野蛮な読書

著者 :
  • 集英社
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714241

作品紹介・あらすじ

沢村貞子、山田風太郎、獅子文六、宇能鴻一郎、佐野洋子、川端康成…海を泳ぐようにして読む全103冊、無類のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 豊富な語彙をたっぷりと使って、本、時々食べ物、ひいてはそこから透けて見える人間を丁寧に言葉にしているのが心地よく、読み応えのあるエッセイ集。

    特に「能登とハンバーガーと風呂上がり」で紹介している以下の本を読みたくなった。
    ・『戦場の博物誌』
    「読む者に足払いを掛けるおしまいの数行」が気になる。開高健読んだことないのですが、「また開高健にやられた」と思ってみたい。
    ・東雅夫編『鏡花百物語集』
    「怖さは一級品」「闇のなかで魑魅魍魎がぞろぞろと動きはじめ、髪が逆立ちそうになって布団をかき寄せる」とはこれからの季節にぴったりじゃないの。
    ・『ヘヴン』
    徹夜した読んだ後、「無類の物語を読みきった充実がふくらんで、一日のはじまりに輝きが与えられていた」らしい。
    ・『猫の水につかるカエル』
    「ふしぎな静謐とユーモアが漂う小説」とのこと。

  • わたし、おさえられないんです…。

    宇能鴻一郎氏の文体を真似るならば、我々本の虫は皆一様にこう呟くだろう。

    欲求不満なんです。まだまだ、足りないんです。もっと知りたいんです。

    自分では少々読書家なだけだと感じているのだが、父母には「読書依存で異常」と評される。読書がお仕事になるならともかく、私の場合は単なる趣味である(アイデンティティであると反論したら一蹴された)。

    ほんの1000円くらいで小一時間飛び立てる幸福。それまでは知り得ない知識や価値観との出会い。小さな本が与えてくれる大きな世界。

    やはり、貪り読むことはやめられそうにない。

  • 平松さんとは、ある共通点があり勝手に親近感湧いているのだが、読んでいる本は全く違って初めて知る本が多かった。読んだ事がないが気になる本がいくつもあり、どれから読んだら良いのやら…。
    全く異なる一面を見れたと同時に、平松さんの一つの事に対する追求が凄くて、その熱意にはかなり同感。

  • 小説だけでなく、写真集から歌集まで幅広い本に触れて書かれたこのエッセイ、贅沢にもそれぞれの章で4、5冊の本に触れています。

    1番好きなのは、「4日間の空白」という、沢村貞子さんについて書かれた章。「わたしの台所」という沢村さんのエッセイが好きですが、それ以外は読んだことがなく、沢村さん自身のことをあまり詳しく知りませんでした。
    まさか、こんな大恋愛をしていたなんて、投獄されたことがあるなんて、全然知らなかった。
    そして、こんな芯が通った素敵な女性がいたなんて。

    読み終えてすぐに沢村貞子さんの「わたしの献立日記」という本を買いに行きました。今読んでいて、幸せな気持ちをもらいながらも、ひたすら衝撃を受けています。
    読み終えたら、また違う本を買って、今度はもっと大切に読もうと思っています。

    さて、それ以外の章で驚いたのは、第1章。
    先日角田光代さんのブックエッセイを読んで絶賛されていて気になっていた開高建さんの本が、なんとここでも紹介されているではないですか。
    これは、もう何かの縁に違いない。
    そう思って、これまた開高建さんの本も早速購入しました。今度の旅行で読もうと思います。

    それから、断食一週間の体験記も非常に興味深かったです。私も気になってた時期があるんですよね。読むと心身が浄化されそうな記載に、再び興味が湧いてきました。日常から一週間離れて…という体験だけでも、十分に魅力的ですよね。

    本初全体を通しては、何分自分では手に取らないような本について触れられていることが多かったので、とても新鮮でした。本は、無限の世界の広がりを感じさせてくれますね。

  • 小川洋子さんがFM番組メロディアスライブラリーで2013年11月に取り上げていた本。
    平松さんは「サンドイッチは銀座で」をしばらく前に読んだので、本屋で取寄せてみる。

    文章が研ぎ澄まされていて、その巧さに唸らされる。
    幸田文、森茉莉、沢村貞子の文章への言及。毎日の料理から伝わる居住まいの良さに著者が共感しているのが判る。男性だったら、こういう背の筋がピンとした人って誰だろう。

    季節感たっぷりの日常の中の読書、古い日本映画や俳優や、写真作家について、そして「宇野鴻一郎論」なんてものもあり、守備範囲の広さと洞察の深さが嬉しい。

    本が本を連れてくる、との一文は帯にも引用されているが、正にそういう内容。
    たっぷり満喫できた。偶に読み返す本になりそうだ。

  • 沢村貞子、山田風太郎、獅子文六、宇能鴻一郎、佐野洋子、川端康成…海を泳ぐようにして読む全103冊、無類のエッセイ。

    「一歩も動かないのにどこかへ行ける。しかも、だれにも知られずに。ー布団の中で空間をわざわざ狭め、籠の鳥のような閉塞をつくって読む、その興奮といったらなかった。定点から微動だにしなくとも、闇の世界にも光の世界にも行ける。本は時空間を突破する魔法の絨毯だったのだ。」
      (第一章 『贅沢してもいいですか』より p.21)

    「値段を見ないで本を買う。しかも、いっぺんに何冊も。これだって、かんがえてみればこどものころは夢のまた夢だった。だから、わたしにとって書店はおとな買いの快感に身を浸すことのできる天国でもある。書店の棚のあいだを巡りながらほしい本を何冊も腕のなかに重ねてゆくとき、わたしはそっと神様に問うてみる。(贅沢してもいいですか)」
      (第一章 『贅沢してもいいですか』よりp.45)

    「本は本を連れてくる。なぜこの本がつぎこの本につながるのかと驚くのだが、奇妙な手引きもまた読書の贈り物なのだ。ーちっとも脈絡がないように見えて、じつは縄をなうようにひと繋がり、野放図な地図模様ができている。思いもかけなかった繋がりと広がり、そのわけのわからなさこそ、自分なりの野蛮な読書のうれしさなのだった。 」
       (第三章 『すがれる』p.200)

    覚えていたくもないのに、何年経っても海坊主のようにぬうっと顔をのぞかせる言葉がある。覚えていたくもないと思うのはたいていひとの口から出た言葉で、本で読んだ言葉ではない。本で読んだ大切な言葉はどれも、ずっと覚えていたい、忘れてしまいたくない。しかし、ややこしい話だが、覚えていたくもないのに、ひとの口から出た言葉が自分のやわらかいところに刺さりこんでしまって忘れられなくなることがある。
       (第三章 『すがれる』p.278)

  • 平松洋子と言えば、食のエッセイだろうが、本の虫も本の虫。いろんな本を乱読していて、とにかく何かエネルギーを感じる。官能小説家 宇能鴻一郎の件は、平松洋子とのアンマッチが意外性もあり、面白い。

  • 最近お気に入りのエッセイと言えば平松さんが書いたもの
    エッセイは付箋は付けずにマッタリとした気分で読むのが好きなので
    この本も付箋が付いていない
    なので、こうやって感想を書くときにいつも困る・・・
    何回かエッセイにも付箋を付けて読んだことがあるけど
    何だか楽しめなくてすぐに止めた(笑)

    角田光代さんのエッセイが同世代の「そう!そう!そう!」に溢れてるとした
    平松さんのエッセイは私にとって憧れの大人のお姉さんの毎日って感じ(笑)
    ちょっとばかり、微笑ましい姿も拝見することができて、そんな風になれるなら
    歳を重ねるのも良いよねって感じかなぁ~

    やはり料理家でもあるので、料理の描写は上手!
    思わず夜中に読んでいても、今すぐ作って食べたくなる(笑)

    なんだか感想のようなで感想になってないけど
    「やっぱり平松ワールド好きだなぁぁ!」って大事にゆっくり読んだ1冊なのでした(笑)

  • 13.10.31~11.30




    13.10.19
    この本を初めて知ったのは雑誌すばるのHPの書評(いしいしんじ評)。その評が良かったので残しておいたら、今読んでいる梨木香歩『不思議な羅針盤』に平松洋子さんの本(『夜中にジャムを煮る』)のことが書いてあった。

    『不思議な羅針盤』から一部引用。
    「 子ども時代を振り返ると、誰にでも無力な子どもであった切なさの記憶がある。Fさんとしてはとうの昔に置いてきたはずの、『ありえない』世界が忽然と現れたそのショック。夢を見ているのか、窓の向こう側に入ってしまえば、この家を出て成人してから今までのことが夢で、あっちの居間の砂壁が現実のような、奇妙な感覚。現実の足場が揺らぐ。
     Fさんの中ではこのとき、無意識のうちに当時のにおいや音、砂壁の触感にたぶん好きなおやつの味までいっせいに蘇ったのではないだろうかと思う。五感が不思議な研ぎ澄まされ方をし、現実ではない世界に向けて、日常ではありえない『開かれ方』をしていたのだろうと思う。が、やはり道具立てが揃わなければ、ここまで強烈な体験はめったにできるものではない。
     
     五感が刺激される、ということで言えば、私は平松洋子さんの文章をいつも、ぷりぷりと活きがよくておいしそう、と思っていた。
    (中略)
     真夜中の台所でぐつぐつと変化してゆく真っ赤な苺を見つめる、その心もちを、たとえば昼間のスクランブル交差点を渡っているとき、ふと引き寄せて、空を仰ぐ。
    わずかに見える都会の空に浮かぶ雲の種類から、その雲と自分との距離を測ってみたりする。刷毛で刷いたような巻雲なら、一万メートルほど。そこには西風が吹いている。
     五感を、喧騒に閉じて、世界の風に開く。」

    平松洋子さんの話題に移る前のことも興味深かったので少し散漫な感じの引用になっちゃったけれども…

  • 本が本をつなげる。そうして自分だけの読書地図をつくっていくことが、本好きにとって何よりの喜び。

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著者プロフィール

平松洋子=1958年、倉敷生まれ。東京女子大学卒業。エッセイスト。食文化、暮らし、本のことをテーマに執筆をしている。『買えない味』でBunkamura ドゥマゴ文学賞受賞。著書に『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『食べる私』『忘れない味』『下着の捨どき』など。

「2021年 『東海林さだおアンソロジー 人間は哀れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平松洋子の作品

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