恋するソマリア

著者 :
  • 集英社
4.12
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本棚登録 : 524
レビュー : 88
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715842

作品紹介・あらすじ

アフリカ大陸の東端に広がる“世界一危険な地"ソマリア。
そこには、民主国家ソマリランドと海賊国家プントランド、内戦が続く南部ソマリアがひしめきあい、
現代のテクノロジーと氏族社会の伝統が融合した摩訶不思議なソマリ社会が広がっていた。
西欧民主主義国家とは全く異なる価値観で生きる世界最大の秘境民族=ソマリ人に夢中になった著者は、ベテランジャーナリストの
ワイヤッブやケーブルTV局の支局長を勤める剛腕美女ハムディらに導かれ、秘境のさらに奥深くへと足を踏み入れていく。
ある時はソマリランド初の広告代理店開業を夢想。
ある時は外国人男子にとって最大の秘境である一般家庭の台所へ潜入し、女子たちの家庭料理作りと美白トークに仲間入り。
ある時は紛争地帯に迷い込み、銃撃戦に巻きこまれ……。
もっと知りたい、近づきたい。その一心で台所から戦場まであらゆる場所に飛び込んだ、前人未到の片想い暴走ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 「恋するソマリア」
    なんと思わせぶりなそそられるタイトルだろう
    前回のブータンに続き、高野さんと一緒に旅して、そこまで高野さんがソマリアに恋い焦がれる訳が知りたいなと思い手に取った

    期待を裏切らないおもしろさと度肝をぬかれる事件?事故?にも遭遇、やはりこの人は一筋縄ではいかないノンフィクションライターだった

    ソマリアは、アフリカの東部、サイの角のように突き出た通称アフリカの角と呼ばれる広大な土地にある国だが、ソマリアとして存在したのは1991年までで、この本が書かれた頃は国際的には認められていないが、独自に内戦を終結させ民主主義を達成した「ソマリランド」、海賊が猛威を振るう「プントランド」、イスラム過激派のアル・シャバーブと暫定政府軍との戦闘が続く「南部ソマリア」の三国に分かれている

    それぞれのお国事情のあまりの違いは、かつて同じ国だったとは思えないくらい

    ソマリ人の素の姿が知りたい、ソマリに自分のことを認めてもらいたいの一心でグイグイと厚かましいばかりに現地の人に食い下がっていく根性、その甲斐あってか普通ではあり得ないことが次々実現する

    その国を知るには、その国の家庭料理を知ることがモットーの高野さん、何とか若い女性二人に家庭料理を教えてもらったのはいいけれど、「結婚して日本に連れて行って」とせがまれる羽目に
    親族以外の男性の前では絶対頭の布をとらないソマリ女子が高野さんの前では布をかぶらず、綺麗に編み込まれた素髪を見せる
    テレビの音楽に合わせて踊り出し、「ビデオを撮って」と言い出す始末、イスラム教徒とは思えない若い女性の奔放さに笑えた

    旅も終わりにさしかかり、南ソマリアを訪ねた際、高野さんが乗っていたアミソム(アフリカ連合軍) の装甲車がイスラム過激派アル・ジャバーブの襲撃に遭い、命を落とす羽目にもなりかねなかったこと

    所変われば、品変わるの話の数々の中で、一番興味深かったのは、「カート」
    はじめ、何かを運ぶ車かなと思ったら、何と和名アラビアチャノキという木の葉っぱ
    この若葉を生でバリバリ食べるとやがて清々しい気分になり、周りの人全てが自分の愛しい人と思えるらしい
    酒やタバコの類なのかなと思うが、一人ではやらず、誰かの家やたまり場などでやり、マフラーシユというカート宴会場まである
    これをやると、ひどい便秘になるので、ラクダのミルクが欠かせないというおまけつき
    便秘に苦しむ様子も気の毒だが、大爆笑!

    大の大人が輪になって、葉っぱをちぎってバリバリ食べているなんて日本では考えられない!

    物語の世界が大好きで小説を読むことが多かったが、ノンフィクションのおもしろさを実感した
    日本から遠く離れた国で、たくましく生きる人々の息遣いが感じ
    られた

    アフリカの国々のことなど何も分かってなかったなと思い知らされた




  • いやあ、これはたまげた! 高野さん、危機一髪だったんじゃないか! こんな目に遭ってたとは。ブログやインタビューなんかではほとんど語ってなかったのでは? 待ちかねていた二年ぶりの新作は、まったく驚きの内容なのであった。

    タイトルからして、「謎の独立国家ソマリランド」のゆるめの(ほめ言葉です。念のため)後日談的なものだと思って読み出した。実際、終盤まではそういう感じで、高野さんが再び三たびソマリランドや南部ソマリアを訪れたときの、変わったり変わっていなかったりするあちらの様子が書かれている。おなじみワイヤップやハムディたちと再会し、ずいぶん治安の良くなった南部ソマリアで念願の家庭料理を習ったり、人気歌手に会いに行ったり。

    前作ではソマリランドの特異な政治経済状況に驚かされたのだが、今回は、「素の」ソマリ人の生活を知りたいということが興味の焦点となっている。これが思いの外難しくて苦労しつつ、でもまあ、そこは高野さん、普通はよそ者を決して入れないソマリ家庭の奥にまで入り込み、普段の姿をばっちり見てくる。このあたりは独壇場。特に女性たちの姿が活写されていて楽しい。

    一般のムスリムについて、私たちが知っていることはあまりにも少ない。特に「ソマリ人社会」については、そういうものが存在することすらまったく知らなかった。世界中どこへ行こうがソマリ社会の枠の中で生きるほどの強固なつながりを持ちつつ、いくつもの国に分かれているソマリ人。「氏族」というものが争いの種であり、同時に平和をもたらすものともなっているという。そのありようはまったく興味深い。

    自分たちから見て理解しがたく、常識では計り知れないと思えることでも、その民族・宗教をよく知れば、そこには一貫した論理があり、伝統に従った行動規範がある、と高野さんは書く。イスラム社会との軋轢が高まりつつある今、そういう視点は実に貴重だ。同時に、世界は広いなあ、異文化というのはそう簡単に理解できるものではないのだなあとしみじみ思う。

    わたしにとっては、高野さんの一連の著作ほど、イスラム社会について理解する手がかりをくれるものはない。今回なるほどなあと思ったことの一つが、民主主義選挙についてだ。エジプトの事態をはじめとして、イスラムの国では、民主的に選挙が行われたのに混乱が深まったりするのはなぜか、疑問に思ってきたのだ。簡単に図式化すると、宗教による抑圧を嫌うインテリが民主主義を持ち込む → 選挙が行われる → 宗教は選挙には強い(インテリは理想主義で団結しにくい) → イスラム厳格派が政権をとる → 世俗派が反政府活動をする → 政府が弾圧する、ということのようだ。「民主派は民主主義選挙では弱い」というこの皮肉。エジプトなんか軍と結託してしまった。うーん。

    あ、もちろん、高野さんの本なのだからして、笑いももれなくついてくる。とぼけたエピソード満載だが、最高なのはモガディショで便秘に苦しむくだり。悲願だった南部ソマリア初見学の日だというのに、「覚醒植物」カート摂取の副作用である極度の便秘に苦しむ。ソマリアで初めて畑や川を見たり、長老たちの話し合いを間近に見たり、願ってもない経験をしながら、高野さんの頭は「大腸と肛門の異常事態」でいっぱい。「半分尻を浮かせたような、ひょこひょこした歩き方」を想像してかなり笑った。

    と、これだけでも十分面白いのだが、それで終わらなかったのだ。便秘解消(この場面もケッサク)の二日後、とんでもないことが起こるのだ。まさに危機一髪。それは…、いやこれは語るまい。読んでください。びっくりするよ~。

    しかしまあ、フツーのジャーナリストはこういうふうには書かないわなあとつくづく思う。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」というモットーを、まさに文字通り実践している。やっぱり「われらが高野さん」である。

    表紙は「モガディショの剛腕姫」ハムディ。なんともかっこいい!こんな面構えの娘さんってあまりいないだろう。オソロシイまでの行動力と胆力。こういう人がいるんだなあと感心する。また、「おわりに」でふれられる元ソマリ海賊である受刑者とのエピソードも印象的だ。待った甲斐のある一冊でした。

  •  前著「謎の独立国家ソマリランド」に続き読んだ。前著でラクダ・キャラバンを匂わせていたが、そうではなく、今回は主に南部ソマリアへの旅である。日本に来ているソマリ人留学生と現地南部ソマリアが繋がる様が妙である。著者のお遣いがなんといっても心にくい。
     前著同様に著者の行動力には脱帽するが、現地の情勢や人の動向のめまぐるしい変化にも驚く。
     ホーン・ケーブルTVの剛腕ジャーナリスト ハムディがあっさり、大学で勉強して母国で政治家として貢献したいという思いで、難民としてノルウェーに行ってしまう行動力にも感服する。若い力を感じるうえに、世界はこんなにも動いているんだ、と感じた。
     人間模様が興味深く、単なる興味だけでなく応援する意味で、また続きを書いて欲しいと思う。

  • http://www.geocities.jp/keropero2003/hikounin/somaliland.htmlここで読んで依頼気になっていた国ではありましたが、実際に行かれた人がいたことに驚きです。ジャーナリストという職業の本髄をみた気がします。

  • ふむ

  • 恋するソマリア

    著者 高野秀行
    集英社
    2015年1月30日発行

    早稲田大学探検部出身のノンフィクション作家、高野秀行氏のソマリアもの第二弾(たぶん)。探検家でノンフィクション作家の角幡唯介氏の、早大探検部先輩にもあたる人。
    「アフリカの角」と言われるソマリアは1991年以降、無政府状態となって、海賊たちが通過する船を襲っているという印象がある。アメリカが介入しようとしたが、悲惨な戦いとなって撤退。その壮絶なる様子はリドリー・スコット監督の映画「ブラックホーク・ダウン」で観た人も少なくないだろう。

    しかし、そんなソマリアは、実は今、実際には3分割されていて、そのうちの一つがソマリランドという複数政党による「謎の民主主義国家」になっている。ただし、国際的には認められていないため、グーグルマップなど普通の地図にはソマリアは1つの国として描かれている。
    北のソマリランドのほか、角の部分プントラントは海賊の国、南部ソマリアでは暫定政府軍とイスラム過激派の戦闘が続いている。国際的社会での首都は南部ソマリアにあるモガディショだ。

    ソマリ人は、これら3分割された国と、隣接するジプチ、エチオピア、ケニアの一部にも住んでいる。著者が最初に訪問したのが2009年、次が2011年。ソマリアに魅せられ、人脈も掴んできた2回目の帰国後、著者は必死にソマリ語のネイティブを日本で探した。ソマリ語は非常に難解で、フランス語やアラビア語ですら文法構造が単純に感じるほどだという。やっとの思いで早稲田に留学している兄妹から習えることになった。

    今回は、2011年10から2012年12月までの滞在を、4パートに分けてリポートしている。一応、ソマリアのケーブルTVの東京支局長の立場をもらい、ジャーナリストとして入国した。平和なソマリランドでの話と、イスラム過激派と暫定政府軍が対立する南部ソマリアでの体験を書いているが、生々しいノンフィクションというより、なにもかも日本と違いすぎるソマリアに魅了され、よそ行きでないソマリアが見たいと思い始めた著者が、結局、皮肉な状況で最後にそれを達成するというドキュメントだ。

    クライマックスは、最後。南部ソマリアのある知事が、著者を含めたジャーナリストたちを引き連れて故郷に凱旋する。半日で戻るはずが、知事のそうした気まぐれ、思惑により、何日も引っ張り回され、帰国便にも乗れなくなった。これまでイスラム過激派がいて危険だったが、やっと多国籍軍がなんとか制圧するようになった知事の故郷、そして、さらなる奥地。荷物もなにも持ってこず、着替えも風呂もない。大量の蚊になやまされる。おまけに、現地の人が食べるカート(和名アラビアチャノキ、日本では合法)という弱い麻薬作用のある葉っぱの食べ過ぎにより、極端な便秘に悩まされる。

    もう最悪の状態の中、皮肉なことにそこで著者自身が望んでいたソマリアの「素の姿」を見ることができる。
    便秘にいいとされるラクダの乳を飲み、上からは下痢、下は岩のような糞づまりで一晩苦しんだ後、ついに「ツチノコのような便」が2つ出るシーンがあるが、読者としてもその瞬間がなんとスッキリ爽快感を感じることか。

    しかし、知事の気まぐれが終わってやっと戻れるようになった帰路、イスラム過激派により待ち伏せされて襲われる。著者と知事は装甲車に乗っていたが、防弾ガラスにもひびが入り、頭から血を流した知事が悲鳴を上げて倒れ込んできた。ただただ伏せて待つしかない著者。結局、援軍が来て九死に一生を得るが、難を逃れた後に、ジャーナリスト仲間達が彼を囲み、お前も戦闘に参加したんだ、やっと仲間だと彼を迎え入れる。
    そして、頭から血を流していた知事は、撃たれたのではなく、混乱して自分で頭をぶつけていただけだということが分かる。

    まるで映画のようなエンディングだが、やはり心打つものがある。
    高野秀行氏の本は、たぶん、これまで読んだことない。いや、あるかも知れないけど、忘れている。もちろん、新聞や雑誌では読んだことがあるが。
    角幡唯介氏同様、早大探検部出身ノンフィクション作家、とても面白い。
    冒険系ノンフィクション、今年3冊目。いずれも傑作。
    今、一番おもしろい。

  • ソマリア語を習得しようなんて、凄い。ソマリア愛も普通ではない。自分をしっかり持ち、目的に向かってがむしゃら。しかも、こんな本を出す文章力。語学力。凄すぎ!ソマリア面白いが、危険過ぎ!

  • アフリカのソマリアを旅する旅行記の第2弾。ソマリランドへの旅行、南部のソマリアの話の2つがメインです。

    旅行記というよりも、ソマリ人の生態を詳しく知りたい!という気持ちで書かれたものです。遊牧民であったソマリ人は農耕民族の日本人とはだいぶ考え方が異なり、特に超速で動き超速で忘れることは全然違うな。と感じました。また、氏族社会という独特な考え方についても、改めて日本とは全く違うと感じました。

    一番の驚きは仇相手の娘を妻に娶って紛争を解決するということ。これはなかなかできないことだと思いました。

    また、南部ソマリアで戦闘に巻き込まれる話は、すごい体験をしたものだと関心しました。

  • 筆者のソマリアへの熱き思いに感心。アフリカ経験あるのでイメージはわくが、基本的に初めて知ることばかりにて、読み応えあった。

  • 謎の独立国家ソマリランドの続編のような位置づけ。そこで書き残した事や、その後の渡航内容が綴られている。この人のソマリランド愛はすごいなー。ここまで一つの地域を愛し興味を掘り下げる情熱を傾けられる場所を見つけた著者は幸せだ。誰よりも、日本で一番この国を理解していたいと言う希望は、帰国後ビジネスをすると言うアイデアにも行くが、この人は「お金儲け」が目的になってない(イヤそりゃ少しはある)ソマリランド発展に為、そして母国日本と愛するソマリランドとのパイプ作りの為、と言うのが好ましい。
    一般的な生活を体験する、料理を習う、郊外を見る等外国人には困難な事を実現させて行くのは、著者の情熱と友好心と出会った人との信頼。最後にちょっと裏切られる展開があるけど、これは真の裏切りじゃない。著者はわかっている。最後の戦闘シーンは度肝抜かれた。
    この方の秘境の著は他も読んでみたい。

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