ペテロの葬列

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 2955
レビュー : 488
  • Amazon.co.jp ・本 (690ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715323

感想・レビュー・書評

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  • 河北新報夕刊に連載されていたのだが、基本的に連載小説は単行本化されるまで読まない人間なのでずっとスルー。

    それでも昨年12月25日に発売されたのが、早くも三週間後に借りられるのだから図書館はありがたい。
    しめしめと発行日を再確認していたら、巻末にいきなり誤植発見!!
    “初出 この作品は2010年9月12日~14年10月3日の期間掲載されたもの”と記載されているが、14年10月ってまだ来てないじゃん。
    なんと単純な誤植でしょう。笑った。
    早速、集英社に電話したら、やはり私のようなお節介焼の人間は多いらしく、すでに電話で何度か指摘されたようで、先方は平謝りでした。

    ま、それはともかく、700Pにも届こうかというこの分厚い長編。
    前半の150Pあたりでクライマックスを迎え、バスジャック事件が一応の結末を見ることから一度事件は収束するように思える。
    この先500P以上もあるのに、いったいどのように話が紡がれていくのか? 
    読者としては半ば不安を覚える。
    しかし、ここからが宮部みゆきという作家の独壇場。
    読み進めていくにつれ、意外なストーリー展開に一言一句も見落とせなくなり、ページを捲る手がどんどん早くなっていく。
    彼女のデビュー作から読み続けている私としては、彼女の類まれで緻密な構成力と読者を魅きつける展開力に流石と感嘆せざるを得ない。
    さすがに長すぎるので一晩とはいかなかったが、結局二日で読み終えてしまった。
    もっとゆっくり小説の楽しさを味わいながら読みたいのに、そうはさせてくれない宮部みゆき。
    本当に罪作りな人です。

    この作品は「誰か Somebody」「名もなき毒」に続く、今多コンツエルンの娘婿杉村三郎シリーズの三作目。
    人間の持つ悪意や毒、それに対してスポットを当てているのだが、先の二作では杉村の家族にまでそれは存在しなかった。
    ところが、この三作目では------。
    最後まで手に汗握る展開で十分に小説の面白さを堪能させてくれるのだが、このラストはないよなあ。
    第二のバスジャック事件で終わりと思ったが、まだ残り50P以上ある。
    嫌な予感がした。そこから思いもがけぬ方向に急転換し、怒涛の展開へ。
    うわあ、あのお姫様、可愛いお嬢様である愛妻菜穂子までもが。
    杉村三郎、どこへ行く。
    読み終わって辛くなってしまった。
    宮部さん、この三作目で終わりにせずに、是非次作を書いて、杉村家を元の鞘に納めてください。
    お願いですから。
    そうじゃないと心が休まりません。

  • 杉村三郎三部作の3作目。
    本作を読むため、数年前に読み、細部を忘れていた前2作を再読した。前2作を読んでいなくてもいいし、読んでいれば登場人物の背景を、より理解でき、なお一層楽しめる。
    三部作の中では、やはり本作が白眉か。
    このシリーズに通底音のように流れているのは、「悪は伝染する」というテーマではないか。

    そして、嘘の重みに堪えきれなくなった人間の起こす悲劇が、今作の主題。
    「どんなペテロにも、振り返って彼を見つめるイエスがいる。」
    バスジャック事件で幕があけ、その事件はのちに始まる長い「旅」の序章だった。

    杉村夫婦の結末に、違和感も感じるが、途中にいくつもの伏線が書かれており、残念な納得をするしかない。悪はどこにでも伝播するのだから、家族だけがまぬがれることはできない。
    ここから、杉村三郎の再生が始まり、新しいドラマが始まる予感がするのは、穿ちすぎだろうか。むしろ期待したいといったほうがよいか。

  • 悪は伝染する。ペテロとは、嘘の罪を知る者である。振り返るイエスと目が合ったことがある。そしてその罪は、時折人を殺す。

    宮部みゆきの最新刊!4ヶ月待ちでやっと読めたよー!読み終えて、タイトルの深さと黒さに戦慄。杉村三郎シリーズは、ブラック宮部さんがデフォルトなので、なかなか読後感がスッキリしないんだけど、やっぱり読み始めると止まらん。

    今回の杉村さんは、完璧に巻き込まれた被害者。なのに探偵まがいの動きをはじめてしまうのは、やっぱり分不相応な生活への屈託がたまっていたんだろーか。事件の真相は暴かれるものの、その隙に彼の生活は一変してしまう。女性は怖いね。

    彼と関わっていく登場人物たちの背景やセリフが、ひとつひとつ染みてくるところは、さすが宮部みゆき。等身大の人間たちを描かせたら天下一品だと思う。3晩かけて読んだけど、先は気になるし、読み終えたくないし、という読書のジレンマと至福が味わえました。だから本はやめられないっ。

    トールキンへの言及がところどころに出てくるんだけど「影横たわるモルドールの国に、我々もまた、生きている」という一文に、本気で薄ら寒くなった。悪は伝染する。堕ちることの、なんとたやすいことか。世界はペテロたちで満ちているのだ。

    それでも、ラストシーンでの足立の言葉が、ほんのりいい余韻を残す。どんな場所からだって、人生はやり直せる。諦めちゃいけない。坂本に言った言葉をそのまま返されて、「他人に助言するのは、何と易しいことか」と韜晦する杉村。新たな旅に出る、彼の滅びの山はどこにあるのだろう。

  • 宮部さんこう来ますか…というラスト。
    賛否両論あると思いますが、私はこれはありだなって。
    というか、そうだよなあ…って。

    置いてきぼりにされると、想像力は悪い方にしか働かなくなる。
    私じゃだめなんじゃないかって。
    私なんてなにもできていないじゃないかって。
    そういう、息苦しさはすごくわかった。

    事件に関しては、宮部さんだもの。
    心配はしていなかった。

    続きはあるのか、もうここで終わらせてしまうのか。
    どうするつもりなのだろう。気になる。

  • Σ(д゚||)ガーンΣ(  ||)ガーンΣ(||゚д)ガーンΣ(||゚Д゚||)ガーン

    衝撃・・・的・・・過ぎます・・・、み、宮部さん・・・ったら・・・・・。

  • シリーズ3作目。
    おそらく、この物語の中で、読者から、唯一「おまえは生きていない」と糾弾されうるであろう登場人物が、「生きたい!」と叫び、活字から立ち上がり、面前に飛び出てきた。

    物語の筋には、表の顔があり、そこではバスジャック事件から続くできごとが連綿と描かれていく。宮部さんらしい筆の運びで、「どうなるのだろう」という純粋な読者の物語を楽しむ気持ちをかき立て、誘っていく。
    物語が物語であるとわからなくなるほどに、奥に、奥に。
    そうして誘えるだけ誘い込んだところに、襲い掛かる。
    裏の顔が。

    背筋が震えた。
    そんな、そんなことってありか?!と主人公の気持ちになって叫び、しかし、同時に読者の目線で、深く納得させられる。
    たぶんストーリーテラーとして最高の位置にいる著者が、物語の世界に耳を澄ませ、この人物の「生きたい」という小さな声を拾い出したのだ。
    小さな謎を解いて見せて、「楽しませてくれる」小説家は多い。しかし、ぞくぞくするような愉悦の感覚をあたえてくれる小説家はそうはいない。
    宮部みゆきはそのなかの、まぎれもない、ひとりだ。

  • 感想を言えば、「えぇっ。うぞっ。そんなぁ。うわああああー」って感じ。そんなー。これが「驚愕のラスト」ってことですかー。酷いよお。
    しかしミステリーを「仕込んだ伏線を最後にひっくり返して真相を提示して予想を裏切る結末へ結びつける」みたいに考えると、これは見事なミステリーになってるわけで、さすが宮部先生と言わざるをえません。言われてみれば、あちこちに伏線が仕込んでありますね。というか、あのときおしゃれしてたのも、あのとき出かけたのも、あの時話そらしたのも、夜中に帰ってきたのも、全部ぜーんぶそれなのかよー。って思うと、本当に悲しくなる。なので、読み返さないです。
    そういえば「可愛い女性、実は・・・」というのは、宮部先生パターンでもあるわけですが、こんな形で炸裂するとは。ああ、酷い、酷過ぎる。そして宮部先生、ブレない。凄すぎる。
    この結末、デビッドハンドラーの「女優志願」を少し思い出す。あれは、次の巻でホニャホニャホニャでしたので、今回もそういう風にならないかなあ、と一抹の期待を持って次を待ちます。
    ものすごいダメージを食らいました。でも、そのダメージの大きさを評価して、★は5つ。

  • 初めて杉村三郎の登場する「誰か」を読んだ時から、ずっとつきまとっている不安があった。
    彼の所属する世界が、あまりにも綺麗でできすぎているような気がしたから。
    もちろん、周到に描写されていた。周囲の反応も、さもありなんという感じだったし、それでも愛を貫くのだ、という決意は何度も言及されていた。
    それでも、なんとなく、どことなく、杉村さんの気持ちには嘘があるような気がしてならなかった。嘘、というか、必死で自分に言い聞かせているような感じ。覚悟の上だと、自分で望んだことだと言いながら、もう一枚皮をめくると、違う気持ちがあるような。
    そして、「名もなき毒」で大きな事件に遭遇した。
    その影響が、今回の作品に現れた。
    新聞連載中から読んでいたから、結末は知っていたけれども、こうやってまとまって読むとまた違った印象を受ける。
    「やっぱり」と思ったのだ。やっぱり、お互い、してはいけない我慢をしていたのだと思う。
    ラストは寂しく、荒涼たる思いがするけれども、でも、やはりなるべくしてなった結末だと思う。

    宮部さんの、こういった社会問題を扱った作品は、きわめて目配りが丁寧で、人のいろんな側面が過不足なく描かれている。
    人の心には、どうしようもなく「悪の種」が潜んでいる。それが芽を出して成長するかどうかは、環境にもよるし、本人の性分も大きく影響してくる。
    坂本くんの変化は痛々しかった。
    詐欺はなくならないだろうなあと思う。騙される方が馬鹿なのだと言ってしまうのは簡単だけれど、人は騙されるものなのだ。そして、必ず騙す側にまわる者も存在する。
    自分はどうなのだろう、と考えずにはいられない。

    改心しやり直すためには、周囲の支えが必要だ。でも、それはとてもむずかしい。一度間違ってしまった人を支えることが、悪に加担することのように感じてしまうことが多いし、自己責任に帰してしまった方が楽だからだ。
    でも、自己責任なんて、ほんとうに負えるものなんだろうか。

    杉村さんはこれからどうするんだろうなあ。
    できれば、北見さんの後を継いで、新シリーズが始まればいいな、と思う。

  • 宮部さんの現代ものミステリーは
    現実の世界が抱える問題がリアルで
    すごく辛い気持ちになる
    しかし、やめられないとまらないの面白さ
    ストーリーに触れるのはやめますが
    (本当はすっごく書きたいんだけど)
    こういう展開 こういう終わりなのと
    なんだかすごいです

    9月くらいに放送していたドラマ名もなき毒で
    杉村三郎役を小泉孝太郎さん
    妻の菜穂子役を国仲涼子さん
    編集長役を室井滋さんで
    最初は、えっ?と思ったのだけど
    ドラマを見ていて、ぴったりだと思い
    今回の小説を読む時も、顔が浮かんで
    これがドラマになる時も
    同じキャストでやってほしいと思うのです
    ああ、興奮さめやらず・・・

  • 2年前に読んだのだが、長い話で所々記憶から抜け落ちてしまい、読み直す。

    表題にもなっているペテロは、イエスの弟子であることを否認したー知らないと嘘をついたーわけだが、その葬列というくらいだから、嘘てんこ盛りということだろうか?と考えてしまう。

    確かに読んでみると、嘘てんこ盛り。
    身近な嘘から、詐欺事件として世間を騒がせたマルチ商法の嘘まで、この世をとりまく嘘のパレード。人との繋がりが希薄になったからこそ、この手の嘘は拡大を続けているように感じるのだが、杉村三郎は、またまたその渦に巻き込まれてしまう。そして最後には最愛の妻の嘘に…。

    そして、葬列にはまた違う意味もあるのかもしれない、それまでの自分との決別…というような。
    続きの「希望荘」も読み返してみようかな。
    2019.4.24

著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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