いのちの姿

  • 集英社 (2014年12月5日発売)
3.59
  • (10)
  • (20)
  • (20)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 182
感想 : 22
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (184ページ) / ISBN・EAN: 9784087715880

作品紹介・あらすじ

人間の「生」の深淵を見つめて書き続ける宮本輝による随筆集。異父兄との邂逅を描く「兄」、シルクロードへの旅にまつわる回想「星雲」など、著者が白秋のときを迎えて命を想う、珠玉の14篇。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人間の「生」を深く見つめたエッセイ集で、著者の独自の視点や人生経験が豊かに描かれています。密度の濃い文章は、読む人の頭の中に鮮やかな映像を浮かばせ、心に響くエピソードが散りばめられています。特に、パニ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  最新刊『潮音』(宮本輝著)が面白かったので(まだ第1巻だけだけど)、町内の図書館の書架にあり、すぐ借りられる著者の過去作から一冊を選んで休日に読んでみたもの。
     本書は、あとがきにある、このエッセイ集の成り立ちを理解してから読むのがよい。

     そこには、京都の馴染みの料亭女将の夢であった、店で季刊誌を発行し、得意客に配布するという持ちかけにのったもの、とある。2007年から年二回の刊行で7年間、エッセイを寄稿した結果、14のエッセイが揃ったということらしい。

     寄稿先が比較的クローズな雑誌での連載だったからか、著者のごく内輪の、あるいは個人的な話が多い。その時々の世相を反映してとか、季節や、日常に着想を得た随筆という感じでもない。
     何が多いかというと、著者の来し方行く末といった人生観が多く語られている印象。幼少期の土佐堀川沿いの暮らしの想い出、作家を志したころの苦労、パニック症候群や肺結核の話、そしてタクラマカン沙漠の旅など、どこかで見聞き、あるいは小説に落とし込まれている話も多く既読感は高い。

     それでも、改めて読めてしまうのは、著者の筆致の安定感のなせる業か。読みやすく、すらすらと読めてしまった。
     また、第1話、兄の話などは、私は初耳。馬主たちとの話や、たった2か月だけ働いた地元の中小企業の想い出が小説のネタに繋がっていくという話も興味深い。小説家宮本輝の日常、人物関係が見て取れる。

     本書の中にも「人々のつながり」という章で語られているように、著者の人生でかかわってきた人との繋がりの大切さが、全編を通じて感じられるエッセイ集だった。

    「善き人々の連帯 — これがいまほど希求されている時代はないのに、人々はそこに向かって具体的に動こうとはしないのだ。」

     10年前の随想だが、分断、断絶が叫ばれる今にも通じるメッセージもある。
     その上で、

    「― なにがどうなろうと、たいしたことはありゃせん。」

     と、熊吾の、いや、著者の父親の言葉を引いて、人生に負けるなとエールを贈ってくれているような一冊。元気を頂戴した。

  • エッセイですが、密度が濃くて頭の中に映像が浮かびながら楽しく読めました。

    宮本輝先生の文体が大好きです。
    人々のつながりを大切にして、善いことをのこせる生き方をしたくなりました!

    ぜひ〜

  • タイトルがいい。宮本輝って三島と同じでいいタイトルつける作家なんだなあ

  • とってもよかったです。パニック障害の話、お父さんの一言、心に残ります。

  • 久々の宮本輝。知人の料亭の女将が顧客に配る無料エッセイ誌上での連載ということで肩の力が抜けたざっくばらんな語り口調作品の背景や人生体験などが綴られる。氏の世代の日本語の良さ、謙遜する中で滲み出る読書量、「いのち」に対する意思の力を感じさせる文章が続く。加藤静允氏の挿画がとても素敵。完全版もあるとのことなのでそちらも読みたい。

  • 「流転の海」と併読したの正解だった。こんなドラマチックな「流転の海」で創作部分も多いのではないかと思ったが、意外と事実に基づいている。

    『父は大阪市内で最も大きな貸し駐車場の管理を託されていて、その事務所は運転手たちや近所の商店主たちが暇つぶしに遊びに来る場所にもなっていたのだ。』

    『大阪での事業に失敗し、知人と新しい商売を起ち上げるために富山へと引っ越したのだ。』

    『母が突然、喘息の発作に襲われた』

    『なにがどうなろうと、たしたことはありゃあせん』
    『父が死に、母と私は取り立て屋と称される男たちから逃げて、大阪と奈良の県境の町で隠れるように暮らしていた』

    とあるから、物語と現実は違うようだ。もしくはその後借金が出てきたのかもしれない。

    他に一浪する、テニスに没頭するなどもそうだ。

    宮本輝は長いことパニック障害に襲われていたという話も面白い。それから結核なんだからかなりつらい人生をおくっている。それが小説に結実しているのだろう。

    井上靖の「崑崙の玉」を推薦している。井上靖という世界もあるなと思う。

    『通りすがりの名もない人ではなく、私がその小説に必要として名前をつけた人間は、たとえ一回だけ登場し、わずかひとこと喋っただけにしても、その瞬間、私はその人になっている。女であろが子供であろうが老人であろうが、私はその人に憑依する。努力してなり切ろうとしているのではなく、ごく自然にそうなってしまうのだ。』

    という言葉が印象的。

  • 実は宮本さんの新しい小説だと思って手にとったのだけど、実はエッセイ集だということに気づいたのは最初のページを繰ってからのことであった…

    そんなわけで、ややテンション低く読み始めたのだけど、最終的には、落ち着いて考えを巡らせるきっかけになるいい本だった。

    近刊で一番良かった「水のかたち」のとあるプロットにはこんなモデルがあったのか、、、とあの作品に読み取った偶然の連鎖が現実にも起きていたメタ構造にも気付いたり。

  • 1947年生まれ、宮本輝氏の「いのちの姿」、2014.12発行です。自伝であり、また書いた作品の紹介、思い出(思い入れ)のようでもあります。ジャンルとしては「エッセイ」になるのでしょうね!4歳~9歳は大阪・中之島の西側で水上生活を。25歳のときパニック障害に、27歳で会社勤めを辞めて小説を書き始め、32歳、肺結核で入院。33歳から夏は軽井沢で仕事だそうです。いのちある作品をこれからも書き続けていただきたいです!

  • 宮本輝さんが人生の中で出会った人の回想録であったり、自身の生い立ちであったり、どちらかというと人生の「影」の部分に焦点をあてたエッセイ本。

    数々の作品が生み出された時の作者の背景(舞台裏)を知りたい性分なので、かなり興味深かった。

    特に印象深かったことは、広告代理店で勤めていた時に、重度のパニック障害を患い、それを機に小説家に転身したこと。小説を執筆しながらも尚、病気と闘っていたこと。

    他には、種違いの兄の存在の話や、殺し馬券の話。

    自身の人生に起こりうることは、ひとつとして無駄なものはないのだと思う。きっと私も、ただ道の途中なだけで。

  • とても薄くて文字も大きなエッセイなので、一気に読もうと思えば読めますが、丁寧にゆっくりと読みたいと思わせてくれるエッセイです。
    久々に宮本輝さんの書いたものを目にしましたが、「あ~、ちゃんとしてるな~」「きちんとしたプロの文章だ」と実感しました。
    偉そうだけど・・・。

    内容としては、近況というよりは昔の事を思いだして書かれたエッセイでした。
    昔の出来事や昔書かれた作品にまつわる話など。

    最も印象深かったのは最初の「兄」という話です。
    宮本輝さんには父親の違うお兄さんがいるそうです。
    お母さんが前夫との間にもうけた男の子。
    生涯二度と会わないと約束をして前夫の家に子供を置いて出たお母さん。
    その人に会いたいなら会って来たらどうか、と宮本輝さんがお母さんに言ったところ、生涯会わないと約束したし、会いたいという心が生じたことがないとお母さんは言った。
    そのお兄さんに宮本輝さんは広告代理店に就職したころ、会いに行ったことがある。
    そのエピソードが書かれた話で、何となくほろ苦い後味を残すような話でした。

    宮本輝さんの書かれる文章は魂をこめて書かれているというのが伝わってきて、こんな薄くて大きな文字のエッセイでも軽々しく読むという感じにならない。
    そういうのって、文章だけでなく色んな面でこの世の中から減っていっている、と感じます。

  • 宮田さんの作家になるまでのことが書いてあり次回も
    みやたさんの本を借りようと思っています

  • 著者のエッセイを読むのは初めてです。
    夫が図書館で借りていたので私も読んでみました。

    比較的初期の作品と、流転の海シリーズは全部読んでいるのですが、作品が生まれるきっかけや経緯、背景を垣間見ることが出来てちょっと得した気分です。
    今まで著者の人となりなどは一切知らなかったので、生い立ちや育った環境、結核やパニック症候群など病気のこと、どれもこれも初めて知り、びっくりしました。
    作品が持つ力強さやしたたかさ優しさの理由が少しわかった気持ちです。

  • 宮本輝のエッセイ集。短編ばかり14篇。小さく薄いハードカバーの本に大きな文字なので読みやすいのだが、宮本輝の意外な人生経験を元にした不思議な感じのエッセイでした。宮本輝の小説読んでみようかな。

  • 914.6

  • 小説も好きだけど、エッセイもおつ。
    宮本輝の父親の(あの破天荒な)

    ”なにがどうなろうと、たいしたことはありゃあせん。”

    胸に刻んだ。

  • 宮本輝のエッセイに出会えました。
    最近読了した『水のかたち』のエピソードにも触れられて。
    よかったぁ。

    ちと、違う一面を垣間見た感じ。

    もう一度、ページをめくる…

  • 久しぶりの宮本さん。
    それもエッセー集。
    小説の妨げになるからとエッセーは書かないと決めていたのに、京都の料亭和久傳の女将に拝み倒されて、書きためてきたエッセーをまとめたもの。
    和久傳の女将さんに感謝しなければ。

  • 14篇のエッセイ集。『優駿』『錦繍』『水のかたち』の作品エピソードが興味深い。

  • 普通のエッセイでした。

  • 京都の高級料亭「高台寺和久博」の女将
    桑村綾さんと宮本輝さんはとても仲の良い信頼しあった友人
    その桑村綾さんの夢であった和久博のエッセイ誌に載せた
    エッセイ集なのです
    宮本輝さんは、小説に専念するために
    2001年に刊行した「血の騒ぎを聴け」というエッセイ集いらい
    まとまったエッセイ集は出さないというお話だったので
    こういう形でエッセイを読むことができて幸せです
    そして、それぞれのエッセイが、
    宮本輝さんの小説が好きで全てを読んでいるわたしにとって
    ああ、あの小説のあの部分はこういう経験からだったのかとか
    あの時の講演会のお話の真実はこうだったのかとか
    色々と感慨深いものもありますが
    血のつながりのあるお兄様の件は、はじめてで
    宮本輝さんのやさしさと人間らしさと面白さが溢れ出て
    なんだか、ゆっくりと笑って泣きそうになるエッセイでした

    もし、宮本輝さんの小説を読んだことがない人
    読んだとしても、少ない数だという方にも
    ぜひ、読んでほしいエッセイ集です
    飾り気が無く正直で、でも鋭く厳しく優しく賢く
    胸に残る言葉やお話が多すぎて、
    いまでも受け止めきれないでいます
    宮本輝さんの小説は、上下巻ということが多いなか
    この本は文字も大きく、読みやすい厚さで
    お値段もリーズナブル
    そして、装丁と中の挿絵も、すっごく素敵
    おすすめしたい、クリスマスプレゼントにしたい
    素敵なエッセイ集です

全20件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮本輝の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×