バラカ

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716467

作品紹介・あらすじ

震災のため原発四基がすべて爆発した! 放射能警戒区域で発見された少女「バラカ」。ありえたかもしれない世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。超大なスケールで描かれるノンストップ・ダーク・ロマン!

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災で原発4基爆発!
    警戒区域は関東にまで及び、オリンピックは大阪開催。
    もうひとつの日本ー。ありえたかもしれない日本ー。

    物語は「爺さん決死隊」と呼ばれているボランティアで警戒区域でペットの捜索をしていた
    豊田が犬達と一緒に居た〝ばらか〟とだけ言う小さな女の子を保護するプロローグから始まる。
    第一章は大震災前
    42歳の大手出版社勤務の沙羅と、テレビ局勤務の優子は大学時代の友人。
    子供が産めるタイムリミットが迫り、沙羅は養子を貰う決意をする。
    優子の元彼の川島と懐かしさで会うが、川島は見た目も人柄も悪魔の様に変わっていた。
    ドバイのショッピングモールに赤ん坊市場がある事を知り沙羅と優子はドバイを訪れ、
    アジア系のバラカと呼ばれる可愛い女の子を二万ドルで買う。

    日系ブラジル人夫婦のパウロとロザには1歳の娘ミカがいるが、
    パウロは良い大学を出たのに仕事は工場できつい労働をするしかない…。
    酒と暴力に溺れ、妻ロザは新興宗教にのめり込む。
    失敗のサイクルから抜け出すためドバイへ仕事を求めて行くが、ロザとミカは行方不明に…。
    必死で探すパウロ。ミカは日本の出版社勤務の女性に買われた事を突き止める。

    海外で子供を買う事を最後まで反対していた母が、バカラを連れ帰った3週間後に急逝。
    葬儀屋として登場した川島。あんなに気持ち悪いって思っていたはずなのに、
    頼りきり、妊娠をきっかけに結婚した沙羅。
    懐かないバラカに手を焼き、優子に預ける。
    そして、2011.3.10川島の転勤にともない仙台へと向かった沙羅。閖上の自宅で被災…。

    東日本大震災の為、原発4基が全て爆発した。
    警戒区域は関東にまで及び、首都機能は大阪に移り、オリンピックは大阪開催。
    物語は震災前から始まり、大震災、震災後8年と移る。
    子供をペットの様に買う沙羅も最低だし、それを撮って仕事に繋げようとする優子も最低。
    川島に至っては、悪魔以外に呼びようがない…。
    豊田の元で11歳になったバラカは、甲状腺がんの手術を受けた。
    バラカは反原発運動の象徴。または、棄民に象徴にいつの間にかなっていた。
    何者かに追われ続けるバラカ、信頼していた人の裏切り。
    豊田との別れ、育ったひのき農園の焼失…試練がいくつも襲い掛かる。

    人身売買・外国人差別・新興宗教・DV・児童虐待・原発問題・国家の闇…。
    次々と恐ろしい問題がこれでもかと提起される。
    ここまで描くのかと怖かった。
    こんな日本になって欲しくない…。
    でも、ここに描かれている日本の姿は実際の日本が抱えている社会問題に繋がっていて
    架空の物語と思えない所が、何ともいえない気持ちがゾワゾワと湧いてくる。
    日本が潜在的にもつ負の部分をこれでもかと描いてる。
    読むのが何度も何度もしんどくなりました。
    読みながら背筋が寒くなる…。
    毒にやられてしまいますが、凄い作品だと感じました。
    そして、最後のバラカの姿に良かったって思った(*´艸`*)

  • 「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」にはこんな記述がある。
    「官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである」。
    言うまでもなく、小説の中の話ではない。いま日本国民は既に忘れてオリンピックに浮かれているのかもしれないが、あの福島原発はすんでの処で四基とも爆発するところだったし、爆発の時にたまたま風向きが海に向かっていたので最悪の事態を免れたのである。

    「バラカ」は福島原発事故の時に四基とも爆発して、首都が大阪に移転した日本の近未来を描いている。この小説はだから、空想物語ではない。(いま現在もいつ起きてもおかしくはない)原発事故の起こすさまざまなドラマの可能性を提示する小説である。

    しかし、それだけではない。「OUT」や「東京島」の登場人物たちのダークサイドに堕ちてゆく描写が素晴らしかったように、桐野夏生らしく、震災前の東京在住の三人の都会派男女と、群馬に住んでいた南米系日本人三人の男女を描いて、バラカがいかにしてドバイの子供市場で売られてバラカとして日本の被災した子供として生まれ直したか、を丁寧に描く。そして人間の闇と可能性を浮き彫りにしようと努力している。

    とんでもない状況で産まれたのにもかかわらず、甲状腺ガンで首の周りに手術跡がネックレスのようについているのにもかかわらず、震災8年後の10歳のバラカが、聡明で正義感溢れ、前向きな少女になったのは、ひとえに彼女を育てた人たちが素晴らしかったからだと思う。震災後の夏、警戒区域の放置犬を保護する目的で入った四人の「爺さん決死隊」の男たち。彼らの知恵と明るさと、良心がなければ、ネットや監視カメラや独裁政権の中で、密かに殺されて交通事故で処理されてしまう未来もあったかもしれない。「近未来」というSF的な表現でいいのか、という感想も持ちつつ、去年の北野慶「亡国記」に続いて、こういう「原発事故小説」が再び誕生したことを祝福したい。

  • 赤ちゃんがいる日系ブラジル人の若夫婦の奥さんが孤独から新興宗教にはまる。夫は、奥さんと新興宗教を引き離すためにドバイに出稼ぎで渡るがそこで一家離散。
    一方、キャリアウーマンの身勝手な独身女性二人がドバイの赤ちゃんマーケットから女の赤ちゃんを買った。
    そこから、物語が始まる。
    外国人労働者、新興宗教、人身売買、大地震と津波、原発事故と放射能汚染、隠ぺいする政府。
    社会問題てんこ盛りの壮大な物語にぐいぐい引き込まれて毎日徹夜読書で寝不足。
    ラストは、一応ハッピーエンドなんだろうけど、ものすごく心にずしっとくるハッピーエンドでした。
    やっぱり桐野さんの本は全部面白い!

  • 人身売買、殺人、児童虐待、DVあらゆる犯罪と、震災による被害、原発事故、風評被害など‥まるごと詰め込んだような作品でした。読み応えがありました。

  • 「教団X」に勝るボリューム!ぐいぐい引き込まれる、さすが桐野夏生作品、読ませる。
    バラカを利用しようと群がるエゴの塊の大人たちに嫌悪しながらも、これは現実にありうるかもしれない話のように思えて恐ろしかった。個人的には最後もっと書き込んで欲しかった。ページが増えてもいいから。

  • 面白かったし、いろいろと考えさせられました。後半手を抜きすぎみたいな声もありましたが、まあ、いいのでは。震災を軽く扱いすぎという声は、そうかな、と思いました。
    豊田のおじいちゃんみたいに生きられたら幸せなのかな。幸せってどういうことなのかな。みんな、それぞれの幸せを求めていたけど、見つけられる人は少ない。それはどうしてなんだろう、とか、考えました。

  • 読んでいるうちに、何度も
    ヒヤリと背筋が寒くなる。。。
    津波で破壊され爆発事故を起こした原発、
    子どもが甲状腺がんにかかった事実を
    なかったことにしようとする何らかの力。
    人身売買される幼い子供たち。
    そして、悪魔かと思う程の人間の悪行の数々。
    これは本当にフィクションなのか?
    自分の中で現実との境目が何度もあやふやになるのを感じました。
    これから世の中は人も環境も
    どんどんサバイバルになっていくのだろう。
    真実は何か自分の目で見極め、
    自分の頭で考え行動できたものだけが生き残る。
    読み進めるうちに胸の中にこびりついた
    ザラリとした気持ちを、
    最後の章が少しだけ溶かしてくれました。

  • スケール、スピード感、ボリューム、全てが圧倒的。
    震災で歪められた日本、人々。
    一人の少女を巡り、悪が蠢めく。
    狂気が狂気を呼び、絡み合う物語は、どこまでも上り詰めてゆく。
    震災が揺り起こした闇は、とてつもなく深かった。

  • 昨年から桐野夏生さんをたくさん読んでいる。
    バラカは、重い内容かなと思いながらも、面白くどんどん読み進んでいった。
    東日本大震災から、こんな世の中になっていたかもしれないという、何ともいえない思い。
    バラカちゃんのような子がたくさんいるかもしれない世の中。
    重い内容だが、最後の方はほっこりするような、やはり桐野夏生さん、また読もうと思った。

  • 東日本大地震後、もしかしたらこうなっていたかもしれない、もうひとつの日本の姿。
    まるでSFの世界のような話だが、被災者の仮設住宅問題や原発避難者の救済を放置して東京オリンピックに浮かれる今の日本を見ていると、遠からず近いものを感じる。
    私が知らないだけで、この日本のどこかに"バラカちゃん"がいるかもしれない恐怖。もしその事実に直面したら、私に何ができるかを真剣に考えさせられた。

    一回だけではなく、この先もずっと読み続けたい本。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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