書楼弔堂 破暁

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1227
レビュー : 192
  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715408

作品紹介・あらすじ

明治20年代中頃、雑木林と荒れ地ばかりの東京のはずれに、異様な書店「書楼弔堂」が佇む。
書楼弔堂(しょろうとむらいどう)という書店を舞台に、月岡芳年、泉鏡花、井上圓了、勝海舟ら、江戸の面影が残る明治を生きた人々を描く新シリーズ!

感想・レビュー・書評

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  • 古今東西、あらゆる書物が集う書楼、それが「弔堂」。

    主曰く、
    ここは本の墓場で自分は本を弔っているのだ。読まれない本は屍。しかし読む人がいれば、その屍は蘇る。そして本は己自身に相応しい一冊があればそれでよい。ただその一冊に巡り合うことが叶わぬから、何冊も何冊も読む羽目になる。
    そのたった一冊となるべき本を然るべき相手に売ることが供養となるのだという。

    訪ねくる客たちは、歴史上実在の人物たち。
    京極さん、または弔堂の主人の語り口に、どこまでが本当の話でどこからが創作なのか、わからなくなってくる。
    なかでも「探書 肆 贖罪」に出てくる中浜翁に付き従う影のような人物には驚いた。
    読んでいると、すぐに正体には思い当たるのだけど「いやでも、あの人は……」となるので、その場までどう繋げるのか、謎明かしは、と気になってページを繰る手が早まった。
    この章の最後をはじめ、史実かどうか確かめたくなる部分がいくつかあったけれど、調べるのはやめた。
    京極作品は虚と実のあわいにあってこそ、楽しい。

    “読まれぬ本は紙屑ですが、読めば本は宝となる。宝と為すか塵芥(ごみ)と為すかは人次第。”(473P)

    本は「読むもの」と思っているけれど、半分以上は「積むもの」になっている私には耳のイタイ言葉です。
    墓標と化した本たちに囲まれながらも、
    己自身に相応しいたった一冊の本。
    自分のそれが何か知りたいけれど、まだ出会いたくはないと思ってしまう我が業の深さよ。


    ・・・・・
    昨年「遠野物語remix」で久しぶりに京極さんを読んで、リズムのいい文章にまた読んでみたい熱が上がる。
    んが、京極堂は数冊読んだ後は積んでるし、他の作品も積んだり積んでもなかったりしてるうちに巻数が出てるし、さてどうしたものかと思っていた矢先に新シリーズ!喜んで読んだものの他の作品ともリンクしているもよう。
    単独で読んでも問題なく面白いけれど、リンクを知ればなお面白そう。
    (ううー、京極堂の再読から始めるか。いや分冊版を買いなおすところからか)

  • お、重い!!分厚くて電車の中で読むのには不向き。
    持ち歩いていたら「重くないんですか?」と聞かれる始末。
    重いに決まってるわ!!

    久しぶりの京極さん。
    これも漢字で表記するんだ〜と、漢字のとじひらきに関心がいく。

    情報ではなく、本を売っている。
    本という存在をちょっと考えてしまうな。

  • 2018.10.08 読了
    本というものは内容自体に価値があるわけではなく、それを読んだ人の中に立ち上がるものに価値がある。結局は本の中で何を感じ、何を考えるかということ。

  • 2016年マイベスト10に入ってくると思います。つい続けて2回読みました。今作は初めて『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』を読んだ時の感動が甦るような作品でした、もっと読みたいです。
    主役は本、ワキが高遠彬、世界の本の墓場弔堂という本屋の主/龍典(りょうてん)、丁稚/撓(しほる)で、客として色んなビッグネームが訪れ、その客に”本”を会わせるという豪華な設定。『臨終』大蘇月岡芳年 にWilliam James『The Varieties of Religious Experience』、『発心』泉鏡花に真土事件関係資料、『方便』矢作剣之進(巷説百物語の不思議巡査)、勝海舟、井上圓了(越後長岡の慈光寺の子、哲学者/妖怪博士)そして圓了に鳥山石燕『画図百鬼夜行』、『贖罪』中濱”ジョン”万次郎、岡田以蔵で以蔵に杉田玄白訳をさらに弟子の大槻玄澤が訳し直した『解体新書』、『闕如』巌谷小波に渋川清右衛門版『御伽草子』、『未完』中禅寺輔(京極堂シリーズの主役、京極堂/中禅寺秋彦の祖父、こちらで秋彦の父が耶蘇教に改宗しているというのも語られる)秋彦祖父には”武蔵清明社縁起”とその父が著した未完の陰陽に関する秘伝書のたぐい、高遠にはローレンス・スターン著『トリストラム・シャンディ』(The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman)。そして挿絵もトリストラムシャンディかと思いきや、何故かオリバー・ゴールドスミス著『The Vicar of Wakefield』やと思いますねぇ。色々と含み多いです。
    ともかく、こんなフランスのカタコンベのような本屋でうもれられたら至福でしょうねぇ、夢のような場所です。

  • またしても古本屋………だがこの古本屋は怪異な殺人事件を扱うのではなく、悩む人と話すことでその人が私たちのよく知る偉人になる手助けをしているようだ。ただ、その手助けの仕方は「背中を押す」というようなポジティブなものではなく、じわじわ追い込んでいくようなやり方は例の漆黒の古書店主にも似ているが………。

  • これほど深い物語を流麗、明快に描き出していく著者の手腕に感服。

    明治25年、雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れに佇む楼閣のような書店「弔堂」を舞台に、月岡芳年、泉鏡花、井上圓了、勝海舟ら実在した偉人たちと弔堂主人との、人生の転換点となる対話を描く新シリーズ。

    ファンとしては、京極堂シリーズと対をなす要素が満載で思わずニヤリ。弔堂主人は京極堂を、語り手の高遠は関口を髣髴とさせる。
    それぞれ人生の懊悩を抱えた偉人たちが弔堂を訪れ、本当に大切な本に出合っていく。その過程で交わされる、哲学論議とも呼びたくなる対話がこの本の醍醐味だと思います。
    取り上げられるテーマは、人生観の再考を迫るほどに深い。人はなぜ本を求めるのか。近代合理主義がとりこぼしているもの。日本の主体性とは。義と不義を分かつものとは。前進、決着とは…。普段疑問に思いながらも通過しがちなこれらの問題について、言葉の匠である著者が、思索にいざないます。

  • おもしろかった~~~!
    たった一冊のその人にとっての本。
    その出会いを手助けしてくれる本屋
    そんな本やになりたい~~~。

    情報を売っているわけではないのだ、
    「本」というものの存在価値。
    それをこーゆー風に物語にしてくれた京極さんに感謝。
    その設定の素晴らしさに加え、対象が有名なあの方々だったりするわけで、おもしろさ倍増。
    店主の京極堂を思わせる語り、も気持ち良く読まさせてもらいました。
    んでもって中禅寺って、京極堂シリーズの、あの、なのですよね??
    いやーたのしい、たのしい。
    京極さんにしては
    闇が薄い(?)とゆーか、結構読みやすい感じもあり、
    ライトな読み心地。
    いや、よーっく考えたりするとどぶどぶと深みにはまってしまいそうな感もあるんだが・・・。

  •  御一新から時を経た、明治二十年代。
     本や出版の仕組みが変貌しつつある時代、東京に奇怪な店を構える元僧侶の古書肆が、迷い彷徨える客たちを滔々と言葉で導き、相応しき本を薦め、そうして本を『弔う』。
     明治を舞台とした憑きもの落としの様相を呈する連作短編集。
     歴史上の著名な人物らが実名で登場し、著者ならではの肉付けがされているのも、京極流評伝を見るようで実に楽しい。
     また、これまで漠然とクロスしていた感のある百鬼夜行シリーズと巷説シリーズが、ここにきて明白に地続きとなり、ある種、世界観が完結しているのも見どころだ。

  • 書生時代のあの人はこのような感じであったのだろうか。
    京極流ここに有り。

  • 京極夏彦の本はむず痒い。普段ちらほらと考えている事の一歩先を書き示してくれ、何かが掴めそうになるけれども、すぐにふわふわ指をすり抜け消えてしまう。著者は「そういうものだよ」とも言ってくれるが、やはり歯痒い。
    究極の一冊。もう血眼で探す熱意も消えたが、のんびり気ままに読書するうちいつか巡り会えたら、と、読後に思う。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、全日本妖怪推進委員会肝煎。94年、『姑獲鳥の夏』でデビューする。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞を受賞。著書に『幽談』『冥談』『眩談』『鬼談』『ルー=ガルー』『南極(人)』『厭な小説』『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』 『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『遠野物語拾遺retold』 ほか。

「2019年 『文庫版 オジいサン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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