田園発 港行き自転車 下

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 499
感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716054

感想・レビュー・書評

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  • 心にしみるとてもいい話でした。
    東京、富山、京都のそれぞれの点が線となり、その線が交わり、こんなにも豊かな物語になるとは。登場人物が魅力的なのはもちろんだが、京都と富山の風景描写が良く、行ったこともないのに風景が浮かんでくる。中でも富山の田園風景に関しては秀逸で行ってみたくなった。本の中の様に徒歩で、自転車で。実際にスマホの地図アプリを片手に読み進める場面もあった。
    人が人を思いやる気持ちにあふれた物語。その思いやりも決して押し付けがましくない。
    再読したい本に出会えました。

  • 人は、好むと好まざるに関わらず、それぞれの因果・宿命を背負って生まれ、生きていく。
    そして、それぞれの人生を背負った人間が、色んな場面で、色々に出会い、別れ、泣き、笑い、人生を全うしていく。
    そんな人と人との出会いを、富山・京都・東京を舞台に展開していく。
    この小説では人間の風格・品位・直向さ・実直さなどなど人間が人間を信頼し、信用することの重要性が書かれているような気がした。
    山本周五郎の時代小説でもそのようなことが濃密に書かれていたが、宮本輝という人の根本的な考え方も同様な様な気がする。
    よしもとばななさんとの対談で赤毛のアンが大好きだという宮本輝さんの言葉があり、小説でそのひとコマが出てきて、一瞬、微笑んでしまった(笑)。
    今度は、私の好きな司馬遼太郎賞の骸骨ビルの庭を読んで見ようと思っている。

  • 富山県の滑川市付近を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた下巻にあたる。
    さまざまな人物が登場し、複雑な人間関係を織りなしていく。善意ある誠実な人たちが描き出す布がどのような絵を描き出すのか、と読み続けていて、最後のあっけなさに拍子が抜けた。
    えっ、ここで終わってしまうの、と驚く。最後まで決着をつけずに大きな余白を残す、これが余韻なんだろうか。味わいが大人過ぎて自分には少々物足りない。

    繰り返し語られる田園風景の美しさが印象的で、富山県に対するイメージが少し変わったように思う。

  • 「縁」の物語でした。人が人を思いやって、コツコツと積み重ねてきたものがあって、そして繋がっていく。

    それにしても、賀川直樹さんが元凶に思えてならない。。。真帆ちゃんが、お父さんの事を嫌悪と憎悪、そして全て見せかけの偽善でしかない様に思えたという気持ち、ほんとに共感です。。

  • 上巻に続いて、人間関係の説明が淡々と続いていきます。異母姉弟、異母兄妹・・・。宮本輝さんの小説は好きだったんですが、最近の小説は読んで面白くない作品が多いです・・・。

  • 下巻です。

    上巻での複雑な人間関係がきれいに繋がり、人の縁がこんな風に繋がっていく力について考えてしまいました。
    まあ小説だからどうとでもなるんだけど、ご都合主義な感じにならないのはさすが著者の筆力ですね。

    私はとにかく、千春と佑樹という若い二人の清らかさが大好きでした。
    でもそれは、彼らを取り巻く人達がそれぞれ気持ちを慮り、温かさと思いやりに満ちた育て方をしたお蔭ですし、特に平岩の懐の深さは素晴らしすぎるんだろうけど、でもやはり当人たちの魅力にはかないません。彼らを見ていると、人の心の根っこには優しさがある、と素直に思え、心からほのぼのした気持ちになれるんです。
    大人はさ、いくら真っ直ぐに堂々と生きていても結局は不倫とか、大人の事情を抱えているからね。

    人生においての出会いの縁の不思議さと豊さを感じた一冊でした。
    ただ・・・もう少し先まで描いて欲しかったよー


    あっ!それから、本書とはあまり関係ないけどもう一つ発見があって。
    私、本筋と関係ない人物像を丁寧に書き込む話って作家の自己満足でしかない!と不満に思っていて。(最近の宮部みゆきが代表なんですけどね。)
    でも本書を読んで、そうではないことが分かりました。上手な作家は無駄が1文字もないのです!

  • 明るい未来を描けるラストでよかった。
    愛本橋はもっとでてくるかと思ったら、わらと全体の風景や空気感でまとめられていた。

  • いつも凄く胸に響く作者の本なのに、今回はあまり胸に響かなかった。それは私が故郷の景色を持たないせいかもしれない。私も富山に行って星月夜を探してみたい。そうすればもっと違う感想を抱くことができるのかもしれない。

  • 2016 8/9

  • 上巻でばらまかれたピースがすべて、ラストに向けてぴったりとおさまっていく。
    私も田園から港まで自転車で下って、不安も心配もない時間を過ごしてみたいなぁ、と思う。
    そんな心持ちにしてれる風景が、富山にはきっとあるのだろう。
    そして、人はみんなどうしても自分をよく見せたいと背伸びしたり、人と比べて自分の優位な点を探したりしてしまいがちだけど、この小説に出てきたすべての善き人たちのように、他人を信頼し、大切に思いながら、温かく穏やか気持ちで過ごせたらいいなぁ、と思う。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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