雨の降る日は学校に行かない

著者 :
  • 集英社
3.51
  • (38)
  • (77)
  • (94)
  • (24)
  • (4)
本棚登録 : 814
感想 : 99
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715521

作品紹介・あらすじ

中学になじめず、保健室登校をしているサエとナツ。そこは二人の楽園だった。しかしサエが急に“クラスに戻る"と言い出して──。中学生女子の生きづらさと、かすかな希望を丁寧に描き出す連作短編集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 学校生活に何かしらの辛さを抱えている中学生女子のお話6編。

    保健室登校、死にたい願望、スクール・カースト、いじめ、理解のない教師など、読んでいて心がきゅーっと縮まる。
    どのお話もラストでは光が見えるのが救い。

    『死にたいノート』が強く印象に残った。
    どんな理由があれば死んでいいの?と考え、毎日「死にたい」と手帳に書き綴る藤崎さん。
    「死にたい」という文字は、生きたい・しあわせになりたい、という叫び。
    本人も気付かなかったそのことを、読み取ってくれる河田さんとあっちゃんに出会えたことがよかったと思える未来でありますように。彼女たちとちゃんと「友達」になっていますようにと祈らずにいられない。

    一話目につながる表題作でもある最終話も、胸が苦しくなる。
    飯島さんのようなコも川島先生のような先生も、いたなぁ。
    でも、長谷部先生のような先生は、そうそういないんだよなぁ。
    このお話のサエちゃんが、一話目の決心をするのにどれだけ勇気が必要だったか……。
    最初の一歩が一番怖い。だけど踏み出したら、それが次の一歩への力にもなる。

    だいじょうぶ、過ぎてしまえば短い時間だよ。なんて、大人になれば言えるけれど、当事者の子どもたちにとっては「いま」の辛さが「すべて」だものね。
    がんばれ、なんて言えない。
    あああ、胸がきゅーーっとなる。きゅー……。

  • 中学生のこの頃の、何とも言えない閉塞感。
    あーそうだったなぁと目を瞑りたくなるくらい、共感してしまった。
    いつのまにか子どもから少し大人になっていて、周りのみんなも変わっていって、自分はどう思われてるんだろうと不安になってしまうあの気持ち。
    他人にどう思われようが、自分に嘘をつかない強さを、各章の主人公たちは獲得していく。
    制限された中でも懸命に生き抜く彼女たちの姿が眩しく、そして力強い。

  • 相沢沙呼という作家さんは
    中学生を語らせた方が筆致が生き生きしていると思う。

    感想をひとことでいうと
    『ヤなこと思い出しちゃったなぁ』。
    ツールは変わっても虐めの本質は変わらない。
    悪気(というか、自覚?)がない、というのも変わらない。
    保健室とか不登校とか逃げ場があるのが羨ましい。
    逃げるっていう選択肢が存在することも。

    この連作に登場する先生たちが
    意外と話の鍵を握ってるのかも。
    『放課後のピント合わせ』に出てくる柳先生と
    表題作と最初の話に出てくる保健の長谷山先生にはだいぶ救われたけど
    表題作の担任の言いぐさには呆れてモノも言えなかった。
    何処見てんだお前。
    …たぶん川島先生は虐められたりしたことないんだろうなぁ
    と読みながら思った。
    これじゃ生徒は救われないよなぁ。

    最後まで読むとループしていることが判る仕組みになっている。
    表題作を読んだあと1話目に戻ると
    サエちゃんの印象が全く違ってくるのがすごいと思った。
    そういう意味では2度読み推奨なんだろうなこの本は。

  • 女子中学生の苦しくてしんどい生活が書かれた短編集。
    「中学生」というのがポイントだと思う。
    高校生なら、もう少し展開も変わってくるだろう。

    経験上、中学生は憂鬱だ。
    ありあまるパワーと夢と希望と、
    今は何物にもなれない子どもであること。
    そういうことが、あんな風に力の矛先を決めるのだろうか。
    だからといて許せることではない。

    あの保健の先生や、
    カメラを教えてくれた先生のような
    大人に出会うことは、
    幸運だし、とても大切なことだと思う。

    スカートの長さに関係なく、助けてほしい中学生はいるのだ。

    しかし、女子のこういう世界は、
    大人になっても手を変え、品を変え続くのだ。
    外からはわかりにくいので
    気付く男性は少ないと思う。

  • 学校が推奨する「明るく活発な子」ではない女子中学生たちにスポットを当てた短編集。
    校則どおりの丈のスカートをはいている子が「ダサい」、短くしている子ほど「イケてる」というヒエラルキー。つるんでる仲間は皆同じぐらいのスカート丈……。
    言われてみれば私が中学生だった20年以上昔もそうでした。

    痛い。ひたすら心が痛いです。
    表題作に登場する川島先生の理解のなさが憎らしい。
    でも昔からリアルにこういう先生いたよなー。主人公さっちゃんのクラスメイト、飯島さんみたいな子も。
    そんな学校の中では、保健の長谷部先生の存在はまるで救いの女神のようです。
    私も学校に行けない時期があったので、さっちゃんや1作目のなっちゃんの気持ちが少し分かります。
    あの時代は保健室登校なんて融通は利かなかったなぁ……。学校に来ない子は「臭いモノには蓋」で時間の経過と共に存在すら無かった事にされる。
    さっちゃんのお母さんが最終的には理解してくれてほっとしました。
    大昔のほろ苦い思い出が甦った1冊でした。

    読み終わってから著者が男性であることを知ってびっくり!
    こんなに繊細な女子中学生の心情を描けるなんて!

  • 痛い。
    どの主人公にもあの頃の自分を重ねてしまって少し辛かった。
    そんな少しだけ生きづらい女子中学生たちの物語。

    相沢沙呼という作家は男性なのになぜにこうも10代の女の子の気持ちを瑞々しく描けるのか。
    どの作品を読んでも同じことを思っていたけれど今回は特に。
    これが小説すばるに掲載されていたのがちょっと惜しい気がする。
    もっと若い世代に読んで欲しいと思う。

    それにしても
    こんなシリアスな作品でもふともも描写を忘れないあたりはさすが相沢さんっ!

  • 心理描写は10代の脆さをうまく描かれてるんやけどなんか話の展開がスッと入ってこなかったかなぁ

  • 母親がお勧めしてくれた本。
    私はいじめには遭ったことがないけれど、学校は好きじゃないです。それを、共感させてくれる話でした。
    繊細な心の表現が、とても上手でした。
    今がつらいと思っている子ほど、読んでほしいです。捉え方は、きっと違うと思いますが、心の支えにはなってくれるのではないかな…。

  • 学校に来れていない子には絶対に理由があって、みんな1人で戦おうとしている。
    嫌なことから逃げているんじゃなくて、自分なりの人生を生きている。そんなふうに思いました。
    学校に行かないと決めるのも勇気がいることで、周りからどう思われようと自分を守る為に学校に行かないことを選ぶのは悪いことではないと改めて感じました。

    私が1番好きだなぁと思ったのは「好きな人のいない教室」です。
    大人しくて絵をずっと書いている男の子がとてもかっこよく思いました。周りに何を言われても自分の好きを貫いて周りの意見は関係なく自分らしくいるってとてもとても難しいことです。相手を知ることはとっても大切で、何も知らずにただ自分の想像や見た目だけでバカにする行為がどれだけ汚いことか、頭の悪いことか。
    私も今までそうやって生きてきてしまったのかもしれません。相手を知ろうとすることはとても大切なことだと学びました。

    一つ一つのお話の主人公全員がちゃんと自分に向き合う姿に勇気を貰いました。

  • 「どうして、学校に行かないといけないの?」

    ここに出てくるのは様々な理由でクラスメートとの関係に悩みを抱えた女の子達。彼女たちの気持ちはよく分かる。私もどっちかと言えばそんなタイプだったし。
    なんで目立つ子達は、あんなに自分たちの方が正しいとか上だとかという顔をしていられるのだろう。規則を守っている方が、バカにされなきゃいけないのだろうか?
    みんな仲良くなんて言うけれど、どうしたって合わない人達は存在する。彼らは友達じゃなくてただの知り合いなんだから。私は常々、クラスメート(知合い)とは挨拶と連絡事項さえちゃんとできれば問題ないと思ってる。もちろん楽しく過ごせればそれが一番だ。大人になって思えば、多少嫌なことも堪えて上手く付き合っていく処世術を身に着けるのも社会勉強として大切だ。でもどうしても折り合いが付かなければ、本人が平気であれば一人で過ごしてもいいと思う。友達なんて無理やりつくるものじゃないのだから出来なければそれでもいい。それを寂しい奴だとか言う方が違うと思う。
    この子達は、本当はとても強い。もちろん現実はもっと大変だろう。長谷部先生のような大人もいないかもしれない。でもだからこそ、この本が必要なのだと思う。

全99件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

相沢沙呼の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
有川 浩
辻村 深月
三浦 しをん
辻村 深月
米澤 穂信
米澤 穂信
米澤 穂信
坂木 司
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×