帰郷

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 437
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716641

作品紹介・あらすじ

みんな、普通の人だった──。作家・浅田次郎のライフワークである「戦争」をテーマにした短編集。名もなき一般市民の目線から、戦中戦後の東京の風景を描き出す。人情ドラマが光る全6編。

感想・レビュー・書評

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  • 毎年夏になると、戦争関連の本を読むことにしている。
    例年ノンフィクションを選択してきたが、今年は小説にしてみた。
    浅田次郎さんなら外しはないだろうと予想はしていたが、これはやられた。
    涙腺が弱いものだから、最初の話の4ページ目でもう涙・涙。

    「帰郷」「鉄の沈黙」「夜の遊園地」「不寝番」「金鵄のもとに」「無言歌」の6編。
    表題作は戦後の闇市が舞台で、復員兵と娼婦の出会いから始まる。
    南方戦線から帰還した兵士はすでに戦死したことになっており、妻は弟と再婚して子供まで設けていることを知らされる。
    帰りたい。だが帰れない故郷。
    命を賭けて戦い、生き延びて帰還しても、また辛い人生を生きねばならない。

    地主の跡取り、勤め人、商人、エンジニア、淡い恋をしていた学生、様々な立場の人間が登場するが、戦線で散った兵士たちの物語が必ず背景にある。
    浅田さんの創作の部分もあるだろうが、どれもモデルケースが数多あったことだろう。
    ひとの数だけ、戦争の姿があった。
    その中で捨てられぬ矜持もあれば、生きぬくために捨てるものもあった。
    どれも、激烈な戦いを描いているわけではない。
    そして、ジャングルの中や凍土の下に埋もれてゆえなく死んでいった何百万人もの兵士と自分たちには、紛れもなく繋がる血脈があったことを、確認させられる。
    同じ人間。同じ国のひと。同じように暮らし、同じような感情を抱いていたということ。
    ぬくぬくと平穏無事に生きることを良しとする今の私たちに、戦時下では同胞の肉を食べたとか、戦後は傷病兵の偽装工作をしたとかで、どうして彼らを責められるだろう。
    恬淡と死に向かっていった兵士たちの前で、自分には語れるものがあるのかと恥じ入るばかりだ。
    鎮魂。そして非戦。それのみをただ思う。

    開業したての後楽園遊園地を舞台にした「夜の遊園地」。
    自衛隊の競技会前夜の不思議な出来事を描く「不寝番」。
    故障した特殊潜航艇の艦内でふたりが見る夢の「無言歌」が特に良かった。
    流した涙のあとが明るいのは「帰郷」のラストの力かもしれない。
    浅田さん、上手いなぁ。この表紙も、とても良い。

  • 短編6編からなる戦争回顧の本、平凡な男たちがどのような関わり方をしていたのか?!
    タイトルになっている「帰郷」と「夜の遊園地」がなかなか良かった。いずれにせよ、割合 秀作揃いの短編集なので一日で読了した。
    この類いを読むたんびに二度と戦争があってはならない と強く感じ入る。

  • つまらない!
    浅田次郎終わった!

  • 内容:
    歸郷
    鉄の沈黙
    夜の遊園地
    不寝番
    金鵄のもとに
    無言歌

    「僕を、あなたの腹におさめて、国に連れ帰って下さい」(『金鵄のもとに』)

    一頭の聡明な猿が獲得した言葉は、やはりその瞬間から穢れていたのだった。・・・人はただ嘆くほかはなかった。
    お国のためです。生きて帰ります。立派に死んで見せます。どうか忘れてください。すべてが虚偽で、汚泥にまみれていた。(『無言歌』)

    もう二度と帰れない、遠きふるさと。戦争によって引き裂かれた男たちの運命。

  • 戦争にまつわる切ない短編集。
    1作だけ読んだことのあるのが入っていた。

  • 短編集。安定の読み応え。特に「不寝番」が得意の時と場所を越えたやり取りで躍動的。大変面白かった。

  • この時代に小説の単行本として出版されるには、思い切った表紙だ。
    作者も戦後生まれではあるが、まだ戦争の色をそこかしこに残す環境、生々しい記憶を抱えた人々が身近にも存在する、という中で生い立ったのではないだろうか。
    もう少し時が経てば、太平洋戦争も、資料を丹念にひもといて綴る『歴史小説』になってしまうだろう。

    英雄でもなんでもない人々が戦場に駆り出された挙句の物語。
    無事に帰還した人たちも多くを失い、また、とうてい口には出来ない秘密や思いを一生涯抱えて、最終的に墓場に入ったという人も多いだろう。
    戦争に行かなくなった世代は、それを負い目にも感じ、行った世代との隔たりにも悩む。
    当時の空気を連れてくる本だ。

    『歸鄕』
    望まれない帰還…
    この話が一番わかりやすい哀しみだ。
    別の人生を生き直す。

    『鉄の沈黙』
    南方の激戦地。
    砲撃手たちにかしずかれた機関砲は、彼等が散り、朽ち果てた後も空に砲身を掲げ、物言わぬ墓標となるのか。

    『夜の遊園地』
    戦死した父と自分の血脈を、帰還して日常を送っていたはずの他人のふとした真の姿を見たことから理解する。

    『不寝番』
    時空が交錯する。

    『金鵄のもとに』
    罪なのか、慈悲なのか。
    単純に答は出せない。
    そして、彼も、元の人生に戻れない。

    『無言歌』
    悟っているような穏やかさ。

  • 戦争を数字にするとただの悪で終わるけど、1人1人の物語になると戦争の惨さがわかる。6つの話全てが痛かった。こういうお話は必要なものだと思う。

  • ※※※※面白い本なので時間を作って読みましょう(^o^)

    やはり浅田次郎の作品は良い! これぞ小説これぞ物語という凄みがある。 たまさか同時並行的に読んでいた『遊園地・・』(◯保△一)とは絶対いっしょになどはしてわいけないのでありまする。
    表紙カバー写真の女の立ち姿がなんとも美しい。戦時中にこんなにも立ち姿の綺麗な女性がいたのか!と大いにびっくりする。
    そして最後の物語にはチャップリンの名曲「スマイル」が登場する。最高です。いやーこの本良いですよ。みなさま是非読みましょう。

  • 戦争短編集。読みにくい作品が多かった。戦地での様子や階級など難しい。専門用語もたくさん出てきて詳しくない私には理解できず。残念。

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著者プロフィール

浅田 次郎(あさだ じろう)
1951年、東京都出身。
1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木三十五賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞それぞれ受賞。2015年には紫綬褒章も授与されている。
2018年現在、日本ペンクラブ会長、直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞の選考委員を務める。2018年12月15日、『輪違屋糸里』が藤野涼子、溝端淳平、松井玲奈らの出演で映画化。

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