博物館のファントム 箕作博士のミステリ標本室

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 277
感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715453

作品紹介・あらすじ

自然史博物館に預けられた「呪いのルビー」が狙われた。頻発する鉱物標本盗難事件と〈幻の宮沢賢治コレクション〉に関連が? 変人博物学者と新人分類学者の凸凹コンビが活躍する新感覚連作ミステリ登場!

感想・レビュー・書評

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  • 博物館が舞台の連作短編6篇。
    鉱物・植物・剥製・化石・昆虫・人類とどれも興味を引くものばかり。

    旧標本収蔵室に住みつき、ファントムと呼ばれる箕作(みつくり)。人のことは変な呼び名で呼び、自らは死語になりつつある「博物学者」を名乗る。
    「どんなものも絶対に捨ててはならない」を博物館の第一原則と公言し、博物館の収蔵物と私物の様々なものに囲まれて過ごしている。
    かたや、新人の博物館員・環は片づけ魔。専門はコンピュータで、ひそかに生き物よりコンピュータのほうがかわいいと思っている。博物館に務めているものの、収蔵物に関する知識も興味もほぼない。
    この正反対のコンビが博物館で起こる日常系(?)ミステリを解決していく。

    宮沢賢治が集めた鉱物標本、ねじれた花弁のナスと誰も傷つかない復讐、「送りオオカミ」の語源となったオオカミの習性、デニソワ人の少女と現生人類の少年のロマンス(想像)……。創作も含め、どのモチーフも興味深く楽しい。
    最終6話では箕作さんが行方不明になって、どきどきひやり。そして研究者として嘱望されていた彼が「ファントム」「博物学者」になった理由も垣間見れる。
    登場人物の名前が各章のテーマにうっすら係っている(た、たぶん)ところも楽しく、なにより箕作さんがすんごく好みなので、激しくシリーズ化希望!

    • takanatsuさん
      九月猫さん、こんにちは。
      この本面白そうですね!
      「鉱物・植物・剥製・化石・昆虫・人類とどれも興味を引くものばかり。」
      博物館でのミス...
      九月猫さん、こんにちは。
      この本面白そうですね!
      「鉱物・植物・剥製・化石・昆虫・人類とどれも興味を引くものばかり。」
      博物館でのミステリにどんなふうに関わってくるのか、どんな物語を持っているのかを想像するとワクワクします。
      読みたいです!
      2014/04/11
    • 九月猫さん
      takanatsuさん♪
      コメントありがとうございます!
      博物館が舞台って、わくわく・心惹かれますよね。
      あれやこれやとごちゃまぜで(...
      takanatsuさん♪
      コメントありがとうございます!
      博物館が舞台って、わくわく・心惹かれますよね。
      あれやこれやとごちゃまぜで(いや分類されてますけれど)展示されてる感じが
      なんとなくレトロな雰囲気もあって♪
      モチーフはもちろん、お話もおもしろかったので、機会があればぜひぜひ♡
      2014/04/11
  • ううう…博物館に行きたいっっっ!
    …と、博物館欲をかきたてられる1冊です。

    語り手は池之端環。
    新米の博物館員で、遺伝子情報を使って生物種を分類するためのソフトウェア開発を専門にしており、散らかっているのに堪えられない片付け魔。
    そんな彼女の前に現れたのは、博物館員たちから標本収蔵室のファントムと呼ばれる男・箕作類。
    博物学者を自称するのもうなずける博識で、雑多な標本や古書に囲まれながら、標本収蔵室で暮らしている変わり者。
    博物館で起きた6つの事件を、この正反対のペアが解決していきます。

    動植物の横文字の学名がいっぱい出てきたり、標本作製室など博物館の裏側をのぞけたり…と、だんだん楽しくなってきて、気付けば鼻息があらくなっているのでした。
    舞台になっている国立自然史博物館のモデルは上野の国立科学博物館。
    あの知識の宝庫が醸し出す空気がページからも立ち上ってくるようでした。

  • これも面白い。
    伊与原さんはとっても博学な方だなー。
    「科学」がとても幅広く奥が深いことに感心した。
    特に植物学が面白かった。

    動植物や化石、鉱物等を展示する自然史博物館を舞台にした連作短編。
    几帳面で片付け魔の新人研究員・環と、片付けが苦手な標本収蔵室のファントム、ことベテラン博物学者・箕作(みつくり)のやり取りが面白い。

    「名前のないものがあれば、名前をつけたい。名前しかないものがあれば、それがどんなものか知りたい。名前も中身も分かっているものがあれば、どうしてそうなのかを知りたい」
    「どんな種にも、その種にしか語れない物語がある」
    探求心をとことん煽る「科学」の奥深さ。
    知れば知る程、興味の幅も広がる。
    古来より現代に受け継がれた「科学」に果てしないロマンを感じた。
    私も自然史博物館に行きたい。

  • 「国立自然史博物館」職員の池之端環が、職場で起こる「ミステリー」に遭遇、先輩職員の箕作(みつくり)と謎解きしていくという物語。短編6篇で構成されているが、回を追うごとに二人の関係が変化していく様子がみてとれる。

    ミステリーというよりは、関係者が深くかかわる事件を発端とした、限りなく専門的な事柄の解説、といった方がよいかもしれない。科学に関してはど素人だが、物事に夢中になってしまう大人を見おろすのは面白い。ただ、後輩女子を「お前」呼ばわりする先輩箕作は好きじゃない。後半、かなりのイケメンであるとの描写があるが、人を物みたいに扱う態度がよろしくない。

    ひと頃のお仕事小説に、きつい上司と天然系女子が惹かれあっていく物語があったが、今となっては賞味期限なのかも。でもモデルとなっている「国立科学博物館」には行ってみたい。科学への興味を起こさせる作用のある小説であることは確かだ。

  • 博物館舞台という設定だけに謎解きの味わいも特殊。短編ごとに扱うテーマが違っていて色んな世界を覗けるのが楽しい♪

    鉱物、ナス科植物、剥製、化石、甲虫、異人類
    『どんな種にも、その種にしか語れない物語がある』
    井与原さんの著書は本編を楽しむ他、そんな未知の物語に導いてくれるワクワクがある。
    ただ、虫が苦手な人には読みづらい部分があるかもしれません。

  • 変人と言われる人はこだわりが強いのかも。
    こだわりの強い人なんだから、と思っておけばもめないで済みそうではある。

  • 専門用語というか正式名称がつらつらと。頭に入ってこないので飛ばし読み。キャラは面白そうなんだけど・・・。

  • 博物館の変わり者研究員・自称博物学者の箕作類と新人研究者の池之端のコンビが、博物館で起こる事件を解決していく連作短編集。変わりものというわりに結構人懐っこい感じがする箕作でしたが、読んでいて面白かったです。博物館で扱う専門分野が広く、読んでいて難しいものも多いですが、雰囲気が良くて面白く、会話がテンポよくて気にならずに楽しく読めました。シリーズ化してほしい。

  • 博物館を舞台にしたミステリー、連作短編6編。
    各章ごとの扉の絵がいかにも博物誌的で素敵だ。物語も身近なようで深遠なバックボーンがあって、知識も深まる。主人公たちも個性豊かで、嫌みがなくていい感じ。

  • どんなものも捨てないで貯めこむ箕作と、まったく生物に興味がない片付け魔のバーコードレディ。このまったく正反対のコンビが醸し出す雰囲気がとても楽しい。
    博物館という、学識の宝庫だけど縁遠い場所が、ちょっと身近に感じられる。
    あんまりなんでも貯めこむのも問題だけど、どんどん捨てればいいってもんでもないよなあ、と思った。
    第6話で、おお?という展開になったので、ぜひシリーズ化してほしい。
    読んでるだけでも勉強になって、それもまた楽しい。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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