よだかの片想い

著者 :
  • 集英社
3.88
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本棚登録 : 1362
感想 : 206
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715071

作品紹介・あらすじ

顔にアザがあるアイコ。研究一筋の大学院生活を送っていたが、映画監督の飛坂と恋に落ちる。しかし飛坂は仕事優先、女優とのスキャンダルも飛び出し、アイコは自身のコンプレックスと向き合うことに…。

感想・レビュー・書評

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  • 島本理生さんの恋愛小説。 

    ◆あらすじ
    生まれつき顔にあざのあるアイコが、年の離れた映画監督の飛坂さんに片想いするお話。

    ◆感想
    恋愛経験が少ないと、人生経験が豊富だったり、博識だったり、余裕があったり…と、自分にない何かを持つ相手に対して、尊敬の気持ちを抱き、それが恋愛的な好きという感情とごちゃごちゃになってしまう傾向がある気がする(個人的経験談)
    アイコもそれに近いんじゃないかなと。

    アイコにとって、飛坂さんはこうした大人の魅力を兼ね備えた人かもしれないけれど、一回り以上も歳下で、恋愛にも臆病なアイコに、キスをして勘違いさせるような男はやっぱりダメだ!と、半ば憤りながら読み進めていたら、案の定週刊誌の問題が出てきた。
    面と向かって「ずるい人は、嫌です」とはっきり言えたアイコに頑張ったねと言ってあげたい。

    結局、最後まで仕事優先で、一度もアイコの為に時間を割くことはなかった飛坂さん。
    忙しいを理由にするのは誰にだってできること。本当に好きな相手、本当に大事にしたいと思う相手ならば、その人の為に時間を作るはず。それができずに、自分の会いたい時だけ会いたいといってきたりするのは、"都合のいい相手"と思われているに過ぎない。
    ということを、改めて自分への戒めとして心に刻むきっかけになった。

  • 生まれつき顔に大きなあざのある大学院生のアイコ。
    彼女がそのあざをきっかけに一歩踏み出し初めての恋をするお話。

    最初にこの物語の設定を読んだ時にホーソンの「痣」を思い出した。少しは影響を受けてるのかなと。
    当たり前だけどかすってもいなかった(笑)
    アメリカンルネッサンスじゃないんだからキリスト教の原罪がどうこうなんて出てくるはずもない。

    むしろ島本さんにしては重くない爽やかな初恋ストーリだった。
    DVも虐待も出て来なかったし。
    コンプレックスを持った女の子が初めての恋に戸惑いつつも自分を見失わない姿はカッコいいし、キラキラ輝いている。
    それに主人公のアイコを取り巻く人達の姿がまた良いんだな。
    ミュウ先輩、教授、アイコの母親。
    みんないい人ばかり登場するのもどうかと思うけどまあ良しとする。

    話の展開とかオチが読めてしまうのが難点と言えば難点。
    これを除けば島本さんらしい素敵なラブストーリだ。
    キュンキュン出来ること間違いなし!

    • vilureefさん
      まっき~♪さん

      花丸&コメントありがとうございます。

      予約待ちですか~。早く来るといいですね!
      痣のある女の子って言う設定を除...
      まっき~♪さん

      花丸&コメントありがとうございます。

      予約待ちですか~。早く来るといいですね!
      痣のある女の子って言う設定を除けば、(いい意味で)ベタな少女漫画のようなお話でした。
      こんな本を読むとどこかに忘れてきた私のピュアな心が蘇ります(笑)

      まっき~♪さんのレビュー心待ちにしていますね(^_-)-☆


      .
      2013/06/18
  • 生まれつき顔にアザがあるアイコ。
    どうしたら顔のアザが目立たなくなるのか、身体的コンプレックスは心の奥底まで侵食していき、アイコは常に人目を気にしながら生きてきた。

    そんな臆病なアイコの人生は、一人の男性との出逢いによりガラリと変わる。
    「一緒にいるっていうのは、相手を肯定しながら、同じ場所にいること」
    こんなセリフをさらりと言われてしまったら、好きにならずにはいられないだろう。
    どこまでも真っ直ぐで不器用なアイコの「片想い」。
    これでいいんだよ、良かったね、とアイコに心から言ってあげたい。
    アイコの心の強さ、真っ直ぐさが私には眩しい。

  • 生まれつき顔に大きなアザがあるアサコ。
    アザを異物とされ、からかわれたり見て見ないふりをされてきた彼女は着飾ることや女性らしくあることにも頓着しないようになるが…

    アザをきっかけに舞い込んだインタビューの依頼と、そこで出会った監督。微笑むことも出来ない硬い表情の彼女に「強い」と言い、抱えてきた思いに理解を示してくれた監督と彼の撮る映画に恋をしてしまうアサコ。

    不器用なくらいまっすぐなアサコの想いに胸打たれる。と、同時に監督のような男性に惹かれたら傷つくのは必至なので、やめておきな!とも思う。

    島本作品では今作が一番好きかも。

  • 島本さんは好きな作家のひとりで
    とくに初期の作品が好き。
    この作品はそんな感覚が戻るような一冊だった。

    20歳そこそこで、学生で、こんな決心ができるとは
    これからどんな恋をするのだろう。
    大人だな。
    相手との年の差も感じないような恋をしていた。

  • 恋することで、どんどん前向きになってキラキラしていく過程が良い。
    誰でも何かしらコンプレックスは抱えているもの。

  • はじめから鳥肌たちっぱなしの涙腺緩みっぱなしでそのまま終わった。島本理生さんの新刊は、デビュー作のシルエット、ナラタージュ、波打ち際の蛍、君が降る日、がすきな人には大満足であろう作品に仕上がっています。わたしは著者の、とくに上記にあげた作品が大好きなので、読みはじめからその世界観に感動しっぱなし。読むというよりも感じる作品。少女漫画みたいな。恋愛小説。甘酸っぱいなー。

    うまれつき顔に痣のあるアイコは出版社で働く友人の頼みで顔に痣のあるひとたちのルポルタージュの取材を依頼される。そのルポルタージュは反響が良く、やがて実写化へとなり、そこで映画監督の飛坂さんと出逢い、23歳の遅い初恋を経験することになる。

    島本作品の男性っていいですよね。なんかダメなのにダメに感じさせないし、あなたとか、キミとか呼ぶ感じ。とても気持ちの良い敬語、丁寧語。そして優しいの。欲しい言葉をくれる感じがたまらない。
    はじめての贈り物で高級なアンティークの手鏡を贈った飛坂さん。それをいともかんたんに夜の交差点の真ん中で投げてアイコに渡す! うわー。痣のあるアイコに手鏡なんて、と思うけれどその後の飛坂さんの感じとかとても良い。
    あと一緒に歩いているときにアイコが痣のことを通行人の男の子に嫌な感じで言われたときにその男に向かって謝罪を要求するところ。そしてそのあとに
    「一緒のときに、あなたが悪く言われたら、反論する責任は僕にはあるでしょう。一緒にいるっていうのは、相手を肯定しながら、同じ場所にいることなんだからさ。それは立派な理由だし、責任だ」
    うわーうわーうわー。たまらん。
    飛坂さんだけでなく、たとえばアイコの大学院の教授や、E.T.と呼ばれる後輩の原田くんとか、みんないい。嫌な感じのひとが皆無だし、たとえば嫌な感じのひとがいてもさらっとしてるところがよい。
    よーく読んじゃうと、んんん? と疑問に浮かぶ描写とかあるけれど、あんまり考えないでただ感じるままに島本さんの作品は読んで欲しい。読んで、脳に言葉が入ってくまま、そのままなみだ止まらなくなります。やっぱ大好きです。大満足。

  • 生まれつき顔に大きなアザが有る女の子が、大学生になって初めて恋をする話です

    人間は不公平なものです。見た目だけを取っても、生まれつき可愛らしく産まれて、可愛らしく格好よく育つ人々がいます。はたまた容姿が美しくなく生まれる人もいます。
    かっこいい人を見ると、こんな風に産まれたら人生楽しかろうなあと思って生きてきました。でも年取ってくると羨ましさが薄まっていきます。年を取るって素晴らしい。

    年頃の女の子で顔にアザは厳しいです。自信を持てと言っても無理な話です。それでもコンプレックスに押しつぶされる事はなく、しかし心を鎧って女性らしさを放棄して生きてきたようなアイコ。そんな彼女がひょんな事で若手映画監督に恋をします。これがまた不器用で直情径行なのに奥手。心の中でエールを送りながら読みました。読んでいてモジモジハラハラしました。恋っていいよなあ・・・。

  • 『現実はちっとも思い通りにならなくて残酷で、悲しいこともつらい気持ちも、気付かれないで通り過ぎていく』光を当てられず心に沈殿していく思い。皆が手にしているものを自分は持っていない。普通じゃない。そんな疎外感や劣等感との付き合いは、難しい。顔にあざがあり、心を閉ざす大学院生アイコの心の機微に私自身が重なる。まず自分が心を覗き、それを受け入れてくれる他者との出会いで、囚われから解き放たれていく。気になっていたのはあざではなく人目。無理して頑張らなくても私が私であっていい。書物も親友だなと感じた素敵な作品。

  • 生まれつきアザのある大学院生のアイコ。
    彼女はアザがあることで、幼い頃から傷つき、
    周りに希望を抱くこともせず、成長していった。
    そんなアイコが、自分をテーマにした映画をとる
    監督に初恋をする。

    アザも含めて自分という存在であるからこそ、
    アザのある自分を愛してほしい…。
    そんな可愛い恋心にドキドキさせられました。
    映画監督の飛坂さんと付き合うことになっても、
    会いたいときに会えない、そんなもどかしい気持ちも感じて
    本当に私も一緒に初恋を味わっている気分でした。

    うまく言えないけど、終わり方もほっこりさせられて、
    ホワホワした気分を味わえたよー。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島本理生の作品

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