本当に重厚な音楽を聴いているかのような感じだった。

    そして最終楽章(最終章)は『儚』
    母を赦す、という行為は今までの自分を赦す、ということだ。
    この物語が『希望』で終わってよかったと思う。
    読者の私も救われた気がした。

  •  年下の恋人と同棲しながら物書きの仕事をしている夏帆は、38歳になって今でも、母親の美紀子にとらわれている自分に気がついていた。

     「毒親」という言葉は出てこないものの、これも一種の類なのだろう。とにかくこの、コテコテの大阪弁を貫く母・美紀子のキャラクターが強烈で、この人にずっと関わらなければいけなかった夏帆の葛藤・苦悩がものすごい。機嫌が良い時と悪い時の落差がものすごかったり、父親やその愛人に対して“女”を殊更主張し、その対象を娘にまで向けてくるところだったり、自分を過剰に演じる姿だったり、読んでいるだけでしんどくなってくる部分もしばしば。でも、自分の性の奔放さを母親譲りと決め込んでいる娘も娘かと思う部分もあったり。後半、美紀子がおそらく認知症を発症したことにより、圧倒的だった存在が少しずつ弱っていくのを見ての、夏帆や父親の変化も見どころかな。かなりの長編で、単行本だとかなりの分厚さ。読むには少し覚悟がいるが、しんどいのに途中で読むのを辞めようとは不思議と思わなかった。

  • 改めて振り返ってみると自分が幼い頃に感じてたことの整理ができて、実は全く違うやん!と言うこともあるんだなぁと思うきっかけになった。新しい知識と照らし合わせてみたら思い込んでいたことの霧が晴れると言うか…
    全く同じではないけれど、自分と似たような気持ちを味わっている人もいるんだな…と所々で唸った。

    ヒモって言うのは稼ぎがないくせに大抵女より威張ってる。なぜなら自分の女に舐められたら快適なヒモ生活はそこで終わりだから。それを避けるためにありとあらゆる手を使って自分の側が支配圏や主導権を握ろうとする。

    人の脳は今の現状から逃れたいのにどうしても逃れる道がない時にその極限状態からどうやって自分を救うかというと目の前にある現実をすっかり歪めてしまう。全部自分の都合のいい様に解釈する。すると見ないふりではなく本当に見えなくなる。

    自分にはまず、尊敬という感情がなければ本当に人は愛せないのだ。相手と付き合う中でこの部分は敵わない、と感じる瞬間があるからこそ、尊敬し、信頼することができる。また信じているからこそ、安らぐことができる。

    肉体こそ40歳の女性でありながら、心は自分を守る術をろくに持たない子供でしかない。実年齢こそ下でも、圧倒的に大人と言える人間として彼はいる。無条件に自分の味方になってくれる大人から黙って頭を撫でてもらうことの幸せ。但し書きのいらない安心感。

    親の1番の愛情って実は子供に期待をしないことじゃないか?

    あんな風に文句ばかり言うくらいだったらいっそのことサッサと離婚してくれないか?母を見ていちいち苛苛したり嫌だと思ったりするってことはまだ何かに期待しているから。期待するから失望する。ならハナからしなければいい。見切理をつけれない自分が悪い。

    自分の中に流れる母の血を意識させられて嫌で嫌でたまらなかった。いっそのこと体中の血を一滴残らず抜いて取り替えてしまいたいほどだった。

    人は必ず誰かの子供として生まれてくる。どんなに親を拒絶しようと、自分がその人の子どもだと言う事実を丸ごと否定することはできない。分かっているからこそ苦しい。

    女は体の中に相手が入ってくることを許し受け容れる性だからこそ、離れ離れになった時相手が好きでいてくれていることが分かっていても寂しくて人肌が恋しくてたまらなくなる。男の抱く寂しさとは別物。

    強い牡から身も心もよこせと求められることの甘美さ。女として求めらる快感。

    性急に求められる時、自分が甘い滴の滴る果実になった気がしてカケラも残さず食べて欲しいと思う。
    自分の軀が女ならではの変化を遂げていき、快感の深さや鋭さがどんどん変わっていく。この辺りでもう行き止まりだろうと思うと、ほんのふとしたきっかけで目の前に新たな地平が開ける。

    誰かと誰かの間に衝突が起きない限りルールの出る幕はない。大多数の人間がそれなりに納得できる様な理屈を便宜的に解決の手段として用意してあるだけのもの。

    モラルに縛られる必要がどこにある?モラルはただキチンと知っていて守るべき時に守られさえすればそれでいい。必要なのは場を見極める目。大事な人に知られない様周到に気をつけている限りは誰にも迷惑はかかっていない。

    性の喜び、お互いが承知の上でさえあったらどんな愉しみ方をしても、全てがお互いを慈しみ合う愛情表現になりうる。

    今更籍を入れても入れなくても2人の関係にたいした変わりはないが、周りも分かるような形をとることでこれからも2人で続けていきますと言う覚悟が定まる部分はある。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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