慈雨

  • 集英社 (2016年10月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784087716702

作品紹介・あらすじ

16年前の幼女殺害と酷似した事件が発生。かつて刑事として捜査にあたった神場は、退職した身で現在の事件を追い始める。消せない罪悪感を抱えながら──。元警察官の魂の彷徨を描く傑作ミステリー。

みんなの感想まとめ

人間の命の重さや尊さを深く考えさせる物語が展開されます。元刑事の神場が、過去の事件に対する後悔を抱えながら新たな誘拐殺人事件に挑む姿が描かれ、彼の心情や葛藤が丁寧に表現されています。特に、四国の巡礼を...

感想・レビュー・書評

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  • 柚月裕子さん初読みなのですが、いや〜なんかこう「大人の渋み」を感じましたね〜
    一人の男の生き様、人物像がと〜っても丁寧に描写されている(*ˊᵕˋ*)⸝
    これはじっくり落ち着いている時に読むものですね

    この話は事件そのものが主ではないので、ミステリー感を求めるものではないと思いました

    主人公の男の心情描写(葛藤、後悔、覚悟、執念、家族愛)が読みどころといったところでしょうか

    定年退職した元刑事神場は、妻と四国巡礼の旅に出る
    何故巡礼の旅に出たのか…
    それがこの物語の核となります
    16年間後悔し続けた自分と決別する為の歩き遍路
    この遍路の終わりとともに、人生に大きな覚悟を決めようとする…


    登場人物がみんな良い人なんだけど、
    特に夫を支える妻の香代子がまた可愛い
    普段は余計な事は言わないのに、いざとなると
    「今まで放っておかれたのに、退職された後も置き去りにされるんですか」
    「私は根っからの刑事の妻、なのよ」って
    神場智則、恵まれてるゾ!

    タイトルも作品にピッタリ(๑•̀᎑<๑)و イイネ

    • ヒボさん
      ハッピーアワーさん、こんばんは♪
      柚月裕子作品にハマるきっかけとなった作品ですσ(・ω・`)

      yyさんからもおすすめありましたが、佐方貞人...
      ハッピーアワーさん、こんばんは♪
      柚月裕子作品にハマるきっかけとなった作品ですσ(・ω・`)

      yyさんからもおすすめありましたが、佐方貞人シリーズ&ガミさん(狐狼の血)シリーズは是非‪(っ ॑꒳ ॑c)
      2024/03/03
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      おぉ〜、ヒボさんだ!
      こんばんは♪
      今ヒボさんの本棚確認しました
      ヒボさんも柚月さんの作品、沢山読んでいらっしゃる!
      柚月ファンとしては、是...
      おぉ〜、ヒボさんだ!
      こんばんは♪
      今ヒボさんの本棚確認しました
      ヒボさんも柚月さんの作品、沢山読んでいらっしゃる!
      柚月ファンとしては、是非とも両シリーズ読んで欲しいってことなんですね
      読むの遅いし色々目移りするのでゆっくりですが、読ませていただきます
      ありがとうございます⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
      2024/03/03
    • ヒボさん
      きっとドハマリしますよ(*^^)v
      きっとドハマリしますよ(*^^)v
      2024/03/03
  • 慈雨とは恵みの雨という意味らしい。

    恥ずかしい話、伊岡瞬さんの本と思って借りたら
    柚月裕子さんの作品でした。

    ストーリーは、退職した刑事である神場は、
    過去に起きたある少女誘拐殺人事件である間違いをおかし、それに今も苦しんでいる。
    そんな中で過去の事件と類似した少女誘拐殺人事件が再び起こってしまう…

    本の中で、四国のお遍路シーンも多く出てきて、
    大変そうだけれど、個人的にお遍路に興味が
    出た作品でもありました。
    お遍路をしている方にお茶を出したり、休憩所を提供したりする「お接待」という風習。
    見返りを求めず、相手を思いやる温かい風習に
    心がジーンときました。

    事件の方も2つの事件にある共通点があり、犯人を
    必死に探し当てるシーンも胸が熱くなりました。

    本の中で
    「すべての人間が、本人の意思とは関係なく、この世に産み落とされる。望まれて生まれてくる命と、そうでない命だが、命の重さは変わらん。どの命も、この世に生を享けたことを祝福されるべきだ。祝福する人間は、ひとりでも多い方がいい。その人間が、自分とは赤の他人の、刑事であってもな」

    命の重さや尊さとそれを奪うのもまた人間だと思うと人間って一体なんなんだろうと思いながら読んでしまいました。

    本作ではタイトル通り「雨」の描写が時々出てきます。雨という暗く、冷たいというイメージもありますが、この本の中では、温かく人に恵みを与える
    やさしい雨だなぁと感じました。

  • とてもオーソドックスに進行する警察小説。
    ミステリー小説だから妙な言い回しになるけど、安心して読めたし、楽しめた。

    「慈雨」とは、「優しく降り注ぐ慈しみの雨」と作中にあり、辞書で調べると「万物をうるおし育てる雨のこと」だという。
    本作の雰囲気を良く示していると思う。
    読後の感想としては、雨降って地固まるタイプの雨かな、と。

  • じんわり心にしみる物語。
    慈しみの雨 というタイトルどおり。

    60歳で警察を定年退職した神馬(じんば)。
    妻と二人、四国八十八か所お遍路の旅に出る。
    歩いて、およそ二か月。
    妻は知らないが、神馬には明確な目的があった。
    自分が関わった事件の被害者供養のため。

    とりわけ、16年前に起こった少女殺害事件。
    逮捕された犯人は服役しているが、神馬は納得していない。
    そんな中、その事件に類似する少女殺害事件が起こり
    神馬は旅先から、この事件に深くかかわることになる。

    話の中心は事件の解決ではなく、ほかのところ。
    (ある意味、事件は未解決のまま終わる)
    神馬と家族、元同僚など。
    お互いに通わせる心の繋がりが、深く温かい。
    何より “人として一番大切なことは何か” が常に問われる。

    久しぶりに読む柚月さんの小説。
    期待しながら読み始めたけれど、最初は「あれ?」という感じ。
    「なんか、退屈?」
    ところが、三分の二を過ぎたあたりから、一気に前のめりに。
    逆回りをしている巡礼者から、神馬がヒントを得ると
    もう、ドキドキ が止まらなくなる。

    そして最後は心の中に、タイトルどおりの雨を感じ…。
    さすがです。

  • 話の盛り上がりは少ないが、登場人物の感情などが丁寧に描かれて、素晴らしい作品だと思った。
    得に神場の後輩に対する心境の変化の場面はグッとくるものがあった。


  • 元刑事とその妻がお遍路をしているのと同時進行で、新たな事件が発生する。元刑事はお遍路の道中、自分の人生、警察官としての人生を振り返り、改めて向かい合いながら、事件の解明に協力する。
    お遍路という厳しい道中と人生を歩んできた厳しさもそこに重なる。刑事である本人だけでなく、そこに寄り添ってきた妻の人生も。
    とてもいい夫婦だなぁと思う。お互いの本音は包み隠したまま、お互いを思いやり、離れた場所で寄り添い支えようとする。
    主人公が悔恨の念を抱きながら生き続け、歩き続けるという重い内容ではあるが、妻のふんわり暖かい、けれども芯の通った行動や心がそれを支え、暖かい方へと導いてくれている。物語の全体も。

  • 警察官を定年退職した主人公は
    四国88箇所のお遍路へ出かけた。
    途中で 16年前にかかわった事件に酷使した殺人事件が発生した。
    過去の事件にできた 心のわだかまりが
    一層大きくなり、巡礼どころでは ないけど
    という 感じで 主人公の心の揺れと 
    なかなか犯人逮捕につながらない現場。

    凄くどきどきっていう感じではないけど
    じわじわとくる お話でした。

    四国88箇所めぐりとか していたら 
    感情移入しやすいと思います。
    私は 数箇所は見たことがあったので
    イメージしやすかったです。

  • 警察を定年退職した神場は、妻と四国の八十八ヶ所を巡るお遍路旅に出る。
    誰にも明かされない胸中に、16年前に起きた純子ちゃん殺害事件の冤罪に関わる秘密を抱えていた。そして今、その事件とよく似た手口で、愛里菜ちゃん殺害事件が起きてしまう。

    事件性に同一犯を疑い始めた神場は、過去の冤罪がなければ、こうした同じ手口による被害者がでる事は2度となかったのではないかと、後悔を募らせる。
    過去の事件を調べようにも、神場は刑事を退職した身だ。警察内で優秀な信頼のおける部下、緒方と連絡を取り、犯人逮捕への強い思いを抱く。

    お遍路の旅を進める中で何度も純子ちゃんの夢を見たり、自分を責める場面が出てくるが、事件解決への糸口は、神馬の助言からであった。
    刑事に強い責任を持ち、国民を守る義務を全うした神場の生真面目さと、冤罪から被害者が出てしまったという後悔がどんな場面からでも窺える。

    犯人逮捕への瞬間は、手に汗握る展開で、読み手に伝わる臨場感が凄かった。
    ドキドキしてサスペンスドラマを一気に見た感覚と似ている。
    またキレのある男前の文章も、刑事の渋くてカッコいいイメージにピッタリだった。

  • ●2020年7月22日、読み始め。

    柚月裕子さんの作品を読むのは、初。
    1968年、岩手県生まれの方である。


    ●2020年7月23日、読了。

    定年退職(だったか)した刑事、神場智則(じんばとものり)と妻・香代子(かよこ)が、四国88か所を巡礼を開始する場面が、ほぼ冒頭にある。
    そして、巡礼と並行して、刑事時代にやり残した仕事をする、まあ、そんなストーリー。

    この巡礼だが、私には縁のないものと思っていたが、この作品を読み、興味を持った。全部を歩いて回ると2か月位かかるとのことで、実際には巡礼することはないと思うが。

    ●2021年10月10日、追記。

    著者のことを、ウィキペディアで見てみた。

    柚月 裕子(ゆづき ゆうこ、1968年5月12日 - )は、日本の小説家・推理作家。岩手県釜石市出身。山形県山形市在住。釜石応援ふるさと大使。

  • 柚月裕子『慈雨』集英社。凄い警察小説だった。新しい形の警察推理小説と言っても良いだろう。

    過去の事件への贖罪の念に苛まれる元刑事を中心とした人間ドラマと共に現在進行形で進展する事件の、どちらも目が離せない展開の面白さ。晴れやかな気持ちになる感動のラスト。新年最初に読んだ小説としては非常に満足のいく作品であった。

    定年退職した刑事・神場智則は妻と共に42年の警察官人生を振り返る遍路旅の途中、16年前の事件と酷似した幼児殺害事件の発生が発生する。16年前の事件が冤罪であることで贖罪の念に苛まれる神場は旅先から非公式に警察の捜査に協力することに…

    清水潔の『犯人はそこにいる』に描かれた北関東連続幼女誘拐殺人事件に酷似した事件が、この小説の根幹を成しており、16年前の事件に苦しめられながらも、未だに事件解決に執念を燃やす男たちの姿が素晴らしい筆致で描かれている。

  • 群馬県警で42年の警察官人生を終え、定年退職した神場智則。
    妻の香代子と四国八十八カ所の歩き遍路の旅に出た。
    警察官人生を振り返る旅の途中で、幼女殺害事件の発生をしり、動揺する。
    16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件に酷似していたのだ。
    神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件にーー。
    元部下であり、娘の彼氏でもある緒方を通して捜査に関わり始めます。
    そして、消せない過去と向き合い始めるーー。

    四国八十八カ所を巡礼している様子。お遍路の途中での人との出会い。
    妻・香代子とのやりとりや二人の長い歴史や過去。
    娘への思い…娘と緒方の付き合いを許せない気持ち…。
    それらが丁寧に描かれていた。
    特に16年前に神場の心に深く刻みこまれた傷や後悔。
    自分と向き合い、正義とは何かを問いかける神場。
    その心理描写がとても丁寧で、読んでるこちらも胸が苦しくなる程でした。
    妻の香代子がとっても素敵でした(*´ `*)
    そして、最後には涙が零れそうでした。

    自分の人生に後悔を抱えていない人は少ないと思います。
    大きな後悔を抱えてきた人がどう生き直すのか問いかけられていました。
    また、頼るべき存在で心の拠り所の警察組織。
    その警察組織が上っ面の正義だけを守る組織であって欲しくない!
    隠蔽体質は変わった欲しいって思った。

    「ずっと晴れとっても、人生はようないんよ。日照りが続いたら干ばつになるんやし、
    雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が、おなじぐらいがちょうどええんよ」
    とっても印象的で心に残る素晴らしい言葉でした。
    お遍路さん行きたいって思いました(*Ü*)

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      しのさんと感動しているところが同じで嬉しいです。
      おばあさんの言葉、香代子さんの素晴らしさよかったですよね...
      こんばんは(^-^)/

      しのさんと感動しているところが同じで嬉しいです。
      おばあさんの言葉、香代子さんの素晴らしさよかったですよね。
      後悔を抱えていない人はいない、そうですよね。
      特に人を守ったり助けたりする人たちはその数も重さも凄いと思います。
      今日はまた慈雨を思い出せてよかったです。

      娘が帰ってきていたのでゆっくりコメント出来なくて遅いコメントですみません。
      2016/12/26
    • しのさん
      こんばんは(#^^#)
      コメントありがとうございます。
      そうですね~おばあさんの言葉、ずっしりと胸に響きました~とっても素晴らしい言葉で...
      こんばんは(#^^#)
      コメントありがとうございます。
      そうですね~おばあさんの言葉、ずっしりと胸に響きました~とっても素晴らしい言葉でしたね(*'▽')
      妻の香代子さんもとっても素敵な人でした。
      大きさは様々でしょうが、自分の人生に後悔のない人っていないと思います。
      この主人公の様に警察官だとその重さや大きさは計り知れないでしょうね。
      私のとってお遍路さんは身近に感じる存在なのでいつか…いつか回れると良いなぁって思っています( *´艸`)
      2016/12/26
  • 16年前の少女誘拐事件で心の傷を負った元刑事と妻がお遍路を通じて夫婦の絆を確かめ合う物語。

    行く先々でふたりは過去の出来事を思い出す。それは決して幸せな事ばかりではなかったけど、ふたりの人柄、相手を思いやる心がヒシヒシと伝わってきて、すぐに私はこの本が好きになると思った。
    お遍路を続け色んな人に出会い皆それぞれ苦しみを背負っているのだとわかっていくが、神場の心の傷はなかなか癒されない。
    刑事ってここまで背負わなければいけないものなのか…。ちょっと背負いすぎではと思う部分もあった。
    彼の苦しみを本当に解き放つのは結局犯人逮捕なのだろうな…辛い。もう悪夢を見ていないといいな。神場には素敵な奥さんがいる。だからきっと大丈夫。

    「人生は晴れの日と雨の日が、同じくらいがちょうどいい。」心にしみる言葉。願わくばその雨は優しい雨、慈雨になりますように。

    • しのさん
      はじめまして( *´艸`)
      いつもイイネありがとうございます♪
      柚月さん大好きな作家さんです。
      慈雨も予約中なのです。
      けいたんさん...
      はじめまして( *´艸`)
      いつもイイネありがとうございます♪
      柚月さん大好きな作家さんです。
      慈雨も予約中なのです。
      けいたんさんのレビューを拝見して、
      読むのが益々楽しみになりました(*'▽')
      2016/11/25
    • あいさん
      しのさん♪

      はじめまして◟(๑•͈ᴗ•͈)◞
      こちらこそいつもいいね、そしてコメントまで貰って嬉しいです♪
      しのさんの本棚は私の読...
      しのさん♪

      はじめまして◟(๑•͈ᴗ•͈)◞
      こちらこそいつもいいね、そしてコメントまで貰って嬉しいです♪
      しのさんの本棚は私の読みたい本ばかりでいつもレビュー読むのがとても楽しいです。
      「失踪者」は予約待ちでやっと順番が回ってきそうです。
      「あしたの君へ」も読みたくてわくわくしていますヾ(≧∪≦*)ノ〃
      「慈雨」は誘拐事件も絡んでいるのですが、私にとっては夫婦の物語に思えました。
      「東京會舘とわたし」の金環のお祝いと同時期に読んだのでどちらの夫婦も良くてじんわりきました。
      たくさん話してしまってすみません。
      これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m
      「慈雨」の感想楽しみにしています♪
      2016/11/26
  • 退職した刑事の後悔と執念
    重たい過去を抱えながら自分の人生と向き合う
    本当の刑事もこんな人ばかりだったらいいなぁ

    ■お遍路巡り
    主人公は現場には出向かず安楽椅子探偵みたいだった
    過去の冤罪事件に関わった自分を攻め続け、お遍路巡りをしながら自分なりの贖罪をする
    神場も鷲尾も悪夢を見続けるほど悩み苦しんでいてこちらも胸が苦しくなった
    握りつぶした上層部も同じ気持ちになっているのだろうか

    ■道徳が通じない時代
    子供は小さい頃から知らない人に付いていってはいけないと教えられる
    最悪の事態が起こらないようにそうするしかないけどやっぱり悲しい
    悪人基準でルールを決めなければいけない世の中はいやだなぁ

    ■人生はお天気とおんなじ
    『日照りが続いたら干ばつになるんやし、雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が、おんなじくらいがちょうどええんよ』
    名言だなぁ
    幸せはどうしても人と比べて測ってしまう
    人生は理不尽で努力しても報われないことも多いけど、見る角度を変えればまた幸せの度合いも変わってくるのかな

    ■刑事も人間
    神場が刑事も私情があることを認めていることが良かった
    長い捜査でモチベーションを保つためにプラスの方向に私情を向けることは重要だ
    被害者や遺族のことを想い、犯人に強い憤りを感じ何としてでも逮捕するという気持ち
    こんな刑事が捜査をしてくれたら被害者の無念を少しは晴らせると願いたい


    クライマーズ・ハイに続いて熱い仕事人の小説を読み胸が熱々だ
    やっぱり胸熱小説が読みたい!

  • 警察小説だけど、「冤罪」をテーマに犯罪者との戦いというより、自分との戦いでした。人間としての葛藤、刑事としての葛藤が感じられた。16年も苦しんでいたなんて。

    「生まれながらにして刑事」な主人公と、「生まれながらにして刑事の妻」という主人公の奥さんの控えめだけど力強い愛がとても良かった。

  • すごい良かった。警察を定年退職をした神場が妻と御遍路周りをしながら、現在と過去の幼女殺害事件を通して自分と向き合い葛藤する。
    場面が過去と現在と何度も切り替わるが、いつもは訳がわからなくなる私でも、不思議と振り回されず、自然な流れとして受け入れられている。
    また、視点も御遍路廻りをしている神場と現在の殺害事件を追っている緒方とが切り替わるが、迷子にならずにこの物語に効果的に作用していると感じる。
    何度も涙が浮かんできた。
    「悪人と、行き連れなんも、弥谷寺 ただかりそめも 良き友ぞよき」
    心に響いた。

  • 「冤罪の罪」
    この小説のテーマは、真実を追求する正義感を持った個人と、名誉と権力によって真実が歪められる組織との対立を描いている。内容は退職警官が冤罪事件の真相解明に執着、「罪を犯した者は罰せられるべき」という正義感を持っていること、しかし組織が、「冤罪」ということに対して名誉と地位を守るために過ちや罪を隠すのが当たり前になっている。 現実、官庁、特に政治権力を用いた真実の隠滅、消滅、改竄、破棄など自分達の過ち、罪を隠そうとする行為は近年頻繁にあるように感じる。「正義を正す」善人や組織が減少し、金と権力で歪められた社会があることを認識しておくべきだ。

  • 「小雨でもいい。空が少しでも泣いてくれれば、身体に纏わりつく黒い澱みが、わずかでも流れ落ちそうな気がする」
    慈雨…それは万物を潤す雨であり、待望の恵みの雨。
    自ら犯した過ちを長年に渡り秘かに抱える元刑事の澱んだ心に、慈しむような優しい雨が降り注ぐ。
    膿んだ心の古傷も後悔の念も綺麗さっぱり流してくれる。

    16年間決して忘れることのなかった幼女殺害事件。
    刑事を定年退職した神場は、被害にあった幼女の惨たらしい姿を片時も忘れたことはない。
    新たに起こった同様の幼女殺害事件をきっかけに、過去の事件を照らし合わせ、元同僚の刑事達と共に暗礁に乗り上げた難事件に再び挑む。
    16年間に及ぶ苦しみの決着をつけた神場だったけれど、事件を解決できたのは刑事達、男だけのお陰ではない。
    側で支えた妻の慈愛に満ちた手の温もりも決して忘れてはならない。
    ラストは大地に優しさがじんわりと染み渡るような穏やかな気持ちになれる物語だった。

  • 登場人物それぞれに物語があって、それが丁寧に描かれている作品でした。
    派手な場面はあまりないけれど、地道に捜査を進める緒方や、神場と香代子がお遍路の途中で出会う人々と交流するところ、合間の電話など、リアルさが感じられました。最後はもうひと捻りあるのかな、と期待しましたが。
    緒方がとても頼もしい人でした。

  • タイトルの意味はラスト5行目に。
    主人公、若い刑事さん、課長さんの実直さに、潔さより悲しさを感じる結末でした。

  • ハラハラ、ドキドキ、という刑事もののミステリーという感じはなく、ゆっくりと重いスピードで進んでいく。
    主人公の苦しみが読み進めれば進めるほど伝わってくる。
    他にも、主人公の妻を含め、周りの登場人物との関係性や、深み、それぞれの苦しみ。優しさ。
    事件への執念や、仕事への思い。
    とても厚みのある人間ドラマでした。
    終盤にかけて、一気に犯人への糸口が見つかり解決に進んでいく場面は面白かったし、感動もあった。
    ミステリー小説としては確かに、ハラハラやドキドキは少ない感じもあるし、事件解決まで長く感じるかも知れないけれど、私は逆にこの長さが、主人公の深層心理やリアルな気持ちに入り込めたので面白く読めました。


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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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