光のない海

  • 集英社 (2015年12月4日発売)
3.36
  • (7)
  • (29)
  • (46)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 278
感想 : 51
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (328ページ) / ISBN・EAN: 9784087716399

作品紹介・あらすじ

建材会社の社長を務める高梨修一郎。50歳を過ぎ、心に浮かぶのは過去の秘密と忘れがたい運命の人……。個人と社会の狭間にある孤独を緻密に描き、成熟した大人に人生の意味を問う長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 感想

    最初は若い女性との道ならぬ恋かと思ったが、全然違う内容で重い人生を背負った男の話だった。

    影がある登場人物の作り込みがしっかりしているなぁ。

    読み進めるうちに明かされる過去も読み応えがある。


    あらすじ
    建材の徳元産業の社長の高梨は、ある日実演販売で会った販売士の花江に再会する。その後、花江は家が火事になり、高梨が社宅を貸すことで繋がりができる。

    一方、会社の方はメインの取り引き先であるゼネコンのセラールが粉飾決済で倒産寸前に追い込まれていた。

    その後、前社長と高梨の愛人関係、その娘と高梨は結婚したが、離婚したこと、息子は自分の子供ではなかったこと、セラールを巡るゴタゴタで徳本産業が乗っ取られそうなこと、事故で亡くなったと思っていた妹が男女関係で自殺したかもしれないこと、花江の祖母の死、社宅の管理人夫妻の失踪、社長の交代、そして引き寄せられるように生まれ育った街へと帰っていく。

  • こういう小説も良いなと思い、星5。淡々とした小説だったけど読後感がよかったです。
    建築資材会社の社長である主人公。そろそろ退任を考えるなか、失った家族や大事な人たちについて振り返り、そして現在の人間関係や新しく出会った人たちとの交流を通して人生を見つめていく話です。

    投資先会社のの粉飾決済トラブルなど、複雑な展開もありますが、そのなかで主人公・高梨の過去や秘密が少しづつ明らかになり、最後まで飽きずに読み通すことができました。両国とか下町の風景が淡々と描かれているのも良かったポイントかな。

    「高梨さん、いい人だなー」という感想。運命に流されて社長をやらされたり結婚させられたりしたけど、自分なりに真摯に向き合っていたし、関わった人にとことん関わるちょっとだけお人好しで、酒と美味しい料理が好きな人間味あふれる人。花江と幸せになる未来を願って読了しました。

  • 白石さんの本は3冊目。
    久しぶりに読んだ。
    前読んだのが『ほかならぬ人へ』で2011年10月のことだから、実に7年ぶり!

    登場人物の過去が皆、過酷すぎて…
    なかなか感情移入できない一冊だったが、なぜだか途中放棄する気にはならず。
    気が付けば、さらさらと読んでいた。

  • 人との縁とは不思議なもの。
    什器の入れ替えで古い名刺を処分していたら、今、必要な人の名前を見つける。
    仕事ではなく、水入れのことで。
    体調が整う水入れ自体にも興味はあるが、これを売っていた花江も気になる存在だ。ここから付き合いが始まるなんて誰が思うだろうか。
    誰にでも、必要なときに必要な人に出会えるような場面が用意されているに違いない。

  • 主人公は、従業員500名の中堅建材商社の社長で、経済小説みたいな雰囲気で話は始まってゆく。
    が、読み進めるほどに、主人公やその周囲に縁を得た人々が体験してきた、悲劇と愛憎に塗れた過去が紐解かれ、その壮絶さに驚かされることになる。

    その紐解かれる過去は極めてドロドロしたもので、それらが少しずつ明かされることにより、先を読む興味が喚起される。
    他方、小説の語り口や登場人物たちの造型は淡々としており、語られる過去の情念が中和されるところに妙味がある。
    例えば、主人公の会社がある水道橋・神保町界隈や、会社の寮がある浅草橋、かつて暮していた川崎の地理が、実名入りでかなり詳細に説明されるあたり、読む側に冷静な印象を与え、現実感が生まれる。
    食べものや飲みものに関する描写が多く登場するあたりからも地に足がついた安心感を覚える。

    主人公を含め、3組の家族の悲劇的な過去が詳らかになってゆくのだが、それら3本の線は絡み合うようでいて、絡まない。
    ラストはやや曖昧で、ミステリとしてパズルのピースが埋まる快感を求めて読み進めた向きにはやや物足りなさがあるかもしれない。
    が、その曖昧さにこそ、人の世の、人の生き様の複雑さと深みが反映されているように思う。

  • ふむ

  • 主人公は50歳の建材卸会社社長。水を浄化する、蛇の水瓶を割ったところから話が始まり、過去のあれやこれやがいろいろ思い出されながら、会社経営もいろいろあり…のような話。
    世の中にはいろんな人がいろんな歴史を背負って生きているし、そこで関わり合った人たちによって自分も歴史と人生を作っていくのはそうなんだけど、いかんせんみんな暗い。人との繋がりはなんだか演歌調でネトネトしていて、全体を通して暗い。水に吸い込まれていくところは、ハリガネムシに寄生されたカマキリのことを思い出した。

  • だとすれば、私たちは一体何のために人生という長ったらしい物語を描き続けなければならないのだろうか?どうせいずれかは消されてしまう文書を、私たちは一体どんな目的のために黒板にかきつけているのか、しかも私たちはそうやって自分の物語を書き連ねることで、近くにいる別の人たちの物語にも余計な一行が決定的な一行を絶えず書き加えてしまっているのだ。

  • 主人公の高梨が昔の出来事を回想しながら事が進んでいき、花江との仲も深まっていった。とてもページ数が長く心情を捉えるのが難しかった。

    最初の方を読むと、自分も水瓶ボトルで浄水した水を飲みたいと思った笑

  • 普通

  • 2020.01.28
    良くもこんな小説を書けるものだと感心した。題名の付け方がすごいと思った。もう少し読んでみよう。

  • 現在よりも過去の話が中心
    でもそれが全て繋がってくる

    いのちの支え

    ラストは支えがなくなってしまうのかとドキドキしたが、

    社長さーん

    で号泣

  • よく分からないラスト。
    琵琶湖かな。光はあるのかないのか。希望の光か。水が光るのか。
    恩人の女性会長と密通して、その娘と結婚するも離婚。妻もまた不義で別の男の子供をもうけ、不倫相手から会社乗っ取りを仕掛けられる。妹もまた妻子ある男と付き合ったのか。傷心のためかバリで水死。社員寮の管理人、息子は殺人を犯し、二人の娘のうち、下の娘は息子から性的虐待を受ける。それを娘の彼氏に聞かされ、生きる勇気をなくす。
    救われない関係ばかり、気が滅入るというか、どうでもよくなる。それだけにすっきりと終わって欲しかった。

  • この作者のほん私は好き

  • 群像劇。
    様々な人との関わりを描きながらも、どこか孤独を感じる。
    ぽっかりとした空虚感はその全てが過去の恩人、美千代に繋がっているからか。

    精緻な文章で描かれた人間関係の描写は見事。
    この作者の文章は静かだが、つい引き込まれて読んでしまう。

  • この作者の作品は好きで読んでいる。
    年齢的なものなのか、最近は目の調子が良くなくて長時間読書をすることがなくなっていた。が、この作品を手にすると一気に読み終えた。目のせいばかりでもなかったのか・・・
    主人公の年齢が近いので心情や家族、恋愛等は自分自身と重ね合わせて現実に近い印象をもった。まさに現実は小説より奇なりなのである。

  • 人は孤独であるが、何かわからないけれど、人として惹き合う大事な人に出会えたら、大切にしたいと思う。

  • 新作が出ると必ず読んでしまう白石一文の小説。
    わたしの中では何を読んでもハズレがない安定感があります。
    この小説はお話の面白さ、という点ではちょっと物足りないかも知れませんが、主人公の中堅建材メーカー社長の高梨の数奇な運命や家族運のなさに共感、同情してしまいます。

    不倫だったり親子ほどの年の差だったり、駆け落ちだったり、登場人物の誰一人、いわゆる普通の家庭ではなくて、家族関係に悩みを抱える自分にとっては、べつに普通じゃなくてもいいんだと少し安心させてくれます。

    また、高梨の振る舞いも、白石一文の小説の主人公全部に共通する誠実な人柄と周囲への気遣い、こんな人がそばにいたらいいなと思わせる安心感をずっと感じていたくて読み続けてしまうのかも知れません。

    ラストで高梨が死に魅入られていく場面がありますが、自殺する人ってリアルなところあんな感じなのかもしれないと思わせます。

  • うーーん、イマイチ。
    なんで花江は若い女性じゃなきゃいけないの?
    初老の男性と若い女性の組み合わせはもう辟易だよ、、

  • 白石さん作品3冊目です。
    主人公だけでなく、周りを取り囲む登場人物の歩んできた軌跡がよくわかり、自分に語り掛けてくれているのだろうか、と思うくらい、胸に突き刺さる言葉があり、で一気に読み終えました。

    お手本のように、何でもすんなりいく恵まれた人生だったら、人を欺くことなく生きていける人生だったらどんなに幸せだろう、大人気もなく思ったこともある。
    でも、多くの人間は、苦しみを隠し、重いものを背負いながら生きているんだろう。と思わされた。そして、
    わかりつつ人を欺かなければならない状況にたたされ、
    葛藤しながら、生きていく。
    生きていく先には、なぜか大きな落とし穴がある。
    生きてさえいればしあわせ、と単純には思えない。


    地方紙で紹介されており、図書館で借りて読みましたが、購入すればよかった、と後悔。
    そして、自分の文才のなさで、この小説の良さをうまく伝えられないのが残念。
    自分は、50代ですが、同年代人に是非読んでもらいたい。

    書店に行ったら、白石さんの別な作品手に取ってみよう
    と思いました。こんどは、図書館でなく。

全43件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

白石 一文(しらいし・かずふみ):1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で第22回山本周五郎賞、10年『ほかならぬ人へ』で第一四二回直木賞を受賞。著書に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『草にすわる』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』『松雪先生は空を飛んだ』『投身』『かさなりあう人へ』『Timer 世界の秘密と光の見つけ方』等多数。

「2024年 『代替伴侶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白石一文の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×