ホテルローヤル

著者 :
  • 集英社
3.06
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本棚登録 : 4478
レビュー : 766
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714920

作品紹介・あらすじ

恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞受賞作。
    釧路のラブホテルに関連する話を、時系列をさかのぼっていく短編連作です。
    暗めのトーンだけど、すっきりした印象が残る文章。

    「シャッターチャンス」
    恋人にヌードを撮りたいからと、廃業したホテルに連れて行かれた女性。
    中学の時にはスポーツで人気者だった彼だが。
    (いや、こりゃ別れたほうが‥)

    「本日開店」
    20も年上の住職と結婚した妻。
    夫は人格者だが、不能だった‥
    経営難のため、檀家と関係することになるが‥

    「えっち屋」
    「ホテル・ローヤル」廃業の日。
    ホテル経営者の娘は、在庫を引き取ってもらう後始末に来た男と‥

    「バブルバス」
    夫の父を狭い家に引き取った夫婦。
    家ではプライバシーもない。
    臨時収入で夫をホテルに誘う妻だった。

    [せんせぇ」
    妻に最初から裏切られていたと知った、教師の夫。
    さまよう彼に、女子生徒が両親とも夜逃げしたといって、ついてくる。

    「星を見ていた」
    ホテルで清掃の仕事をしている、60歳の女性。
    働きづめの人生で、夫は身体を壊して働かなくなり家にいるが、夫婦仲は悪くない。
    連絡をよこすことも滅多にない子供3人も、元気でやっていると思っていた。
    次男が送金してくれたと思ったら‥

    「ギフト」
    いい土地を見つけて、ここにラブホテルを建てようと思い立った田中大吉。
    妻には大反対され、若いるり子という愛人と籍を入れる成り行きに。
    ちょっと問題ありの男だが、それなりの夢や人のよさも感じられます。

    全然違う人生を送るそれぞれの人物がそれらしく、ちょっとした描写で上手く書けている印象。
    一部を切り取って深追いし過ぎないような、この読みやすさも受賞の一因かと。
    この後、どうなったのかというと、かなりアンハッピーになりそうな話もあるわけですが。
    年月をさかのぼっていくのが、暗くなり過ぎなくて、いいかも。
    出来としては良いんだけど、どうしてもこれ読んで!ってほどじゃないので、★は4つ。
    「星を見ていた」などで、周りの人のあたたかさをふと感じるような展開は、いいですね。

  • 釧路湿原を見下ろす高台に建つラブホテル「ホテルローヤル」にまつわる短編集。
    ホテルローヤルの開業から廃業までの話を過去にさかのぼる形で展開する。

    どれもこれも切ない話ばかりでやりきれない気分になるが、登場する女性たちの細やかな気持ちを描いている桜木さんの文章力はやはり圧巻。
    どんよりとした道東の景色が眼前に広がり、女性たちの気持ちとシンクロしているような気持ちになる。

    以前に読んだ「硝子の葦」もラブホテルを舞台にしていたから、どうしてここまでこの作者はホテルのこだわるのだろうと思っていたが集英社のHPのインタビューを読んで納得。
    実家がラブホテルを経営しており、その体験をもとに小説を描いたと。思春期の性愛に対するわだかまりを正面から取り上げることによって昇華することができたそうだ。

    このインタビューを読むと今後は作者の違う世界が見れそうだ。
    大変楽しみである。

    追記(2013.7.17)
    祝直木賞!!
    わー、桜木さんおめでとうございます!!
    地味だけどひそかに応援してました。
    でも前回候補作の方が断然良かったのに・・・
    直木賞らしいなぁ(笑)

  • 桜木さん初読み。最近男性作家さんが続いたので、読んでいて楽しかった。一時期は予約待ちが多すぎて手が出せなかったけど、今は普通に書架に置かれていたので、気まぐれで手にしたけど読んで大正解だった。

    ホテルローヤルとつながっていた人々の日常が丁寧に描かれている。どの女もみな北国の女。芯が強い。

    一番最初は読んでいて不安を感じたけど、ぶつ切り状態だった各登場人物が浮かび上がってきて見事だと思った。

    好きなのは…えっち屋。バブルバス。星を見ていた。ギフト。

    「星を見ていた」は亡き祖母を思い出し泣けた。「ギフト」も。普通ではない状況が多いけど、読み終えると清々しく、二度読みして再発見したり楽しい構成だと思った。

  • 桜木さんの作品は読後感が苦手で
    もう読まないだろうと思っていた。
    といいつつ、なぜ読んだのかというと
    やはり直木賞受賞作だから。

    いままで読んだ彼女の本のなかで
    いちばん読後感が楽だった。
    重くどんよりしたものが
    まとわりついて離れないあの感覚が
    この本にはなかった。

    そのあたりはかなり覚悟をして読んだので
    だからかもしれないけれど。

    わたしにとって、彼女の本は
    ストーリーのおもしろさ、つまらなさ云々ではなく
    自分が暗闇にとりこまれてしまうかのような怖さである。
    その暗闇が体をとりまき、
    わたしはどう浄化したらよいのかわからず
    身動きがとれなくなるのだ。

    • だいさん
      >その暗闇が体をとりまき、

      五感のとぎすまされたような感じがいいですね。
      >その暗闇が体をとりまき、

      五感のとぎすまされたような感じがいいですね。
      2013/10/07
  • 廃れていくラブホテルと同じく、行き場のない男女関係も同じ。誰も報われない、幸せとは程遠い日常生活を登場人物達は送っている。人間味のある妙にリアルな生活が生々しい。悩みや葛藤、深い悲しみ、些細な幸せがおりなす、人間らしい性活がありありと描かれていた。湿っぽい‘性’の存在が、この小説を引き立てているのだろう。ご飯と一緒に「ホテルロイヤル」を読む気は起こらなかったが。ずっしりと湿っぽくて重いこの小説の余韻を、いまは楽しんでいる。

  • ホテルローヤルを軸に、男女のふとした日常を、
    負の目線で描かれてるかな。
    どの男女も何か疲れている。

    同じ時代じゃなく、ちょっと年代をずらして書かれてるのが面白い。
    「せんせぇ」だけ、このホテルが出てない。

  • こんな不器用な生き方しかできない人たちも、いるんだよね。

  • 北の果てにあるラブホテルを題材にした短篇集。
    扱っているものがものだけにもっと人間模様のドロドロした濃い短篇集かと思いきや、そうではなく、思いの外あっさりした話ばかりでサクサク読めました。人間というのは思ったよりも冷静に自分自身を捉えているのだなと思わせる話が多かった。

    一話一話があっさりしているけど、所々伏線となるエピソードがちらちらと伺えるので一話読んだら、また伏線が出てきた話を読み返したりしました。かといってあえて伏線を回収していないので、それはそれで物語の深みを増す要素でもありました。
    文体はあっさりしていて、長くない短編なのにも関わらず色々と考えさせられました。

    特に「せんせぇ」は印象に残りました。題からも分かる通り、高校教師と生徒の話。これだけ読むとホテルローヤルはまったく関係ないのですが、他の短編にその末路がほのめかされていて悲しい気持ちになりました。でも、どうしてその結末に至ったのかまったく書かれてないのが、逆に読者の想像力を刺激します。
    この二人、決して恋愛関係の果てにホテルローヤルにたどり着く訳ではなさそうなのがまた悲しい。

    短篇集としての構成も秀逸。本として完成されているなと思いました。最近の直木賞はこういう短編が受け入れられやすいのかもしれないですね。(私はエネルギーのある長大作が好みですが)

    ただ、読んだ後は気持ちが暗くなるというか寒くなるというか。
    北海道の北という場所が暗い場所のように刷り込まれてしまいそうです。北海道を題材にした明るい話を読みたくなりました。

    桜木紫乃さんの作品は今まで読んだことがなかったのですが、人の感情をドライに描写するのが上手な作家さんだなと感じました。他の作品もそうなのか、ぜひ読みたくなりました。次は「氷平線」を読みたいです。

  • 恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性。
    貧乏寺の住職の妻。引き継がれた檀家の仕事とは・・・
    夫と肌を合わせる時間も場所もない狭いマンション暮らしの主婦。
    妻の浮気を知った高校教師と、親に捨てられた女子高生。
    苦労人のホテル清掃係の年配の女性と年下の夫。
    ホテル経営者の夫婦とその娘の複雑な事情。

    釧路湿原を背に立つ北国のラブホテル。
    そこを訪れる人々、そこに関わりのある人たちの日常の中の
    非日常な出来事。

    連作短編?っていうのかな。
    一つ一つのお話の登場人物たちには繋がりがあったりなかったり
    なので少々、物足りないというかもうちょっと深く書いて欲しかったなぁ
    という思いを持ちつつ読んでいくのだけれど読み終わると結構
    深みがあった?と思わせられたりしてちょっと不思議な感覚。

    いやー、舞台がラブホテルですからね、登場人物たちも
    それなりにっていうかちょっと秘め事的な雰囲気は醸し出している
    わけですよ。

    危うい空気が常につきまとっているというか、決してNHKの子供番組に
    流れているような健全っていう空気は流れていない。

    だいたい北国のラブホテルですもん。そんなウキウキな話なわけないし・・・

    廃墟となったラブホテルの時系列を遡りながら紡がれていくお話なので
    へぇー、こんな時代もあったのか、とか、この夫婦も最初は仲がよかったのか
    とか思うんだけれどその先の行きつく所がわかってるんで侘しかったり
    やるせなかったりするんですよね。 

    高校教師と女子校生の話なんてきっと、これがああなるのね・・・
    と分かってしまってるので凹むしかない。

    幸せな人がほぼ出てこない地味目な作品でしたが
    それほど生々しい性描写があるわけではなく文章も読みやすかった。
    なんか、しみじみしたわ、読み終わったとき。
    人生思うようにはいかないよなぁ・・・と。

  • 釧路のうらぶれたラブホテルにまつわるお話し。
    一編目の「シャッターチャンス」。気持ちが離れていくときの、あの決定的にすれ違ってしまった時の周りの景色が遠くなる感覚、なんだか寒くなった。
    「バブルバス」すがすがしいし強い。近所に全国チェーンの大きな電機屋が建ち、主人公の旦那が経営している電機屋をたたみ、旦那は大手電機屋の主任として入社する。主任と言っても形ばかりで知識と技術があるからいいように都合よく薄給でこき使われる。二人の子供のうち長男は頭が悪く、市内に行ける高校が2校しかなく、長女はひきこもり、舅は転がり込んでくる。団地の狭い部屋、夫婦の寝室すらなくなってしまう。絶望の日常。でもなぜかこれがホテルローヤルによってちょっとほろっとくるようなお話に仕上がっている。
    「星を見ていた」これが一番よかった。働かないけど優しい亭主。巣立った三人の子供は年に一回連絡をくれる次男以外は中学を出てすぐ音信不通。次男が札幌で殺人容疑で逮捕されたというニュースが載っている新聞を同僚(ホテルローヤルの清掃婦)から渡されるも、死体という漢字は読めたけれども、容疑とか逮捕という漢字が読めず、同僚に読んでもらって意味を知る主人公のミコ。
    冷たいわけでも他人に興味がないわけでもない、ただ感情が薄いミコは、逮捕直前職場に次男から好きに使ってくださいという3万円が入った手紙を見て「いい息子ね」と泣いている同僚がなぜ泣いているのかもわからない。
    そんなミコをも立ち上がれなくするほどのショックをもたらしてしまう次男。でもこれもなぜか最後泣ける仕上がり。

    全体的に山本周五郎っぽかった。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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