むつかしきこと承り候 公事指南控帳

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 49
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714968

作品紹介・あらすじ

江戸時代、薬屋ながら副業として公事(裁判)の相談に乗る時次郎。そこそこ儲かってはいるが、高い書物を買うので余裕はあまりない。その事と子作りに熱心でない事を恋女房からは責められ通しだ。おまけに持ち込まれるもめ事は、一筋縄ではいかないものばかり。不貞を働いたとして殺された夫の潔白を証明したいと言われたり、破産したのに財産を隠していた相手から金を取り戻したいなどなど。さて、次はどんな厄介な事件が舞い込んでくるのやら?-。

感想・レビュー・書評

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  • 薬屋ながらやっかいな公事解決を請け負う時次郎を描く連作短編集。時次郎は表に出ず江戸の裁判での弁護士というか法律アドバイザーみたいな感じである。扱う事件は不義密通や土地争い、遺産争いなどバラエティーに富んでいて面白い。自らや人を使って調査しあの手この手を駆使する公事闘争はなかなか面白く、依頼人も訴えられた人も一筋縄ではいかない個性的な人ばかりで盛り上げてくれる。ただ、時次郎が公事解決を引き受ける理由がちょっと弱く、これに絡んだ動きも今のところ蛇足気味かなと感じる。続編があれば生きてくるのだろうか?

  • 面白い!

  • 公事についてのアドバイスをすることを裏の生業とする、薬種屋の時次郎。彼が手助けするのは、簡単にはいかない面倒な案件ばかり。公事宿の人間が難色を示したり、何年もかかるようなものだ。そんな事件を調べていくと、思いもかけない“裏”が見えてくることも。そんな話を描いている。現代の裁判である公事のことが描かれていて、その厄介さがよくわかって面白い。

  • 大好きな岩井さん作品だったため、ハードルを上げてしまい、残念な星二つ。
    煽るような帯の宣伝文句もダメだったかな。
    岩井さん初の、お江戸町人モノ、いつもの飄々としたユーモアが炸裂するのかなぁと期待していたので、うーん、物足りなかったです。
    公事指南というのも面白そうだったのに、あまり専門的なことも書かれてなくてこれも残念。
    シリーズものなら、今後の方向転換に期待、かな。

  • 抜け目のないやつ

  • 「小説すばる」に掲載された6話に、書き下ろし1話を加えて単行本化した作品。

    生薬屋を表看板にしている天竺屋時次郎は、公事(訴訟)を手助けする「出入師」を裏稼業としている。

    江戸時代の裁判権は、大名領国では藩に、天領では代官と勘定奉行に、寺社がらみは寺社奉行に、江戸市中の町人がらみは江戸町奉行にあったが、いずれも弁護士のような代理人制度はなく、公事宿という宿泊施設が手助けをしていた。

    なので、時次郎の仕事は非合法で、町奉行所から目をつけられているが、弁護士ドラマのように、様々な手づるを使って依頼者と訴訟当事者の身辺を探り、弱点を見つけて段取りを決め(これを「絵図面を描く」と言っている)、ひと細工することで裁判を有利にしてやる。

    第1話では夫が「密通」現場で殺され、殺した男が御定法どおり無罪となったのが不満で、実は借金を踏み倒すために計画的に殺されたと主張する依頼者に、貸金返還の民事訴訟で、ある証言をさせ、事態を一転させる。

    捕物でもなく、勧善懲悪でもなく、現代の法廷ドラマに通じる新たな手法の時代小説になっている。

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著者プロフィール

1958年岐阜県生まれ。一橋大学卒業。1996年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年『簒奪者』で歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で松本清張賞、04年『村を助くは誰ぞ』で歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で中山義秀賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で本屋が選ぶ時代小説大賞2014をそれぞれ受賞。『太閤の巨いなる遺命』『天下を計る』『情け深くあれ』など著書多数。

「2017年 『絢爛たる奔流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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