恋するソマリア

  • 集英社 (2015年1月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (316ページ) / ISBN・EAN: 9784087715842

作品紹介・あらすじ

アフリカ大陸東端に広がるソマリア。残酷な戦場と平和な民主国家が隣り合う不思議な世界に惹かれ、そこに暮らす人々に恋をした著者が、台所から戦場まで、あらゆる現場に飛び込む。命がけの見聞録!

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

異なる側面を持つソマリアの現実を描いたこの作品は、著者が命がけで体験した冒険譚です。前作からのキャラクターたちが登場し、著者自身もソマリ社会に溶け込んでいく様子が描かれており、安心感をもたらします。特...

感想・レビュー・書評

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  • めっちゃ面白かった。。。フィクションみたいなノンフィクション。異世界ファンタジーかと思ったらすごい現実。

    前作からの登場人物も元気に過ごしてるし、タカノがどんどんソマリ社会に馴染んで居場所が出来ているので安心感ある。しかし、ソマリ人は超速で走るライオンの群れとはまさにそんな感じ。日本人にはきっつい。裏切られたような気分に何回囚われて、一瞬の気持ちが通じた瞬間の天国がクセになる。柔らかめのDVやん。

    ラストの銃撃にショックを受けたけど、それまでは恐怖の大魔王(やばめの便秘)が一番恐ろしい存在に見えてたから、それもすごい。

  • 早大探検部出身、あの「謎の独立国家ソマリランド」を著した高野秀行氏による同著の続編とも言える1冊。
    アフリカ東部に角のように突き出たかつてのソマリア。ソマリア国は1991年に崩壊し、20年以上無政府状態だったその地域に入っていったのが著者の前著だったのですが、本著は更にソマリ世界の深くに入り込んで、どっぷりと浸かっていく印象。
    こうして本として読むとまぁとにかく滅法面白くて、しかもこれはフィクションではなく、著者自身が最前線に立っているノンフィクションなのです。もし自分が著者と同じ状況に置かれたとして、同じ行動が取れるだろうか・・・無理です!

    例えば、戦闘が続くモガディショの滞在には、護衛の兵士や車代で、1日あたり$500超を払う必要があるのですが、その街を複数回訪れた上で、モガディショ市内を出たい(当然、市外の方がずっと危ない)と思ってそれを実現してしまう…。
    著者がそう思った理由などは本著で良く説明されていて、それぞれの個別の理由は実によく筋が通っているのですが、一見道理が通っているミクロの理由を積み重ねていった結果、マクロ的にどう見てもおかしい/危ない事態に陥っている不思議。
    外務省の人からしたらマジギレ案件なのかもしれませんが、ソマリアにはもう大使館無いしなぁ…(ケニア大使館が管轄しているようで)。

    著者が無政府状態のモガディショを指して表現した言葉は「(電気・水道やネット、交通までが民営で)本当に何でもあり、ないのは政府くらいだったので、私はここを『完全民営化社会』と名付けた。軍も民営化されていると考えれば辻褄が合う。」という表現。
    すっごい的確だと思うんですが、自らが危険に晒されている状況下でこういう謎のユーモア表現が出てくるって、凄い。凄いし、笑えるんですが、どこか間違ってるような感も…。

    ただ、著者の表現の的確さは他のところでも存分に発揮されていて、例えば「人間関係を形作る内面的な三大要素は『言語』『料理』『音楽(躍りを含む)』」というのは全くその通りだと思うのです。
    こういった洞察と、稀有な行動力が生み出す展開、それを的確に伝える表現力、本著ではこれらが三位一体となって、読みだしたら止まらないくらいの疾走感を生み出しています。
    著者に関しては、テーマのある研究よりも、好きなものを、著者が旅する中で自由に見て考察してもらう本の方が、面白いように感じました。
    完全な非日常を旅した気分になれる1冊。ただ、かと言って「ソマリア行きたい!」とはなかなかならないですが(笑

  • 「恋するソマリア」
    なんと思わせぶりなそそられるタイトルだろう
    前回のブータンに続き、高野さんと一緒に旅して、そこまで高野さんがソマリアに恋い焦がれる訳が知りたいなと思い手に取った

    期待を裏切らないおもしろさと度肝をぬかれる事件?事故?にも遭遇、やはりこの人は一筋縄ではいかないノンフィクションライターだった

    ソマリアは、アフリカの東部、サイの角のように突き出た通称アフリカの角と呼ばれる広大な土地にある国だが、ソマリアとして存在したのは1991年までで、この本が書かれた頃は国際的には認められていないが、独自に内戦を終結させ民主主義を達成した「ソマリランド」、海賊が猛威を振るう「プントランド」、イスラム過激派のアル・シャバーブと暫定政府軍との戦闘が続く「南部ソマリア」の三国に分かれている

    それぞれのお国事情のあまりの違いは、かつて同じ国だったとは思えないくらい

    ソマリ人の素の姿が知りたい、ソマリに自分のことを認めてもらいたいの一心でグイグイと厚かましいばかりに現地の人に食い下がっていく根性、その甲斐あってか普通ではあり得ないことが次々実現する

    その国を知るには、その国の家庭料理を知ることがモットーの高野さん、何とか若い女性二人に家庭料理を教えてもらったのはいいけれど、「結婚して日本に連れて行って」とせがまれる羽目に
    親族以外の男性の前では絶対頭の布をとらないソマリ女子が高野さんの前では布をかぶらず、綺麗に編み込まれた素髪を見せる
    テレビの音楽に合わせて踊り出し、「ビデオを撮って」と言い出す始末、イスラム教徒とは思えない若い女性の奔放さに笑えた

    旅も終わりにさしかかり、南ソマリアを訪ねた際、高野さんが乗っていたアミソム(アフリカ連合軍) の装甲車がイスラム過激派アル・ジャバーブの襲撃に遭い、命を落とす羽目にもなりかねなかったこと

    所変われば、品変わるの話の数々の中で、一番興味深かったのは、「カート」
    はじめ、何かを運ぶ車かなと思ったら、何と和名アラビアチャノキという木の葉っぱ
    この若葉を生でバリバリ食べるとやがて清々しい気分になり、周りの人全てが自分の愛しい人と思えるらしい
    酒やタバコの類なのかなと思うが、一人ではやらず、誰かの家やたまり場などでやり、マフラーシユというカート宴会場まである
    これをやると、ひどい便秘になるので、ラクダのミルクが欠かせないというおまけつき
    便秘に苦しむ様子も気の毒だが、大爆笑!

    大の大人が輪になって、葉っぱをちぎってバリバリ食べているなんて日本では考えられない!

    物語の世界が大好きで小説を読むことが多かったが、ノンフィクションのおもしろさを実感した
    日本から遠く離れた国で、たくましく生きる人々の息遣いが感じ
    られた

    アフリカの国々のことなど何も分かってなかったなと思い知らされた




  • いやあ、これはたまげた! 高野さん、危機一髪だったんじゃないか! こんな目に遭ってたとは。ブログやインタビューなんかではほとんど語ってなかったのでは? 待ちかねていた二年ぶりの新作は、まったく驚きの内容なのであった。

    タイトルからして、「謎の独立国家ソマリランド」のゆるめの(ほめ言葉です。念のため)後日談的なものだと思って読み出した。実際、終盤まではそういう感じで、高野さんが再び三たびソマリランドや南部ソマリアを訪れたときの、変わったり変わっていなかったりするあちらの様子が書かれている。おなじみワイヤップやハムディたちと再会し、ずいぶん治安の良くなった南部ソマリアで念願の家庭料理を習ったり、人気歌手に会いに行ったり。

    前作ではソマリランドの特異な政治経済状況に驚かされたのだが、今回は、「素の」ソマリ人の生活を知りたいということが興味の焦点となっている。これが思いの外難しくて苦労しつつ、でもまあ、そこは高野さん、普通はよそ者を決して入れないソマリ家庭の奥にまで入り込み、普段の姿をばっちり見てくる。このあたりは独壇場。特に女性たちの姿が活写されていて楽しい。

    一般のムスリムについて、私たちが知っていることはあまりにも少ない。特に「ソマリ人社会」については、そういうものが存在することすらまったく知らなかった。世界中どこへ行こうがソマリ社会の枠の中で生きるほどの強固なつながりを持ちつつ、いくつもの国に分かれているソマリ人。「氏族」というものが争いの種であり、同時に平和をもたらすものともなっているという。そのありようはまったく興味深い。

    自分たちから見て理解しがたく、常識では計り知れないと思えることでも、その民族・宗教をよく知れば、そこには一貫した論理があり、伝統に従った行動規範がある、と高野さんは書く。イスラム社会との軋轢が高まりつつある今、そういう視点は実に貴重だ。同時に、世界は広いなあ、異文化というのはそう簡単に理解できるものではないのだなあとしみじみ思う。

    わたしにとっては、高野さんの一連の著作ほど、イスラム社会について理解する手がかりをくれるものはない。今回なるほどなあと思ったことの一つが、民主主義選挙についてだ。エジプトの事態をはじめとして、イスラムの国では、民主的に選挙が行われたのに混乱が深まったりするのはなぜか、疑問に思ってきたのだ。簡単に図式化すると、宗教による抑圧を嫌うインテリが民主主義を持ち込む → 選挙が行われる → 宗教は選挙には強い(インテリは理想主義で団結しにくい) → イスラム厳格派が政権をとる → 世俗派が反政府活動をする → 政府が弾圧する、ということのようだ。「民主派は民主主義選挙では弱い」というこの皮肉。エジプトなんか軍と結託してしまった。うーん。

    あ、もちろん、高野さんの本なのだからして、笑いももれなくついてくる。とぼけたエピソード満載だが、最高なのはモガディショで便秘に苦しむくだり。悲願だった南部ソマリア初見学の日だというのに、「覚醒植物」カート摂取の副作用である極度の便秘に苦しむ。ソマリアで初めて畑や川を見たり、長老たちの話し合いを間近に見たり、願ってもない経験をしながら、高野さんの頭は「大腸と肛門の異常事態」でいっぱい。「半分尻を浮かせたような、ひょこひょこした歩き方」を想像してかなり笑った。

    と、これだけでも十分面白いのだが、それで終わらなかったのだ。便秘解消(この場面もケッサク)の二日後、とんでもないことが起こるのだ。まさに危機一髪。それは…、いやこれは語るまい。読んでください。びっくりするよ~。

    しかしまあ、フツーのジャーナリストはこういうふうには書かないわなあとつくづく思う。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」というモットーを、まさに文字通り実践している。やっぱり「われらが高野さん」である。

    表紙は「モガディショの剛腕姫」ハムディ。なんともかっこいい!こんな面構えの娘さんってあまりいないだろう。オソロシイまでの行動力と胆力。こういう人がいるんだなあと感心する。また、「おわりに」でふれられる元ソマリ海賊である受刑者とのエピソードも印象的だ。待った甲斐のある一冊でした。

  • “謎の独立国家ソマリランド”の続編の位置付け。
    前作は、氏族の詳細説明など複雑で中々頭に入ってこない部分も多かったが、今回は冒険譚として読みやすかった。
    ソマリ女子とやりとりしながら家庭料理を体験する場面ではほっこり。イスラム過激派が跋扈する“南部ソマリア”の旅路では、危険な場面と抱腹絶倒場面の、緊張と緩和の落差が半端ない。
    著者の行動力と表現力にはただ感服するばかり。

    “ハムディ”のその後が気になるなぁ
    続編を期待!

  • 前作よりさらに病的になった筆者の「ソマリ愛」が伝わってきました。ワイヤップとハムディのキャラクターもさらに掘り下げられていて、2人を通してソマリをさらに理解することができました。今作は、南部ソマリアがメインで、前作では語られなかった南部の普通の暮らしを垣間見ることができました。また、どの世界も宗教と政治は切り離せないこと、現地民と心を通わせるには、言語を習得することが大切なんだなあと思いました。ただ、南部ソマリアは非常に危険な状況なので、行きたいとは思いませんでしたが…。

  • 「恋は盲目」とはまさにこういうことかと。情報のない国のことを教えてくれるのはとてもうれしいけど、あまり危険な目には遭わないでほしい。生きて帰ってきてくれてありがとう。

  • 面白かった。あるグループの人々をを理解するのに必要なの3大的な文化の要素は言語、料理、音楽。

    これが個人になるとどうなるんだろう

  • 前作?はソマリの文化というか氏族の説明を延々とやっている節があり、中々のめり込めなかったが、今回は第二弾ということですっと入ってこない部分の説明はなく、いつもの著者のノリで話が進んでいく・・が、結構血生臭い話になったり、かなり危険なことになったりするが。

    P.118
    いい人はなかなか強い人にならない。そして強い人はなかなかいい人になってくれない。それは万国共通なのかもしれない。

  •  前著「謎の独立国家ソマリランド」に続き読んだ。前著でラクダ・キャラバンを匂わせていたが、そうではなく、今回は主に南部ソマリアへの旅である。日本に来ているソマリ人留学生と現地南部ソマリアが繋がる様が妙である。著者のお遣いがなんといっても心にくい。
     前著同様に著者の行動力には脱帽するが、現地の情勢や人の動向のめまぐるしい変化にも驚く。
     ホーン・ケーブルTVの剛腕ジャーナリスト ハムディがあっさり、大学で勉強して母国で政治家として貢献したいという思いで、難民としてノルウェーに行ってしまう行動力にも感服する。若い力を感じるうえに、世界はこんなにも動いているんだ、と感じた。
     人間模様が興味深く、単なる興味だけでなく応援する意味で、また続きを書いて欲しいと思う。

  • ニュースを見ていると、中近東とかアフリカとかに日本人がいて、拘束されたり殺されたり。
    「なんで、わざわざそんな所に行くのよ?!」といつも思っているんですが、この高野さんは典型的なそういう人です。
    ノンフィクション作家で、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーとする。
    というわけで、この本はコメディーと言っていいかも。
    ソマリランドは「国際的に認められていない国」なんですよ!
    そして南部ソマリアは「リアル北斗の拳」!

    彼はソマリアに猛烈な片思いをしている。
    受け入れてもらうために言語・料理・音楽(ダンス含)を学ぶ。
    しかし、この本の終盤では、なんとソマリアのストーカーにあう状態!

    「平たい顔族」っていうか、「イング・ヤル(小さい目という意味。東アジア人のことを、ソマリア人はそうよぶ)」である彼が来ると、あまりに珍しくて人がたくさん集まってくる。

    でも、個人的に、私の心に深く残ったのが二つ。

    表紙の彼女のこと。ネタバレです。この本で大活躍していますが、のちに難民(ノルウェー)となり、ジャーナリストをやめます。
    高野さん「どうしてそこまでして難民になったのか。せっかくジャーナリストとして有名になり、モガディショも徐々に復興が進んでいるというのに。」
    彼女「敵が増えすぎた。」彼女はあっさり答えた。「ジャーナリストはもういいかなと思ったしね。」と彼女はさばさばした口調で言う。

    ここの部分、すごく自分の心にしみこみました。
    今の自分にすごく似た心境。
    彼女の諦めの良さを見習わなければ。

    もうひとつは、自分的に上記とは相反するものです。でも記録しておきます。

    >けっこう地道に報われているではないか。
    逆転満塁ホームランのように劇的な展開を期待しすぎるからそれに気づかないだけである。

    >もう報われるとか報われないとかを考えまいと肝に銘じた。そんなことを考えるから妙な片想い感にとらわれるのだ。
    そうではなく、高くて難しい山に登るときのように、一歩ずつ淡々と足を前に運ぶのだ。

  • 超異文化交流。
    人間としての通じ合えるところ、違うところを熱意をもって探究する高野さんがすごい。

    世界で最も治安の悪いソマリアに行き、現地の本当の姿を体当たりで体験する。高野さんにとって現地を本当に体験するのは、「言語」「音楽」「料理」である。外国人にとって、現地の料理(ふつうの家庭料理)を楽しむのは実は至難の業であり(特にイスラム文化圏では女性と接触する、家の中に入るのはほとんど難しい)、高野さんはその壁を越えようと果敢に挑戦し、ついに家庭料理を一緒に作ることに成功する。
    治安の悪い、危険な地帯に行っているはずなのに、終始ほんわかしており、文章も読みやすく、どんどん読み進められる。
    高野さんがテレビで、本を書くにあたって、仲の良い友達や、家族へむけて、話しているように書いていると言ってたが、本当にその通りの文章。
    親密で、気さくで、落ちがついてて、笑える。
    最後の銃撃戦のシーンで一転現実に戻され、身が引き締まるような思いになる。
    いろいろな意味でリアリティーのある物語だと思う。

  • 毎度ながら市井の人々の暮らしや文化、宗教など細やかなところに焦点をあて、大袈裟でも説明不足でもなくちょうどいい、完全にわたしたち目線でレポートしてくれる。
    様々な局面を多面で捉えて知りたい欲で突き進む「謎の国家ソマリランド」からの本作。ほんとに恋しているんだな。

  • http://www.geocities.jp/keropero2003/hikounin/somaliland.htmlここで読んで依頼気になっていた国ではありましたが、実際に行かれた人がいたことに驚きです。ジャーナリストという職業の本髄をみた気がします。

  • 『謎の独立国家ソマリランド』と一緒に読んだのでより楽しめた。ハムディの決断にびっくり!

  • この方、人としてはとても興味あるけれど、本自体は微妙です。ただソマリアのことを日本人目線で書いている本は少ないのでそういう意味では貴重。

  • ふむ

  • 恋するソマリア

    著者 高野秀行
    集英社
    2015年1月30日発行

    早稲田大学探検部出身のノンフィクション作家、高野秀行氏のソマリアもの第二弾(たぶん)。探検家でノンフィクション作家の角幡唯介氏の、早大探検部先輩にもあたる人。
    「アフリカの角」と言われるソマリアは1991年以降、無政府状態となって、海賊たちが通過する船を襲っているという印象がある。アメリカが介入しようとしたが、悲惨な戦いとなって撤退。その壮絶なる様子はリドリー・スコット監督の映画「ブラックホーク・ダウン」で観た人も少なくないだろう。

    しかし、そんなソマリアは、実は今、実際には3分割されていて、そのうちの一つがソマリランドという複数政党による「謎の民主主義国家」になっている。ただし、国際的には認められていないため、グーグルマップなど普通の地図にはソマリアは1つの国として描かれている。
    北のソマリランドのほか、角の部分プントラントは海賊の国、南部ソマリアでは暫定政府軍とイスラム過激派の戦闘が続いている。国際的社会での首都は南部ソマリアにあるモガディショだ。

    ソマリ人は、これら3分割された国と、隣接するジプチ、エチオピア、ケニアの一部にも住んでいる。著者が最初に訪問したのが2009年、次が2011年。ソマリアに魅せられ、人脈も掴んできた2回目の帰国後、著者は必死にソマリ語のネイティブを日本で探した。ソマリ語は非常に難解で、フランス語やアラビア語ですら文法構造が単純に感じるほどだという。やっとの思いで早稲田に留学している兄妹から習えることになった。

    今回は、2011年10から2012年12月までの滞在を、4パートに分けてリポートしている。一応、ソマリアのケーブルTVの東京支局長の立場をもらい、ジャーナリストとして入国した。平和なソマリランドでの話と、イスラム過激派と暫定政府軍が対立する南部ソマリアでの体験を書いているが、生々しいノンフィクションというより、なにもかも日本と違いすぎるソマリアに魅了され、よそ行きでないソマリアが見たいと思い始めた著者が、結局、皮肉な状況で最後にそれを達成するというドキュメントだ。

    クライマックスは、最後。南部ソマリアのある知事が、著者を含めたジャーナリストたちを引き連れて故郷に凱旋する。半日で戻るはずが、知事のそうした気まぐれ、思惑により、何日も引っ張り回され、帰国便にも乗れなくなった。これまでイスラム過激派がいて危険だったが、やっと多国籍軍がなんとか制圧するようになった知事の故郷、そして、さらなる奥地。荷物もなにも持ってこず、着替えも風呂もない。大量の蚊になやまされる。おまけに、現地の人が食べるカート(和名アラビアチャノキ、日本では合法)という弱い麻薬作用のある葉っぱの食べ過ぎにより、極端な便秘に悩まされる。

    もう最悪の状態の中、皮肉なことにそこで著者自身が望んでいたソマリアの「素の姿」を見ることができる。
    便秘にいいとされるラクダの乳を飲み、上からは下痢、下は岩のような糞づまりで一晩苦しんだ後、ついに「ツチノコのような便」が2つ出るシーンがあるが、読者としてもその瞬間がなんとスッキリ爽快感を感じることか。

    しかし、知事の気まぐれが終わってやっと戻れるようになった帰路、イスラム過激派により待ち伏せされて襲われる。著者と知事は装甲車に乗っていたが、防弾ガラスにもひびが入り、頭から血を流した知事が悲鳴を上げて倒れ込んできた。ただただ伏せて待つしかない著者。結局、援軍が来て九死に一生を得るが、難を逃れた後に、ジャーナリスト仲間達が彼を囲み、お前も戦闘に参加したんだ、やっと仲間だと彼を迎え入れる。
    そして、頭から血を流していた知事は、撃たれたのではなく、混乱して自分で頭をぶつけていただけだということが分かる。

    まるで映画のようなエンディングだが、やはり心打つものがある。
    高野秀行氏の本は、たぶん、これまで読んだことない。いや、あるかも知れないけど、忘れている。もちろん、新聞や雑誌では読んだことがあるが。
    角幡唯介氏同様、早大探検部出身ノンフィクション作家、とても面白い。
    冒険系ノンフィクション、今年3冊目。いずれも傑作。
    今、一番おもしろい。

  • ソマリア語を習得しようなんて、凄い。ソマリア愛も普通ではない。自分をしっかり持ち、目的に向かってがむしゃら。しかも、こんな本を出す文章力。語学力。凄すぎ!ソマリア面白いが、危険過ぎ!

  • アフリカのソマリアを旅する旅行記の第2弾。ソマリランドへの旅行、南部のソマリアの話の2つがメインです。

    旅行記というよりも、ソマリ人の生態を詳しく知りたい!という気持ちで書かれたものです。遊牧民であったソマリ人は農耕民族の日本人とはだいぶ考え方が異なり、特に超速で動き超速で忘れることは全然違うな。と感じました。また、氏族社会という独特な考え方についても、改めて日本とは全く違うと感じました。

    一番の驚きは仇相手の娘を妻に娶って紛争を解決するということ。これはなかなかできないことだと思いました。

    また、南部ソマリアで戦闘に巻き込まれる話は、すごい体験をしたものだと関心しました。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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