結婚

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715668

作品紹介・あらすじ

28歳の倫子は結婚を意識し始めていた。卵子老化の話題も気になっている。兄が結婚し、会社の同僚の花蓮が結婚するなか、結婚に結びつかない関係しかなかった倫子はついに具体的に動くことを決意する。

感想・レビュー・書評

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  • 人が、「結婚」というものを意識するのは、何がきっかけなのだろうか。
    このお話の主人公、倫子の場合は、「卵子老化」の話題をTVで観たことだった。相手はどこにいるのか、どうすればその人と出会えるのか……。実家の父母や兄夫婦との関係と相まって、「そもそも家族とは何なのだろう」と倫子は思い悩んでいく。
    友人との会話シーンが延々と続く箇所があるのだだが、その空気感やリアルさに、妙に納得させられてしまった。

  • *28歳の倫子は結婚を意識し始めていた。卵子老化の話題も気になっている。兄が結婚し、会社の同僚の花蓮が結婚するなか、結婚に結びつかない関係しかなかった倫子はついに具体的に動くことを決意する*

    独特の橋本節で、淡々と延々と28歳独身女子の心情が綴られる。その独白がまあ…お見事と言うしかない。結婚に対する夢や希望は皆無で、冷静な分析をしつつ、問題や疑問を展開していくところに愛が入り込む隙はなし。こういう切り口の結婚小説、斬新です。
    それにしても、「結婚をしなくてもかまわない」が基本ベースになっている現代って本当に大変…

  • 全アラサー独身女性に贈りたい!と、言ってはいささか大袈裟だけれども、"結婚"に悩む女性あるいはそれを恋人に持っている男性にも読んでほしい。
    これを読めば結婚できるとか、自分の結婚観が固まるとか、迷いがふっきれる、なんてことは毛頭ないのだけれど、ナイーブかつプライドに関わる問題だから他人に赤裸々に語り辛いその悩みを、主人公である倫子と共に共感しあうことができると思う。
    結婚という、自分ひとりでは太刀打ちできない(というか1人ですることは不可能)大問題(と敢えて言わせていただく)の解決策は、結婚するか、しないと決めるしかない。でも、しないと決めると言っても『いつどうなるかわからない』事であるがゆえに、最終決定を下すことはできない。
    したくない、興味がない人はそれでいいかもしれないけれど、やっぱり独身者は心のどこかに"結婚"に対する"思い"があるのではないだろうか。しないならしないでいいのだけれど、独身を貫くということもそれなりの面倒ごとを避けることはできないし。
    27歳の倫子は『卵子の老化』という事実を知ってから、今まで全く意識してこなかった"結婚"を突然意識するようになった。が、意識したところで現実が大きく変わることも、小さく変わることもなく、では一体どうすれば結婚できるのか?という疑問に頭を悩ませつつ、周りの既婚者や、あるいは"結婚"にともなう自分の家族の変化に違和感を覚える。そんな倫子のイライラがものすごく色鮮やかに描かれていて、これを書いたのがオッさんだということに驚きを禁じ得ない。
    奥田英朗の『GIRL』を読んだ時にも思ったが、女性の内面をこんなにも生き生きと描けるおじさんが世の中に存在していることが私にとってはかなり大きな驚きであり、『異性のことを理解できる人間』っているんだな、と少し安心する。
    私はこの本を読んで改めて、何事も深く考えない方が幸せなのかもしれない、と思った。だけど私は深く考えるのが好きだ。やめろと言われようが、考えない方が幸せだろうが、それでも考えてしまう。そういう人にとって、僅かながらも救いになる1冊なのではないだろうか 。

  • 正直、夏目漱石っぽいんですよね。
    僕はケッコウ楽しめました。
    ただ、主人公と似た立場の人が楽しめるのかって言われると、ちょっと自信ないですけど…。

    橋本治さんの、2014年の本です。
    だんだんじわじわと、「橋本治さんっていろいろあるけど凄いなあ」と思えてきつつあるので、何となく購入。
    2014年現在、66歳の男性が、28歳の女性を主人公に、心理描写だけでぐりぐりと迫る訳です。
    この大胆さって言ったら、凄いなあ、と思います。

    備忘録も兼ねて、ネタバレも恐れず書きますが。

    倫子、という、旅行会社勤務の28歳の女性がいます。
    東京都内で働いています。年収300万弱くらいの立場、親は銚子の教員夫婦。独り暮らしです。
    きっかけは「卵子老化」という概念をテレビで見たことから。
    でもそれはあくまできっかけで、28歳という年齢を迎えて、ちょうど彼氏もいなくて。
    ありていに言うと、ちょっと焦ってくる訳です。
    1歳か2歳下の同僚の女友達は、結婚が決まったりします。

    「何が起こるのか」というレベルで言うと、
    一時期付き合って別れた男と再会してご飯を食べたり。
    父親の還暦祝いで家族旅行をするんだけど、兄は結婚して嫁と子供と参加、その「孫のいる新しい共同体」の中で居心地が悪かったり。
    友人が結婚を報告してきたり。
    なんだか焦ってしまって婚活を始めたり。
    そして最後にはテレビを見て「キャベツ畑農家の嫁になる」と決意して信州に旅立ちます。

    その何とも言えない尻切れトンボさが痛快な終わり方は、映画「けんかえれじい」を思い出してしまいました。

    全体的には…僕は面白かったです。
    ただ、好き嫌い別れるだろうなあ、と思うのは、どこかで、作者が登場人物を分析的に俯瞰に見ている訳です。
    そして、「倫子は~~~~ということに気づいていなかった」みたいに評論する訳です。

    もっと言うと、2014年現在、結婚、家族、仕事、生活、みたいなことを、東京圏での年収300万円前後の独居女性の観点で見ると、どういう世界なんだろうか?
    という、新書本と言っても差し支えない訳です。
    その例証として物語がある、という気もします。
    じゃあ、「どういうことを言っているわけ?」と、言われると困ります。
    「一言でいえないから小説にしたんだろうなあ」と思います。

    ●世の中の仕組みが、家族の仕組みが、前の世代とは変わってきている
    ●その中で、「結婚」というきっかけを考え始めると、ものすごく難しい
    ●見方によって「底辺の労働者」でしかない階級では、実は全然自由が乏しい
    ●母親と娘との関係、影響、兄弟の関係、友人との距離、人間関係

    みたいなことを、まるっと全般的に見つめて考えてるんですね。

    だからなんていうか…正直、夏目漱石っぽいんですよね。
    夏目漱石の「道草」とか「門」とか「行人」とか。
    「だから何の話なの?」って言われると困っちゃうじゃないですか。あの感じです。

    とにかく、倫子の身にドラマチックなことは起こらないんですよ。
    殺人事件に巻き込まれたり、王子様に求婚されたり、道ならぬ性愛に溺れたり、傾いた大企業を建て直したりはしないんです。
    そう、ぼくたちも、そういうことが無いのと同じように。

    まず、日常労働生活の被膜の下にある、気持ち悪いものとか、偽善とか偽悪とか、演技とか虚飾とか、
    そういったものをぐりっと見せちゃうんですね。
    船底にこびりついた牡蠣をこそぎ落とすみたいに、それだけでも面白く、読書の快感があります。

    そして、好き好きですが、

    「人生ってものを考えなきゃならないの?人生って関係ないんじゃなかったの?」

    という感じの文章にはなるほどなあ、と思いました。

    そして、結局この小説の入り口と出口が「テレビ」である、ということにも、うーん、と思いました。
    良い悪いではなくて、それが現実なのかなあ、という見方…。
    それが皮肉なんだろうなあ…ということなのか…。

    ただ、この本は、やっぱり名作だと思います。
    面白いこともありますが、賛同するであれ反発するであれ、現代の東京圏的な世界っていうのを、考えさせられるなあ、と思いました。
    そういう意味では、「社会的でありつつ純文学である」という、稀有な地平にいるなあ、と。
    そして、内容そのものは、小説でしかありえない。純小説というか。
    つまり、これを普通に映像化しても、全く面白くない(笑)。心理描写だけですから、肝心な中身は。地味だし。
    それでいて、観念的なフクザツ難解な世界かというと、全くそうではないんですね。
    さすが、橋本治さん。

    まあしかし、結婚して、子供を産んで、しばらく休職したりして、
    その後も子育てとのバランスを維持しながら幸せに女性が働ける職場っていうのが、
    やっぱり難しいんだなあ…。
    という、余りこの本の中身の本筋ではない感想も持ちました。

    それって、あまり、素敵な世の中ではない、ってことですよね。
    「戦争をすることも出来る国」に変える前に、やることいっぱいあると思うんですけどね。
    明日、選挙。

  • 結婚
    橋本治さん。

    29歳独身の娘がいる私。
    リアルな現実に、
    胸をえぐられた。

    しょぼん

  • 男の作家さんが書いたと思えない、女子の複雑な感情が描かれています。
    倫子と花蓮の会話の描写が非常に多く、そこから映し出される二人の性格の違いもおもしろい。スーパーウーマン白戸の奥さんに、変わり者岩子さんのキャラクターも華を添える感じです。
    何故結婚できたかの岩子さんの回答が奮っている。そして色々もやもやしすぎたあまり倫子がとってしまう行動にちょっと笑ってしまう(ポスターとか)。けど、同年代女子なら似たようなことをした経験の人もいるのでは。
    倫子は素直な人なんやろうなあ。終わりは突拍子ないてすが、それも彼女の素直さの表れかも。倫子の人生に幸あれ。

  • 文学

  • 最初の頃を読んでいるとき、このまま彼女たちの話を聞いていてもいいかなと思った。もうこの頃のことをそんなに覚えていないし、彼女たちよりずっと地味だった自分には、この会話にリアルがあるのかは分からない。でも、とりとめがなくても、切実に何かを訴えようとしている人の話は興味深いのかもしれない。

  • まるごと一冊、結婚に関する考察が滔々と語られています。
    その語り手は、卵子の老化についての記事を目にした(もうすぐ)28歳の倫子。気がつけばもう2年誰と付き合ってもいない。このままでいいの?私たち、もしかして結婚するしかなくないーー?
    という話。すごくおもしろかった。
    まだ30代になってるわけでもなし、まだ全然若いのだ、とあぐらをかきつつも「ひょっとしてやばいのでは…?」とじわじわ焦り始める様子がリアルだった。第一章をまるまる使うノンストップのガールズトークも痛快だ。
    同僚の結婚、弟の夫婦生活、母親からのハッパかけ等々、追い込まれるというか、倫子はもう結婚について真剣に考えざるを得なくなってしまう。
    悩み、切羽詰まり、話はいよいよ「そもそも結婚とはなんぞや?」「恋愛ってどうやってするのだ?」「人生とは?」という壮大で哲学的なテーマにもつれ込んでいく。若い子連れのカップルとっつかまえて「どうして結婚出来たんですか?!」って問い質したくなったりね。
    思い余って職場のお局・岩子さんに相談してしまい、「若いうちに愛されておくことね」という簡潔明瞭なアンサーをぶちこまれクリティカルヒットしてるのも笑えた。いや、でもほんとその通りかも。
    結婚を中華料理に例えるの好きだなぁ。強い火力でサッと仕上げる。そういうものなのだ。つべこべ言わずに。
    どういう相手がいいのか、どういう結婚生活を送りたいのか、自分の確固たる人生プランを用意して理屈でもがいてるようじゃ結婚なんてできないでしょう。いや、結婚なんてしようとも思えないでしょう。
    だからこそ、唐突にも感ぜられるあのラストは真理だった。直感!勢い!タイミング!
    結婚の原点に立ち返れる良書でした。指南書みたい。
    あーー私はもう二度と結婚しない。

  • 結婚をめぐる逡巡や現実、人間関係などいろんなものが見られた。完璧という言葉は存在しないんだと。親世代との生活観、価値観の違いが興味深い。

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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