フェイバリット・ワン

著者 :
  • 集英社
3.12
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本棚登録 : 399
感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715545

作品紹介・あらすじ

駆け出しの服飾デザイナー、夏帆23歳。もっと素敵な恋愛をしたい、もっと上質な洋服を作りたい、そしていつか世界から認められたい。ひそやかな野心を胸に、しなやかにしたたかに運命を切り拓く。

感想・レビュー・書評

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  • 結論からいえば…普通の女の子、が分不相応に、高みを目指す話。でも誰が、あなたは普通の女の子です、なんて決めることができるんだろう。上を目指して頑張る姿は共感できるし、自分が普通なのか、特別なのか、決められないからどこまでも悩み、戦い続ける事ができるんじゃないかな。主人公は割と冷静で、自分の価値をわかっている普通の女の子。だけど、段々と周りの環境の変化で、自分への評価も変わっていくのかな。周りがキラキラした人に囲まれていけば傲慢になるのも否めない気がする。ただ、自分が本当に欲しいものを、確固たるなにか、を分かっていないと、欲しいもののためになにかを手放す勇気も持てないと、結局はなにも、掴めないとゆうことだろうか。それにしても、林真理子の恋愛描写は本当にすごい。こんな若い子の気持ちまで細々と描いてしまう。

    以下、好きな文を引用。

    結局、幸福って、自分がすごく価値のある人間だって人から教えられることなんだと、夏帆は思う。恋なんてその最たるものだろう。

    男の人がこちらの話を集中して聞こうとするとき、なんとも言えぬ優しげな大人びた表情になる。夏帆はそれを見るのが大好きだ。

    人は後ろめたいことがあると、恋人にいくらでも優しくなれるものだ。そして同時に安堵する。これで、彼との心の重りが、釣り合いがとれるようになったと、もう彼を愛し過ぎて苦しむこともないのだと、ほっとするのだ。やさしさと安堵。この二つを手に入れられるのだから、人はもっと、後ろめたいものを持つべきなのかもしれない。

    目を閉じてその感触を楽しみながら、夏帆は髭を生やした別の男の人のことを思い出している。自由に心の中で思慕を深くしていく。確実なものはここにあるから。もう手に入ったものとこうして戯れながら、まだ手に入らないもののことを考えるのは、なんと甘美なことなのだろう。

  • 主人公は、どこにでもいる普通の女の子。
    お洒落が好きで、素直で、恋愛を楽しむ彼女は、まさに本書が連載されていた雑誌MOREの読者層そのものではないでしょうか。
    小説版「野心のすすめ」とも言われている本書は、そんな彼女が「特別」を目指してひたむきに駆け抜ける物語でした。

    では「特別」とは何か、というと、辞書によると「他との間にはっきりした区別のあること」となりますが、唯一無二である、代わりのきかない、そんなキラキラしたものを特別と呼ぶんじゃないでしょうか。
    無難なところで収まるのではなく、どこまでもそのキラキラを手に入れようと駆け抜ける主人公は眩しく、まさに野心とはこういうものなんだと感じさせられました。

    それぞれの登場人物のキラリと光る台詞も印象的でした。カメラマン中谷さんは中でも素敵。
    「キラキラした人の下にはさ、何十倍もの満たされなくって、自分の夢とは別の道を歩いていった人がいるんだよ。僕はさ、そういう人をたくさん見てきたからさ。ちゃんとそっちに向ける視線も持っていようと思うよ」
    なんて、言えるキラキラした人。

    人が「特別」に惹かれるのは、本能かもしれない。
    がむしゃらに頑張るのも、コツコツと積み上げていくのもいいけれど、「大人のルール」は守らないとね。

  • 自分には縁のない世界での話なので単純に興味が持てたし、ミステリーでもないのに展開に目が離せなくて、一気に読むことができた。
    良い方向にも悪い方向にも、男に振り回されたり、逆に利用したり。私が同じような生き方をすることはないだろうけど、共感できる考え方が随所に散りばめられていた。友人との関係も少し危ういところがあってリアルだったな。
    私ももっと人との関係に翻弄されるような生活をしたい。

  • 可愛い洋服が描かれたカバーに惹かれて、図書館で借りてみた。

    学生の自分には想像もつかないような世界が描かれていた点については、すごく新鮮味があり面白かった。

  • 解説に、主人公はどこにでもいる女の子っていってるけど、こんなやついるわけないだろ!
    25歳であんなに人の気持ち考えられなくてわがままで傲慢な女ってありえない。絶対友達になりたくないわ。愛ちゃんの写真だって、自分をうまく納得させてやりたいようにやってる。5人中2人が可愛いと思ってくれる女の子っていうのが、なんとも自分のことちょっと可愛いと思ってる女の子。途中から智行への感情がないって感じるんだけど、それなのに文章として平面的にすきすきって書いてあって、意味がわからない。

    林真理子さんってこんな本書くんだー。もういいや、、、。

  •  駆け出しの新人デザイナーと売れない芸人の、どうでもいい恋バナかと、期待もせずに読み始めたが…さすがは真理子先生。つまんない話でもぐいぐい引き込んでくれる。
     特にスポンサーを名乗り出る金持ちおじさんの登場はよかったなぁ^^.世間知らずの23歳の女が、こじゃれたレストランや上質の服を経験していく過程はワクワクする。デートで会うなり、「ナッちゃん、洋服を一着買って着替えておいでよ」「このあたりには20万とか30万のワンピースがいっぱい売ってるよ。今日、僕のためのワンピース選んできなよ」だって。おじさんったって40歳ぐらいだかんね。うらやましい。
     その後に現れたカメラマンの中谷さんもいい感じだったね。素敵な大人だし、淡い片思いを満喫できた。最後には中谷さんも「こっちにおいで」「このままナッちゃんとどうにかなりそうだ」ということになり、これまた胸キュンものだ。
     ちゃんとした彼氏がいるのによくやるよって感じだけど、結婚前の20代はジェットコースター。人生の大波がこれでもかと覆いかぶさり、必死で泳いでる間にどこかの岸にたどり着くのだ。波にもまれている間にいろんなことを学んでいく。世間に対しても彼氏に対しても、若気の至りで失礼なことをいっぱいしてしまうけど、いっぱい経験してちゃんとした大人に成長していくのだ。

  • 主人公がキラキラした世界に飛び込んで行って、ありきたりだなとは感じながらもこっちまでワクワクする。
    時々語られる女心は、きっと同性からは嫌われるだろうなと思いながらもたくさん共感した。
    …それだけに、ラストの読後感の悪さがもったいない。。

  • 最後まで読んで、いや、そんなことある?って感じだった。
    主人公は素直っていうだけで軽いから、もっと軽く終わるのかと。
    傲らないことも、学ぶこともどれだけ難しくてどれだけ大変か。
    生き方とその人の持つ天性を突きつけられた感じ

  • 面白かった!
    1人の女性の成長(?)物語。とにかく恋愛体質(と言うよりも尻軽)で、金持ち年上男性と愛人関係になったり、出会う人達から自分の考え方や生き方について影響を受け、やがては成長し仕事も自分のやりたかったことを実現していく。

    主人公はセフレがいたり、彼氏がいるのに年上の男性の愛人になる。ただし、自分では愛人とは思ってなくて一流のモノを見たり経験させてもらって、勉強させてもらってるだけと思ってる。
    でも、そういう女性の気持ちは理解できた。
    身に覚えがある女性って意外といるんじゃないかな。笑
    それに、そんなことができるのは若くてそこそこ可愛い女の子だけ。女に生まれたなら、女しか持ち得ない特権を、どんな形であろうと使うのはアリだと思う。

    主人公の彼氏は、実際にいたら私は付き合いたくないかも。でも、最後に別れるときの彼氏に対する態度は良くないし、恋愛体質すぎだし、こんな女友達がいたら、ただただおじさんから都合よく遊ばれてるだけにしか見えないかも。


    でも、読んでて共感できることも多かったし面白かった!だから、余計とラストの展開はしっくりこなくてちょっと残念だったので☆3つ。

  • 何事も上を目指すって大事やと思った。主人公がキラキラした人達に囲まれて、意識が変わっていくところが好き。成功するためにおじさんの愛人になったり手段は選んでなかったけど、結局自分が幸せになれるかどうかが全てなんやろうなって思う。いや、それでも相手に家族がある不倫は良くないよな。

    この人の小説面白そう。色々読んでみたい。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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