- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087714951
作品紹介・あらすじ
お寺の閻魔様が動き回り、池の蓮の花からお釈迦様が現れる。不思議なことがおこる町に引っ越してきた青奈夫婦。ある日、質屋で手に入れたオパールの指輪がしゃべり出し…。不思議な町の平凡な日常を描く、新しい大人のファンタジー。第36回すばる文学賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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仕事を辞め、夫と一緒に新しい町に引っ越してきた青奈の日常を
ゆるゆると描いた本なのですが
面白いのは、普通の描写の中に時折顔を出す、不思議な数行。
たとえば。。。
初詣の帰り道、突如として現れ、いたずら坊主を投げ飛ばす閻魔様。
筆を振り回して通りがかりの人にペンキを塗りたくる、アーちゃんという子ども。
(しかも、アーちゃんは歴代何人もいるらしい)
民家の屋根の上で、蛇をむしゃむしゃ食べているシャチホコ。
指にはめると喋り出し、持ち主にアドバイスまでする指輪、おしゃべりオパール。
公園の池に浮かぶ蓮の花がひらくたび、毎日姿を現すちいさなお釈迦様。
黄金町に住む人々がなんてことはない日常として受け入れている
こんな摩訶不思議なできごとに、「ほうほう、そういうものなのね」とばかりに
青奈も夫の那津男も、実にあっさり馴染んでしまうのです。
黄金寺に捨てられて、寺で育てられ、町で乱暴狼藉をはたらいても
町の人になんとなく許され、13歳になるとその身分(?)を卒業するという
歴代のアーちゃんたち。
心の中に積った汚いものをアーちゃんという生け贄に投影して
みてみぬふりをして過ごしている町の人たちは
いつまでも成長しないコドモの部分を抱えながら
大人として偉そうに過ごしている自分を見るようで、なにやらほろ苦くて。
密かに不妊に悩む青奈も、崩壊しかけた熊のぬいぐるみを溺愛する那津男も
女性に見境のない、青奈の雇い主の千ちゃんも
アーちゃんなしでも自分の汚さに向き合って、浄化できる日のために
魔法の巣のような黄金町で、自分を包む卵の殻を
内側からコツコツと、たよりない嘴でつっついているのですね。
不思議な味わいの物語です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前から読みたかった本をやっと図書館で目にして、喜び勇んで借りてきた。
主人公夫婦が引っ越してきた不思議な町・黄金町。そこでの日常を描いているファンタジー。閻魔様が現実に現れたり、しゃちほこがヘビを食べていたり、池から毎日お釈迦様が産まれたり…凄く不思議な世界なんだけど、それを普通の出来事と思わせられるほど登場人物は身近にいそうな人ばかりで。話の内容もほんのり胸に響く感じだった。黄金町に住んでみたい。 -
ツッコミ不在の、不思議な町の不思議な話。
あまりにも当たり前に不思議なことが書かれているので、「そんなもんなのかな」と、すんなり思えてしまいました。 -
「人生なんかまったく不公平にできているもんなんだけど、その中で賢いやつはうまいこと幸福をみつけていくし作っていくんだよね。それをみるたびにおいらはすこし感動しちゃうんだな。その機会は誰にも、あんたにも平等なんだ」 (P154)
「人間ってさ、馬鹿な生き物だろ。だから、心の中に汚いものがあってもみてみぬふりしてるんだな。それがアーちゃんという形になってあきらかになる。自分の中の汚いものは消すことはできないけど、アーちゃんなら迫害することができる。ほら、キリストがさ、人類を罪から救済するために磔(はりつけ)になったって、キリスト教のやつらが主張するじゃん。キリストも心の中の罪を形にしてやったんだよな、きっと。無知な人間にはそういう目にみえる生け贄《にえ》が必要なんだよ」 (P157) -
サラッと読めた。
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一文が驚くほど長い作家。仕事柄、単文で句読点を打ちたくなってしまうので、読んでいて最初はめげそうだった。でも、負けてなるものかと読み進めていったら、ファンタジーというにはちょっと毒気があって少し考えさせられたりもした。
まぁ、最後まで高橋さんの文章にはあまり馴染めなかったんだけど…。 -
夫の知り合いから格安で借りた一軒家に引越してきた青菜。おしゃべりオパール、あーちゃんの自由すぎる行動
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すばる文学賞受賞作 -
しゃべるオパールの指輪、破壊的なあーちゃん、元あーちゃんだった千ちゃんとダイヤなど青菜と那津男夫婦の周りに起こるあれこれが、のほほんとしていて不思議な世界を創っている。
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当然のように変なことが起きる、誰もそれを気にしない、そんな黄金町の物語。失業して旦那とも微妙な関係の青奈と、彼女に仕事をくれた千ちゃん、その恋人のダイヤ。それぞれの微妙な感情を不思議な町を通して描いた、大人のファンタジー。
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ほんのりファンタジー。
あぁ、こんな世界もあるかもなぁ、と思える。
主人公が抱える悩みや考え方に共感する部分もあってか、読みやすく、1日で読了。
黄金寺、蓮の花、お釈迦様が湛えているだろう光、ペンキの色など、読了後の余韻に鮮やかな色彩が浮かんだ。