- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087715842
感想・レビュー・書評
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ダヴィンチbookoftheyearより
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10.29.2015 読了
未知の地ソマリア
過酷な旅とジャーナリズム精神
嗜好品のカートとらやをやってみたい。 -
今までも高野秀行は好きだったが、それは書いたものが面白いからだった。
日本人には秘境と思われる場所に行って、独自の視点で冒険を行い、面白い文章を書く人。内澤旬子や服部文祥と同じ枠。
しかし、この本で、ソマリアに深く入り込むことで、高野秀行だけのステージがぐっと上がったように思う。
戦闘状態にあるイスラム教の国で、言語も文化も独特、となると、普通は敬遠するし、上手く入り込めたとしても、書き手に書く能力がなければ、この本のように読みものとして面白くならない。実際数多くのジャーナリストや学者の文章が、同業者には良くても、一般人には読みにくい、あるいはつまらないことは多い。
その点、高野秀行は文章においては面白いことが保障されているのだから、本人が一つのことに真剣に深く取り組めば、素晴らしいものになるのは当然かもしれない。
ソマリアという、日本人には殆ど馴染みのない国の実情が一番わかる本と言っていいだろう。ソマリア人と仕事をするだけでなく、衣食をともにし、言語を習得し、戦闘にも巻き込まれたからこそ書ける内容。
氏族社会、客を命懸けで大事にする精神、移住に抵抗がなく、どこにいても己を失わない遊牧民の血などソマリアを理解するための鍵をこの本で知ることができたし、イスラム過激派の思想の根底にあるものもわかった気がする。
だからといって私を含め多くの読者は別に日常生活が変わるわけではないし、将来ソマリアに行くこともないとは思うが、外国人、異民族を端から理解不能、コミュニケーション不可と決めつける偏狭な日本人にはならないだろう。その功績は非常に大きい。 -
高野さんをもう探検家とは呼べないよなぁ…、とちょっとさみしくも感じる。それは否定的なものではもちろんなく、本書も前作に続きソマリアの現状を描いた本としてとても興味深かったから。紛争、政治、経済事情もテレビの情報なんかより優れているし、さらに高野さんならではの庶民の暮らしまでレポートされている。本人も言っているが、世界で高野さんしか経験し得ないことが書かれていてとても面白い。本書の中ではその後オチがあるのだが、まさしく高野さんのジャーナリスト記念本です。
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ソマリアへは、一生行かないでしょうけど、深刻さと軽妙さが抜群。『謎の独立国ソマリランド』の続編なんだけど、凄いよね。現地を取材してるんだけど、もはや一員にならはるんですよ。ソマリア人ってなんでこんな反応なんだ!みたいなことはもう読んでいくうちになるほどね、ですよ。ワラベ長者ってゆう老人が最も尊敬されてる人ってことで、会いに行っておられるんですけど、ワラベさんの昔話なんかは感動です。氏族社会において、父親を殺され仇を討ってこいと送り込まれた少年ワラベさんのとった行動とか、それで今でも尊敬されてるってゆうまわりの人たちの価値観とか面白い。
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今回も楽しそう。この冒険に憧れますが、最後銃弾が飛び交ってたので、目が覚めました。アカンアカン。
著者はソマリアよりハムディに惚れてるんじゃないかという疑惑があります。ハムディかわいいよハムディ。 -
「謎の独立国家ソマリランド」を読んだときより、著者と同様こちらも里帰り的な気持ちで読みました。著者は日本にいる間も早稲田大学のソマリからの留学生からソマリ語を習い渡航する準備を怠りませんでした。今回は、政府軍について移動中に襲撃に合い、緊張する場面がありました。そして、帰国後は現地でずっとお世話になっていた20代前半の女性ジャーナリストハムディが国内での身の危険を感じ、難民申請をして北欧に暮らし、大学進学を目指すことになっていました。
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前作「謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア」がおもしろかったので、あ、また続編が出たんだと思い、読む。期待は裏切られなかった。全編ワクワク読み進めたが、終わり近くの襲撃事件でハラハラし、落ち着いたと思ったら、ハムディの難民としてのノルウェー行きと続き、衝撃?のまま終わった。
日頃、日本の価値観、常識の中で、生活しているので、それを基準として考えてしまうから、異国の常識、価値観、過酷な現状を知ると、自分の世界観がぐるっと回ってしまう。
平和な日常に慣れきってしまって、生命の危険を感じながら、厳しい環境でジャーナリストとして生きている22歳の女性ハムディの姿を、寝転びながら読んでいる自分って・・・
筆者の高野さんに異世界に連れて行ってもらった数時間だった。
自分で行動して、体験する世界は限られているから、せめてこういう本を読み、自分の世界を広げ、自分の立っている場所を俯瞰できるようになりたい。