- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087715750
作品紹介・あらすじ
の報が飛び込んできたのは、東日本大震災から五日目のことだった。被害者は原発作業員の金城純一。被疑者の加瀬邦彦は口論の末、純一を刺したのだという。福島県石川警察署刑事課の仁科係長は移送を担うが、余震が起きた混乱に乗じて邦彦に逃げられてしまう。邦彦は、危険極まりない“ある場所"に向かっていた。仁科は、純一と邦彦の過去を探るうちに驚愕の真実にたどり着く。一体何が邦彦を動かしているのか。自らの命を懸けても守り抜きたいものとは何なのか。そして殺人事件の真相は――。
極限状態に置かれた人間の生き様を描く、異色の衝撃作!
感想・レビュー・書評
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福島県警石川警察署に殺人事件発生の一報が入ったのは、平成23年3月11日の東日本大震災が起きた、5日後だった。
事件は、恋人の兄を口論の末、刺し殺したと言うものだった。
犯人の原発作業員・加瀬邦彦は、身柄移送の途中、余震のどさくさに、仁科刑事の隙をみて、逃走した。
邦彦には、命に懸けても護らなければならないものがあった。
邦彦が逃走中現れる、震災後の荒涼した様子は、心が痛くなる。
もう12年経ったが、あの頃毎日、テレビ画面に映される、流れる家、車・・。ツナミの恐ろしさが、今も、はっきり思い出される。
あの日、私は、枚方市の病院で、ハーセプチンと言う化学療法を受けていた。
10台程並んだ椅子に座らされて、点滴チューブに腕を拘束されていた。
福島とは離れた大阪でも、かなりの揺れは有った。
看護師さんが「大丈夫ですよ!この建物は、耐震設備が万全です!みなさん、落ち着いてください!」と、大声で患者の動揺を鎮めてくださっていた。
私の辛い一時期だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東日本震災直後の殺人事件、原発で働いていた同僚を刺殺、逮捕直後に犯人逃亡。逃げる先は福島県原発、なぜ危険な原発に向かうのか、目的は⁉︎な、お話。
ちと悲しくも切ない英雄のお話でした。
面白かったです。 -
「唯一無二の親友を殺した」衝撃的な一文から始まる今回の物語。
彼がなぜその行動に至ってしまったのか。
逃走犯という汚名を被ってても彼が成し遂げようとしたもの。
中山さんの作品は本当に読んでいて心を締め付けられる。
託した者と託された者。自身の命を投げうってまで護るもの。
彼の壮大な志に感銘を受けた今回の作品でした。 -
今回はミステリーではなくサスペンス
東日本大震災後、原発作業員の殺人事件
ギリシャ神話の太陽の神アポロンは、侮辱する相手に死をもたらすといわれていて、矢を向けられているのは原子力を手に入れてアポロンを侮辱した人間
人間は原子力という大きな力を手に入れたが、震災がきっかけとなり未曾有の危機を迎えた
『アポロンの嘲笑』ここからこのタイトルという訳か
予測できない事が起きた時、原発は人間ではコントロール出来なく、東日本大震災によって原発の安全性が問われた
そんな事態の中、命を懸けてでも大切な人達を守ろうとする1人の英雄が現れる
太く短く生きた青年の姿がとても切なかった
最後、辛かった
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かなりぶっ飛んだ内容。
もちろんフィクションだけれど、
実際に起こっていることも描かれているので
ありえない話ではない気がして
ドキドキしながら読んだ。
何度も何度も立ち上がる主人公(主人公かな?)の姿にウルッとしてしまった。
中山七里が続き過ぎたので
ここらへんで一旦お休みしようw -
衝撃すぎて
FBには読んですぐレビューを書いたが
二度とはかけない
護ろうとするひたむきさに、熱いおもいをした。
いつもそうだが
中山七里の作品を読了すると
題名に納得!今回も
「アポロンの嘲笑」なるほど!
テーマが原子力事故だから
簡単ではない、そこに生い立ちが絡み
悲しすぎる。
中山七里のはいろんなテーマに挑戦する幅広さ
どんでんがえしに脱帽。
中山七里の10人説に納得するー
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巻き込まれたとはいえ、託された約束を果たすためにここまでできるのか。物語の醍醐味とはいえあまりにも現実離れしすぎている
ってことが始終頭の中を駆け巡っていたように思う。悲しすぎる生い立ちに目を背けたくなるとともにふたつの地震で失ったかけがえのない人間模様が錯綜して重いお話だった。原発のことは漠然と理解していたけれど本編を通して怖さをしみじみと実感。 -
ミステリーとしてより、福島第一原発の事故記録として評価すべきなのだろう。ここに書かれたことは決して公式発表には成り得ないだろうけど。そのためにもこの作品が細く長く読み継がれるといいんだけどね。
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原発を狙うテロを描いた小説は、これまで何冊か読んで来たが、3.11後の、しかも実際に起きた原発事故とフィクションを合わせたこの作品は、正直受け止められない気持ちが大きい。
実際に起きた原発事故で、いろんなものを失った人は多過ぎる。それにエンタメ性をプラスするのは、何とも不謹慎な気がする。
実際に大熊町の人たちは、原発のお陰で自分達の生活が成り立っていることは、事故が起きる前から理解している。その分、危険と背中合わせであることも、きちんと向き合っていた。私はその人たちを目の前で見てきた。
そして、3.11。大熊町にいた親類はバラバラになった。
生きているだけ、マシ…そう思っても、いつか、こんな事故が起きることも覚悟していたとしても、実際に体験した身にはパニック状態に陥った現状をベースに、エンタメ作品にしてしまうのは、やっぱり許し難いものがある。
ラストは美談にまとめられているし、かなり取材して、書かれたと評価している人もいるが、まず、福島を「三陸」と表現するのは、間違いではないだろうか?
確かに三陸は甚大な被害を受けた。しかし、この場合の三陸に福島は含まれないのが一般的な考え方。
大熊町周辺の様子も、若干違う。
現実とは切り離して、1つのエンタメ作品として、楽しむ分にはいいが、実情を描くなら、取材不足を感じる。 -
それなりに面白く読ませてもらった。読後感は悪くないが、主人公がもう少し報われても良かったような。
ただ、原発に対する著者の怒りが伝わった。