共喰い

  • 集英社 (2012年1月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (144ページ) / ISBN・EAN: 9784087714470

作品紹介・あらすじ

女を殴る父と、同じ目をした、俺。
川辺の町で暮らす17歳の少年。セックスの時に暴力を振るうという父親の習性を受け継いでいることを自覚し、懼れ、おののく…。逃げ場のない、濃密な血と性の物語。第146回芥川賞受賞作。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

テーマは血の継承と暴力の葛藤であり、父親のDVを受け継ぐことに苦悩する17歳の少年の姿が描かれています。舞台は昭和63年の川辺の町で、閉塞感漂う風景が物語に深みを与えています。父の暴力がもたらす影響に...

感想・レビュー・書評

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  • 昭和63年のとある川辺の町が舞台の表題作と、小学生の主人公の思いをつづる「第三紀層の魚」の2編からなる。

    前者はバイオレンスの根源を問う内容で非常にヘビーである。映画化もされたようだがこちらは未観。17歳の高校生の少年は、父親のDV気質を自分も受け継いでいるのではないかと悩む。父のDVが原因で離婚した母親は近所に住んでおり、時折会いに行く。時代的にはバブル前で好景気のはずだが、その地には前近代的な雰囲気が漂い、都会の華やかさとは程遠い。苦しい立場の人々も、逃げずにその地で耐え忍んで暮らす。そんな閉塞感漂う風景に寒々とした気持ちになる。汚水の臭いや打ち捨てられたゴミの描写には目をそらせたくなるが、秀逸。

    DVをする者の、自制心の利かない、本能的な行動が、説得力のある緻密な言葉で表されている。ほんとうに救いのない話だった。この作品が芥川賞を受賞した10数年前が、一昔前になってしまったと実感。

    後者では、主人公が心身ともに成長していく様子が、曽祖父の介護を通して描かれており、興味深かった。日々曽祖父を介護するのは、夫にも息子にも先立たれた祖母である。つまり主人公には、父と祖父がいない。母は仕事の都合でよく彼を祖母に預ける。寝たきりである曽祖父の昔話につきあい、おむつを替え、時には釣ってきた魚を祖母に調理してもらう。母親と祖母は互いに表面的な挨拶をするだけだ。そんな人間関係を、主人公が細かく観察している様子が、まるで映像を見るように鮮明だった。

    図書館で「ともぐい」をまた借りてしまったか、と思ったらこちらは漢字表記。どちらも血のにおいが濃厚である点では共通していると思った。

  • 女を殴る父と、同じ目をした、俺。
    川辺の町で暮らす17歳の少年。セックスの時に暴力を振るうという父親の習性を受け継いでいることを自覚し、懼れ、おののく…。逃げ場のない、濃密な血と性の物語。第146回芥川賞受賞作。

  • パフォーマンス的話題につられて購入したクチです。(笑)
    その話題の「共喰い」と、「第三紀層の魚」の2編を所収。
    「共喰い」は、セックスのときに快楽を深めるために女を殴る父親からの血の継承に困惑する高校生の主人公の葛藤を描く。内容はあまりにも生々しくセンセーショナル的な感じがするが、エロスとタナトスの対比やエディプスコンプレックスの発露など、むしろクラシカルな主題であるともいえる。その生々しい表現と父親の行為に感じる嫌悪感がこの作品の醍醐味であると思うが、どうせならその嫌悪感をもう少し主人公の葛藤として深めても良かったような気がする。ところどころに挿入される情景の比喩は、もう少し柔らかい表現にならないものか。ラストは悲劇的だが、全てが流され業のリセットを予感させてくれる。
    「第三紀層の魚」は小学四年生の主人公を視点(支点)に、曾祖父と祖母、そして母の世代間交流をぎこちなくも暖かく描いた作品。おむつの付け替えや、釣りの話などなかなかこだわりのある話が面白かった。少年の海での釣りは、この小説の背景色としてのよい彩りを感じさせてくれる。
    両小説とも、「海」「川」「雨」など水の描写を効果的に取り入れていて、小説のテーマの基底として見事な役割を果たしている。特に「共喰い」で水に飲み込まれるシーンは全体の暗喩として象徴的なものになっている。
    持ってけー!(笑)

    • mkt99さん
      コメントありがとうございます。返信は自分自身のコメントとしてすることになるのでしょうか?(笑)
      本作品は性描写がナマナマしくテーマも嫌悪感を...
      コメントありがとうございます。返信は自分自身のコメントとしてすることになるのでしょうか?(笑)
      本作品は性描写がナマナマしくテーマも嫌悪感を催すものですので、人に薦めれるかというとちょっと・・・。(笑)なので、筆者のあの会見も照れ隠しが大きいんでしょうね。
      併収の「第三紀層」は割としっとりした物語なのですが。~賞の常連さんのようですので他作品も機会があれば読んでみようと思います。
      2012/02/19
    • lacuoさん
      あの時話題になった会見から数年を経て、あの作者は、今、どうしてるんでしょうね?

      私は、ブクログで、高校生に勧められて、この小説を読んだ...
      あの時話題になった会見から数年を経て、あの作者は、今、どうしてるんでしょうね?

      私は、ブクログで、高校生に勧められて、この小説を読んだのですが、なぜか、内容がぜんぜん入ってこなくて、最後まで読んだんだけど、まるで消化できませんでした。

      親から、好ましいDNAも、嫌悪すべきDNAも、受け継いでしまうことが、人生の大きな問題になる、というのは自分の経験からもよく分かるんだけど、それなのに、この小説には、アルアル感が感じられなくて、ついていけなかった。
      2017/08/23
    • mkt99さん
      lacuoさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      本当にあの作者さん、いまどこでどうしているのやら。...
      lacuoさん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      本当にあの作者さん、いまどこでどうしているのやら。(笑)
      話題作りは長けていましたけど、あまりにも小説がトゲトゲしく現実離れしすぎていたので、あとが続かないのでしょうかね?
      2017/08/27
  • 『共喰い』 田中慎弥 20251015

    本書は、中編『共喰い』と短編『第三紀層の魚』 最後に『瀬戸内寂聴との対談』で構成されている。

    表題作『共喰い』は、暴力と遺伝をテーマにした物語で、
父と子の共通点“暴力的なセックス”という衝動を描いている。

    17歳の遠馬の父・円は、暴力的な性行為を繰り返す男だ。
遠馬自身もまた、その血を受け継ぎながら生きており、
最終的に彼も恋人に暴力を振るってしまう。

    私の父にもモラハラ気質があり、
家庭内で叱責や罵倒を繰り返し、威圧的な態度をとる場面が多かった。
私はそんな父を反面教師に生きているつもりではあるが、
思考回路や行動の気質は、気づけば似てしまっている部分が多いように思う。

    血は抗えない。
理屈や努力だけでは、屈曲できない部分が確かにある。

    家庭を持つか持たないか。
子どもをつくるかどうか。
私の中には、「家庭には母親さえいればいい」「父親とは常に悪である」
という捩れた固定観念が根を張っている。
それは、間違いなく私の実家で涵養された思想だ。

    遠馬がこの先どう生きていくのかは描かれていない。
そして私もまた、どう生きていくのかは、まだわからない。

    ____________

    『第三紀層の魚』20251016

    【あらすじ】
    10歳の信道は、4歳のときに市役所勤めの父・紀和を亡くし、母・祥子と二人で暮らしている。
祖父は警官だったが、信道が2歳のときに自ら命を絶ち、今は祖母と寝たきりの曽祖父が親族だ。
    信道はチヌを釣りたいと願っているが、一向に釣れない。
曽祖父はよく、戦争の話・炭鉱の話・釣りの話を繰り返した。
「第三紀層」とは炭鉱の話に出てくる地層で、およそ六百五十万年前から百八十万年前の間に、
火山が噴火して日本列島が形づくられた時代の地層を指す。
    母はうどん屋で働いており、作中では東京への進出が決まり、引っ越しが決まる。
その最中、曽祖父が亡くなり、葬儀が行われる。
その折、母は結婚前の旧姓に戻す決断をする。
    葬儀のあと、信道は海へ釣りに出かけ、ついに魚を釣り上げる。
念願のチヌかと思いきや、それは大きなマゴチだった。

    【感想・考察】
    信道は父の死を知りたかった。
    死というものがどういうものなのか。
    彼の父と祖父は物心のつく前に亡くなってからだ。

    死を実感したい=自身の記憶の地層の奥底から引っ張り出したい=チヌをつりたい
    という心情を表しているのではないだろうか。
    しかし、最終的に釣れたのはマゴチだった。
    それは予想とは違う形 すなわち、曽祖父の死という出来事を通して、
    信道は“死とはこういうものかもしれない”と、言葉にならない形で理解したのだろう。

    この家族は死という地層の上に生を成している。
    またもっと広く言えばすべての人間は死という幾重にも折り重なった地層の上に生きている。
    第三紀層は、日本という島が生まれた地層であり、我々人間はありとあらゆる屍の上に足をつけているのだ。

    また小説の各所で信道が母を思っているとわかる部分が多い。
    寂聴との対談の部分でも本人が少し語っていた 「母が健在で苦労をかけている。自分一人 生きていてはいけないのではないだろうか」 という部分が感じられた。
    本人は小説というものについて

    「小説とは世の中と自身との間の衝立だ」 と語っていた部分があるが、母への思いみたいな部分はその衝立があっても感じられるような気がするほど、彼が不器用ながらも母を重んじているような気がした。

    ____________
    瀬戸内寂聴と田中慎弥の対談

    「源氏物語」の話が多かったが読んでいないのでわからない。
    なんなら瀬戸内寂聴が小説家だということも知らなかった。
    坊主だと思っていたが、彼女は小説を書きたいがために坊主になったらしい。
    またお互い 芥川賞に興味があるが芥川龍之介の作品には興味がなく、「わざとらしいのよ」とぼやいてた。

  • 読むのがつらい。
    図書館で本を選ぶときに芥川賞っていうラベルを見て選ぶんですが、内容知ってたら読まなかった。といってもネタバレが嫌で一切紹介文読まずに読むのですが。。
    第三紀層の魚はよかったです。

  • 多分女性からは総スカンでしょうね。嫌悪感が強い。
    内容が内容ですし。
    共食いってそういう意味かとわかった時がすごく嫌。

    でも文章が抜群にうまいと思いました。
    何でもないような、つまらないような描写を淡々と
    重ねていって気がついたらとても気味の悪いところへ
    連れて来られてしまったような不気味さがあります。

    多分この方の小説、読むと不快に感じる小説が多いでしょう。
    でもすごく読みたいと感じます。これからどんな作品が
    でてくるのか楽しみです。この変わり者加減、作者にとても
    興味があります。

    書かなければ死んでしまう作家さんが久しぶりに出てきました。

  • 一緒に収められてる「第三紀層の魚」の方が好きだな♪

  • 一気には読み終えたけど、この作品を自分のなかでどう受け止めたらいいのか、最後まで、見いだせなかった…
    話題にもだっからよんでみたけど、描写がリアルだった、としか表現できないなぁ。

  • 父と母を性で描く

    高校生の息子からはこうみえてるのか人間

    音がない小説

  • 方言と自然描写が良い。川の使い方も上手だなぁと後半思ったけど前半で「割れ目」と明かしてるあたりが余計にまっすぐで好感を持てた。選評も読んだけど宮本輝さんが評価してないのは意外。
    私は読んですぐ宮本輝さんの「道頓堀川」を思い浮かべた。

  • 千種を襲った父の弁明があまりに理不尽であほくさく、しかし現実の世界でもこういうことあるのかもなと思える後味の悪さ。くだらない男としなやかな女というこの物語は、ちょっとまともを自認する男にとっては優越感を感じられる居心地の良い世界だと感じた。
    文藝春秋に収録されたものを飛行機の中で読む。

  • 重厚でどろどろした素的な文章だった。理由はわからないけれど、3回くらい鳥肌がたった。芥川賞受賞の会見で強気な発言してたので、どうなんだろうとおもったけれど、強気な発言してるだけはあるな、とおもった。長編も読んでみたい。

  • 収録されている2篇とも主人公は少年で、父親に代表される“大人の男”との距離感が強く印象に残る作品でした

    ひどい父親に自分が似てきてしまう怖さや、大人の男の集団に囲まれたときの心細さなど、男同士の付き合いの難しさを思い知らされる、ちょっと苦くなる一冊でした

  • そうかって感じ。

  • 表題作を文藝春秋で読了。女性に暴力を振るう描写は見てられなかった。なんかずっともやもやしたものが心の底で渦巻いている感じ。これは著者の筆力にしてやられたということなのか…。思わず最後の展開は目を剥いてしまった。文章は上手いんだろうけど、他の作品を読みたい気分になれないのは何でだろう。負のパワーが強すぎるのかな。2012/138

  • 芥川賞『共喰い』『第三紀層の魚』所収。◆『共喰い』は、中上健次・宮本輝を想起させたが、物語性・抒情性に不足。『第三紀層の魚』の方が丁寧で好み。◆共通するのは「無力で何もできない子どもの自分」。父系に由来する劣悪な・みじめな・かわいそうな環境の中、「子ども」である自分は受け入れることしかできず耐えたまま生きている。そして母親が、そんな閉塞した変わらない環境=胎嚢を破り、新しい世界に主人公を送り出して作品は終わる。母によって生み直された主人公はその後どう生きるのか…“その後”の作品が書かれるのなら見届けたい。◆主人公は私では考えられないくらい、よく「耐えて」いる。作者は実は優しい人なのだろうと思った。【2013/01/05】

  • 多少グロテスクな内容でありながらも

    「妖艶、美、繊細」

    などの表現が当てはまる描写が

    読み手を引きつけます

  • 私の父は所謂ろくでもない人で、のむ・うつ・かうと三拍子揃い、家族親類はもとより周りのいろんな人に迷惑を掛けた。

    当然の事ながらそんな父を反面教師として成長しようとしてきたつもりであるが、悲しいかな、自分の中に父と同じ血が流れている事に気づかされる時は少なくない。

    そんな時はすこしの悲しさと一緒に懐かしさも感じる。そう、小さい頃に抱いた無条件の信頼と憧れ、大好きという素直な思いが蘇ってくるのだ。

    すき好んで嫌いになった訳じゃないし、父もすき好んで嫌われたわけじゃない。嫌いというのは的確じゃない。いろんなボタンのかけ違いや間の悪さがあっただけかも知れない。ただ、少し、こうした方が良い という意識が父も私も足りなかっただけかも知れない。残念だ、という方がしっくりくるだろうか。

    何れにせよ、懐かしい過去の思いでは多少なりとも残っている。たまには受け継いだ血を感じ居心地悪くなる時にでも、まぁ仕方ないさと強がれるくらいの懐かしい思い出は残っている。

    こんな事を、実を言うと、たまにはどころかほとんど毎日、頭に浮かんでは消え、考えては忘れしていたりする。

    そんな私でも毎日を生きていられるのは、こういう事だと思う。生きる意味。ささやかながら、私の生きる意味は、父の軌跡を辿らないようにするために、思い出し、考え、行動に反映する。そう言う事じゃないかと、最近は考えるようになった。

    本当は父だってそうしたかったんだと思う。だから、実は父の軌跡を辿らないようにする事が、父の気持ちを受け継いでいく事だとも言えまいか。

    そんな風な私を父として見る子供はどのように感じるのか。早晩、お父さんみたいにはなりたくないと言い出すんだろう。それでいいさ。いつか、お父さんはどんな事考えながら生きていたのか、想像してくれたら嬉しい。その時に、少しだけでも思い出せるように、私の姿を残してあげたいなと思う。


    なんだか、こんな事を恥ずかしげもなく書かせてしまうほど気持ちを揺さぶってくる、血の争いを描いた少し悲しい、生きる意味を考えさせられる、そんな本です。

  • 噂の田中慎弥さん、受賞会見での振舞いが興味深かったので、発売日に即買いしたのでした。
    本棚入れるの忘れてた。。。

    この人にはどうしても書きたい衝動や想いのようなものがきっとあって、それを表現しなくてはいられないんだろうなぁと読後に感じたので、作家らしい作家さんだなと思いました。
    ~風とか~系とかいう軽い感じはしないです。

    ただ自分にはいまいち受け付け難く、何が受け付けなかったかというと、一言でいうと気持ち悪い!

    ものすごくグロい描写があるわけではなく、むしろ文章は繊細な感じなんですが、全体を通しての空気感が嫌な匂いを嗅いでる感じというか・・・鬱屈してるというか・・・

    あとですね、青春のリビドーが主要なテーマだと思うんですけど、自分の青春時代を思い返しても、ここまで激しい性衝動は極めてまれじゃないの?、という部分で共感が得られなかったです。
    アマゾンのレビュー見てたら、
    「男なら誰でも遠馬に共感を覚える部分がきっと多いはずだ。」
    というレビューがあったんですけど(遠馬は主人公の名前)、この主人公に共感覚える人はちょっと変態じゃないかなと。。。

    でも、芥川賞納得の作品ではありました!!
    読中世界観に没入できたし、読後に余韻に浸れたし、読んで損したーってことはまったく無いです!!

    個人的にはもう一遍の『第三紀層の魚』の方が好きでした。

  • 暗い。晴れない気持ちが浮かんでくる映像をますます暗くする。時代と状況で今は共感できない価値観を描いており、嫌悪感を覚えつつも興味が勝った。
    読んでいて楽しいものではなかった。楽しいかが評価基準でないことは重々承知はしていたが芥川賞と話題性につられて読んでしまった。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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