左目に映る星

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715491

作品紹介・あらすじ

小学生の時に出会った少年は、彼女にとって完璧な存在だった…。過去を引きずったまま大人になった早季子と、あまりに純粋なアイドルオタク・宮内との恋の行方は──。第37回すばる文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 自分と同じ気持ちを共有してくれると感じた初恋の相手が忘れられず、他人と刹那的な関係しか結べない主人公が恋を知らないアイドルオタクと出会い、いろいろ気づかされるお話。ちょっと主人公に共感できたので、最後の方は胸がきりきりしました。

  • すばる文学賞受賞作品。片目だけ乱視という主人公。私自身も乱視(両目だが)なので作品に書いてある視界についてはなんとなくだが、理解はできる。片目を瞑り、世界を見る事によって精神状態を保つという発想が好き。この作者の考え方や物の見方というのが非常にさっぱりしていていい。所詮、人間というのは自分以外の人間を自分が作り上げた虚像で見ている気がする。

  • 初読

    ふうん…?正直、あまりピンと来なかった。
    もう少し若い時に読めば違ったのかな。
    そういう意味ではnot for meだわ

    消せない虚像、同じ筈の物を見ても全然違う
    それ故の孤独ーうん、もう私の中では遠いものになっている。

    期待して読んだ初めての奥田亜希子、
    少し残念な結果に。
    でも文章は読みやすい。

  • 主人公の早季子は小5の時に出会った吉住が忘れられない。
    自分の孤独感、疎外感を分かち合えるのは彼だけと頑なに信じて生きている。
    本当はそんな事ないのに。
    何かあった時に思い出す吉住の言葉は、過去の言葉ではなく、今の早季子にささやきかけて、彼女の行動を限定する。
    早季子にとっては救いの言葉でも、私には呪縛に思えた。
    だから、吉住と同じ癖を持つと知り、合コンの場で突然連絡先を教えてもらった宮内との出会いが少しずつ早季子の心に変化をもたらすのを、じれったくも微笑ましく感じた。
    人は確かに孤独なんだろう。
    誰とも本当に理解しあえないかもしれない。
    それでも、理解したい、相手のことを知りたいと思えることがとても素敵なことなんだと早季子が気づいてよかった。

  • 期待通りにいい作品だったな。
    タイトルからこれは面白そうと思った、第37回すばる新人賞。淡々と特筆するようなことは特にないのだけど、胸に刺さる箇所がちらほら。この作者は言葉選びのセンスがいい。それに加え空気感も良い、言葉運びがいい、句読点の打ち方もいい。雰囲気だけでいいと思える、そんな作品。
    左目に乱視があり、左右とでは世界が違うというのはよくわかる。わたしも幼い頃から左目に乱視がありよく右目瞑って世界観を試してたから。
    (そういうのもあってこの小説を好きと強く思ったのかも)
    ところどころ哲学的なんだよね。うーむ、とうなりたくなるような。アイドルも、昔の憧れのキミも同じ。
    ただアイドルオタクのファンの女を非処女だと許さない的なのはちょっと違和感。や、オタクの価値観知りませんが、ファンのアイドルが非処女だと許せないのは分かるけど、その場にいる女が非処女じゃないと許せないってのはなんという傲慢さ。そんなオタクいたら世界はおかしい、や、狂ってるやつだらけな世の中だからいてもおかしくないのか。

    まぁ兎にも角にも、個人的に次回作が楽しみな作家さんになりました。

  • 小学校の時に出会った同級生の左目だけで世界を見るという出来事から影響を受けて、大人になった今も右目をつぶる癖が抜けず、自分と世界の間に何か違和感がある早季子。アイドル、リリコの追っかけの宮内に出会うことで、変わっていく心情が丁寧に描かれていて、共感とは違うけれどすっと腑に落ちる感じでとても良かった。

  • 子どものころからすべてを孤独と決めつけてしまっては、当然ながら孤独の殻に引き込むだろうね。しかもそれでいて寂しがり屋。はたから見たらめんどくさい一人かな。それが大きくはないけどカタストロフを迎える流れは悪くない。もう一声を、好きな人にかけてみてもいいかと思わせてくれるかもしれないフィナーレだった。

  • 小学生の頃好きだった人を思い、その人のことを考えてしまう主人公と、アイドルをひたすら推している男性の恋の始まりを描いた作品。
    昔好きだった人を今でも時々思い出している自分が救われたりもして個人的には好きでした。

  • 片目だけ悪い。
    という主人公は嫌なことがあると見えている方の目を閉じる。
    そうすると視界がぼやけて別世界に行ける。
    この方法を教えてくれた男の子のことをずっと心にひっかけて生きている。
    それが理由で元カレに振られてしまうほどに男の子は心を占めている。
    でもその男の子はもう変わってしまった。
    私の心の中にだけあの頃の彼がいるのだ。

    どうにも現実の世界と折り合いの悪い主人公は友人の開催する合コンで会った男の同僚が自分と同じ左右非対称の視力を持つと知って紹介してもらう。
    その男は声優アイドルの追っかけをやっている。
    成り行き上そのアイドルのライブを見るようになる。

    設定としては情報量が多いのにスムーズに理解できる。
    主人公の変化は大人になったからなのか、殻を脱ぎ捨てたからなのか。
    読後感は悪くないです。

  • 転校ばかり繰り返していた早希子の孤独を共有してくれたのは、小学生の時の吉住くんたった1人だった。

    小学生の頃の吉住くんに気持ちを預けたまま大人になった早希子。
    誰とも深く恋愛をすることもなく、合コンに出ては誰かと寝るだけの関係を続けていた。
    右目を閉じて見える世界に閉じこもっていた早希子がたまたま出会ったのは、アイドルオタクの宮内だった。

    宮内も自分と同じ世界が見えているはずだと思っていたけれど
    自分とは正反対すぎる彼の不器用だけど真っ直ぐな性格に
    早希子の心が動かされるまで。

    よかった。ちょっと小学生の頃の恋愛をずっと胸に秘めながら他の人と寝まくってる設定が度肝抜ける感じだけど。
    彼らのこれからの展開が楽しみ。

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著者プロフィール

1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒。2013年『左目に映る星』で第37回すばる文学賞を受賞しデビュー。他の著書に『透明人間は204号室の夢を見る』『ファミリー・レス』『五つ星をつけてよ』『リバース&リバース』『青春のジョーカー』『魔法がとけたあとも』がある。

「2021年 『求めよ、さらば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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